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変革者・実践者としての企業経営者の責任
~企業の意欲と実践知に基づく国家戦略の策定を~
<2021年度 通常総会 代表幹事所見>

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公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

代表幹事所見

1.はじめに

昨年は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う混乱に始まり、先行きの見えない不安と共に幕を閉じた1年でした。この間、多くの方々が、以前は想像もしていなかったような生活を送り、数々の変化を経験したものと思います。

一連の経験や困難の中から、新しい変化の兆しが芽生え始めています。それらを糧に新しい時代を切り拓くことが、企業経営者として今の時代を生きる私たちの役割だと思います。その責任を重く受け止め、大きな励みを胸に、経済同友会代表幹事として二期目の責務を全うして参ります。

本日は、経済同友会の長として、会員の皆様、そして社会のステークホルダーの皆様と共に何を目指し、何に取り組んでいきたいか、私の思いをお伝えしたいと思います。

2.コロナ危機を契機とした社会変革の推進

新型コロナウイルス感染症がもたらした混乱は、日本の現状や課題をより一層明らかにしました。本来、課題解決に向けて、世界でリーダーシップを発揮すべき日本において、「まさか」と言いたくなるような出来事があいついで起こりました。

緊急事態宣言下での給付金の支給の遅れ等から、データやデジタル活用の先進国と日本との圧倒的な差が、改めて浮き彫りになりました。感染症対策の切り札であるワクチンの開発競争において日本の存在感は薄く、ワクチン接種の進捗も、全対象者の0.9%にとどまるなど、一部新興国にも後れを取っている状況です。

政府のさまざまな方針と地方自治体等の執行体制の齟齬や、意思決定の混乱が、本来、日本が誇るべき現場力の発揮を阻害しています。

また、前例のない危機を克服するためとは言え、昨年度だけでおよそ73兆円もの国家予算がコロナ対策に投じられました。これに対する説明や、将来世代にのしかかる負担への対応がいつ示されるのかも、全く見通しが立たない状況です。

このように、コロナ危機を経て、私たちは日本社会の思わぬ脆弱性や、先送りしてきた問題のツケの大きさをまざまざと実感することになったと思います。

その一方、今回の危機を契機に、新しい社会の姿を示唆するような変化が始まっています。人と人との接触が制約される中、さまざまなオンラインツール、オンラインサービスの活用が飛躍的に広がりました。リモートワークに象徴される新しい働き方、これからの時代のコミュニケーション、消費の姿が、社会に広がりつつあります。場所や距離の制約にとらわれず、人々がそれぞれの価値観に応じて、ライフスタイルや機会を追求する可能性が大きく開かれました。デジタル庁を設置し、社会全体のデジタル・トランスフォーメーションを推進する政府の方針の下、こうした変化が今後一層加速していくことが期待されます。

子供・子育て政策を一元化して扱う「こども庁」の創設も、少子・高齢化による難局を今度こそ打開すること、府省庁横断的に政策を推進することに向けた舵取りと、前向きに受け止めています。

今、私たちに必要なのは、このような変化をさらに前進させる覚悟です。いわば、コロナ危機を奇貨として社会変革を進めることが、日本にとっての大きな巻き返しの機会だと思うのです。

3.「いて欲しい国、いなくては困る国」の実現に向けたビジョンと国家戦略

(1)不確実性の時代において、「ありたい日本」の姿を描く

コロナ危機以前から、国際社会は、グローバル資本主義と破壊的な技術革新がもたらした、社会の分断や「影」の克服という課題に直面していました。この度のコロナ危機を経て、この問いはますます重要性・緊急性を増していると感じます。

従来の資本主義や民主主義だけでは、今回のような危機、人類社会の長期的課題を解決できないことは明らかです。また、世界共通の危機の下にあっても、米中対立に起因する国際社会の緊張は解消されず、安全保障、経済、先端技術、地球規模課題の解決能力など、さまざまな局面での競争が絡み合い、熾烈さを増しています。
このように、複雑性・不確実性が高まる時代に必要なことは、所与の環境や変化への適応ではありません。まず、自ら進みたい方向、ありたい姿を具体的に描き、その実現に向けた戦略を立てることだと思います。

