ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

今年こそ持続的経済成長の実現を 【2015年年頭見解】

動画を拡大する

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 長谷川 閑史

アベノミクスの一層の推進を目指す第三次安倍政権の始動とともに新しい年を迎えた。多くの国民の支持の下で政権を長期安定的に運営していくためには、山積する課題に優先順位をつけ、着実に解決していく必要がある。

特に2015年は、規制改革・構造改革による民間主導の経済成長の実現と、将来世代と国際社会への責務である財政健全化への道筋を明確にする重要な一年である。

1.経営者として成長実現への決意を新たに

経済同友会は、2011年に私が代表幹事に就任して以来、一貫して企業としての成長へのコミットメントを主張してきた。この間わが国は、第二次安倍政権によるアベノミクス効果と企業努力によって、デフレ脱却と経済再生へ前進を始めた。今年こそ持続的な経済成長実現への歩みを確かなものにする決意を新たに、我々経営者は革新的経営の実践に全力を挙げる。

まず、企業は、人口減少と高齢化や、さらなる国際競争の激化等の課題を乗り越え、自ら成長への活路を切り拓くことが基本である。そのために経営者は、雇用の質・量の改善、新事業や新設備への投資拡大、さらに、これまでの延長線上ではない、新たな次元のイノベーションの創出を決断し、リスクをとって挑戦すべきである。

次に、「稼ぐ力」を取り戻すことである。経営者は経営のプロフェッショナルとして、企業の成長と発展に対し責任がある。上場企業については本年6月の運用開始に向けて準備が進む「コーポレート・ガバナンス・コード」の遵守はもとより、収益力、成長力を持続的に高める「攻めのガバナンス」を自ら確立する。既存設備の合理化、コア・アセットへの投資集中等により資本効率の向上を図り、グローバルな経営指標であるROE の2桁達成に努める。

2.成長実現へ企業が取り組むべき課題

(1)雇用の質・量の改善

成長を支えるために、雇用を質と量の両面で改善する。企業競争力の根幹は人財であり、高い付加価値を創出するためには、人件費をコストではなく、中長期的な競争力向上のための人財投資と捉えることが重要である。優秀な人財の採用・育成・維持には、業績改善に応じた賃上げ、正規雇用への転換、能力開発、働きやすい環境整備等が不可欠である。

また、長時間労働を是とする日本の企業文化の見直しや、フレキシブルな働き方の導入等により、労働生産性の向上に取り組む。

さらに、ダイバーシティを一層進め、女性、高齢者、外国人等の雇用を拡大する。女性の活躍推進では、『「日本再興戦略」改訂2014』で提示された目標値の達成に向けて、企業は継続就業支援等をより強化する必要がある。

(2)新事業・新設備への投資拡大

成長を捉えるために、新たな事業や更新を含めた設備等への投資を拡大する。人口減少による国内市場縮小とこれに伴う設備過剰への対応等から、国内での新規投資は長期にわたり抑えられてきた。この間、企業財務の改善に努めたことによる内部留保の増加分を、成長原資として有効活用するべきである。

例えば、工場や店舗の省エネ化、サービス産業や農業におけるデータ活用によるコスト・生産管理体制の強化、無人化生産設備への転換のための投資拡大等が考えられる。また、成長する海外市場への進出やプレゼンス強化のため、引き続き積極的なM&Aの実行や、国内外のベンチャー企業との連携促進も必要である。

(3)革新的なイノベーションの創出

成長を創り出すために、異なるものの結合、即ち多様性を包摂した中から生まれる革新的なイノベーションを推進する。国内外の市場で低価格競争に陥らないためには、社会、顧客にとって付加価値が高い製品・サービスを他社に先んじて開発し、提供する必要がある。自社内でのイノベーション推進のみならず、国籍、業界、企業、部門、研究分野等の間のあらゆる壁を取り払い、文化的背景や価値観の違いを越えて多様な人財が叡知を結集する本格的なオープン・イノベーションに挑戦する。

まずは、産官学連携において、企業、国内外の大学および研究機関との間での人財の相互派遣を企業が率先して拡大し、オープン・イノベーションの場を意図的につくることに取り組むべきである。

一方、政府では、イノベーション創出機能等を強化するための、大学における教育およびガバナンス改革が議論されている。こうした動きも見据え、企業は大学の知見や技術を生かして新事業を創造する。

3.新政権が取り組むべき最優先課題

民間主導の持続的成長を実現するためには、企業の取り組みに加えて政策的支援も重要である。新政権には、2015年度予算を早急に成立させた上で、『「日本再興戦略」改訂2014』の各施策を着実に法制化することを期待する。また、東日本大震災の被災地における広域連携でのまちづくりと産業復興のビジョン策定、安全が確認された原発の速やかな再稼動が必要である。

