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豊かな成熟社会を次世代に引き継ぐための決断を
― 持続可能性の確立とイノベーション(革新)による日本刷新 ―
<2007年代表幹事年頭見解>

社団法人 経済同友会
代表幹事 北城 恪太郎

はじめに

2006年は、6年ぶりのゼロ金利解除、「いざなぎ景気超え」等、日本の景気回復の堅調さを印象付ける年となった。 9月には安倍新政権が発足し、構造改革の継承とともに、教育再生、イノベーション、近隣諸国との関係改善等、独自の路線を提示され、日本の将来に向けた前向きの議論が始められた。

しかし、われわれは現状に安穏としていることはできない。今年6月には、夕張市が財政再建団体の申請を行い、その破綻が明らかになった。税収の10倍にも及ぶ借入金を抱えたその財政構造は、先進国中最大規模の公的債務を抱える日本の姿と変わりはない。

われわれは、夕張市の例を日本の将来に対する警鐘と受け止めるべきである。そして、景気が回復した今こそ、将来の危機を取り除き、活力ある成熟した社会を構築するための構造改革を断行しなければならない。

1.岐路に立つ日本――日本の現状と課題

財政破綻という最悪の事態を回避するためには、現状に対する徹底した情報開示と啓蒙活動が最も重要である。国民と危機感を共有し、事実に基づいて対策を講じることが、再生への道につながる。

第一に認識すべきは、日本が先進国の中で最も深刻な公的債務を抱えていることである。政府は、「2011年プライマリー・バランス回復」を財政再建の一里塚として掲げているが、それが達成された後も、長年にわたって蓄積された膨大な債務がまだ残る。EU加盟の財政基準に鑑み、せめて国内総生産の3%以内の財政赤字、国内総生産の60%以内の公的債務残高という水準を実現するまでは、改革の手を緩めてはならない。

第二に、当面の間、急激な人口減少とそれに伴う高齢化が続くということである。最近の推計によれば、日本の人口は2046年に初めて1億人を割り、以降も年100万人のペースで減少を続ける。2040年には、20歳~65歳の実質的な生産年齢人口は5,508万人、それ以外の幼少者・65歳以上の高齢者を含む人口は5,544万人となり、支える側と支えられる側との比率が1:1を超過する。これでは、世代間の相互扶助という哲学に基づく現在の年金制度を維持することは不可能であり、その持続可能性を厳しく問い直すことが急務である。

このような巨額の財政赤字と、急激な人口減少という未曾有の状況の下では、自己責任原則に基づき、真に必要な行政サービスを、優先順位を持って取捨選択していくことが不可欠である。

われわれは、今、歴史的な節目となる決断の時を迎えている。右肩上がりの経済成長と人口増加を前提とした従来の諸制度を抜本的に改革しなければ、巨額の負債を次世代に先送りするばかりではなく、将来にわたる日本の活力と成長の源泉を枯渇させることにもなる。

21世紀の日本は、もはや模倣すべきモデルを欧米先進国に求めることはできない。これからの日本の成長を支えるのは、社会のあらゆる分野において、前例や過去を凌駕する新機軸を打ち出し、新しい価値を創出する試み、つまりイノベーション(革新)である。

2007年は、安倍新政権の下で、「持続可能性」と「イノベーション」という二つの観点から日本の諸制度を刷新する、構造改革実行の年となることを期待する。

2.将来にわたる持続可能性を確立するために

  1. 構造改革の真価を問う、「増税なきプライマリー・バランス回復」
    財政再建の基本は、将来的な持続可能性の観点から、徹底して無駄を絞り込み、必要な分野への資源配分を行うことである。その意味では、まず、政府が掲げている「2011年プライマリー・バランス回復」という目標は、景気回復と税収増に気を緩めることなく、徹底した歳出削減によって早期に達成すべきである。
    対GDP比で先進5カ国平均の倍にも及ぶ公共投資の合理化や、公務員人件費の縮減、規制緩和・民間開放の推進等、さらなる歳出削減に寄与する分野は多い。これらの改革を推進せずに、国民負担の拡大への理解は得られない。
    このような歳出削減の枠組みの中で、健全な競争を支える市場インフラや、真の弱者のためのセイフティ・ネットの整備、実効性ある少子化対策など、日本の将来のために必要な分野について、優先順位を明確にして予算を策定すべきである。
  2. 将来の持続可能性を見極めた「小さくて効率的な政府」への転換
    プライマリー・バランス回復のさらに先を見通した課題として、「小さくて効率的な政府」のあるべき姿を描くことがある。 国の果たすべき役割を最小限のナショナル・ミニマムの提供と位置付け、抜本的な制度改革に踏み切ることが必要である。
    重要なことは、簡素で透明性が高く、国民の納得が得られる制度の構築であり、具体的には、税と社会保障を一体的に捉え、総合的な国民負担のあり方を検討することが必要である。特に、税については、消費税や法人課税のみならず、直間比率のあり方や、所得課税、資産課税等の論点も含め、税制全体を抜本的に見直すべき時期を迎えている。その際には、納税者番号制度と総合課税制度の実現を目指すべきである。

