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魅力ある日本の再構築に向けて
【2008年年頭見解】

社団法人 経済同友会
代表幹事 桜井 正光

1.はじめに――魅力ある日本を目指して

グローバルな大競争と、少子化による人口減少と高齢化という課題に直面し、日本は決断の時を迎えている。

にもかかわらず、現状の打開を託すべき政治は、「ねじれ国会」の下、足元の短期的課題や参議院選挙後の政局にとらわれ、新たな政策形成の仕組みを見出せずにいる。

このまま政治が停滞し、改革が後退するようなことになれば、先進国として、また市場や投資先といった経済活動のパートナーとしての日本の「顔」が見えないまま、国際社会において、その存在感や魅力が失われていくのではないかと憂慮している。

経済成長と財政健全化の両立という課題に挑み、次世代が将来に希望を持つ、活力に満ちた魅力ある国として再生するか、あるいは、国際社会の潮流から取り残され、緩やかな衰退に向かうかは、今、われわれの世代の選択にかかっている。

2008年の年頭に臨み、市場主義に立脚した国内諸制度の改革推進に向けたわれわれの意思を示すとともに、政治に対して、将来を見据えた力強いリーダーシップを改めて求めたい。

2.小さくて効率的な、信頼される政府の構築に向けて

日本の経済社会の持続可能性を高めるためには、市場主義に基づき、自由で公正な競争を促進する他に選択肢はない。

競争の結果生じる「差」に対して、単なる結果の調整や安易な保護という対応をとることは、結果的に、個人や地域の自立と活性化の芽を摘むことになる。国の責務は、最低限のナショナル・ミニマムの保障によるセイフティネットの提供と、再挑戦を可能にする制度整備などに限定し、小さくて効率的な、信頼される政府の構築を目指すべきである。

「ねじれ国会」の下で構造改革を推進するためには、総理大臣が自らビジョンと改革への意思を示し、リーダーシップを発揮することが不可欠である。併せて、与野党が現在の政治環境をむしろ好機として、目先の政局観を超えた建設的な政策論議と迅速な意思決定を進めることを強く求めたい。

  1. 財政再建に向けた目標と道筋の具体化

    金融危機に端を発する財政膨張から10年を経て、危機的な財政の健全化に向けた取り組みをようやく着手した矢先に、徹底した歳出抑制を後退させてはならない。ここで改めて、財政再建に向けた政府の姿勢を明確にし、「骨太の方針2006」の枠組みに基づく歳出・歳入一体改革の推進による、増税なき「2011年度プライマリー・バランス黒字化」という目標を、政権運営の基軸とすることを求めたい。

    従来の省庁縦割りによる歳出構造や、既存の公的部門の諸制度を温存していては、この目標を達成することはできない。2008年度予算編成においては、通常国会での徹底した審議により歳出の無駄を排し、政府並びに国会が、構造改革を通じて自ら身を切る覚悟を示すべきである。

    加えて、2010年代以降の公的債務の縮減という中長期的な目標の実現に向け、工程表の具体化や税制抜本改革に向けた議論にも早急に取り組むことを求めたい。

  2. 社会保障制度の一体的改革の推進

    年金記録問題、政管健保の国庫負担の問題などにより、社会保障制度に対する国民の不安は、完全な不信へと変わりつつある。急速な少子・高齢化という厳しい現実を見据え、真に持続可能で公正な社会保障制度の姿を描き直すことが、失われた信頼と安心を回復する唯一の手段である。

    社会保障制度の一体的・抜本的改革、特に、既に破綻状態にある年金制度の再構築は、長期にわたって国民の安心と権利に係わる重要課題である。与野党が政局を超えて協力し、政権が変わった場合にも不動な制度の構築に取り組むことを求めたい。その意味で、「社会保障国民会議」の設置の意義は大きい。与野党、並びに民間有識者の積極的な参画により、実効性ある改革ビジョンと制度設計が示され、国民的議論が喚起されることを期待する。また、その際には、日本の経済社会の活力と次世代の希望を鼓舞する視点を忘れてはならない。

  3. 抜本的な行政改革の再始動

    構造改革を加速するためには、妥協と聖域なき公的部門改革の断行が不可欠である。「官から民へ」・「国から地方へ」という改革のスローガンを具現化するため、国、そして行政が果たすべき役割や責任の範囲を見直し、新たな時代に即した制度構築を推進しなければならない。

    中でも、さらなる公務員制度改革の推進と、それと一体的な形での独立行政法人改革の継続は、国や官のかたちを変え、既存の社会システムを変革する上での要である。市場主義に基づく、民間主導経済社会の構築という原則に則った改革の継続を強く求めたい。

