ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

企業の自己革新を成長の原動力に【2014年度通常総会・代表幹事所見】

動画を拡大する

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 長谷川 閑史

はじめに

デフレ脱却と日本経済再生をめざすアベノミクスは今、その成否の分水嶺を迎えています。その成功は、第三の矢である「成長戦略」において、成長を阻害する諸制度の改革に大胆に踏み込めるか否かにかかっており、改革の断行なくして持続的成長は実現しません。諸外国と比して少子・高齢化、人口減少等、解決が困難で時間のかかる制約要因を多く抱える我が国は、より抜本的かつ大胆で、スピーディな改革を実行しなければなりません。

一方、改革の成果を成長へと結実させるためには、企業が自らの成長を通じて国富の増大に貢献することが何よりも重要な鍵となります。その意味で、企業自身が「成長の牽引役」であるという強い当事者意識を持ち、自己革新に挑み続けることこそが成長の原動力になることを、我々経営者はあらためて自覚しなければなりません。

今後の成長戦略において、国や企業が注力すべき課題は大きく分けて二つあります。第一は、グローバル競争下での「世界最先端の追求」です。多くの日本企業にとって真の競争相手はグローバル企業であるという現実を直視すべきです。厳しい競争に生き残るには、付加価値の高い世界最先端の製品・サービスでグローバル市場に参入し、世界の活力を取り込むこと、また、世界の優れた企業や人財を惹きつける世界最先端の環境が整った国や企業へと変革することが必要です。

第二は、生産性向上を図るための産業や事業の「新陳代謝の加速」です。少子・高齢化と人口減少が進展する中で経済成長を実現するためには、資本効率や労働生産性を徹底的に高めることが重要です。特に、企業の再編・集約・退出の促進やサービス産業の生産性向上など、これまで解決が先送りされてきた分野における改革を、経営者自らが先頭に立って実行していかなければなりません。

このような問題意識を踏まえつつ、本年度の活動を始めるにあたっての私の所見を申し述べさせていただきます。

1.企業が主導する本格的成長に覚悟を持って挑む

経済同友会では、昨年度より「改革推進プラットフォーム」「政策分析センター」を設置し、政府へのタイムリーかつ機動的な意見発信力を強化しました。しかし、政府にただ何かを求めるだけでは、経済成長の実現は不可能です。何よりも我々自身が困難な課題に率先して挑戦し、競争力と収益力の高い企業への自己変革を図ることで、本格的成長をリードしていくことが必要です。

その意味で、我々は「世界最先端の追求」「新陳代謝の加速」という成長に向けた二つの課題について、企業としての革新的な取り組みを強化していかなければなりません。

第一に、グローバル競争に「勝ち」にいく「攻め」のグローバル経営の実践です。特に、グローバル市場で競争している日本企業は、新興国等への製品・インフラ・サービスの輸出や投資の拡大を積極的に図ることで、相手国の経済成長や国民の生活レベル向上に寄与しつつ、我が国の貿易・所得収支の黒字に貢献し、成長の牽引役となることが必要です。

ただし、そのためには欧米のグローバル企業(大企業のみならず、ニッチな市場でトップシェアを占める中小・中堅企業も含む)に比肩する競争力・収益力を持つための経営改革が不可欠です。具体的には、海外企業も含めた積極的なM&Aの展開、海外の大学・研究者やベンチャー企業も視野に入れたオープン・イノベーションによる研究開発力の強化、意思決定ボードへの女性や外国人の登用をはじめとするダイバーシティの推進、優れた経営を担保するためのコーポレート・ガバナンスの強化などが求められます。

第二に、資本と労働の生産性の高い経営の追求です。わが国は、人財、資金、事業シーズ(技術・アイディア)などの経営資源が成熟産業から成長産業にスムーズに移らず、競争力の低下した事業・産業に滞留する構造的問題を抱えています。企業としては、こうした課題を直視し、再編・集約・撤退を厭わず、積極的に事業再編、設備集約化、スピンオフ・スピンアウトなどによる新陳代謝促進に踏み出すべきです。

特に、欧米との比較において生産性の低いサービス産業においては、ITの利活用を図るとともに、高い経営ノウハウを持つ経営者や経営体の傘下に企業を集約し、適正規模化を図るべきです。

また、成長分野に人財を円滑に移動するためには、企業としても、かつて終身雇用を前提に整備されてきた諸制度(例えば、最終給与比例式の退職金等)を徹底的に見直し、新たな挑戦を選択する個人にも不利にならない仕組みに変えていくことが不可欠です。

2.政府は成長基盤を強化する制度改革の徹底を

一方、政府に求めたいのは、「世界で最もビジネスがしやすい国」の具現化と、産業の新陳代謝、ならびに生産性向上を図るための抜本的改革です。

前者については、第一に「国家戦略特区」における革新的取り組みの迅速な展開です。本年3月に東京圏などが国家戦略特区に指定されましたが、各地域が現行の特区法で定められた規制改革メニューを徹底的に使い切るとともに、さらなる規制改革項目を次々と提案していくことが重要です。例えば、シンガポールなどをベンチマークにして世界最先端の取り組みを特区で可能とすることで、「世界で最も起業しやすい地域」をつくり、世界から企業、人財、資金が集まる国を実現すべきです。

第二に、経済連携の推進です。人財以外の資源に乏しいわが国は、自由貿易の恩恵を最大限活用して今日の繁栄を築いてきた国であり、その立ち位置は今後も不変です。貿易・投資の自由化を高度に実現するとともに、国際的な規格の標準化や認証プロセスのハーモナイゼーションを図ることが必要です。特に、TPP協定については、経済成長の突破口であり、わが国のグローバル化を加速するものです。したがって、政府にはあらゆる困難を乗り越えて締結をめざすことを強く望むとともに、交渉を全面的に支持していきます。

