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成長への革新的挑戦 【2013年度通常総会・代表幹事所見】

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公益社団法人 経済同友会
代表幹事 長谷川 閑史

はじめに

2年前に代表幹事に就任した際、私は「経済成長の実現」を最優先課題に掲げ、長年にわたり停滞を続ける日本経済を任期中に成長軌道に復活させる、もしくは復活が確実になったと確認できる徴候を示したいとの目標を定めました。そして、経済同友会が提言活動に加え、その実行のために自ら行動することにより、「経済成長の実現」に貢献するとの決意を表明しました。

今日、日本経済は長く続いたデフレ脱却に向けた転機を迎えています。昨年12月に誕生した安倍政権は、「三本の矢」――大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略――を日本経済再生に向けた基本方針として示しました。政府による迅速な大型補正予算の編成に引き続き、新体制に代わった日本銀行が即座に「次元の異なる金融緩和」を打ち出したことで、円高の是正と株式市場の活性化が大幅に進んでおり、ここまでは人々の期待に変化をもたらすことに成功しています。

こうしたマクロ政策の変化が生み出す好環境を持続的成長につなげていくためには、今こそ経済活動の主体たる企業自身が率先して行動を起こさなければなりません。長引くデフレ経済下で、ややもすれば慎重な判断に傾きがちであった経営者マインドを転換し、グローバル競争に勝ち抜くことのできる“次元の新しい経営”にリスクをとって挑戦すべき時です。企業がイノベーションを起こし、新事業を創造し、付加価値を生み出し、雇用を創出していかなければ、日本経済に真の再生はありません。

同時に、経営者マインド転換の後押しをする意味でも、第三の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」による経済成長の実現に向けて、政府には大胆な規制・制度改革を含む「次元の違う政策」「前例のない政策」の迅速な実行を求めます。政府が目標として掲げる「世界で最も企業活動のしやすい国」実現のための環境整備を行うことによって、国内外から企業、人、資金を惹きつけ、企業や個人の力を最大限に発揮できる魅力ある市場の構築が早期に実現することを強く期待します。

以上の問題意識を背景に、2期目の代表幹事の任をお引き受けするにあたっての所見を申し述べさせていただきます。

1.次元の新しい経営で経済成長を牽引する

政府が次元の違う大胆な政策パッケージで「強い経済」をめざしている今、企業もまた旧来の常識に囚われない次元の新しい経営で、グローバル競争に勝ち抜く「強い企業」へと進化を遂げ、経済成長を軌道に乗せる牽引役とならねばなりません。

具体的になすべきことは、第一に、世界最先端を見据えた経営・組織・人事改革の断行です。急速なグローバル化の進展やIT技術等の進歩が相俟って、これまでの常識では通用しない新たな次元でのグローバル競争が始まっています。グローバル企業を例にとれば、購買、サプライチェーン、シェアードサービス、データセンターなどを世界規模で統合・効率化し、国籍・年齢・性別にかかわらず優秀な人をグローバルに最適配置し、そして事業拠点も魅力ある立地を求めて移動させています。内向きになっている多くの日本企業は、こうした世界の潮流の中で周回遅れとなっており、改革は急務です。

第二に、企業による積極的な設備投資や人的資本への投資による需要創造、消費刺激です。デフレ脱却の兆候が見え始めた今こそ、企業がこれまで蓄積してきた内部留保を有効に活用し、積極的に設備投資や賃金引き上げなどを実施することで、好循環を生み出すべきです。

例えば、エネルギー・コストの大幅な上昇が懸念される今日、中長期的にコスト抑制・削減につなげるため、工場やオフィスの省エネ性能向上のための設備投資に徹底的に取り組むべきです。また、米国等に比較して遅れていると言われるIT投資についても、経営・組織・人事改革と併せて実施することで、高い効果が期待できます。

さらに、女性や海外高度人材の活躍推進という観点から、企業としても企業内保育所の整備や人事制度改革により、今後新たな戦力となる人材が存分に力を発揮できる職場環境の整備を積極的に行う必要があります。こうした企業の取り組みに政府による政策的支援が適切に組み合わされれば、わが国の課題解決にも資する投資がより一層進むことが期待されます。

