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第3回オープン・フォーラム「気候変動・エネルギー」
~カーボン・ニュートラル実現に向けたエネルギーミックスのあり方~

第3回目オープン・フォーラムのテーマは「気候変動・エネルギー~カーボン・ニュートラル実現に向けたエネルギーミックスのあり方~」。
再生可能エネルギーの導入や、原子力発電、火力発言の今後の位置づけについて、企業経営者、研究者、メディア関係者、消費者代表、学生など、22人の多彩な顔触れが会議に参加し、本会会員など295人が視聴しました。(所属・役職は開催時)

開催日 2021年4月20日(オンライン)
参加者 22人
視聴者 295人
プログラム

開会挨拶
間下 直晃 経済同友会 副代表幹事

導入説明
高村 ゆかり 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授

第1部
再生可能エネルギーの導入拡大について(2030年・2050年)

第2部
原子力発電、火力発電の今後の位置付け

閉会挨拶
櫻田 謙悟 経済同友会 代表幹事

導入説明

■ 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授 高村 ゆかり氏

―コロナで傷んだ経済社会の復興に気候変動政策をどう織り込むかが重要

2030年温室効果ガス排出46%削減という目標策定時(2021年閣議決定)から、エネルギーを取り巻く事情も大きく変化。想定ほどエネルギー・電力需要も伸びず、再生可能エネルギーのコスト低下も急速に進行している。デジタル化、分散化、脱炭素化に象徴される技術革新がセクターを超えて進む。金融資本市場、取引先からの企業評価において、排出削減や再生可能エネルギー利用が重要に。エネルギーの脱炭素化、再生可能エネルギー拡大を需要家、事業会社が求めている。カーボン・ニュートラル実現にはかつてないエネルギーシステムの転換が必要。

政府方針について

■ 資源エネルギー庁 次長 飯田 祐二氏

―環境・気候変動問題は産業政策。成長戦略政策強化により2,903億kWhを超えて再生可能エネルギー導入などを目指す

エネルギーは環境だけではなく、安定供給、価格のバランスが重要。日本はエネルギー資源、自然条件などの制約が多く、他国と同じ政策を取ればよいわけではない。
再生可能エネルギーを最大限導入することが政府方針。国土面積、平地面積当たりで見ると日本は世界最大の太陽光導入国。FIT価格低下、適地減少による事業者減少などで足元の太陽光導入量は停滞。導入量増加には地域共生が重要。ポジティブゾーニングや農地転用、系統利用方法などの対策を議論中。原子力にはさまざまな課題があるが、世界的に見ると脱炭素の一つのツールである。

経済同友会の考え方について

■ 石村 和彦 経済同友会 副代表幹事

―再生可能エネルギーや省エネの推進で全体では原発依存度を減らす「縮・原発」の立場

パリ協定を受け、本会では長期視点での温室効果ガス排出削減に向けた議論を行い、さまざまな提言を発信してきた。
当会では各電源について、再生可能エネルギーは2030年電源構成比率40%、原発は安全性が確認されれば継続利用し、審査不合格・寿命に達した設備は順次廃炉。再生可能エネルギーや省エネの推進で全体では原発依存度を減らす「縮・原発」の立場だ。火力はバックアップ電源として必要。老朽、低効率火力は高効率火力へリプレースすべき。

第1部 再生可能エネルギーの導入拡大について(2030年・2050年)

問題提起①

■ 地球環境産業技術研究機構(RITE) 副理事長・研究所長 山地 憲治氏

―エネルギーシステム工学から見た再生可能エネルギー導入拡大

  • 脱炭素を実現するエネルギーシステムにおいてはクリーンで効率的な2次エネルギーが重要である。電気・水素はさまざまな技術により二酸化炭素フリーで生産可能。
    電化とデジタル化により革命的エネルギー節約ができると考えている。新たな電力ネットワーク運用と形成も重要。
  • 再生可能エネルギー大量導入には電力ネットワークの課題が大きい。太陽光や風力など自然条件で出力変動するVREを大量に電力系統に接続するのは難しい。
    ※ VRE:Variable Renewable Energy 太陽光発電や風力発電のように自然条件によって変動する再生可能エネルギー電源

