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2005年度代表幹事所見「イノベーション立国・日本を目指して」

社団法人 経済同友会
代表幹事 北城 恪太郎

はじめに ~ 2004年度を振り返って

この1年間を振り返り、日本経済は長い停滞を脱して、いよいよ非常時から平時へと復活を遂げつつあると実感しています。金融機関の不良債権処理の進展と、ペイオフ解禁の実現はその象徴だと思います。

ただ、この回復は、米・中経済の堅調さ等、外部環境に支えられるところが大きいわけで、われわれとしては、現在の回復基調に安堵していることはできません。今のままでは、米・中をはじめとする各国の政治・経済情勢やわが国との関係、原油価格等世界経済を左右する要因によって、日本の成長の前提が容易にゆさぶられかねないからです。現在の明るい兆しを確固たるものとし、自律的な成長へとつなげていくため、われわれはさらなる飛躍を遂げる必要があります。

こうしたわれわれの認識や危機感に照らして見ると、公的部門の構造改革はまだまだ不十分で、「半歩前進」と評価せざるを得ないと思います。郵政改革、道路公団民営化、三位一体改革、社会保障制度改革等への取り組みは、小泉政権の変革への意志を示しましたが、根本的な問題を解決して、将来に向けた国民の安心と期待を確実にするには至っていません。

一方、経済社会の担い手である企業についても、昨年度中は、社会の信頼を裏切るような事件や、企業の価値や存在基盤を改めて問い直す動きも起こりました。

このような中、われわれは過去と決別し、未来に向けた挑戦に取り組むべき時を迎えていると思います。新しい成長に向かうために、今こそ将来に向けた大胆な革新、つまり「イノベーション」に取り組まなければなりません。

1.「イノベーション立国・日本」を目指して

(イノベーションとは何か)

わたしは、イノベーションとは、ただ科学技術や企業経営等の狭い範疇に止まるものではないと思っています。それは、過去の経験を超え、既存のものを凌駕する斬新な新機軸を打ち出して、革新的な戦略・発想・技術・製品・サービス等、新たな価値を創造することであり、さらに、生み出された価値を梃子に社会に大きな変革をもたらし、飛躍的な発展につながる原動力を生み出すことです。イノベーションとは、いわば、過去を断ち切り、現状に挑み、未来の価値を創造することだと言えるでしょう。

連続ではなく非連続の変化である点、過去の延長線上での進歩にとどまらず、大きな飛躍を伴う点において、イノベーションは、従来われわれが得意としてきた「カイゼン」と異なると思います。

もちろん、日本が活力・競争力を発揮していくためには、あらゆる分野における継続的な「カイゼン」への取り組みも必要です。しかし、大胆な方針転換や根本的な制度的矛盾の解決のためには、前例を否定し、非連続な変化を引き起こす「イノベーション」と、イノベーションを成長と発展に結びつけるための「戦略」とが必要となるのです。

(イノベーションの源泉・起点は)

イノベーションの源泉は、第一に、新しい技術や理論の発明・発見と、その応用を通じた価値創造です。遡って見れば、活版印刷の技術が、蒸気機関が、電気が、そしてインターネットが、どのような形でわれわれの社会に飛躍的な変化をもたらしたかは明らかです。

目に見える「発見」や「発明」の他にも、個人のニーズや需要、価値観など、見えない価値を発見することもイノベーションにつながると思います。「個人・家庭向け貨物」という新たな発想と需要の発見から宅配便ビジネスが、「環境と走りの共存」という価値を突き詰めることからハイブリッド車が生まれてきたことは、その好例だと思います。

また、異質なもの同士が結びつくことや、異質な発想を導入することも、新たな価値を生むと思います。製造工場の発想を食品産業に応用したことからファストフードというマーケットが、従来型の店舗とインターネットの相乗効果の中から、オンライン・ショッピングという巨大な仮想の市場が生まれました。

こうしたイノベーションの本質は、新しいものやサービスを生み、不可能を可能にしたことだけではありません。新しい価値の創出を通じて、個人の価値観や人と人との関係、社会の仕組みにまで変革の輪を広げ、次なるイノベーションを引き起こしていることにあるのだと思います。

(イノベーションが生まれる風土)

イノベーションが活発に沸き起こり、推進されていくためには、国や歴史的背景、文化的差異を問わず、いくつかの共通する要因があると思います。

その一つは、「イノベーション」の重要性を、国としての競争力を高める戦略に位置づけることです。そして、変化の激しい、予測可能性の低い時代にあって、変化への挑戦と適応こそが成長と活力を生むということを、社会の共通認識として根付かせなければなりません。

