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「イノベーション」で新たな成長の基盤を築く -「次の10年」を見据えて-

社団法人 経済同友会
代表幹事 北城 恪太郎

はじめに

- 「失われた10年(lost decade)」から「次の10年(next decade)」へ

私が代表幹事に就任した1年前、「夜明け前」の最も暗い時期にあった日本経済も、ここにきてようやく明るさを取り戻し、朝の陽射しが随所に射し込み始めています。この流れをあらゆる地域・業種に広げ、将来の「輝ける日本の構築」へとつなげていく必要があります。そのために、我々は今何を実行すべきなのか - そのような問題意識を持ちながら、2年目を迎えるにあたっての私の考えを述べさせていただきたいと思います。

我々はこれまで、「失われた10年」と言われる長い停滞の中で、そこから一刻も早く抜け出すことに大きな関心を払ってきました。そして、たとえ一時的に大きな痛みを伴ったとしても、時代に合わなくなった制度を改革し、限りある資源を大胆に再配分していく構造改革が必要であると訴えてきたのです。その意味で、小泉総理の構造改革路線を支持し、時にはその内容や進捗度について厳しい注文も申し上げてきました。ただ、構造改革はあくまで目的を達成するための手段であって、それ自体が最終的にめざすべき目標ではないのです。

我々がめざす最終目標とは、民間主導によって活力ある経済社会を築くことであり、その中で個人がそれぞれの可能性に挑戦しながら、質の豊かな生活を享受することのできる社会を実現していくことにあります。残念ながら、これまでの構造改革では、過去の負の遺産の処理や既得権益との確執に多くのエネルギーが費やされてきたため、将来に向けて大きなダイナミズムをもたらす新事業創造や地域活性化などに、十分目が行き届いていたとは言えませんでした。

しかし、経済が回復に転じた今こそ、我々の視線も「過去の清算」から「将来の展望」へと転じる必要があります。構造改革を加速すると同時に、その先にあるものをしっかりと見据えながら、「次の10年」に向けた布石を確実に打っていく段階を迎えているのです。

1.革新(イノベーション)の追求 - 新たな成長に向けた改革と創造

1年前の代表幹事就任挨拶において、私は「新事業創造立国」というテーマを掲げ、その実現に向けた決意を表明しました。2004年度では、その延長線上において「革新(イノベーション)」を新たなキーワードに活動を展開していきたいと考えています。

「革新(イノベーション)」という言葉は、色々な意味で使われますが、ここでは、様々な制約や限界に直面した仕組みの「改革」と、そのような制約や限界を超えたまったく新しい仕組みの「創造」、の2つの意味合いから成り、かつそれらが新しい付加価値の創出に結び付くものである、と定義したいと思います。

企業経営において、新技術・製品・サービスの開発、新規事業や新たなマーケットの開拓といったイノベーションが、企業の継続的な発展を支える重要な鍵であることは言うまでもありません。また、人材マネジメントやコーポレート・ガバナンスといった組織内の課題も、時代の変化に応じて常にイノベーションを続けていくことが、企業競争力の強化にとって不可欠なものとなっています。

こうした民間部門のイノベーションから生まれる付加価値が、日本経済全体の「新たな成長」の原動力となるのです。物質的な豊かさの中で成熟した消費者の価値観、グローバル化の中での国際競争、まもなく迎える人口減少、地球環境に与える負荷の限界など、21世紀の日本経済が直面する様々な環境や条件を視野に入れると、イノベーションによって付加価値を創出し続ける力を高めることこそが、日本の将来を約束すると言っても過言ではありません。

イノベーションの連鎖は、社会のあり方を大きく変える力にもなります。例えば、身近な例として携帯電話の世界が挙げられます。イノベーションがさらなるイノベーションを生み、インターネット、カメラ、動画、GPS、決済サービス、電子マネーなど最新の技術が次々と付加され、携帯電話はもはや「電話」という概念を超え、無限の可能性を秘めた機器へと進化を続けています。その過程では、人々の生活様式や行動パターンも大きく変え、社会のあり方も急速に変えてきたのです。

さらに、こうした先端技術分野に加え、新たな成長のフロンティアとして期待されているのが、生活に密着したサービス分野におけるイノベーションです。これまで、医療、高齢者ケア、保育、教育といった政府の関与が強い分野は、イノベーションが起こるインセンティブに乏しい世界でした。しかし、民間の創意工夫によってイノベーションが起これば、新たな市場拡大とそれに伴う雇用創出が大きく見込まれるのです。その障害となっている規制や補助金のあり方は、ここで大胆に改革していくことが必要です。

こうした新たな成長の原動力となり、その主役となるのは、第二、第三の創業を続ける既存企業であり、新たな創業に挑戦するベンチャー企業やNPOにほかなりません。その主役を次々と生み出すために何が必要なのか、我々が取り組むべき課題は多肢にわたりますが、「次の10年」への布石を打つべく、「新事業創造立国」の実現に向けた様々な挑戦を続けていきたいと考えています。

