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ラウンドテーブル2020 分科会「コロナ禍でのサバイバル術 1-C:エッセンシャルワーカー」記事掲載

2021年4月22日

2021年2月18日に開催いたしました「ラウンドテーブル2020 ~未来を探る円卓会議~」分科会の様子をご紹介します。

コロナ禍でのサバイバル術 分科会1-C「エッセンシャルワーカー」

※所属・役職は開催当時

《パネリスト》 ※写真は左から
竹増 貞信(ローソン 代表取締役社長)
轟 麻衣子(ポピンズ 代表取締役社長)
山内 雅喜(ヤマトホールディングス 取締役会長)

《モデレーター》
田中 良和(グリー 代表取締役会長兼社長)

画像:分科会1-C「エッセンシャルワーカー」 パネリストとモデレーター

田中:本日はよろしくお願いします。皆さん有名な方ではありますが、最初に自己紹介をお願いできればと思います。轟さんから順に、お願いいたします。

轟:はい。ありがとうございます。ポピンズの代表取締役の轟と申します。我々は保育と介護という分野でございまして、ミッションは働く女性の支援を掲げています。現在、保育園を全国に332か所ほど展開しておりまして、その他ベビーシッターサービスや介護サービスを展開しております。どうぞよろしくお願いいたします。

山内:ヤマトホールディングスの山内と申します。事業としては「クロネコヤマトの宅急便」で皆さまにご愛顧いただいている会社でございます。このコロナによって巣ごもり需要、ECの利用というのが一気に進んだこともあり、非常に数が増えた宅急便をどう対応するか。対面で今までやっていたものも控えながら、日々行っております。昨日から始まったワクチンの関係も、輸送で関わらせていただきながら、このコロナ禍を乗り切れるために少しでもお役に立てれば日々取り組んでいるところでございます。今日はよろしくお願いいたします。

竹増:ローソンの竹増です。こんにちは。ローソンはおなじみの青いコンビニエンスストアです。それから、実はグループの中に成城石井もございます。他にもローソンチケットというイベントのチケットを扱う会社や、ユナイテッド・シネマ映画館もローソングループの中にございます。そういう点では、コロナ禍の中で本当にいろいろな対応をしながら1年がようやく経った感じでおります。今日はよろしくお願いいたします。

田中:最初のテーマにいきたいと思います。そもそも「外出はいけないんじゃないか」とか「人と接触してはいけないんじゃないか」ということから始まったのですが、そのときに外出しないと言っても外出しなければ電車も動かないし、お医者様も出勤できない。医療体制を守るというときに、本当にお医者さんと看護師さんだけでいいかというとそんなことはなく、その方々の関連する事業も動かないと社会は回らないんだとわかったのが1年くらい前だと思います。その頃からエッセンシャルワーカーという概念認識が広まり、コロナ禍でも社会を回していくには、どうしても物理的にいろいろなことをやり続けないといけない職業と役割があることが、再発見されたと思っています。ここにいらっしゃる方々はまさに、エッセンシャルワーカーとして働かれる業種ですね。食品がなければ生きていけないですし、それを運ぶ仕事がありますし、育児支援もあります。エッセンシャルワーカーというのは狭義も広義もありますが、皆さんはそれを仕事とされてこられた中で、このコロナ禍の中で思ったことを1つずつお話しいただけますか。まずポピンズの轟さんからお願いします。

画像:轟 麻衣子氏

轟:そうですね。エッセンシャルワーカーという言葉が医療従事者向けに使われがちだった頃から、そうした方々を支えるために介護や保育があるという意味づけを社員にしてきました。やはり社員にとってみると、どうしてもそうした意識は忘れがちになるんですね。でも自分たちは時差出勤もできないし、満員電車は避けることもできない。インフラの一部として働いているわけです。その後徐々に社会の認識も高まり、保育や介護についてもエッセンシャルワーカーという位置付けに入れてもらえるようになってきたのですが、本当に大きな意味合いがあったと思います。応援やエールをいただいたり、差別や偏見がなかったりすること自体が、やはり彼ら彼女らの社会地位向上にもつながっていった気がします。逆にそれほどの支えとなるワーカーなわけですから、三重苦と言われるような長い、きつい、賃金が安い、といったことはもっともっと改善してあげたいと思います。また、お子さまの命をお預かりさせていただく使命を担っている人として、たとえばワクチン摂取の優先順位をもう少し上げていただけないのかといったことも提言したりしております。