一方、財政健全化では、2020年度の基礎的財政収支黒字化に向けた工程策定を急ぎ、経済成長との両立を図る政府の決意と行動を示すべきである。

これらに加え、国会議員定数の削減、違憲状態にある両院の「投票価値の不平等」是正、政策本位の政党政治の確立にも真摯に取り組むことを求めたい。

(1)成長への期待を高める政策を迅速に実行

構造改革が実体経済にプラスの効果を発現するまでには時間を要するが、成長への期待を高めるためには、インパクトのある政策を間断なく実行していくことが必要である。

その第一は、あるべき法人課税の早期実現である。企業の新陳代謝促進と生産性の向上を図るためには外形標準課税を強化するべきである。また、国際的なイコールフッティングを確保する観点からは、欠損金の繰越控除や受取配当金の益金不算入はむしろ拡大し、2016年度までの2年間で3.29%を引き下げることになった法人実効税率は20%台への引き下げ達成年度を早期に示す必要がある。なお、財政健全化の同時実現のためには、税収中立を基本とすべきであり、国税と地方税や基幹税の壁を越えて財源を確保していかなければならない。

第二は、貿易、投資、サービスの自由化によりアジア太平洋地域の活力を取り込むTPP協定の実質合意である。協定交渉をわが国が主導し、本年の早い段階で実質合意に達することを強く望む。また、日EU経済連携協定、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)等も同時並行で進めることにより、各種交渉が相互に加速する効果も期待できる。

第三は、規制改革の推進である。「岩盤規制」が残る農業、雇用、医療・介護・保育の各分野を大胆に改革し、新たな成長分野へと変革させることが必要である。

「農業分野」は、TPP協定により市場開放が進むことが予想されるため、競争力強化が不可欠である。農地の集積・集約、農業への新規参入を加速するとともに、JA中央会制度の新たな制度への移行をはじめとする農業協同組合の改革の動きが後退することがないよう、確実に推進すべきである。

「雇用分野」については、労働人口の減少に加え、景気が回復基調にあることにより、ほぼ完全雇用の状況が生まれつつある今こそ、産業、企業の新陳代謝を労働市場改革により促進する好機である。成熟・停滞する産業・企業から成長分野への失業なき労働力の移動や生産性向上を進めるために、予見可能性の高い紛争解決システムの構築や、時間ではなく成果で評価する新たな雇用制度の創設等を推進すべきである。

一方、サービス産業においては、最低賃金引き上げのための最低賃金決定要素の見直し等を行い、労働生産性ならびに賃金水準の高い企業への事業と雇用の集約化を進めるべきである。

「医療・介護」については、医療・健康データの収集・活用の促進が必要である。個人情報の取り扱いを含む法制度、ルールの確立を急ぎ、エビデンスに基づく医療・介護政策や、レセプト、健診情報を活用した保険者による加入者への保健事業の実施を推進すべきである。

さらに、規制改革の突破口である国家戦略特区において、よりインパクトの大きな規制改革を行い、効果が認められるものは、希望する自治体に横展開することが肝要である。地方創生においても、自立し、個性ある地域をつくるために、規制改革に積極的な地域の特区指定を急ぐべきである。一方、地方には、スタートアップ促進のための環境整備に積極的に取り組む地域もあり、こうした動きへの政策的な支援も必要である。

(2)財政健全化に向けた「社会保障と税の一体改革」の再設計

一方、財政健全化については、本年秋の消費税率引き上げを先送りしたことによる、財政への市場の信認の低下が懸念される。国内外からの信認を確かなものにするためにも、以下のような歳出・歳入改革が求められる。

第一に、国際公約である財政健全化について、社会保障給付の抑制・削減、基幹三税の改革を含めた2020年度の基礎的財政収支黒字化への工程表を提示することである。特に消費税率は、10%に引き上げてもなお社会保障関係費を賄うには充分ではなく、税率のさらなる引き上げと時期も検討すべきである。さらに2021年度以降の債務残高圧縮への道筋をつけることも必要である。

第二に、「社会保障と税の一体改革」の再設計である。将来世代に対する責務として、持続可能な社会保障制度の構築が必要である。現役世代の負担を軽減し、世代間の格差を是正するためには、痛みを伴う給付削減や高齢者の医療・介護の自己負担割合の引き上げも行うべきである。また、社会保障の安定財源を確保し、税・保険料・自己負担による負担構造を見直すことによって、国民から高い信頼を得られる制度へと改革しなければならない。

なお、本年秋にはマイナンバーの付番・通知が行われ、来年から利用が始まる。年金、医療等の社会保障給付および所得が個人ベースで把握可能になることから、高齢者も含めて所得に応じた給付と負担をきめ細かく設定していくことも重要である。

以上


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。