さらに、そのような認識を制度として定着させ、イノベーションを促す方向へと、社会システムの転換を図ることも重要です。

その際、基本となる発想は、試行錯誤や未知の可能性への挑戦を応援し、新しい価値創造に成功した人が報われる仕組みを作ること、異質なもの、新しいものを受け容れ、多様性を活かす、自由でオープンな社会を作ることだと思います。そのような中で、一つのイノベーションが生まれ、社会に恩恵をもたらせば、それを受けて新たな挑戦も次のイノベーションも生まれてくるでしょう。

わたしは、継続的なイノベーションによって活力と魅力を生む国、「イノベーション立国」こそ、日本の目指すべき将来像だと確信しています。そして、その第一歩は、「イノベーションの連鎖」を生み出し、社会全体を再び活性化させることだと思います。

2.日本の将来を切り拓く3つのイノベーション

「イノベーション立国」に向けて日本を変えていくためには、社会のあらゆる分野において、変革を進めなければなりません。中でも、民間主導社会を担う企業・経営者、社会システムと公的部門のあり方、そして個人の意識におけるイノベーションは極めて重要です。それぞれにおいて、乗り越えるべき課題は異なるでしょうが、新たな次元を目指すイノベーションへの気概をもって、変革に取り組んでいくことが何よりも重要だと思います。

(企業経営のイノベーション)

企業の最大の使命は、生活者一人ひとりの多様なニーズに「解」を提供し、新たな価値を生むことにあります。われわれ企業経営者は、イノベーションと企業価値の向上という最大の使命を全うするために、来るべき変化を予見し、企業文化や組織体系、評価や報酬の仕組みまでも視野に入れて、自らの変革に取り組まなければなりません。

また、既存の市場や業界が見落としがちな新しいニーズの発掘や、革新的な技術・発見の応用という面で、新事業が果たしてきた役割は重要です。個人が起業に挑み、新事業創造が活発に起きるような社会環境を整えることも、企業経営のイノベーションを推進する上で重要だと思います。

(公的部門のイノベーション)

日本の社会において、最もイノベーションを受け入れず、また現実に変革が進んでいないのは、政府及び公的部門です。現状の枠組や利害関係の温存を前提とする、形ばかりの「構造改革」はイノベーションの名に値しません。既得権益という最大の壁を打破することが、公的部門に大胆なイノベーションをもたらすための第一歩になると思います。

これからの官の役割は、個人や民間がイノベーションに挑戦するための環境やインフラを整備することです。自ら努力し、新しいことに挑戦する人が報われるような制度を構築することが、自らの使命であると自覚すべきです。

特に、個人が将来への不安ゆえに萎縮することなく、活き活きと挑戦することができる社会を造るためには、財政・社会保障制度等の改革を早急に進めることが極めて重要です。さらに、イノベーションの源泉である多様性と自助努力、創意工夫を促すという意味では、国の財源・権限を地方や民間に委ねていくことも急務だと思います。

(個人の意識のイノベーション)

われわれが目指す社会の姿やイノベーションの意義を、個人の発想や自覚にまで浸透させて行かなければ、本当の意味での社会のイノベーションは起こりません。わが国の教育・人材育成のあり方も、多様性や差異を前向きに捉える社会、自助努力や挑戦が報われる社会という、われわれが目指す社会の姿を見据えつつ、大胆に改めることが必要です。

3.おわりに~われわれが目指すもの

日本はこれから、少子高齢化と人口減少、資源小国としての限界という厳しい条件の下で、国内のさまざまなシステムの持続可能性を確保していくことを迫られています。

このような中、既得権益に縛られた小刻みな「カイゼン」では事態に対応することはできません。日本の将来を切り開く為には、官民、個人を問わず、「イノベーション」という発想を持ち、変革を加速していく必要があります。

われわれ日本人は歴史的に、新しいものを受け入れ、自らのものとして取り込む才知を発揮してきました。たゆみない挑戦と進化がわれわれの社会の遺伝子であり、これまでの10年間の停滞こそが例外であったということを、これから身をもって証明していこうではありませんか。

経済同友会に集うわれわれ企業経営者の使命は、イノベーションによって成長と発展を目指すことですが、社会の規範や信頼を裏切っては、持続的な成長は望めません。社会的責任経営の推進という高い理想を掲げつつ、自らの責務に取り組んで行きたいと思います。

また、経済同友会は、今年度は、企業経営のみならず、財政、金融、政治、教育、外交等、社会のさまざまな分野において、「イノベーション」を引き起こすには何が必要かという問題意識を共有し、活動を展開していきたいと思います。

同友会の求心力を高め、より強力なメッセージを発信していくため、われわれは自らの組織・運営においてもイノベーションに挑戦していくつもりです。

以上


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