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新・日本流経営の創造
日本の強みを活かした価値創造と高効率性の追求による経営改革と構造改革
<桜井正光代表幹事 就任挨拶>

社団法人 経済同友会
代表幹事 桜井 正光

はじめに

60年の長きに渡り、経営者の政策集団として歴史を積み重ねてきた経済同友会の代表幹事にご推挙いただいたことは、身に余る光栄であり、その責任の大きさに身の引き締まる思いであります。代表幹事という大役をお受けするに当たり、私の決意と所信を申し上げ、ご挨拶とさせて頂きます。

戦後の日本は、復興の時代、高度成長期、バブル経済とその崩壊を経て、今や新しい経済社会システムを目指した構造改革という課題に直面しています。

その折々に、経済同友会は、企業民主化、自主調整、企業の社会的責任、市場主義など、時代を先取りする思想・概念を提唱し、社会の変革をリードする役割を果たしてきました。これらの思想の根源にあるのは、企業のあるべき姿の追求と経営者自らの責務の模索であります。

私たちの役割もまた、このように多くの諸先輩が志を注いでこられた経済同友会の伝統を引き継ぎ、経営者の知見を活かして、今の時代にあって、自らが何をなすべきかを考え、それを起点に日本の経済社会の新たな展望を切り拓く役割を担っていくことであります。

1.企業経営者の知見:新たな価値創造と高効率性の追求

経済同友会の原点は、「企業経営者個人」です。個々の経営者が、日々の経営を通じて得た知見を活かし、提言活動を展開しなければ、経済同友会の存在意義はありません。「企業経営者自らの取り組み」、「企業経営者としての知見」からの発信が、われわれの活動の基礎となります。

経営者の知見として最も重要なことは、企業の創造や企業の成長と発展のために、市場との対話を通じて得た見識、知恵、方法論、発想、そして経営者ならではの先見性・効率性・国際性です。

グローバリゼーションの進展に伴い、市場の重要性が増し、市場の評価・選択が企業の存続を左右する時代となりました。このような競争環境のもと、企業努力は「新たな価値創造」と「更なる高効率経営」の追求であり変革であったと言っても過言ではありません。過去の成功体験の延長線上だけに安住していては、企業の成長と発展は、ままなりません。そして、その変革は、二つの側面から生み出されることを経験してきました。一つには、市場主義を基盤とする経済社会における自由で公正な競争による「外」からの刺激、すなわち市場の要望や競争者の参入であり、そして二つには、異質なもの、多様なものを積極的に受け入れること、すなわち外部資源(人・モノ・金)の注入による「内」からの刺激であります。

この意味で、市場主義を基盤とする経済社会の構築に際しては、経営者の役割は極めて重要であります。

2.改革の原点に返って市場主義経済社会の構築を

継続的な人口増加と経済規模の拡大を前提に構築されてきた「戦後日本型システム」が、グローバリゼーションの進展の中で機能不全に陥り、改革の必要性が指摘されて四半世紀が経とうとしております。中曽根政権や橋本政権の行政改革、そして先の小泉政権の構造改革など、1980年代から脈々と受け継がれた改革の取組みは、新たな時代への備えを目指してきました。しかし、未だに「新しい経済社会システムの構築」は未完のままと言わざるを得ません。しかも、昨今、順調な景気回復の下で、構造改革の加速と断行に向けたモメンタムは決して強くはありません。このままでは改革が後戻りする危惧さえ感じざるを得ません。

しかし、環境変化は大規模かつ急速に進んでいます。ご承知のように、日本国内では、急激な少子化の進展によって、2004年をピークに人口減少が始まりました。国際的には、BRICsの台頭やFTA・EPAといった経済連携など、グローバリゼーションの動きが広がりと深さをもって戦略的に展開されつつあります。先般発表された米韓FTAは、今後の日本の経済外交に大きな影響を与える動きとして受け止めるべきであると思います。

今後は更に新たな対応を要する変化を覚悟しなくてはなりません。残された時間は多くはありません。今なすべきことは、まず改めて、さまざまな「改革」が目指したものは何かを、原点に立ち返って確認することです。そして、過去の成功体験にとらわれることなく、改革の先にある日本の姿を描き、改革そのものの強化と促進を図らなければなりません。

それは、経済同友会が、これまで繰り返し主張してきたように、市場の機能を信頼し、その評価を尊重する「市場主義」に立脚した経済社会の構築であります。自由な競争を確保する「市場主義」こそが、経済社会の活性化、成長、発展の基盤となり、国際社会に価値ある貢献をしていくための持続可能な唯一の仕組みであることの再確認が重要です。

昨今、「市場主義」に対する疑問や揺り戻しともとれるような議論を耳にすることがあります。しかし、それは市場の構築が道半ばであるがために起こった問題に、実態以上に焦点が当たった結果であるように思えてなりません。

市場主義を基盤とする経済社会を実現する上で重要なことを考えたいと思います。

それは第一に、企業経営者自らが、市場主義に徹した透明で公正な競争を軸とした企業経営を展開することです。経営者は、市場とともに生きる覚悟、市場に働きかける意志を持つことが重要であると思います。

第二に、市場参加者や市場の監視役など市場に関わる人々には、長期的な視点かつ全体的な視点から、国民経済の豊かさと公正さに資する判断を成しうる「健全な市場」の構築とその維持への努力が、何よりも重要であります。