問題提起②

■ 自然エネルギー財団 常務理事 大野 輝之氏

―脱炭素社会への自然エネルギー100%の道

  • 2050年には電力だけでなく全エネルギーの脱炭素化が必要。再稼働、年限延長、高稼働率などを想定しても2060年に原発が電源に占める割合はわずかであり、新増設も困難。再生可能エネルギーにも課題はあるが、既に解決している国も多く、CCSや原子力よりも容易。
  • 再生可能エネルギーの中心は太陽光と風力だ。2025年には太陽光発電と蓄電池を合わせても家庭用電気料金よりも安価になる。コストや国民負担の増加なしに民間ビジネスとして再生可能エネルギーの拡大は可能。

第1部 意見交換

―具体的に「ありたいエネルギーシステム」の議論を深めるためには

■ 北海道大学高等教育推進機構 准教授 三上 直之氏

  • 再生可能エネルギー導入拡大にあたっては、地域住民や国民の意思を反映するプロセスが非常に重要。フランスや英国では気候市民会議を全国規模で開催し、気候政策に活用。我々も研究の一環として2020年に札幌市や民間団体と共同で日本初の気候市民会議を開催。さまざまな形で幅広い人々を巻き込み議論する方法を試みるべき。
  • 気候市民会議では一般の消費者、市民が集まり議論するが、再生可能エネルギー大量導入の必要性や一定の負担の必要性はおおむね理解、合意される。大きく対立するのは2050年カーボン・ニュートラル実現時の社会のあり方だ。根本的な社会像の点で対立があり、その点についてさまざまな人が集まり議論することが必要。

■ 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 環境委員会委員長 村上 千里氏

消費者の立場で審議会に参加しているが、意見形成に難しさを感じている。今日の議論でも技術やコストについて対極の話が出ており、普通の人はどちらが正しいのか判断不能。専門家同士が論点をそろえて議論し、そのプロセスと結果を分かりやすく公開する場を作るべき。それが市民の意見形成に役立つ。

■ 京都大学農学部 青年環境NGO Climate Youth Japan 副代表 黒瀬 裕貴氏

英独と比べると日本の若者の再生可能エネルギーや気候変動に対する意識は低い。FITや出力制御など議論が複雑なことが一つの要因。若者への心理的ハードルを改善したい。若者が共感し、直感的に理解できるのは議論よりもメディア、物語。アニメや漫画、Netflixなど若者が触れるメディアで再生可能エネルギーをポジティブに発信できると良いのではないか。

■ 程 近智 経済同友会 副代表幹事

国や自治体への意見反映、ストーリーの構築、国民的議論の喚起方法が重要。また、限界費用ゼロの再生可能エネルギーで競争力を維持する方向に世界は動いている。どのように日本が移行していくかのビジョンが必要。

■ Yale-NUS College Fridays For Future Kyoto/Japan 中野 一登氏

短期的視点で再生可能エネルギーを批判し、議論を停滞させるのではなく、長期的視点に立って議論を進めること、ビジョンやストーリーを国民に示すことが重要。
再生可能エネルギー導入目標や温室効果ガス削減目標は科学的、倫理的な視点から、積み上げ方式ではなくバックキャストでビジョンを示し検討されるべき。バックキャストで目標を設定することが倫理的、科学的、経済的、技術的にも整合性のある気候変動対策の加速につながるのでは。

―技術に関する議論

■ みんな電力 専務取締役 事業本部長 三宅 成也氏

再生可能エネルギーへのエネルギーシフトを考える時期に、VRE導入の困難さにフォーカスし過ぎ。日本のVRE比率は低い。世界の認識と日本の現状にずれがあることを認識すべき。

■ 日本エネルギー経済研究所 常務理事 山下 ゆかり氏

カーボン・ニュートラル実現には技術開発が必要。国ごとの事情により達成手段は異なる。再生可能エネルギー100%も分散型か系統接続かによってコスト上昇幅、需給バランスの責任者も変わってくる。