3.イノベーション(革新)によって成長を続ける国への転換

イノベーションとは、ただ研究や科学技術分野にとどまるものではなく、社会のあらゆる分野で革新に努める営みである。そのために必要なことは、新しい試みや試行錯誤を促進する環境、努力と創意工夫が報われる環境を整え、イノベーションを促進する「仕組み」を作ることである。

  1. イノベーションを促進する仕組みの構築
    イノベーションの原動力は、過去に挑み、それを乗り越えることにあるため、新規参入と挑戦の機会の拡大がその促進の鍵を握っている。このため、できる限り規制緩和を進めることが重要である。
    また、研究・開発の成果を社会へ還元して行くための仕組みも重要である。特に、政府による研究・開発予算の「投資対効果」を継続的に測定し、次の意思決定へとつなげていく透明性の高いサイクルの構築が不可欠である。
    さらには、新たなニーズ、イノベーションの種を発掘し、事業を通じて社会にその価値を還元する上で、ベンチャー企業が果たす役割を認識し、イノベーション戦略の一環として、起業促進に取り組むことが必要である。
    加えて、海外から人、モノ、金、サービスを受け入れることは、自由な競争の促進と多様性の向上、日本の産業構造の改革など、さまざま形で日本の経済社会の活性化につながる。こうした観点から、対内直接投資の拡大と、質の高いFTA・EPAの推進に積極的に取り組むべきである。
    イノベーションへの取り組みが必要なのは、個人や民間企業だけではない。地域もまた、自らの地理的条件や歴史、自然環境等を活かしながら、自立して個性ある発展を遂げていくべきである。このために、地方へ財源を委譲し、地方分権を一層進めるべきである。
  2. イノベーションを担う次世代の育成
    次世代の育成は、政治・行政・家庭・企業、すべてが知恵を出し、国を挙げて取り組むべき課題であり、そうした観点から、実効性・継続性ある政策を実施しなければならない。
    特に、教育のあり方は、「イノベーションの担い手の育成」という観点から、根本的に改めてゆく必要がある。知識や情報の吸収を中核に据えた画一的な教育からは、これからの時代、特に実社会において求められるような力は育たない。正解のない問題に取り組む力や、変化に挑戦する意欲をもった人材の育成を基本として、日本の教育改革に取り組まなければならない。

おわりに

日本を本格的に変革する試みは、まだ始まったばかりである。この実現に向けて、われわれ企業経営者は、「自立・思いやり・社会的責任」という問題意識に立って、発言を続けて行きたい。

「自立」とは構造改革の基本である。個人、企業、地域がそれぞれ、他に依存することなく、自らの努力で生きていく社会にならなければ、活力は生まれない。既得権やもたれあい、不合理な制度の温存は決して許してはならない。

その一方、さまざまな障害によって、競争に参加することが難しい人や、社会的な支援を必要とする人、失敗から立ち直り、再挑戦を目指す人に対しては、「思いやり」ある支援の手が差し伸べられなければならない。

また、自由で公正な競争により、活力を生む社会を指向する以上、官民を問わず、市場で活動するすべての者は、自らの「社会的責任」を強く自覚し、社会の信頼に背かないことを至上命題としなければならない。特に、われわれ企業経営者は、企業の持続的な成長の基盤が、社会からの信頼に他ならないことを強く自覚し、高い倫理観を持って経営を実践していくべきである。

われわれ一人ひとりの行動を、「自立・思いやり・社会的責任」の実現につなげていく1年でありたい。

以上


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