後者の新陳代謝や生産性向上については、第一に、競争力が低下した企業や事業の過度な保護につながる補助金、税制等の縮小・廃止が必要です。これによって捻出された財源は、セーフティーネットの強化や、事業の撤退などに伴う痛みを和らげるために、人財の成長分野への移動などに有効活用すべきです。

第二に、既得権益を打破し、新規参入を促進するための規制改革の推進です。規制に守られた産業、特に公共性の高いサービス産業の分野では、競争がないために生産性や品質向上のインセンティブが生じにくく、新陳代謝が進んでいません。新規参入を増やすとともに、生産性や品質向上を促すような「スマート・レギュレーション(賢い規制)」を推進し、こうした産業の成長とそれによる雇用拡大を図るべきです。

第三に、女性、高齢者、外国人など多様な人財の活躍を促すとともに、創造的な業務をしやすくするための働き方の改革が必要です。女性の活躍推進については、これまでの取り組みに加え、女性の就労に対し抑制的な税制、社会保障制度を見直し、働き方の選択に対し中立的な制度にすべきです。

また、高齢者が活躍する社会の実現は、先進諸国を中心に世界共通の課題です。既にわが国は、その成功事例をつくるノウハウや経験、そして何よりも労働への参加意識が高い高齢者を有しています。これらを活かして、高齢社会に適した先端的な社会モデルをわが国から発信すべきです。

さらに、高付加価値を生み出す創造的な仕事が今後より一層重要になることを踏まえ、雇用制度の基本的発想を大転換し、個人の創造性の発露を促す働き方に変えることが必要です。個人の能力の発揮と成長が企業などの組織はもちろん、国の競争力を高めるという観点に立ち、多様な人財が、時間や場所に捉われず柔軟に働くことができる制度を実現しなければなりません。

3.日本再興のために持続的経済成長と歳入・歳出改革による財政再建の実現を

日本再興のためには、持続的経済成長と歳入・歳出改革を同時平行的に進めることによって財政健全化も実現するという極めて困難な選択肢以外はないというのが厳しい現実です。

しかしながら、政府が昨年提示した「中期財政計画」では、国際公約である2020年の基礎的財政収支黒字化達成に向けた具体的道筋は、明確ではありません。本年度の「骨太方針」では、成長戦略の推進と財政健全化を両立する具体策、工程表を提示し、国家としての揺るぎない決意を内外に示すことにより国際社会からの信頼を確かなものにしなければなりません。また、世界経済回復の一翼を担うことにより、世界の平和と安定化に貢献する「積極的平和外交」の推進にもつなげて行くべきです。

具体的には、第一に、歳入改革として、既に法制化され第一段階を実行した消費税増税の第二弾の着実な実施と共に、諸外国とのイコールフッティングの確保やわが国の立地競争力を強化する法人実効税率の引き下げが必要です。その一方で、租税特別措置を含む法人関係の各種税制優遇は、政策目的を達成してもなお継続することを防ぐために、目的・効果の観点から厳しく検証し、縮小・廃止すべきです。

第二に、歳出改革として、持続可能な社会保障制度を実現するために、抜本的改革について議論し、社会保障費抑制の具体策を提示すべきです。特に、医療・介護費用の増加を抑制していくためには、医療と介護の連携強化、医療・介護サービスの提供体制の効率化、個別事業者の生産性向上が必須であり、そのための制度・構造改革は避けて通れません。

第三に、社会保障費の負担における世代内・世代間の格差を縮小するために、社会保障費の負担構造を見直すべきです。現役世代への過重な負担や、負担の公平性を損なう制度・政策は、経済社会の活力を削ぎ、経済成長を阻害する要因になりかねません。少子・高齢化が進む中で、経済成長と持続可能な社会保障制度を両立するためには、国民が広く公平に財源を負担することが必要です。

第四に、現時点では優先政策課題としては上がっていないものの忘れてはならないのが、地方分権の推進です。社会が成熟し、国民のニーズもますます多様化する日本のような大国を、今後も中央集権的国家のガバナンスで統治するのは限界に達してきています。現に、成熟した大国の中で比較的うまく行っているのは連邦制をとっている国家であり、日本も真剣に道州制の早期実現をめざすべきです。

おわりに――経済同友会の将来ビジョンを描く

このように、企業や政府が取り組むべき課題は山積しており、その解決の困難さは敗戦による壊滅的打撃からの復興に匹敵すると言っても過言ではありません。思えば、再来年に創立70周年を迎える経済同友会の歴史も、戦後の荒廃の中で日本経済の再建を誓った創設者達の熱き思いから始まりました。

経済同友会の果たすべき役割や存在意義は、時代の変遷とともに進化してきました。日本が再び輝きと存在感を取り戻すのか、それとも再興の機会を逸し、衰退して行くのか、その分水嶺にある今こそ、本会も改めてその存在意義を原点に戻って問い直し、これからのあり方を検討すべきです。こうした問題意識から今年度、「経済同友会の将来ビジョンを考えるPT」を設置し、一年かけてじっくり議論することといたしました。

会員の皆様には、引き続き「自ら変革し、行動する政策集団」の一員として、積極的な本会活動へのご参画、経営者の経験・知識、行動力を活かした課題解決へのご貢献をお願いいたします。私も、会員の皆様のお力添えを励みに、就任時に掲げた「日本経済の成長への復帰」そして「日本再興」の実現に向けて残り一年の任期に全力を傾注する覚悟です。

以上


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。