■ 東京電力パワーグリッド 取締役副社長 岡本 浩氏

エネルギーシステムに再生可能エネルギーをどう統合すべきか。マーケットや物理的な送電線などさまざまな要素があり、技術的課題も多い。オーストラリアではテスラが大規模ウィンドファームと蓄電池で従来電源を模擬する技術を実証し、民間のイノベーションも進んでいる。課題解決には、さまざまなイノベーティブな企業が参画する仕掛け作りが重要。

■ 日本放送協会 解説委員室 解説主幹 土屋 敏之氏

蓄電池等さまざまな技術研究が進んでおり、再生可能エネルギー100%は技術的には可能ではないか。再生可能エネルギーストレージを公共財にすることも考えられる。小田原では住宅用太陽光、蓄電地、電気自動車などをメーカーや地域電力、自治体が組んでグリッドで結ぶ実証実験をしている。

■ Bloomberg NEF 日本・韓国市場分析部門長 黒﨑 美穂氏

日本は電力システムに揚水が占める割合が世界一であり、調整力としてこれを活かすべき。蓄電池は高価だが、家庭用蓄電池導入量も世界一。
日本の再生可能エネルギーの課題の一つが導入プロセス。他国では地元ないしは州政府、自治体、国政府が先陣を切って地元の調整、環境アセスを実施し入札募集を実施。日本では同じサイトで複数の業者が別々に同じ環境アセスを行っており非効率的。

―第1部:議論のまとめ

■ 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授 高村 ゆかり氏

2050年カーボン・ニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーを可能な限り導入しようという認識は共通。その実現に向けて深めるべき課題と感じたことは、国や地域で将来の社会像、ビジョン、目標を明確に持つことと、ビジョンと、そこににじり寄っていく、課題を明確にしていく現実感の重要性。

第2部 原子力発電、火力発電の今後の位置付け

問題提起①

■ 電力中央研究所 社会経済研究所長 長野 浩司氏

―確立済みの技術で、カーボン・ニュートラルに接近するためには

  • 二酸化炭素排出量の大規模削減を図るためには、「電化×電源の脱炭素化」の相乗効果を追求することが王道。電化により電力需要が増加するため、再生可能エネルギーを最大限導入しても電力量(kWh)が不足。CCS火力か原子力で補う必要がある。
  • 原子力を押し付けられたと受け止める人、原子力のような巨大科学技術は人知に負えないと考える人もおり、潜在的価値は大きいが、利用には課題解決が必要。運転延長、リプレース、SMR、次世代炉など、さまざまな可能性を拓いておき、系統安定化機能や、熱・水素製造などkWh以外の価値にも活路を求めるべき。
  • 水素・アンモニアは火力のカーボン・ニュートラル化手段として非常に期待しているが、製造場所、製造方法、運搬、貯蔵など課題も多い。

問題提起②

■ Bloomberg NEF 日本・韓国市場分析部門長 黒﨑 美穂氏

―再生可能エネルギーを増やすため、土地利用に関する規制改革等可能な限り全ての対策を実行

  • 原発には複数の課題、論点がある。安全審査が遅れており、2050年まで原子力を使っていくのであれば審査人員の投入なども重要。使用済み燃料の中間貯蔵施設が確保できなければ稼働もままならない。20年運転延長をどこまで認めるのかも課題。さらに原子力を扱う事業者のガバナンス体制を個社の問題とするか、国として規定を設けていくのかも大きな論点。技術や安全性、ガバナンスが確保されないとファイナンスできない。
  • 火力について、日本はエネルギーの9割以上を輸入に頼っている。今冬の電力需給ひっぱくで海外への依存が浮き彫りに。
  • 再生可能エネルギー先進国のドイツへ目を向けると、現在は化石燃料、原子力がベースロード電源。
  • アンモニアや水素は素晴らしいが将来技術。今は再生可能エネルギーを増やすために土地利用に関する規制改革など、さまざまな対策を可能な限り全て実行するべき。