田中:確かに、ワクチンの優先順位というのが整理されていく中で、エッセンシャルワーカーの方が中心に進むということは必要だなと思います。山内さんはいかがでしょうか。

画像:山内 雅喜氏

山内:まず今日のテーマであるエッセンシャルワーカーという言葉ですが、このワードが生まれたのは良かったと思います。前から社会的インフラを支える企業とか、インフラ企業ということはありましたが、今回、コロナ禍を通して「生活に必要不可欠な企業」という見方が高まりました。医療従事者も含めてエッセンシャルワーカーという点で、世の中の見方が大きく変わった。轟さんもおっしゃっていましたように、そうした仕事に携わっている方々のモチベーション、あるいは誇り、こういったものが変わったと思います。確か去年の4月に、安倍首相がエッセンシャルワーカーという言葉を使い始めてくれたと記憶しています。最初は医療従事者だけということでしたが、それから物流の領域、病院の領域、あるいは保育やゴミ収集の方々など、いろいろな部分で広くエッセンシャルワーカーということになったのは、非常にありがたかったです。
支援の話に絡むのですが、エッセンシャルワーカーに必要なことは、「安全・安心・理解」。この3つが必要だと思っています。「安全」というのは、我々でいうとマスクをして配達をする。消毒液を付けて行う。非接触をして感染を防ぐという意味でも安全ですね。それから2つ目の「安心」については、物理的な防御をしたとしてもやはり安心して働けることこそが大事だと。たとえばPCR検査やワクチン接種。こういったものを優先的に受けられることをはじめ、優先的にエッセンシャルワーカーに施していく支援は必要ではないかと思います。3つ目の「理解」というのは、やはりお客さま、国民、社会全体の皆さまが、やはりこういう環境でもエッセンシャルワーカーが必要なんだとしっかり理解して、応援していただくような環境づくりですね。具体的に言うと「こういうことでは感染しませんよ」「こういうことは大丈夫なんです」ということを、国や行政からしっかり発信していただき、皆さんに理解してもらうことが大事なのではないかと思います。
去年の2、3月頃はまだ皆さんが理解不十分だった面はありました。宅急便をお届けすると、「段ボールに菌が付くのではないか」とか「あなたがいるだけでうつるから来ないで」といって消毒液をかけられたりとか。そういったことは当初ありました。配送に関わっている家庭のお子さんがいじめにあうことも、実際起きたわけですね。ところがエッセンシャルワーカーという言葉ができて、こういう形であれば大丈夫であるという発信がされることで、皆さんの理解が進み、応援していただくような形に変わりました。やはり安心と安全と理解。これをしっかり社会としてつくっていく、こういった支援が必要なのかなと思います。