賃金については、雇用の維持・拡大に加え、消費を刺激し、経済成長への好循環をつくりだすために、能力・成果主義を前提に、可能な企業から給与総額の引き上げを実施するが望ましいことは、今年の年頭見解でも既に指摘したとおりであり、一部にその動きが出ていることを歓迎します。この点に関連して、同業種の海外企業が日本企業よりも高い報酬を払いながらも、はるかに高い営業利益率を実現できている理由はどこにあるのか、真剣に問い直すことも必要です。

この他にも、グローバル化への対応、イノベーションへの挑戦、ダイバーシティの推進、これらを実現するための新たな働き方に対応した人事制度改革など、実行すべき課題は数多くあります。政府に対しても、こうした取り組みを可能にするために、時代に合わなくなった諸制度の改革を求めていきますが、まずは企業や企業経営者がリスクに果敢に挑戦することが何よりも必要であり、会員各位にはあらためてその覚悟を求めたいと思います。

2.改革の突破口を切り拓く

さて、政治・行政に目を転じれば、時代の環境変化の中で制度疲労を起こした諸制度の改革が叫ばれ続けながら、抜本改革は先送りされてきました。しかし、ここにきていくつかの突破口が見え始めています。この突破口を確実に切り拓けば、そこから経済成長を実現するための本質的な改革へとつなげることが可能となるため、その行方を注視しながらタイムリーに改革を後押しする意見発信や行動を展開したいと考えています。

突破口の第一は、TPP交渉への参加です。人口減少や少子・高齢化が進展する中で持続的な経済成長と豊かな国民生活を実現するためには、国を世界に開き、世界の活力を取り込むことが不可欠であることは自明の理です。安倍総理がTPP交渉への参加を表明したことで、その他の国・地域との経済連携交渉にも弾みがついています。この機会にこれまでの遅れを一気に解消すべく、わが国が主導権を発揮して交渉を行うことを期待します。

その過程では、各種ルールの国際的調和を通じたサプライチェーンの効率化、規制・制度改革を通じた立地競争力の強化、食料・エネルギーの安定供給の確保などわが国の国益に資する成果を獲得するとともに、先進民主主義国の一員としての責任を共有し、公正で透明性の高い国際的なルールの策定を主導していくべきです。

第二は、「日本版NIH(注1)」創設に向けての前向きな取り組みです。多くの分野において、各省庁に権限・財源・人材が分散する省庁縦割りの弊害が生じており、省庁間にまたがる国家的政策課題解決の障害となっています。本会でも、省庁縦割りの打破や「省庁の枠組みを越えた指令塔」となる組織の創設を幾度も提言してきましたが、まったく進展は見られません。

しかし、産業競争力会議の提案を受け、医療分野の研究開発予算を一元化し、基礎研究と実用化研究の橋渡しを行う組織として「日本版NIH」の創設が検討されることになりました。これが米国のNIHのように機能すれば、省庁縦割り打破に向けた大きな第一歩となります。また、医療分野に限らず、環境・エネルギー、防災・減災、海洋開発など他の分野においても同様の司令塔をつくることによって、これまで実現が困難であった省庁間にまたがる国家的政策課題解決への道が開けてくることを期待します。

第三は、同じく産業競争力会議の提案を受けた「国家戦略特区」創設の検討です。これまでも「特区」の活用が図られてきましたが制約も多く、期待するほどの成果にはつながっていませんでした。今回提案されている特区については、各地域に権限・財源・人材を移譲し、これまでとは次元の違う大胆な取り組みを可能とする制度設計とし、規制改革や地方分権改革/道州制導入につなげていくことが必要です。

また、こうした特区の取り組みの中で、都市再生や公共サービスの充実など、財政負担を伴う施策を展開するのであれば、コンセッション方式の活用などによって国や地方自治体の財政負担を最小化し、民間事業の拡大を図る工夫を行い、経済成長につなげていくことが重要です。