3.持続的成長を遂げる日本へ

国の活力と魅力を高める上で、持続的な経済成長を実現することが極めて重要である。このため、我が国経済を支える民間企業の国際競争力を高めるとともに、将来に向けて新たな成長の源を創出し、国民に富を還元するサイクルを確固たるものとすることが必要である。

  1. 日本の国際競争力と魅力の強化

    企業の国際競争力を強化し、かつ魅力ある市場を作るためにも、国としての戦略性を持って、必要な環境・条件の整備を推進すべきである。

    中でも、法人税については、租税特別措置を抜本的に見直し、全体として課税ベースを拡大する一方で、基本税率を国際的な水準まで引き下げるべきである。これによって、企業は次の価値創造に向けた投資と、雇用創出や賃金の増大、株主への配当の充実など、ステークホルダーへの配分の拡大に取り組むことができる。このことは、結果的に、生活者たる国民の豊かさにもつながるのみならず、海外の企業や資本を日本に引きつけ、経済の活性化をさらに促進する上でも重要である。

    一方、企業には、競争力ある信頼される経営の実践に向け、それぞれの「強み」を磨き上げる努力が求められる。特に、資源の少ない我が国にとって、イノベーションによる付加価値創造が最大の課題であることから、日本の強みである意欲ある人材に対し、生きがい・働きがいを提供し、個人の能力を最大限活かすための取り組みが不可欠である。

  2. 経済成長の新たなエンジンの創出

    日本経済は既に成熟の域に達している。さらなる成長を目指すためには、さまざまな改革に取り組み、新たな成長エンジンを創出しなければならない。

    例えば、成長の鈍化した産業から、国内外の変化に伴う新たなニーズに応える新産業へのシフトなど、産業構造の新陳代謝を促進する観点から、新事業創造を積極的に推進する必要がある。今般の税制改正にて大幅に拡充されたエンジェル税制が活用され、個人の資金がベンチャーの創造を支援する動きが広がることを期待したい。

    同時に、農林水産業、医療・福祉、教育、保育など、これまで官が担ってきた分野における規制改革や、国際的に見て競争力・生産性の低いサービス産業の活性化を図ることにより、新たな成長産業を創出することが必要である。

4.世界的課題に率先して取り組む日本へ

日本は世界第二の経済大国であり、その立場にふさわしい責務を全うすることで、国際社会の信頼を勝ち得ていかなければならない。

IPCC第四次報告が示すように、地球環境問題、中でも温暖化は、全人類の存亡をも脅かす最重要課題の一つであり、国や地域、思想、立場を超えた、全世界的な協調と協力によって解決を図ることが必要である。

その意味では、本年夏に我が国が主催する「洞爺湖サミット」は、「ポスト京都議定書」の国際的枠組み構築において節目となる重要な会議であり、日本がリーダーシップを発揮するまたとない好機と言える。

2009年に予定されるCOP15に向けて、中長期的な数値目標を含めた国際的合意形成を推進すべく、先進国たる日本は、各国・各地域の利害を尊重しつつも、ビジョンと具体策を持ち、率先して実効性ある枠組みの構築に取り組むべきである。

さらに、世界に先駆けて、成長と環境の両立を実現するモデルを示すため、環境技術の革新や代替エネルギーの創出に取り組むとともに、原子力政策の推進に向けた国内・海外世論の形成に尽力することが必要である。

併せて、経済のグローバル化に伴い国際的な相互依存が進む中で、国際協力の枠組みに貢献する姿勢が求められる。グローバル経済や地域の発展、そして我が国の成長に向けて、FTA・EPAや対内直接投資の積極的な推進に取り組むべきである。

5.社会の信頼と負託に答える経営の実践

企業、そして経営者の最大の社会的責任は、社会からの信頼と負託に応え、顧客価値創造を通じて企業価値の最大化を図り、国民生活全体の豊かさと日本経済の持続的成長に貢献することである。われわれは、本年も、自らの経営を通じてその実践に取り組んでいく。

第一に、最低限の前提として、自らの企業活動から、違法や不正などの反社会的行為を徹底して排除し、企業社会に対する社会の信頼を回復する。そのため、企業経営者の倫理感と市場への責任感の徹底は当然として、内部統制の強化と、多様なステークホルダーの視点を活かしたガバナンスの構築に取り組む。

第二に、日本経済の活力を高めるため、市場ルールに基づく競争を尊重し、市場の声を自らの起点として、さらなる顧客価値創造に取り組む。また、成長の見込めない分野からの撤退と新たな分野への挑戦などにより、自らの経営を通じて新事業創造を促進する。

第三に、経営者自らの決断によって、環境と調和する経営の実践に取り組み、資源効率の最大化や経営プロセスの刷新などを進める。

2008年の年頭にあたって、自らの経営を通じ、自己革新と社会の改革に取り組む企業経営者の意思をここに示す。

以上


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