2.「小さな政府」の実現 - 公的部門でもイノベーションを

本年度のもう一つの重要なキーワードとして、「小さな政府」を掲げたいと思います。経済同友会は、かねてより「小さな政府」を志向してきました。その理由は、持続可能で活力ある経済社会を実現するためには、民間ができることは民間が担い、健全な市場機能を活かすことが必要だと考えるからです。

また、国と地方が抱える膨大な財政赤字は、将来において経済破綻につながりかねない大きなリスク要因であり、これ以上放置することはできないという強い危機感もあります。政府は、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の黒字化を2010年代初頭としていますが、その間の年次計画が整合性のある計算根拠によって示されるとともに、「次の10年」に向けて直ちに行動に移されるものでなければ、国民の納得と信頼を得ることはできないのです。

我々が「小さな政府」を考える際には、二つの観点を視野に入れることが重要です。一つは公的部門の規模や権限の範囲をどの程度にするのかという点であり、もう一つは国民の負担と受益の観点から国民負担率をどの程度にするのかという点です。

国のめざすべきビジョンを明確にし、それに向けた施策を着実に実行に移していくという意味での強いリーダーシップとそれをサポートする有能なスタッフの存在は欠かせません。しかし、現在の官主導による中央集権システムはすでに時代に合わないものになっており、権限や人員を不必要に温存して非効率であるばかりか、民間部門の活動を大きく阻害する要因となっているのです。三位一体改革や公務員制度改革などの諸改革を断行し、国民が真に必要とする政府の機能と役割は何かを見定めながら、民間部門だけでなく、公的部門にも新たなイノベーションを起こしていくことが必要です。

また、国民の受益と負担の観点から考えると、税、年金・医療・介護を含めた社会保険料の負担が全体的整合性を欠いたまま増加する一方、受益は低下し、国民の不満や不安が高まっています。いま一度、国民の安心が得られるナショナル・ミニマムとそれに伴う国民負担率のレベルはどの程度なのかについて、立場を超えた国民的な議論が必要です。年金改革のように将来世代に大きな影響を及ぼすような重要課題を、安易に当面の利害調整や先送りで片付けることは、将来に大きな禍根を残すことになりかねません。

3.社会的責任の自覚 - すべては信頼の構築から始まる

ここで、民間主導による経済社会の実現をめざすにあたり、経済同友会がこれまで提唱してきた「企業の社会的責任(CSR)」の重要性をあらためて指摘し、会員各位の自覚と実践を求めたいと思います。

非常に残念なことですが、相変わらず企業の不祥事が続いています。しかし、何事も「信頼」の上に成り立っていることを強く意識し、企業が社会から見て好ましい存在であることを自らの行動によって示さなければ、「民間」に対する信頼感も生まれず、我々のめざす経済社会の実現は不可能なのです。

また、CSRは単に信頼を構築するためだけにあるのではなく、社会の新しい価値観を積極的に取り入れていきながら、企業の競争力にも結び付けていくことにその真髄があります。地球環境への配慮や、家庭と仕事の両立を求める人々の価値観など、様々な社会のニーズを視野に入れながら、それを価値創造につなげていくビジネス・モデルを築くことは、まさにイノベーションの一環であり、「次の10年」における新たな成長の源泉となるものと考えます。

おわりに - 「国民の共感」が社会を変える力になる

経済同友会は、経営者が個人の資格で参加し、一企業や特定業種の利害を超えた幅広い先見的な視野から、国内外の経済社会の諸問題について考え、議論するという伝統の中で、数多くの提言を世に送り出してきました。本年度は、こうした同友会の考え方や主張を単に打ち出すだけではなく、わかりやすい言葉で国民に伝え、「国民の共感」を得ることに重点を置きたいと考えています。

我々の提言は、経済界の利益のみを追求するものでも、短期的な辻褄合わせに終わるようなものでもありません。すべては、経営者としての経験を活かしながら真剣な議論を重ね、長期的に見て真に国民の利益になるように、あるべき姿や方向性を示したものなのです。その内容が国民の皆さんの一人ひとりから共感を得られた時、そこに社会を変えることのできる大きな力が生み出されていくものと確信しています。

そのためには、まず戦略的な広報活動や対外的な連携活動を進めることによって、多様かつ新しい形で我々の活動を国民に広く伝えていくことが必要となります。さらに、それぞれの委員会の活動においても、従来の枠を超えたイノベーションを起こしていくことが重要となるのです。会員各位がその主役の一人として積極的な役割を果たしていただけるようここにご協力をお願いし、本年度の活動の船出にあたっての所見とさせていただきます。

以上


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