こうした諸改革を推進するため、経済財政諮問会議、産業競争力会議、規制改革会議、行政改革推進会議、地方分権改革有識者会議など政府の主要会議に参加する会員の活動・連携支援、本会の政策立案力や理論的裏付けの強化を目的に、本年度において新たに「改革推進プラットフォーム」「政策分析センター」を始動させました。改革の断行に向けて、全会員が一丸となって改革を後押ししていきたいと考えていますので、会員各位のご協力をお願いします。

(注1)米国立衛生研究所(NIH; National Institutes of Health)

3.民による価値創造を最大化し、公正に分配される経済社会へ

一方、諸改革の断行には痛みも伴うため、国民の不安を解消し、理解・納得を得る必要があります。そのためには、改革の先に訪れる経済社会の姿や、改革をしなかった場合のシナリオをわかりやすく示すべきです。

本会でも、2011年に『2020年の日本創生』をとりまとめ、2020年にめざすべき「国のかたち」を提示しました。また、昨年度から「30年後の日本を考えるプロジェクト・チーム」を設置し、30年後にめざすわが国の経済社会の姿を検討している最中であり、その成果についてはいずれ発表する予定です。ここでは、本会がどのような経済社会をめざして改革を訴えてきたのか、再確認の意味で私なりの理解を簡単に述べさせていただきます。

第一に、健全な市場を中心とする経済社会です。経済活動で付加価値を生み出すのは企業であり、その活動なくして経済成長はあり得ません。健全な市場競争の下で企業が価値創造を続け、その果実が公正に分配されてこそ、国民の豊かな生活が約束されるのです。したがって、市場への参入や健全な競争を阻害するような不合理な慣習・規制、公正な分配を歪める制度の改革が必要なのです。

第二に、若い世代が将来に希望の持てる社会です。すなわち、誰もが意欲をもって働き、努力する人が報われ、能力向上や再挑戦の機会が与えられ、子育てや老後の暮らしに不安のない社会です。企業にとっても、その重要なステークホルダーであるお客様(消費者)や従業員とその家族が輝いてこそ、企業活動も持続可能となるのです。したがって、機能不全を起こしている社会保障制度、教育制度、働き方の改革は早急に成し遂げなければなりません。

第三に、民の力を最大限に発揮させるために機能する国家・政府です。それは、中央集権から地方分権/道州制へと国家のガバナンスモデル転換が実現し、中央・地方ともにスリムで効率的な政府が、顧客視点で活力ある個人や企業を支え、政府にしかできない役割を担い、政治がリーダーシップを発揮し、やるべきことを決断、実行する国にほかなりません。そのために、政治改革、行政改革を最優先に取り組むべきです。

おわりに

今年は、活力ある日本を築く上で大きな力となる重要な決定がなされる年でもあります。9月のIOC総会において、東京が立候補している2020年オリンピック・パラリンピックの開催都市が決定するのです。ここで東京開催が決定すれば、わが国の若者に夢と希望をもたらす一大イベントとなります。2020年の日本に世界中から集まった数多くの人々に、日本の「おもてなし」の精神を実体験していただくとともに、東日本大震災から復興した活力ある日本の姿を見せようではありませんか。1964年の東京オリンピック・パラリンピック開催で我々の世代が得た感動を、今を生きる若い世代にもぜひ味わってもらいたいと考えており、その実現に引き続き全力を尽くします。

さらには、インターナショナル・リニアコライダーの誘致が実現すれば、世界中から数千人の科学者が集まり、家族を含めると1万人規模の外国人が居住する、世界でも有数のサイエンスシティが将来誕生することになります。これについてもぜひ実現し、開かれた国、科学技術立国・日本の象徴にしていこうではありませんか。

本年度も、「自ら変革し、行動する政策集団」として、経済同友会の果たすべき使命はますます高まるものと思われます。本日、皆様に再び推挙され、代表幹事として2期目を務めることになりましたが、諸改革の加速とめざすべき活力ある経済社会の実現に向けて、皆様とともに引き続き全力で取り組んでいく覚悟を表明し、結びの言葉とさせていただきます。

以上


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