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若者が希望を持てる社会の構築に向けて
【2009年年頭見解】

社団法人 経済同友会
代表幹事 桜井 正光

1.現状認識

米国発の国際金融危機により、世界経済は同時不況に突入した。その影響で、日本では、製造業から始まった生産・設備・雇用の調整が非製造業へも広がりを見せつつある。加えて、金融危機の影響が比較的軽微であったはずの金融・資本市場でも、企業の資金調達面での問題が生じるなど、日本経済は世界的な金融と経済の負のスパイラルに呑み込まれる感がある。

これらの動きは、単に金融危機に端を発した景気後退と捉えるべきではない。日本をはじめとするアジアの過剰貯蓄と中東のオイルマネーが、米国経済の過剰消費構造を支えるという世界経済の不均衡の拡大を、今回の金融危機の要因として認識することが重要である。したがって、世界が直面している課題は、世界規模での経済の構造調整と捉えるべきで、各国が足元の情勢に対応した緊急対策を実施することは当然のこととして、危機感を持って構造問題を解決するための施策に取組む必要がある。

このような世界的な経済構造の調整に即し、日本も緊急対策のみならず、経済活性化や内需拡大に向けた取組みが不可避である。一方、国民にとっては経済の先行きや社会保障、雇用などの面で将来不安が蔓延しており、経済の停滞感を一層深めている。遅くとも本年秋までに実施される衆議院議員総選挙においては、このような観点からの中長期的構造改革を含めた政策論争を深め、国民が閉塞感から脱却する契機としなければならない。

これらの課題を解決することは、次世代が、国の内外を問わず活躍する社会の実現に他ならない。その意味で、我々は、2009年を迎えるにあたって、本年を「若者が希望を持てる社会」に向けた第一歩を踏出す年にすべきと考える。

2.「市場」の活用を

米国での金融・資本市場の混乱や日本での格差論争などにおいて、市場を中心とする資源配分の問題点が指摘されることが多くなり、時には、市場機能そのものを否定するような論調が散見される。市場は、万能ではないが、現状では唯一の効率的な資源配分の仕組みであり、市場機能の否定からは何も生まれない。

我々は、今、市場メカニズムをうまく機能させるために、市場参加者の倫理及び自己責任、市場の監視体制、市場の規律などの観点から、健全なる市場の構築を目指し、改めて市場の整備・活用を検討すべきである。「若者が希望を持てる社会」の構築は、健全なる市場を中心とした経済社会と整合的でなければならない。

3.「若者が希望を持てる社会」の構築に向けた取組み

第1は、直近の課題としても、そして構造的な課題としても重要な「雇用問題」の解決である。90年代の所謂「就職氷河期」に生じた非正規雇用問題などの構造的課題を解決するために、政治(政府・与野党)、労働界、経済界の3者による検討を早急に開始することを提案する。そこでは、(1)農林水産業の高度化やサービス産業の活性化を促す政策とともに、そのような分野への労働移動を促進する枠組みの整備、(2)非正規雇用に対するセーフティネットの構築、(3)産業構造の変化に伴う円滑な雇用調整のあり方、などについて検討すべきである。

第2は、持続可能な社会保障制度の確立である。すでに、年金制度に関しては、若年層に受益と負担の観点から不公平感が蔓延している。税方式による新基礎年金制度の創設など、若者が信頼できる制度へと抜本的な改革を進めるべきである。更に、少子・高齢化と人口減少が進む中で、制度全般に亘り制度疲労が拡大していることを考えれば、持続可能な社会保障制度と税財政制度との一体的抜本改革が必要である。

第3に、構造改革の断行が必須の課題であることを再確認すべきである。国と地方の長期債務残高が800兆円に近づきつつある中で、「官から民へ」、そして「国から地方へ」の構造改革を実現し「小さな政府」を構築することは、若者の過度な負担を軽減し、将来不安を払拭するために極めて重要な課題である。その意味で、社会保障制度と一体的な税財政改革、公務員制度改革をはじめとする行政改革、規制改革、そして地方分権・道州制導入を迅速に推進すべきである。

第4に、人・モノ・カネの内外の相互交流の拡大である。日本の活性化のためには、人・モノ・カネのすべての面において、わが国が世界に開かれた市場を主体的に提供することが重要である。世界経済の不均衡の構造的調整が望まれる現状を考えれば、内需の拡大は避けて通ることのできない課題である。対内直接投資の拡大や市場の開放を目指したFTA・EPAの交渉には積極的に取組むべきである。加えて、世界の舞台で活躍・貢献する若者を支援する社会の構築が必要である。