田中:ありがとうございます。竹増さんいかがでしょうか。

画像:竹増 貞信氏

竹増:ローソンだけでなくコンビニエンス業界に共通して思うことですが、これまでの阪神淡路大震災や、今年10年目を迎える3.11のときも同じで、やはり国難の時にまず街に明かりを灯さないといけない。そこで安心を皆さまにお届けして、街の皆さんにローソンは開いているよと見せることでがんばっていこう、そういうDNAが全店にあるなというのを、今回改めて確認できたと思っています。その上で、今回は「敵」の姿が見えない。敵というか恐怖の姿が見えないので、いつまでやればいいのかもわからず、どうやって身を守ればいいのか、最初はなかなかわかりませんでした。山内さんがご指摘した、理解がまだ浸透しない段階で、とりあえず安全を確保する物資、つまりマスクやビニール手袋、消毒液などをもっと確保できれば、よりお店で働く人たちの安心感につながるし、お客さまの安心感にもつながっていったのだろうと思います。
特に4月の緊急事態宣言直後の頃は、国民全員が得体のしれないものだという認識しかなかった。その中でもやはり、お店を開けて身近な買い物を提供するローソンとしては、そういった役割をはたしていこうとしたのですが、加盟店さんの背中を押してくださったのは、やはりお客さまからの感謝のお言葉やエールですね。本部からも、私自身も、毎週メッセージをどんどん出して励ますわけですが、やはりお客さまから「本当にありがとう」というお手紙をたくさんいただいたのは大きいです。いただいたら1通ずつそれを共有し続けて、何とか2ヶ月乗り切りました。そのあとは逆に仕事ができることへの感謝ですね。本当にローソンをやっていて良かったと、仕事ができて良かったと感謝しました。どういうことかと言うと、エッセンシャルワーカーは4月5月の大変なときはものすごくがんばったのですが、そこでふと顔を上げると、あらゆる仕事をされる方が人間らしく生きるために、エッセンシャルの仕事があるのだと思えた。本当は仕事がしたいけれど休業している方に対して、僕ら側からも「営業を我慢してくれてありがとう」という気持ちを持ちながら、仕事を継続させてもらったと思えた。あらゆる仕事に対する存在の上で、僕らコンビニエンスもあること、僕らはエッセンシャルワーカーとして一生懸命働くのだけれど、それは生かされているという相互理解にもつながっていると、そういう気持ちが社会全体に広がれば、本当の意味でエッセンシャルという言葉をみんなが噛み締めながら、このコロナの中を乗り切っていけるのではないかと思います。たとえば田中さんがやられているゲームで救われた方もたくさんいるはずだし、アーティストという仕事も人間らしく生きるためにはエッセンシャルなのではないかと思います。早くそういう世界を取りもどすために、やはり相互理解をしながら進んでいかないといけないなと1年経って思っています。

画像:田中 良和氏

田中:そういった中で、皆さんからこの1年間の振り返りとこれからどうしていくかという点を伺っていきたいと思います。まず振り返りということで、実際に「こういう問題に直面してこう乗り越えてきた」といった点。各業界であったと思います。たとえばゲーム業界でも「田中さんの会社は全部すぐにリモートでできるんでしょ」といった話が言われたんです。ただし、すごく高性能なパソコンでないとゲームがつくれないという問題があります。会社から家までパソコンを持ち帰らないと。台車で持ち帰らないと。という話になってしまうんですよ。「実際にやってみると......」ということが皆さんもあると思いますが、どういう問題に直面してそれをどう乗り越えてきたのか、お伺いできますか。轟さんからお願いします。

轟:1回目の緊急事態宣言が出たのが4/7だったと思いますが、そのときに保育園をどうするのかという問題が出てきました。これは自治体ごとにご指示をいただいて行うのですが、当時の多くは、「エッセンシャルワーカーのお子さまはお預かりします。ただ他の自粛できる方は、自粛をお願いします」という方針でした。我々はそれに従わざるを得なかったのですが、そこで考えたのはお子さまにとってみれば親の仕事は関係なく、日常がいきなり奪われてしまったということです。なので、何をしたかというと、オンライン保育というものを始めました。弊社にDX部があったので、緊急事態宣言の翌日から試行錯誤を繰り返しながら、まずは日常を担保しようとしました。たとえば園にいらしているお子さま・先生方と、ご自宅にいらっしゃるお子さま・保護者とをつないで、日常的な朝の会やリトミックなどのアクティビティを一緒にして。とにかく絆を絶やさない日常を、どんな状況であってもつなげていこうとしました。
実はそれが逆に、今までのやり方を覆すような新しいサービスがそこからどんどん生まれていくことにもなったんです。たとえば保護者にとっては「毎日が保育参観のようだ」となるんですね。今まで見えていなかった子供との世界、お友達や先生方の顔が見えてきますし。お子さまにとっても、今まではご両親が在宅でZoom会議していたような世界を、こうやって自分自身もつながれるんだと発見したとか。そういった様々な発見がありますので、私たちが今目指しているのは、冒頭のあいさつでも出ましたグレートリセットという発想ですね。ニューノーマルという言葉以上に、新しいベターノーマル、より良い保育、より良い対応。より良い日常とは何かということを、このコロナ禍で検証させていただきながら、次につなげていきたいという取り組みが多かった1年だったと思います。

