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未来に向かって克ち抜く強い意志を

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 小林 喜光

我が国の企業収益は過去最高の水準であるという明るい話題が聞こえる一方、将来への不透明さも感じる中で、新しい年を迎えた。

昨年は、朝鮮半島情勢等を中心として、安全保障上の脅威を強く意識する機会が多い1年であった。加えて、欧米等において反グローバリズム、自国優先主義的な考えが広がる中、トランプ政権によるエルサレムの首都承認等、国際社会における不確実性はますます高まりつつある。海外経済を見ると、米国や中国を中心として、世界の景気は緩やかに回復しているが、先行き等については、政策的な不確実性等留意すべき点もあり、金利上昇等により景気が下振れするリスクもある。

また、グローバル化・デジタル化が進展する中で、人工知能、ロボット、IoTに代表されるイノベーションは目覚ましい。米国や中国の巨大デジタル企業の存在感が一段と増すなど、デジタルのイノベーションとシェアリングエコノミーの発展により、世界経済のあり方、ビジネスの前提となる枠組みそのものが大きく変化している。こうしたイノベーションは、「光」を与えると同時に、「影」の側面を持ちながら、人類社会に大きな影響を与えつつある。

我が国に目を転じると、経済面においては、世界経済の緩やかな回復基調の下、消費の伸びや物価上昇の目標値からの乖離はあるとは言え、実質GDP成長率は潜在成長率を超え、マクロで見ると成長への道筋が見えつつある。また、GDPデフレーターもプラス方向に向かってきている。

翻って、ミクロ面を見ると、グローバル化・デジタル化が進展する中、諸外国と比較して、我が国のイノベーションに係る諸取組は不十分であり、かつスピード感を欠いている。スタートアップを支援する仕組み等、起業家・若手経営者がチャレンジできる環境、仮に失敗しても再びチャレンジできる環境を整える必要がある。

また、昨年は製造業を中心として我が国のものづくりの信頼が危ぶまれる事象も一部で見られ、企業経営における緊張感・危機感が改めて求められる状況であった。経営者は、強い倫理観を持ち、コンプライアンスに対する感度を高め、組織全体にその想いを浸透・徹底させなければならない。

長期的視点で我が国の状況を見ると、人口・労働、教育、社会保障、財政健全化、環境・エネルギー、外交・安全保障等の構造的変化はいよいよ顕在化している。特に、地方における人口減少は喫緊の課題である。これまでの延長線上で物事を考えていては、経済、社会及び財政の持続可能性が危ぶまれる。

政府が近年進めてきた、「地方創生」、「一億総活躍」、「女性活躍」等の諸取組は、その成果が十分認められるには至っておらず、構造的な諸課題は引き続き我々の目の前に横たわっている。

我が国の持続的成長のための成長戦略は正念場を迎えている。「生産性革命」、「人づくり革命」等、政府には成長に向けた戦略の徹底を求めるとともに、我々経営者も、構造改革を推進し、生産性向上を徹底していかなければならない。

政治の状況を見ると、昨年の総選挙において、連立与党が大勝し、安定した政権運営が可能な状況である。政治に継続性が保たれたことをポジティブに受け止め、政府には丁寧な政策論議と国民に対する分かりやすく、納得のいく説明を求めたい。経済状況にも安定感が見られる中、政府には、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後の社会を見据え、足元の対応にとどまらず、次世代への責任を果たすための中長期的な視点を持った政策立案・実施を期待する。

以下では、経済、社会及び財政の持続可能性を高め、未来に向かって克ち抜くための3つの考え方を示す。この根底にあるのは、第1に、企業が創意工夫と市場競争を通して高い収益を上げ続け、国民経済の豊かさを維持・向上していくことである。第2に、社会的課題を解決し、未来を開拓していくために、その原動力となる人材とイノベーションへ集中投資することである。第3に、財政健全化などの課題に向き合い、社会の持続可能性を確保していくことである。これらの間に最適解を見出し、国家価値の最大化を目指していくべきである。

(1)構造改革を加速し、企業の稼ぐ力を強化し、経済の豊かさを実現する

人工知能やロボット等を軸とする「第4次産業革命」の時代に向けた対応の強化が求められている。そのためには、イノベーションを推進するためのメリハリある取組を推進することが必要である。仏国のStation Fのような、象徴となる大規模インキュベーション施設の設置を行う等、産学官が一体となり、オールジャパンの体制を築き、国内外の起業家を惹きつけるイノベーション・エコシステムを構築していかなければならない。

また、コーポレートガバナンスや税制改革等の構造改革の推進・徹底も必要である。2018年度(平成30年度)の税制改正大綱は、安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」の実現に向けて、「働き方改革」の本格化、「人づくり革命」「生産性革命」の政策推進が意識された内容であった点は評価できるものの、税体系全体のビジョンに欠ける、部分的改正にとどまるものであり、より本質的な構造改革に向けた検討が求められる。