第5に、低炭素社会の実現は、「若者が希望を持てる社会」の基盤である。地球温暖化による気候変動は不可逆的な変化であり、全世界がその計り知れないリスクと危機感を共有し、全地球的規模で問題解決に取組まなければならない。国際社会ではCOP15に向けたポスト京都議定書の枠組み作りと、低炭素社会の実現に向けた取組みが一層本格化していく。本年前半には、各国の中期目標の策定に関する協議が山場を迎える。我が国は、世界に対し、中長期目標の設定と低炭素社会づくりに対する「日本の役割と責任」を明示するとともに、主体的な行動により、リーダーシップを発揮すべきである。

第6に、経営者は、世界的構造調整に対応しかつリードするに足る経営改革への努力を続けなければならない。技術革新や業務プロセス革新などに取組み、新商品・新事業の創造と生産性の向上を図り、より良い経済社会の実現、国民生活の充実に寄与し、自らの成長と発展を遂げることで雇用の維持や拡大につなげるべきである。

これらの経営改革は中長期的志向とマルチステークホルダー重視の経営への転換につながるものでなければならない。厳しい現状にある今こそ、経営者には、企業の持続的成長と発展のために、中長期的な視野で前向きな改革への投資が期待されている。また、企業には、現在のような急激な景気後退期では、前述のように企業一人が負う課題ではないが、雇用が社会的課題であるとの認識に基づき、慎重な雇用調整への取組みが期待される。すなわち、強くて信頼される企業を目指す、新・日本流経営の実践である。

4.次期総選挙・政治への期待

「若者が希望を持てる社会」に向けて、政治が強いリーダーシップを発揮することが望まれる。そのために、本年秋までに実施される総選挙を政権選択選挙と認識し、各党が責任を持った政権公約(マニフェスト)を提示して、骨太な政策論争を展開すべきである。

マニフェストには、まず、国民に目指すべき「国のかたち」を明示してほしい。「国のかたち」とは、各重要政策が関連性を保ち実施されることで、特定の時期に実現する社会像であり、受益と負担のバランスシートである。そしてそれは、具体的に国民が将来の社会像をイメージできることが望ましい。その上で、「国のかたち」を実現するために、短期的課題のみならず、中長期的課題を具体的政策として示し、それらの優先順位、スケジュール、財源を記載することを通じて、その進捗管理と改善策の展開(PDCAサイクル)を確実に機能させることを保証し、実践することで国民への説明責任を果たしてほしい。

マニフェストで取り上げるべき具体的政策課題には、少なくとも、(1)社会保障制度や税財政の抜本改革を通じた国民の受益と負担の明確化、(2)国際経済の調整過程に対応した日本の産業構造転換の促進、(3)地域主権の確立に向けた制度設計、(4)低炭素社会の構築に向けた基本的考え方と行動計画、(5)世界に通じる人材育成のための教育のあり方、などが含まれるべきである。

5.経済同友会として

経済同友会は、自由社会においては経営者と企業が重要な役割を担うとの自覚と連帯の下に、より良い経済社会の実現、国民生活の充実のための諸課題に率先して取組んできた。時代を見通した先見性の表明として討議の成果を世に問うとともに、国民生活の豊かさと世界経済の調和と発展を目指して、常に新しい時代に向けた果敢な挑戦を続けることが使命である。厳しい経済情勢にひるむことなく、今こそ、発足の理念に立ち戻り、日本が直面する課題に積極的に取組んでいきたい。

第1に、市場機能に対する信頼の揺らぎがある中で、日本経済が健全かつ安定的に成長するための基本的課題として、改めて、市場を中心とした経済社会のあり方について検討を行うべく、4月の新年度を待たず速やかに新委員会を設置することとしたい。

第2に、これまで構造改革の一環として、提言を重ねてきた税財政改革や社会保障制度改革につき、その後の社会環境の変化を盛り込み、改めて将来の国民の受益と負担の構造を明確化し、提案を行うこととしたい。

第3に、非正規雇用者問題の深刻化に加え、今回の不況が新たなニートやフリーター問題を生みかねないという問題意識の下に、雇用問題を構造的問題と捉え、4月の新年度を待たず、速やかに新委員会を設置して検討を開始することとしたい。

そして最後に、世界経済の構造調整が進む中で、企業の持続的成長と発展を実現するために、新・日本流経営で提言する「強さからのスタート」と「世界からの信頼」をコンセプトとする経営改革のさらなる実践・促進を図る。

以上


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