田中:山内さんお願いします。

山内:この1年はいろいろな変化がありました。特に我々はお客さまと直接触れ合う第一線のリアル世界が中心ですので、そちらについてお話ししようと思います。先ほど申し上げた「安全」という部分では、社員全員にマスクを供給したり、携帯の消毒液を渡したりということを行ってきました。ただ、業界を見ても世の中を見ても、各社が自分たちの努力で動いたので、ばらつきがあったなというのが振り返りですね。エッセンシャルワーカーという1つの括りの中で衛生用品などの供給優先順位を上げることを、今後は考えていく必要があると感じています。
「安心」というところでいくとまず、社員はお届けするのが仕事ですから、人と接するのは好きな人間が多いんですね。今こそがんばろうと動いてくれたのですが、ご家族が心配されました。「お父さん大丈夫?」という声が寄せられました。だから安心してもらうために、会社としての対応やサービス面はこうしているということを、家族含めてご理解いただくことが、次のステップとして大事になりました。それから安心をお客さまに担保するために、サービス内容を色々と変えております。非対面、非接触を実現していくために、お届けしたときの印鑑やサインは不要とすることですね。またお届けしたときに、玄関先に置きましょうかというのも聞いて、「そうして」と言われたら玄関前に置いていくなどですね。配達場所指定のサービスをしたり、指定時間枠を変えたり、営業時間を短くしたり。お客さまにもご理解いただきながら、ある意味次の時代へ向けたサービスシフトをしてきたというのが、安全安心という意味での変化だったと思います。
そして「理解」というところは、エッセンシャルワーカーという言葉もそうですが、やはり「自分たちはこういう仕事をしているんだ」という点や、「世の中が求めているものを我々は仕事にできる」という喜び、これに感謝しながらしっかりやっていこうと思います。そしてお客さまともっと向き合おうと。世の中のお客さまにご理解をいただきながら進んできたというのが振り返りです。やはりこのような発信を、様々な形でしていくというのも大事だと感じました。

田中:竹増さんは1年間の振り返りはいかがでしたでしょうか。

竹増:4月の段階ではとにかく、安全確保最優先というところでマスクや消毒液を配ったり、レジのところにビニールカーテンを付けたりしました。それからローソンの場合は、トイレ、ゴミ箱、灰皿といったものについて、4月、5月は希望する加盟店さんにはすべて使用を停止していただきました。やはり「わからない」ということが非常に恐怖心をあおっていましたので、とにかくできることをやっていこう、そして6月以降は徐々にしっかりとした商売ができるという喜びを感じながらやっていきました。実は児童保育をやられているところに、おにぎりをみんなで配りに行こうといった活動などもありました。昼食がないという話があったためです。また、給食がなくなって牛乳が余るというので、牛乳を半額で販売しにいってみたり、お医者さんや看護師さんなど病院関係者が大変な中、我々は結構病院に入らせていただいているのもあって、スイーツをお配りしたりしました。僕らも大変だったのですが、やはり加盟店さんから、「本当に社会を支えていただいている皆さんに、何かできることはないか」という声がどんどん上がってくるのです。そういうものをどう形に落として実際に実行していくか。やはり街とつながっているのが僕らの商売の原点でもありますので、そういったことを本部の役割としてしっかりと現場に落としていく。それを1年間やってきました。
今は外食産業が大変ですので、たとえば「うちの街のあの中華料理屋がおいしい」とかいう声が加盟店さんからあれば、そことのタイアップ弁当をうちのお店経由で提供させていただくなど「街の一員としてできることをどんどんやっていこう」という流れになってきています。あと、チケット販売や映画館もやっていますので、エンタメの皆さんが本当に我慢されていることも感じています。本当にその我慢によって、今こういう感染者数になってきているわけですから、僕らは仕事としてやっていますけれど、そういう方々にも形あるものでしっかりと感謝を伝えていければと、そんなことを考えながらみんなで過ごして来ています。