私はかねてから、日本は、世界から見て「いて欲しい国、いなくては困る国」を目指すべきだと呼びかけてきました。それは、「グレート・リセット(Great Reset)」という世界共通の課題を乗り越え、その先にある新しい資本主義と経済社会の姿を描く力が、日本に備わっていると確信しているからです。

日本には、長年にわたって磨き抜かれた技術力、世界を魅了するソフトパワー、質の高いリアルデータなど、これからの成長の源泉となりうるさまざまなリソースがあります。加えて、「三方良し」の哲学に代表されるように、利己に徹することなく全体の調和や公益を重んじる精神性、つまり「公の心」が、人々や組織に深く根付いています。

また、現在の国際環境の下で、自由・民主主義・人権・法の支配といった普遍的価値を奉じる日本のような国が、経済的な活力と国際的な影響力を維持・強化していくことの重要性は、ますます高まってくると思います。

日本が持つ潜在力を解き放ち、世界的な課題に対する解やロールモデルを提供すること、それによって世界から必要とされる国であることこそ、世界に対する日本ならではの貢献であり、私たちがこれから目指すべき方向性だと思います。

(2)“Corporate Japan” の確立に向けた国家戦略の策定

「いて欲しい国、いなくては困る国」を次世代に手渡すため、社会のリーダーである私たちが今、将来に向けた選択をする必要があります。日本という国の価値を持続的に高めていくことや、その取り組みを通じて、国民の安全と豊かさ、幸福を担保するために何をすべきかを考え、それを実現するための国家的な戦略を策定することが急務だと思います。

世界に目を向けると、私たちを取り巻く環境はきわめて複雑で、厳しさを増す一方です。先の日米首脳会談からも明らかなように、経済、技術、安全保障や新興国・途上国の開発まで、あらゆる要素が国や地域間のせめぎ合いと結びついています。

このアリーナにおいて、米国ではGAFAという強大なプレイヤーが、時に政府と摩擦を起こしながらも、新しい市場、新しいスタンダードづくりを牽引しています。一方の中国は、強力な国家主導体制の下、時にメガベンチャーの力や豊富なの資金力を駆使して、刻々と多くの国々、地域に影響力を浸透させています。

こうしたグローバル・パワーを前に、日本の場合は、政府と企業、いずれの力だけでも立ち行かないことは明らかです。政府と企業が共通の目的の下で、それぞれの役割を担い、日本の存続と国としての価値向上に取り組む “Corporate Japan”の確立を目指す必要があります。

ただし、私が考える “Corporate Japan”は、国家の大方針と主導に企業が付き従う、高度成長期の「日本株式会社」とは全く異なるものです。むしろ、それとは反対に、企業がビジネスの力で実現したいこと、社会にもたらしたいインパクトを政府がきめ細かく汲み取り、現場・現実に根差した実践知に基づいて、国としての大きな方向性を決定する、という関係性です。

これまでも、精緻な成長戦略が数多く描かれてきましたが、残念ながら、それらが目に見える成果を上げたという実感はありません。それは、これまでの国家的な戦略立案のプロセスに、民間セクターという担い手の関与が不十分だったためではないでしょうか。

(3)企業は戦略の担い手として、自己破壊への挑戦を

これからの国家戦略の策定・実行に、民間セクター、特に企業の実践知を活かすべきだと考える理由が二つあります。

一つは、確実な将来や明確な方向性が見えない時代にあって、国が進むべき道を示すのは、より良い社会、より良い生活を求める多様な人々の望みだと思うからです。そして、そのような多様なステークホルダーが求めるものを汲み取り、それに対する解を提供することは、企業の本質に他なりません。

ステークホルダー・キャピタリズムへの転換を唱える声が、米国でも高まっていることや、SDGsに応え、社会と自らの持続可能性の両立を追求することが企業にとっての大命題になっている理由も、まさにここにあります。