さらに、我が国が直面する人口減少社会においては、人的資源のより有効な活用を行う必要がある。足元でも人手不足は一段と顕在化していることから、官民挙げて「ひと」に対する優先的投資を行い、その持続性を担保する仕組みを構築していく。例えば、高度プロフェッショナル制度、人材の流動性や多様性向上等は、今後の我が国の人材戦略を検討する上では必須の課題であり、具体的な制度設計と現場での取組が求められている。

自国優先主義的な動きに対峙するために、経済連携の推進も必要である。昨年、長期の交渉を経て、欧州連合との経済連携協定(日EU・EPA)について交渉妥結、11か国による環太平洋経済連携協定(TPP11)について大筋合意に至ったことを歓迎する。我が国が、高い水準のルール・制度による自由貿易経済圏の確立を主導し、グローバル市場における自由貿易・投資の盟主としての地歩を固める時である。加えて、「バラマキ」ではない、「攻め」と「守り」にメリハリをつけた戦略的国内産業支援も重要である。

(2)人材とイノベーションに投資し、民主導で社会的課題を解決する

世界の趨勢を踏まえたエネルギー政策の検討と、成長戦略とシンクロナイズさせた環境政策の推進が求められている。今年予定されているエネルギー基本計画の改定に向けて、諸外国におけるエネルギー政策の動向を踏まえるとともに、産業競争力に係る観点も合わせて、電源構成等について慎重に検討を行うべきである。加えて、温室効果ガスの削減に向けては、まず、その「見える化」から着手するとともに、我が国の温暖化対策技術を軸とした製品・サービスをグローバルに展開していく。

また、医療・介護システム等に関する改革においては、生活の質(QOL)や自立支援等、アウトカム(成果)ベースで医療・介護サービスを捉えるという発想への転換が求められている。まず、議論のベースとなるデータ及び根拠を揃え、医療・介護分野におけるデータ重視の取組やロボティクス等先端技術の活用を進める必要がある。また、社会保障全般における自助・共助・公助のバランスについての議論を深めなければならない。世界に先駆けて、高齢化を克服するモデル、考え方の構築を担うという矜持を持つ時である。

さらに、ハード面においては、人口減少社会、少子・高齢化、デジタル化等産業構造の転換を踏まえ、インフラ等の整備・更新に当たっての取捨選択・重点化を行い、持続可能性を高める必要がある。その際には、コンセッション方式を活用するなど、民間の資金・ノウハウ等の積極的な活用も必須である。

昨年、社会の持続可能性に関しては、「持続可能な開発目標(SDGs)」がキーワードとして改めて注目された。我が国においても、官民横断的にSDGsを軸とした諸目的の設定や、その達成に向けたモニタリング等の仕組みの検討を進めていく必要がある。

(3)財政健全化と金融緩和の出口戦略の議論を進め、持続可能な社会への道筋を示す

上記の経済及び社会の持続可能性は、財政の持続可能性に大きく依存しており、財政規律の徹底、将来世代の負担となる赤字国債発行額の削減は待ったなしの状況である。「人づくり革命」の財源確保のため、2020年度の基礎的財政収支の黒字化目標の見直しが確実な状況である。政府には、2019年10月の消費税率10%への引き上げを堅持し、基礎的財政収支の早期黒字化に向けた現実的かつ具体的な目標の設定、財政再建に向けた長期的なロードマップの明示を求める。

また、日本銀行の金融緩和策については、「出口戦略」とそのタイミングの検討が求められ始めており、しっかりとした議論を期待したい。

加えて、政府には、明確な根拠に基づく政策立案・評価の徹底を求める。なお、昨年は、政府の意思決定に対する疑義が様々な場面で生じた。第三者によるチェックアンドバランス(評価・監視)の強化が必要であり、我が国の統治機構の抜本的改革に向けて議論が深められることを期待する。

安定的な政権運営が可能である今だからこそ、政府は、我が国の統治機構や行財政システムに関する本質的・根本的な課題に取り組み、我が国の将来に対する不安を克服していくべきである。そうした改革に対して経済同友会も積極的な提言を行っていく。

一昨年、創立70周年を迎えた経済同友会は、「Japan 2.0 最適化社会に向けて」を発表し、昨年はそれに基づき、分野ごとの具体策を提案・実行してきた。経済同友会では2021年から始まる「新しい時代Japan 2.0」を好スタートさせるために、本年を重要な年と位置付け、「考察と準備」の深化・加速化を一段と進める。

前述のさまざまな社会課題は、諸外国に先駆けて我が国が克服する機会を与えられた先進的課題でもある。今こそ、経営者は過去の成功体験からくる「心の岩盤」を打ち破り、これら社会課題に克ち抜くべき時である。

「未来に向かって克ち抜く」という強い意志が必要である。我々経営者は、「ガッツ(根性・やる気)」を持って取り組んでいく。

以上


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