田中:そんな中でコロナ問題が終わったわけではないですが、ワクチン接種が始まり、希望が持てる時期に入ってきたところでもあります。これからどうしていくのかという話をしていきたいのですが。今回個人的にびっくりしたのは、先ほどハンコの話がありましよね。実印はさておき、まさにこれまでのハンコはなくても良かったんだという。1つには総理の力強いリーダーシップで、政府から減らすんだという風もあり、世の中が変わっていくのをハンコ1つで目の当たりにしたなと思っています。今もご病気にかかられている方がいるので、簡単に前向きにいうのも難しいですが、こういうことをチャンスにして変わっていく部分があるのではないかと思いますね。皆さんの方で、これからに向けて、国や社会の仕組みレベルから変えていくべきことなどがあればお伺いできますでしょうか。轟さんからお願いします。

轟:はい。先ほども申し上げたのですが、やはり、あるべき姿を今までなかなか変えられなかった点はあったと思います。保育も介護も、固定概念の中で昔ながらのやり方を尊重してやってきた面も強かったんですね。ただ、やはり時代が動き始めています。たとえば保育士さんのなり手が少ないと言われている中で、はたして業務のタスク化はちゃんとできているのか。今の業務は本当に、資格までとった人が全部やるべき仕事なのかと思うと、IT化、デジタル化できる面がもう少しあるかなと思います。業務のタスク化をうまく進めることで、人にしかできないサービスや仕事にもっと特化していけるのではないかと考えます。
たとえば今まで保育園では、お子さまの体温測定を昔ながらの水銀の体温計でやっていたんですね。そうすると保育士さんが1人を抱えて1分半くらいかけてやることになる。それはそれで、肌の温かみがあるからという風習だったのですが、今回のコロナ禍で全部非接触型に変えました。それでピッと記録されれば、これまでかかっていた手間が省けます。その代わりにお母さまと会話したりお迎えの支度ができたり、違うことに時間を割けるようになりましたからね。DXと昨今良く言いますが、やはり保育や介護の遅れている部分、当たり前のことがデジタル化されていない点は、もっと自治体や国と一緒になって、新しいやり方をつくるところに寄与できればいいなと考えています。

田中:給付金のときにも、どうやって配るのかなと思う面もありましたよね。今も、ワクチン摂取の状況を管理しきれないとか、二重に打つ可能性とか、そういったことも明らかになってきているというのは思いますね。では山内さん、お願いします。

山内:2つお話したいと思います。1つは、エッセンシャルワーカーと呼ばれている方々が結構いらっしゃいますが、これがもう少し変容していくように感じています。というのは、今は生活を支えるという面、リアルに支える部分のエッセンシャルというところに割と光が当たっていると思います。しかしアフターコロナを含めて考えると、やはり非接触、非対面というのがより増していく。そう考えると、逆に人と人をつなぐところが、もう少し求められてくるのではないかと思います。そういったところに関わる方もエッセンシャルワーカー、要は生きて行くために必要な要素になるのではないかということですね。
たとえば介護対象までいかない高齢者などの生活を見守ってくれるような生活パートナーみたいな人、喜びや楽しみとしてエンターテイメントを仕掛けてくれる人、あるいは人と人が接点を持てる場をつくる人というのは、エッセンシャルかもしれない。これらは、生きていく上で必要になるのではないかという気がします。つまり、エッセンシャルワーカーがどういった領域まで必要になるかについては、これから私たちも見極めながら支援をしていく必要があるように思っています。
2点目に思うのは、やはり対面から非対面という流れです。昔はなかなか解決できなかったけれど、今はデジタル化が進んでいます。データとデジタルテクノロジーの活用が可能となり、非対面が進んでいきます。そうすると私どものサービスも、今まで細かく細かく対応していたようなものを、一定の標準化に基づき、デジタルの仕組みを使うことでより便利に、より効率よく、かつ非接触でやれるような形にしていくことが可能でしょう。ただそのためには、アナログで個別対応していたものを、ある意味標準的なサービスにしながらデジタル対応にしていく必要がある。そうやって、エッセンシャルワークのDX化ですね。デジタルテクノロジーが、エッセンシャルワーカーの仕事内容やサービス内容を変えていくように進むと思います。すると、自動運転や無人配送といったものも現実的に見えてくるのではないかと思っています。
一方、非対面が進む中で、対面やリアルの大切さ、人と人とが触れ合う大切さはもっと価値を増してくるでしょう。ですから、より非対面にしていく部分と、対面として残していく部分の整理も、これからの動きとして出てくるかなと思っています。