もう一つは、戦略の真価は、実行し、成果を出して初めて発揮されるものだからです。いくら正しい方向性・戦略であっても、その達成にこだわり、リソースを割き、結果を出すために知恵を絞る「現場」がなければ意味がありません。戦略を実行・達成するには、その動機と現場とを持つ企業のコミットメントが不可欠です。

このように、企業には、日本の国家戦略の形成と実行を担う大きな責任があります。それを全うするための第一歩は、過去や現在に最適化されたビジネスモデルや組織のあり方を、自ら破壊する覚悟を持つことです。

私と親交あるイスラエルの経営者は、「破壊せよ、さもなければ破壊されよ(Disrupt or Be Disrupted)」というスローガンを部屋に掲げています。このような覚悟こそ、今の時代の企業経営者に求められる資質だと思います。

4.経済同友会の進化への挑戦

現状を顧みて、私は、変革者・実践者の集団という経済同友会の立ち位置を、より一層鮮明にしていきたいと思っています。

経済同友会の価値は、現役の経営者が、それぞれの実践に基づく課題認識を共有し、時に意見をぶつけ合いながら、当事者として議論をすることにあります。この独自性を一層際立たせるため、経営トップを中心として「企業経営委員会」を設け、自己破壊を厭わず、社会変革を牽引する企業のダイナミズムをかき立てる方策について、徹底的に議論したいと思っています。

また、代表幹事イニシアティブとして新設する「新しい経済社会委員会」では、日本の独自性を起点として、多様なステークホルダーの利益を包含し、その共感に支えられた資本主義社会のあり方を、「成長戦略評価・実行委員会」では、国家戦略と企業の関わりや、“Corporate Japan”の確立に必要な新たな仕組み等について、それぞれ、実践的な議論をしていきたいと思います。

そのような志を持つ企業経営者の集合体として、経済同友会も、次なる進化を目指します。経済同友会はこれまでも、企業経営者が相互に研鑽に励む「教室」から、経営という立場から社会に働きかける運動体へ、そして、時代の変化をつかみ、改革を呼びかける「行動する政策集団」へと、たゆみなく進化してきました。

そして今、日本がこれからの経済社会のロールモデルを目指す中で、私たち自身が考える社会の姿、その実現に向けた経済団体の役割についても熟慮を重ね、今の時代に即した、私たちのミッションを再定義したいと考えています。

これから、皆様と共に目指したい進化の方向が二つあります。

一つは、企業経営者による政策論議を踏まえ、その実現・実践に取り組む“Do Tank”への進化です。経営者同士の議論にとどまらず、多様なステークホルダーを巻き込み、社会や政策決定プロセスを揺さぶるような力を発揮して行きたいと思います。

昨年9月に発足した「未来選択会議」は、その重要な「器」です。未来志向の民主主義、環境・エネルギー政策、財政と社会保障等、日本の将来を左右する重要課題を取り上げ、自由で開かれた議論を巻き起こし、その論点と選択肢を世の中に示して参ります。

もう一つは、次代の経営者を育成する場、いわば“Training Tank”への進化です。大企業、スタートアップ等、組織の壁を超えて次世代のリーダー達が交流し、第一線で活躍する経営者と直接対話する場を設計し、社会変革を担う経営者、すなわち私たちの同志を増やしていきます。

この目的を達するため、経済同友会の組織力を一層強化することが不可欠です。そのため、昨年スタートさせた「経済同友会の機構改革委員会」を中心に、組織のあり方、会員構成のあり方、事務局のあり方を総合的に検証し、私たちのミッションにふさわしい組織への変革にも取り組みたいと思います。

私のミッションは、これから2年間をかけて、企業経営者として、そして経済団体として、私たち自身の進化と変革の道筋を世の中に示していくことです。

会員の皆様と共に試行錯誤を重ね、社会のステークホルダーの皆様と率直に語り合いながら、共に、前に進んで行きたいと思います。

皆様のますますのご参画、ご支援をよろしくお願いいたします。

以上


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