代表幹事の発言

小林喜光代表幹事 退任挨拶【2019年度通常総会】

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 小林喜光

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令和の時代の幕開けまであと5日に迫った本日をもって、経済同友会の代表幹事を退任することになりました。少しお時間をいただいて、皆様にご挨拶を申し上げたいと思います。

速いもので、この場で代表幹事就任挨拶を申し上げてから、ちょうど4年が経過しました。当時、私は冒頭で2つのことを指摘しました。1つは、われわれ日本が直面する不都合な「事実や問題を直視する」こと、もう1つは、世界的な「グローバル化・デジタル化・ソーシャル化のうねりを捉える」ことでした。

しかし、現状は、「国民の74.7%が現在の生活に満足している」という昨年8月に発表された内閣府世論調査結果に如実に表れています。このデータに象徴されるように、多くの日本人は不都合な真実から目をそらすばかりでなく、時に都合の良いように解釈し、自己満足という「ぬるま湯」に浸りきっていると言わざるを得ません。
また、昨年10月の代表幹事ミッションでシリコンバレーを訪問した際に、日本は3周遅れと言われてしまいました。デジタル化・AI化などの世界的な大変革のうねりに対して、未だに「井の中の蛙大海を知らず」と言えるでしょう。さらに、その井戸の水温は、徐々に上昇し、このままだと茹であがって、死んでしまいます。

こうした状況を3次元的に解析・評価し、健全な危機意識を是々非々で発信するとともに、国家百年の計で将来の経済社会の姿を、会員の皆さまと共に考え続けた4年間でした。
お蔭様で、昨年12月には政策提言の集大成である『Japan 2.0最適化社会の設計-モノからコト、そしてココロへ-』を発表するとともに、3月には書籍『危機感なき茹でガエル日本-過去の延長線上に未来はない-』を発行することができました。
世界的に格差と貧困の問題が深刻化し、民主主義と資本主義が大きく揺らぐ中で、日本は破壊的イノベーションに乏しく、比較劣位に陥ってしまいました。これに対して、われわれが目指すべき将来像として、最適化された社会、すなわち「適正な競争と公正な分配のある社会」を広く発信できたことは、大きな成果であったと思います。

さて、東日本大震災からの復興のためにIPPO IPPO NIPPONを立ち上げ、代表幹事として行動する政策集団の先頭に立ってこられた長谷川さんから、4年前に代表幹事のバトンを引き継ぎました。そして、いよいよ本日、Do TankあるいはDoerとしてさらなる飛躍を目指す櫻田さんに、バトンを託すことになります。

経済が成熟期を迎えて久しく、少子高齢化が深刻化していく日本にとって、経済成長と財政健全化は困難とはいえ、2つとも同時に実現しなければならない課題です。
政府が掲げる政策や数値目標などに対して、いかがなものかと言って、怒りを買ったり、ネットで炎上したりすることがあっても、経済同友会のトップとして、言うべきことは直言して、論陣を張ってこれましたのも、偏に1,500名を超える高い志を持つ経営者の皆さまからのご支援があってのことと、大変感謝しております。
櫻田次期代表幹事には、会員である経営者一人ひとりが、心の内なる岩盤を打ち破ってヘビとなること、そして「今さえよければ、自分さえよければ」という茹でガエルになりかねない人々を、覚醒させるような同友会活動をリードしていかれることを期待しています。

なお、私も今後、引き続き、先ほどの経済成長と財政健全化の同時実現に、微力ながら貢献したいと考えております。そこで、私が2人の建国の父から直接いただいた言葉をご紹介いたします。

まず、経済成長ですが、3年前に代表幹事ミッションでイスラエルを訪問し、建国の父、シモン・ペレス元大統領に面会しました。残念ながら面会の4カ月後に93歳で亡くなられましたが、彼の「我々は過去から学ぶのではなく、未来から学ぶのだ」という言葉と危機感があったから、今日、イスラエルがスタートアップ・ネイションと呼ばれるまでに発展できたのではないかと考えています。
したがって、私自身も「未来から学び」、若い人たちのガッツ、やる気に火をつけて、経済成長の源泉となるイノベーションの創出に挑戦し続けていきたいと思います。

もう1つの財政健全化ですが、私が社長時代にシンガポール建国の父で、4年前に91歳で亡くなられたリー・クアンユー元首相が弊社に来られました。彼からは「より良い世界と人々の豊かな暮らしのためのGreat ideasは、多くのイノベーティブで不屈のマインドを必要とする("Great ideas for a better world and a good life for peoples will need many innovative and persistent minds.")」という言葉をいただきました。この中で最も印象に残っているのは、英語でpersistentを用いられましたが、「不屈の」の一語であります。
私は、経済同友会と同い年の1946年生まれで、2016年11月には創立70周年記念式典も執り行わせていただきました。人生100年時代といわれていますが、今後、2020年頃にGDPは概ね600兆円に達するのか、2025年に基礎的財政収支は黒字化できるのか、そして、殆ど生きている可能性はありませんが、2045年には「Japan 2.0最適化社会」が実現しているのか、しっかりと、persistentに、見続けていきたいと考えております。

以上で、私の退任挨拶とさせていただきます。皆さま、4年間にわたり、本当にありがとうございました。

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