第三に、「健全な市場」を受け入れ、構造改革を推進することで、国や地方のあり方や、産業のあり方の変革を進めていくことであります。まず、「官」は、いつまでも国民の望まないサービスや不効率なシステムに固執せず、既存の制度・組織を前提とすることなく、これからの国の役割、地方の役割、行政の責任と権限の範囲をゼロベースから再確認しなければなりません。一方、「民」もまた、国からの保護を期待して、成長の期待できない分野に執着することなく、新たな成長分野への勇敢な挑戦が必要です。すなわち、「健全な市場」を通じた競争の促進により、国民の期待する新たなサービス分野や成長分野の創出を促すことで、「成長シフト」に向けた自主・自立的な新陳代謝を図ることが極めて重要です。厳しい環境変化の現実を見据え、日本社会の持続可能性を可能にする制度の構築に取り組むことが、次世代に対する現世代の責任であります。

こうして、自由で健全な競争を即す仕組みをつくり、日本の成長と発展を通して世界の発展に価値ある貢献を果たしていくことが求められていることは確かだと思います。

3.新・日本流経営の創造

自らの経営を通じて、新たな価値を発掘し「より良い製品」や「より良いサービス」を顧客に提供するとともに、高効率経営の実現を目指すことは、経営者の役割であります。しかし、1990年代から、日本企業の経営は、「日本型」と「グローバル・スタンダード」、いや「米国流」と言った方が適切かもしれませんが、これらの狭間で揺れ動いてきたといっても過言ではありません。今こそ、グローバリゼーション、地球環境問題への対応、少子・高齢化など、さまざまな環境変化・時代変化の中で、市場主義を基盤とする経済社会の中核を担う日本企業のあるべき姿として、「新・日本流経営」を追求したいと思います。

「新・日本流経営」の最も重要な視点は、第一に、グローバルな競争力強化の視点から、日本企業と外国企業の各々の「経営の良さ」を融合することです。そして第二に、市場主義における社会との共生を実現するという、企業の社会に対する責任の実践をも同時に実現することです。

第一のポイントを少し詳しく説明をいたします。競争力強化のためには、まず日本企業の経営に内在する「強み」や「良さ」を再発見することが大事だと考えます。その上で、日本の経済社会で培われてきた価値観や知恵、技術を活かし、国際社会のパートナーにもその「強み」を提供・共有していきます。製造業の視点から言えば、世界に秀でた「現場力」や「チームワーク」、「高度で粘り強い人材」「技術力」、そしてまた「評価の厳しい顧客市場」など、「強さ」をもっと強化し活用すべきものがあります。他の産業領域においても、活かすべき「強さ」「良さ」が多いことは確かです。概して、我々は、ことあるごとに先ずは欠点・弱点の強化から出発しがちです。それも必要なことですが、より重要なことは強さからの出発です。それにより、自信と将来への明るさを持った改革が開けると信じます。

一方、グローバル競争の競合者やパートナーから新たな「強み」を吸収することも重要です。変えるべきものは変え、日本の強みとして強化するもの、すなわちコア・コンピタンスには、より一層の磨きをかけ、競争に臨んでいくことが必要です。

4.人を大切にし、社会を大切にし、仕事を大切にする

このように、持続可能な市場主義を基盤とし、「創造性豊かな」「効率性の高い」、そして「豊かで、安心かつ、安全な」経済社会の構築を目指していくためには、社会全体に共有化される社会的理念の構築が必要になります。それは「人を大切にし、社会を大切にし、そして仕事を大切にする」という共通理念だと思います。

社会の原点も、そして企業の原点もまた、一人ひとりの生活や仕事での「生きがい」や「やりがい」にあります。人を大切にしない社会や企業は存在しません。人が集まる地域社会や企業、そして国を大切にしつつ、自己実現による豊かさの基本である仕事を大切にしなくては、多くの人が真の豊かさを享受できる社会を構築することは不可能です。

共通の理念形成には、それ相応の時間がかかります。私は我々経営者が先導役になり、具現化し、企業活動の中で、社会の期待に応えていくことが大事だと考えています。先に提案した「新・日本流経営」を追求する中で、是非とも、議論していきたいと思っております。

おわりに

最後に、経済同友会の運営について、簡単に申し上げたいと思います。

日本は今、旧来の仕組みによる恩恵に執着し、変革を遂げずに国際社会からおいていかれるのか、又は持続可能な市場主義に基づく経済社会を構築し、成長と発展を遂げることができるのか、という「分かれ道」にいます。

経済同友会創立時に、そして折々の日本の転機に、諸先輩方が示してきた功績を仰ぎ見、危機感を共有し、自らの企業経営の場で変革を実践し、成果を出していこうではありませんか。そして、その上で、政治・行政に健全な市場の確立を提案して行きたいと思います。

経済同友会は、このような志を一にした経営者の集まりであります。しかし、その想いは「ひとつ」でも、方法論にはそれぞれ個性があると思います。経済同友会の共有化とは、お互いに共有できることは何か、一方共有できないことは何かについて、お互いに認識し、理解することだと思います。その上で、会員各位を始め、政治、行政、NPO、シンクタンク、学界など幅広く政策形成に携わる人々に共感の輪を広げ、実現のため皆さんとともに積極的に行動し、努力していきたいと思います。活力ある、そして世界の発展に貢献し、頼りになる日本の構築は、我々の手にかかっています。会員各位のご支援とご協力をお願いいたしまして、ご挨拶とさせていただきます。

以上


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