田中:では竹増さん、お願いします。

竹増:私たちも同じように、1つはアナログを徹底的に追求していくという面、もう1つは規制緩和とデジタル化だと思っています。デジタル化を進めようとすると、どうしても規制が問題になってくる面があります。
アナログについては、今までのローソンは、北海道から沖縄までどこに行っても大体同じ「ローソン」という形で平準化して成長してきたわけです。今後は、エッセンシャルに必要な商品などはしっかり共通化して、あとはいかにローカライズしていけるかを考えています。たとえばリモートワークがどんどん進んだために、家の近くにあるローソンの昼間の状況なんかこれまで知らなかったけれど、新しく気づきがあったりする。本当に街への密着度が増していると思います。
またローソンでは、ローソンファームという農場を全部で17農場くらいやっています。そこでは野菜を地域に販売したり、その野菜を使った弁当をつくったりして、エコシステムをいかにローカライズして回していけるかということに挑戦していっています。
街の方々が本当にローソンに集まって、街で育ったオーナーさんやクルーさんと一緒に雰囲気をつくっていく。そういった形を今後、ウィズコロナでもアフターコロナでも追求していきたいと考えています。
もう一方はデジタル化なのですが、このコロナ禍の中で、実は全店にセルフレジを導入しました。できることはどんどんやっていくということの一環です。コロナ禍だけではなくて、熊本や北海道の地震、広島での洪水といったときに現場に出ていきますと、お客さまの声はいろいろと届きます。たとえば、「何でローソンでは薬を売っていないの?」というお声をいただきます。災害時はコンビニから立ち上がりますから、最初はコンビニ以外がなく、その中で全然薬が手に入らない。お子さんが熱を出しているという状況でも、我々は薬を販売する免許がないから売れなくて申し訳ないとお断りするお店もあります。今回のコロナ禍でも、たとえば保育園にお子さんの迎えに行かれて「お子さん熱ありますよ」と言われたときに、近くのクリニックは休んでいるし、ドラッグストアはちょっと離れている場合、「なぜコンビニでちょっとしたお子さまの熱さまシートが買えないのだ」というお客さまの声もあるのです。今は、実在の登録販売者がお店にいないと薬の販売ができません。リモートで相談に乗ってもだめです。しかし、平時も有事も便利で強くしていくためには、デジタル化以前にできた規制をデジタルベースに変えていかないといけないと思います。リモート診療が始まろうとしていますが、やはりもっともっとデジタルベースに乗せていかないと、せっかくデジタル活用がコロナ禍でわかってきたのに、全然活用できないということになってしまいます。河野大臣にも大いに期待していますし、菅総理にもどんどん推進していただきたいです。小さな町のアナログの追求、コミュニティの追求と、それを支えるためのインフラとしての規制緩和を前提としたデジタルの追求。こういうところをぜひ今後進めていきたいと思います。

山内:今、竹増さんがおっしゃった医療領域は本当に昔から規制が一番強くて、政府が進めると言いつつもなかなか進んでいないところですよね。今回のコロナ禍を経験して変えていく声を高めるという点、契機にしていくという意識は大事だと思いますね。先ほど田中さんがチャンスという言葉を使われたのも同じだと思います。

