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リスクを恐れず「実行」を 【2012年年頭見解】

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公益社団法人 経済同友会
代表幹事 長谷川 閑史

1.実行の年――「何もしないことのリスク」の認識を

東日本大震災は、わが国に多くの試練と困難をもたらしました。復旧・復興関連予算の執行が必ずしも迅速に進まない中、被災者の方々は想像を絶する苦難に遭遇しながらも、前に向かって一歩ずつ歩みを進めておられます。そのような姿に心を打たれ、一日も早い復興と活力ある日本の創生に向け、我々もまた、息の長い復興支援を継続する一方で、リスクを恐れず果敢に挑戦しなければならないという思いを強くしています。

急速な少子・高齢化と人口減少、グローバリゼーションの進展など、震災以前からわが国が直面していた様々な課題への対応は、大きな進展がないまま時間だけが無為に経過しています。震災復興という新たな課題が加わった今年こそ、政・官・民のすべてがお互いに連携をとりながら、各々の為すべきことを速やかに実行し、目に見える具体的成果に一つでも結び付ける年としなければなりません。

先行きが不透明な中で、積み残されてきた課題に挑戦することにはリスクが伴いますが、世界のパラダイムが大きくシフトしている今日においては、何かに挑戦することのリスクよりも、何もしないことによって生じるリスクの方が大きいことを認識することが必要です。実行すべきメニューの多くは既に示されており、「検討する」という言葉は、もはや問題の先送りや不作為の言い訳に過ぎません。今日のように環境変化の激しい時代においては、まずはリスクをとって迅速に決断・実行し、問題が生じれば直ちに修正するという機敏な対応力と柔軟性こそが求められます。

2.最優先で実行すべき政策課題

こうした対応力は、今の政治や行政にこそ最も必要です。欧州危機を契機に「ソブリン・リスク」の拡大が懸念されていますが、どの国よりも膨大な累積債務を抱えるわが国にとっては、決して他人事ではありません。まずは、以下の重要政策課題を本年中に果断に実行し、わが国に課題解決力があることを国内外に示さなければなりません。

第一に、迅速な震災復興です。遅々として進まなかった復興推進体制の構築も、「復興庁」「復興特区」「復興交付金」などの関連法案の成立により、ようやく形が整いつつあり、今年は復興が本格的に始動する年となります。ただし、真の復興を成し遂げるためには、旧来の常識にとらわれない意欲的な取り組みをスピード感を持って実行できるかが鍵となります。そのためには、自治体や民間の創意工夫を活かせるように制度を不断に見直し続けるとともに、被災自治体に官民から人材を結集した上で、国の財源と権限を思いきって移譲し、多少のリスクはあったとしても、地域のことは地域の自主性に委ねていくことも必要です。

第二に、成長戦略の実行加速です。昨年末に政府は「日本再生の基本戦略」をとりまとめました。その主要な柱は、震災復興を含めた経済成長の実現です。昨年は、TPP交渉への参加表明という大きな決断がありましたが、引き続き、直ちに実行すべきメニューについて、年央と言われる「日本再生戦略」のとりまとめを待つことなく遅滞なく実行すべきです。ビジネスの視点から言えば、まずは実行に移し、効果を検証して必要な軌道修正を行い、結果につなげていくというPDCAサイクル(*)を回していくことこそが重要です。

*Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4段階を繰り返し、改善していくこと。

第三に、社会保障・税の一体改革の実現です。この改革を巡る議論では、消費税増税のみに焦点が当たっている感がありますが、受益と負担(税+社会保険料)の世代間・世代内格差を是正し、持続可能な制度を構築するという改革本来の目的を忘れてはなりません。歳入の確保と併せて、歳出の中で最大のウエイトを占める社会保障費について、あらためて、望ましい国民負担の水準や受益と負担のめざすべき姿をわかりやすく国民に示した上で、歳出の削減に切り込んでいく必要があります。また、こうした歳出・歳入の改革と成長戦略の実行などを通じて、財政健全化の具体的道筋を示すことも急務です。

第四に、政治・行政改革の断行です。復興や社会保障などの財源確保のために国民に負担を求めるのであれば、まずは政治や行政が率先して身を切る姿勢を示さなければ、国民の納得は得られません。したがって、政治には国会議員の定数と議員報酬の削減を求めます。また、行政においても公務員制度を含む行政改革を断行するとともに、公務員宿舎新築に象徴されるような国有財産について、建設中止や売却を徹底すべきです。

なお、政治改革については、定数削減と同時に「投票価値の平等」を実現する選挙制度改革案を次期通常国会で成立させ、次期衆院選を新制度の下で実施できる体制にすることが不可欠です。

3.リスクをとって成長する企業へ

企業もまた、成長を牽引する主体として、その決断力と実行力が問われています。円高、貿易自由化の遅れ、電力不足などの問題が日本企業の競争力低下を招いていることは事実ですが、ただ外部環境のせいにするだけでは、経営者として鼎(かなえ)の軽重が問われます。こうした制約を乗り越えるべく、企業自身がリスクをとって組織改革、新事業創造、イノベーションの創造、新興国市場への浸透などに挑むことによって、新しい成長の源泉を追求し、リターンを得ることで、国内経済や雇用にも貢献していくことが必要です。

また、昨年は日本企業のガバナンスに対する信頼を揺るがす事件が起こりました。我々企業経営者としては、これを他山の石として常に倫理観の高い経営を心がけると同時に、自社のガバナンス体制を検証し、必要な改善を怠らないことが肝要です。

4.30年後の希望の持てる日本のビジョンを描く

政・官・民が各々の立場で勇気をもってリスクに挑戦するためには、その行動の結果として達成すべき将来の夢やビジョンを持つことが必要です。経済同友会では、昨年1月に「2020年の日本創生」をとりまとめ、10年後にめざす「国のかたち(ビジョン)」とその実現に向けた具体策を提示しました。

その直後に発生した東日本大震災という苦難を乗り越え、環境変化がより速くより大きくなる中で新しい日本を創生するために、我々は「2020年の日本創生」をマイルストーンとした30年後のビジョンを描きたいと考えています。

そのために、2012年度に新たにプロジェクト・チーム(PT)を設置し、1年を目途に検討を重ね、ビジョンをとりまとめる予定です。同PTでは、次代を担う若手会員を登用し、20~40代の皆さんの声も聴きながら、今の子供たちが社会の中堅として活躍している30年後の日本について、経済、産業構造、ビジネス、雇用・働き方の姿を中心に、希望の持てる将来像をダイナミックに描いていきたいと考えています。

以上


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