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「最適化社会」構築への志を新たに

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 小林 喜光

1.構造改革を推進し、世界の一層の発展に貢献する

グローバル化とデジタル化の大きなうねりが民主主義や資本主義に複雑な影響を与え、全く新しい困難な課題が顕在化する中で、新しい年を迎えた。

昨年、英国の国民投票でEU離脱が決定し、米国ではドナルド・トランプ氏が次期大統領に当選して、世界に大きな衝撃が走った。続いてイタリアでも憲法改正が国民投票で否決され、レンツィ首相が辞表を提出するに至った。これらは各国国民の選択の結果であるが、様々な課題に直面する現状に対して、人々は目指すべき新しい社会を創るためにチェンジを求めたのであろうか、それとも単なる復古主義でリターンしていくだけなのであろうか。

欧米にも大衆迎合的な政治の動きや一国繁栄主義的な考えが広がりつつあることは、極めて憂慮すべき状況である。特に、今年はオランダの総選挙、フランスの大統領選挙やドイツの総選挙などが行われるが、欧州で懸念されている右傾化が一過性に終わるのか、広く伝播していくのか、非常に重要な局面を迎える。
また、グローバルなパワーバランスの変化、アジア太平洋地域の不確実性の高まり、サイバー攻撃など新たな安全保障上の脅威も強く意識せざるを得ない。

世界の先行きが不透明さを増す中で、足元の日本経済は、政府が実現を目指す名目3%超、実質2%超の持続的な成長軌道に乗っているとは言い難い。こうした状況下にあって、今、我々が成すべきは、構造改革を推進して、生産性を革新することであり、規制改革やビジネスチャンスを捉えて、新事業を創造し、ベンチャー企業を育成することである。同時に、他国と連携し、世界の一層の発展に貢献していくことである。
新しい時代にふさわしい新しい経済・社会システムの構築に向けて、様々な課題の因果関係や錯綜する利害関係を、自らのこととして自らの頭で考え、強い意志をもって全体最適を目指していくことが必要である。

2.生産性の革新に向けて、機会格差を解消し、働き方改革を実現する

EUを揺るがす移民問題、米国でのトランプ・サンダース現象などの背後にあるのは、社会を分断の危機に導きかねない失業や格差の拡大と固定化である。

日本ではここ数年で労働需給が一変し、人手不足が深刻化している。移民や若年層の失業こそ問題になってはいないが、日本の相対的貧困率はOECD平均を上回り、小中学生に対する就学援助率が15%を超えているといった事実は看過できない。このような状況を放置すれば、将来の日本を担う質の高い人材の確保が困難になることから、給付型奨学金の一層の拡充などによる機会格差の解消、就労を促進する制度や職場環境づくり、地方創生を軸とした新たな雇用の創出などの対策が急務である。

また、政府が日本再興戦略で掲げた成熟産業から成長産業への「失業なき労働移動」は、産業構造の改革と生産性の革新を実現する上で、極めて重要かつ喫緊の課題である。特に、働き方改革に関しては、まず、労働基準法を早期に改正しなければならない。その際、過度な時間外労働や長時間労働を是正すべきことは当然であるが、投入側に時間的な枠を設けるだけでなく、産出側である成果を適切に評価する制度づくりが不可欠である。さらに、透明かつ公正な労働紛争解決システム等についても予見可能性の高い制度の実現に向けて、コンセンサスを醸成していく必要がある。

3.自由貿易体制の拡充を早急かつ着実に推進する

多くの日本企業は英国を拠点に欧州への事業展開を進めてきたが、英国のEU離脱によって戦略の再考を迫られている。また、昨年12月にTPP(環太平洋パートナーシップ)協定が国会で承認されたが、米国のトランプ次期大統領はTPP協定を批准しないと宣言している。

こうした動きは、自由貿易の拡大を梃子に成長を遂げてきた日本経済の危機のみならず、世界の分断、ブロック化という非常に危険な状況を招きかねない。

日本としては、他のTPP参加表明国と連携し、米国を含めた12カ国による早期発効に全力を尽くすべきである。同時に、日EU・EPAは今春の合意を目指すとともに、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)やFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)などの自由貿易体制の一層の拡充に努めていく必要がある。

4.エネルギー・ベストミックスに向けた対策を推進する

昨年11月のトランプ次期大統領の選出後、市場関係者の期待感等によりドル高となり、結果的に円安が進行した。また、OPECが原油の減産で合意に達し、12月には2015年12月に続いて米国が利上げを行った。これらによって安定的な円安傾向が続けば、日本経済には基本的にプラスに働く。しかし、電力の大半を火力発電に依存している現在の日本にとって、円安に伴う化石燃料の輸入コスト高は、立地競争力の低下に直結する。

こうした状況を踏まえると、電力コストと温暖化ガス排出を削減する観点から、原子力発電所の再稼働がこれまで以上に重要な課題になる。気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)「パリ協定」の後に閣議決定した地球温暖化対策計画における2030年のエネルギー・ベストミックスを達成するための対策を急ぐ必要がある。

具体的には、第一に、原子力規制委員会の新規制基準を満たし、かつ地域社会の理解を得て、速やかに原発を再稼働させることである。第二に、再生可能エネルギーの一層の普及に努めることである。この鍵になるのはコスト競争力の強化であり、世界をリードしていくために、日本は官民を挙げて研究開発によるブレーク・スルー、規制緩和によるイノベーションに挑戦していかなければならない。

5.英知を集めて経済同友会は行動する

昨年、創立70周年を迎えた経済同友会は、「Japan 2.0 最適化社会に向けて」を発表した。また、「経済同友会 2.0 -自ら考え、自分の言葉で発信できる『異彩』集団-」を取りまとめると同時に「みんなで描くみんなの未来プロジェクト」を立ち上げた。

2021年から始まる新しい日本、Japan 2.0 は、約30年後の2045年を念頭にバックキャスティングで実現を目指していくべきであるが、その前にしっかりとした準備と考察が必要である。また、その間も経済成長と財政健全化の同時達成路線を堅持していかなければならない。

こうした課題を目の前に、今年は「最適化社会」構築への志を新たに、本会会員の枠を超えて社会の様々なステークホルダーとの対話の和を広げ、世論の形成を目指していく。また、昨年のイスラエル、中国、米国に続いて、秋には欧州へ代表幹事ミッションを派遣する。

世界と日本が分断と持続可能性の危機にある今こそ、英知を集めて経済同友会は行動し、新しい日本づくり、新しい世界づくりに貢献していく。

以上


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