竹増:業界でデジタルを使えばこうなるのにということが、たくさんあると思うのです。それが「ノンデジタル時代の規制のせいでできない」という話が結構多いと思いますので、実際そういうところはどんどんチャレンジしていきたいですね。

田中:最後5分くらいですが、皆さんから簡単に総括をいただきたいと思います。コロナ問題が収まったとしても、SARSのときもありましたが、感染症は何年かに1度はやってくるものだと思います。コロナ問題が終わったときに忘れてしまうのではなく、今回を契機に社会を動かしていくことだと思っているのですが、轟さんから一言ずつお願いします。

轟:はい、ありがとうございます。私はやはり、本当に大変な思いをされている方が多くいらっしゃる中で、毎日毎日保護者の方やスタッフを通じて、いろいろな生活があり、幸せがあるんだと痛感してきた1年だった気がします。
その中で1つ強く思ったのは、「ねばならない」や「こうすべき」といった固定概念をどんどん取り除いていく、選択肢をもっと増やしていくことの大事さです。保育でもそうですし、介護でもそうですが、多様な形があります。たとえば弊社には、保育園とベビーシッター、他にチャイルドマインダーというのもありますが、いろいろな形があります。こうした人それぞれの幸せに寄り添う選択肢を、もっとつくっていこうとしています。大きなどんでん返しになるほどの衝撃があったこの時期に、逆に様々な最先端のやり方や、今まではちょっと認められなかった選択肢を、デジタル化含めて進めていけるチャンスにしたいなと思います。
こういった労働集約型産業は伸び悩むと言われることもありましたが、私は掛け算による様々な新しいイノベーションができると思っています。弊社のみならず、他のところと様々な組み合わせをして、掛け算をしていくことでもっともっと新しいベターノーマルに向かって羽ばたける。それがお客さまにとって、最適な選択肢になっていくのではないか。それが喜ばれるサービスになるのではないかと考え、今後もやっていきたいと思っております。

田中:では山内さん、お願いします。

山内:エッセンシャルワーカーというのが今日のテーマになり、非常に良かったと思っています。今まで光が当たらなかったところが注目されていく。そして一番アナログ的な動きがある部分でありながら、世の中の要請を含めてデジタルテクノロジーを使って大きく変われるチャンスに今なっている。これを、携わっている我々自身が果敢にやっていくことだと思っています。やってみたら「これの方が良かったね」「これ便利だったね」となるのは、たくさんあると思います。今の轟さんのお話じゃないですが、怖がらずにやっていくことが必要だと思いますね。Eコマースも今、60代70代がどんどん使っていますので。さらに変わると認識して、進めていければと思っています。今日はありがとうございます。

田中:最後に竹増さん、お願いします。

竹増:はい。今日はありがとうございました。いわゆる緊急事態的なパンデミックが起こり、前が見えない中でのエッセンシャルワーカーとして動いた年でした。そのときに、しっかりと認識や理解が高まっていったのは、今日の会もそうですし、いい機運になったと思います。一方で、全員がエッセンシャルな存在であること、地球上にいる皆がそういう存在であることは間違いない思いますので、そういう認識を持って、感謝と尊重の気持ちをお互いに持ちながら、そして次の世代や世界に向かって、リアル、オンライン、デジタルと追求して、より良い世の中を迎えていけるようにと思っております。今日はありがとうございました。

田中:皆さんの話をお伺いして、すべての仕事の方々がエッセンシャルなわけですが、その中で生命に関わるようなことや本当に最低限生活していくために必要な仕事には何があるのか。それが浮き彫りになったというか、再確認できたきっかけになったと思っています。このエッセンシャルワーカーという言葉がもう一度見直され、皆さんとともに、仕事の意味というのを再確認できて良かったなと感じました。セッションとしては以上になります。ありがとうございました。

画像:分科会1-C「エッセンシャルワーカー」 セッション風景

以上
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