第2部 意見交換

―再生可能エネルギーが主流になる社会の中で他の電源やエネルギー源をどのように使うか

■ 日本エネルギー経済研究所 常務理事 山下 ゆかり氏

日本は欧州並みの再生可能エネルギーのポテンシャルもなく、他国との送電網ネットワークもない。万能なエネルギーがない以上、さまざまなエネルギーの組み合わせで段階的にカーボン・ニュートラルを目指すことが基本。石炭火力を利用する成長著しいアジア各国のカーボン・ニュートラルへの移行を日本が支援しリードする上でも、アンモニアと水素は有力なオプションになり得る。

■ 東京電力パワーグリッド 取締役副社長 岡本 浩氏

カーボンプライシングの導入でイノベーションも生まれるだろう。また、電源比率の目安を示すのは良いが、計画経済的に決定した比率がその通り実現するとは考えにくいし、必ず非効率性が出てくるだろう。

■ 電力中央研究所 社会経済研究所長 長野 浩司氏

LNGと同様、水素もアンモニアも必ず世界での争奪戦になる。カーボン・ニュートラル実現の見極めがつくまではポートフォリオを組み、特定のエネルギー源や技術への過度な依存は避けるべき。

―原子力のあり方について

■ 地球環境産業技術研究機構(RITE) 副理事長・研究所長 山地 憲治氏

原子力は技術よりも政治社会問題だ。原則40年運転、20年延長は、自然科学の法則でも技術ルールでもない。運転年数と言っているが実際は経過年数であり、技術的には非合理。

■ みんな電力 専務取締役 事業本部長 三宅 成也氏

原子力には産業としての難しさを感じる。経産省の公開データでは5年で使用済み燃料プールが満杯になり物理的に動かせなくなる発電所が半数近くに。国が電力会社に責任転嫁して原発推進を主張するのは問題。2030年原発20%も実現性は低く、原子力に頼らないなら大きな産業転換が必要だが、国民的議論になっていない。

■ 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 環境委員会委員長 村上 千里氏

国民の議論が分かれる大きな課題については決定方法が重要。倫理的な視点を持ってビジョンを示すことが大切だが、そのビジョンを選ぶのは国民であるべきだ。一例として民主党政権時に実施された討論型世論調査がある。原子力ゼロ、15%、25%の3シナリオを示し、世論調査と並行して、無作為抽出の市民が学び、議論し、投票する形で国民の意思を見える化した。このような国民の意思を反映した政策決定が重要。

■ Yale-NUS College Fridays For Future Kyoto/Japan 中野 一登氏

不確実で世代間、地域間格差に依存する原子力、石炭を利用する社会に生きたくはない。私たちは格差に依存しない、気候危機のない社会をつくる覚悟を持っている。この国のために登壇者の方々と共に土台を作りたい。

第2部:議論のまとめ

■ 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授 高村 ゆかり氏

  • 再生可能エネルギーが主流となる社会の中で、それをどのようにうまく他のエネルギー源が補完していくか、使っていくかということで議論の方向性は一致した。
  • どういう時間軸で移行していくか、そのときの技術の選択はどのような基準でなされるのか。それをどうやって決めていくのか。こうした課題にトータルで答えていかなければならない。
  • 私たちの今の選択が将来の選択肢を狭めないことが重要。その意味で、本日の論議は様々な示唆と論点提起をいただいた。

閉会挨拶

■ 櫻田 謙悟 経済同友会 代表幹事

  • 本日もさまざまなファクトが示されたが、「誰が見ても明確で解釈の余地のないファクト」と「解釈余地のあるファクト」を区別して議論することが必要。
  • 技術的な課題は、素人には判断が難しく、分かりやすい説明やストーリーがほしい。
  • ありたい姿になるために現在やらなければいけないことと、今の現実的な生活とが対立軸になる可能性もあり、簡単ではないが、早くシナリオを提示することが必要だ。

(所属・役職は開催時)

※詳細は広報誌『経済同友』よりご覧いただけます

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