ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

1998年度通常総会 牛尾代表幹事所見
-構造改革につなげる経済対策と企業改革-

はじめに
I.構造改革につなげる経済対策を
II.信頼回復に向けた企業改革を
おわりに

はじめに

橋本総理が、財政構造改革法を一部改正して、当面の政策の優先順位を景気対策に転換したことは、内外から高い評価を受けた。しかし、その後の内需拡大の具体策をめぐる議論において、暫定的な特別減税や従来型公共投資の復活など、構造的・制度的改革につながらない裁量的景気対策が主体になりつつあるため、国民の間にも海外にも不満が広がりつつある。

橋本政権は1年半前、「フリー」「フェア」「グローバル」という市場経済の国際標準を真正面から受け止めて、本年4月から金融ビッグバンを実施することを決定した。この決断は評価されるべきものであり、並行的に進められた6つの改革に対する期待も高まっていた。このような市場原理に基づく構造改革を、日本人ならびに日本企業が十分消化し、新たな発展への道を切り拓くであろうことは、85年のプラザ合意以降の円高に対応した製造業の成功体験によって裏打ちされている。

I.構造改革につなげる経済対策を

我々の目指す構造改革とは、「旧来からの制度や仕組みを抜本的に変革し、21世紀を目指したグローバルな市場原理に対応する経済社会制度を構築すること」である。こうした構造改革と当面の内需拡大のための経済対策は、決して矛盾しない。小さな政府の実現、民間主導型経済の推進、それを実現するための様々な制度的改革をこの機会に早期に実施することは、むしろ景気対策の効果を高める機能を持っている。

構造改革の流れに沿えば、内需拡大の主役は明らかに民間需要であるべきで、それを実現する手段は、減税、規制撤廃、民営化の推進による民間経済分野の拡大である。公共投資についても、新たなプロジェクト型公共投資、21世紀の国づくりにつながる新社会資本整備への重点配分、オープンかつ透明性の高い発注方式の採用、PFI手法の導入などを有効に活用することによって、民間経済に活力を与えることができる。

そして、構造改革の方向に沿って、経済対策の主役に据えられるべきは、個人や企業の活力を引き出し、民間需要を拡大するための抜本的税制改正である。既に繰り返し提案してきたように、法人の実効税率の40%への引き下げ、個人所得課税の最高税率の当面50%への引き下げ(最終的には40%に引き下げる)と累進度の緩和は、遅くとも99年度には実現すべきである。また、99年度からのこのような抜本的税制改正を前提とすれば、今年度はたとえ特別減税であっても最高税率の引き下げ、累進度の緩和という制度減税への道筋に沿ったものとして、定率方式によるべきである。法人減税についても、98年度に実効税率40%との差額ついて、その方向に沿った特別減税を実施すべきだと考える。

対策のもう一つの柱は、規制撤廃である。民間ができることは、全て民間に委ねるという大原則を立てることが必要である。民間人の経済活動は自由なものであり、規制は例外であることを徹底すれば、企業の活力は確実に蘇るだろう。市場機能に委ねるべきではないものを新たに官民で討議し、新しいルールを作るとともに、市場に必要な監視体制を確立する。このような新しい発想が必要であると考える。

以上のような構造改革の実行によって生まれる民間経済分野の拡大と活性化は、かつての高度経済成長をつくった日本人および日本企業の活力を呼び戻し、目覚めさせることに十分な役割がある。構造改革につながらない裁量的、一時的な政策であれば、国民も企業もそれを積極的なものとして受け止めず、折角の減税も貯蓄に回る可能性が高いが、日本が確実に構造改革を実現していく姿が明らかになってくれば、民間も経済活性化に対して積極的に参加するに違いない。

4月1日からの金融ビッグバンの実施によって、既に動きが見られるように、海外の金融関連企業の日本進出が期待される。このことは、これまで停滞していた日本の金融界に大きな刺激と活力を与えるだろう。金融業界にとって活性化の足枷となっている不良債権処理は急務の課題であるが、経済対策の一環として整いつつある制度を前向きに利用し、企業は大胆な処理に早急に取り組むことが不可欠であると考える。

また、金融ビッグバンによる海外金融企業の進出とも相俟って、各分野における海外からの日本への直接投資が拡大することが極めて重要である。現在、日本の対外投資の13分の1にすぎない対日投資の少なさが、日本経済空洞化の大きな原因であり、日本市場の魅力の乏しさを示している。

我々の提案する構造改革によって、日本市場が世界とほぼ同じ条件になれば、日本人の持つ優れた能力、日本企業の持つ組織的行動力、日本の潜在購買力の大きさ、そしてアジア経済における日本の重要性などを考え、海外企業の日本への進出は極めて活発なものとなるだろう。

これからの日本経済の繁栄は、日本の企業と世界の企業の共存によって保たれるべき時代になったことを認めなければならない。そのためにも、日本の構造改革に対する世界の強い期待を素直に受け入れる必要がある。

II.信頼回復に向けた企業改革を

今、我々経営者と企業にとって最も大事なことは、社会からの信頼回復である。政治や行政に依存することなく、全精力を結集して市場に挑戦しなければならない。

そのために為すべきことの第一は、個人を主役とする自立と連帯の企業体質の構築である。機動的かつ柔軟に動ける組織、仕事の選択の自由、経営のルール化、管理の透明化、公正な評価など、参加する全ての従業員が明るく自己責任において能力を発揮できるような経営をする必要がある。かつての高度成長は、企業を主役とした成長であったが、これからの新しい発展は、企業の中の個人が主役になる時代だからである。

また、古い体質のままで、行政の顔色をうかがい、業界の横並び意識を捨て切れないような経営は、市場から退場しなければならない。従来の仲良しクラブ的な人間関係の重視、従来の仕組みを変えられない伝統慣習への執着など、近代化する市民社会の価値観とかけ離れた古い経営の体質を、新しいスタートにおいて大胆に切り捨てなければならない。

第二は、資本効率重視の経営である。世界中が、メガコンペティションの中で高い効率を求め懸命に経営をしている時に、日本は多くの経済分野で、その合理化努力が大きく遅れている。相当のスピードで資本効率を重視した経営に転換して、開放された市場経済において、できるだけ早く競争力を回復しなければならない。そして、このような改革を進めるためには、併せてコーポレート・ガバナンスの確立や十分かつ適切なディスクロージャーが必要である。

これなくして日本の企業に将来はない。政治・行政の大きな改革と同じくらい、いやそれ以上に求められているのが企業経営の刷新であることを我々は自覚しなければならない。

おわりに

昨今の日本は、“too little, too late”と批判されてきた。制度改革は徐々には進んできたものの、期待を持たせては失望させ、再び方向を示しては停滞することを繰り返し、かなりの焦燥感を国内外に与えている。いま、政府は思い切った改革に着手し、大胆な新しい体制を自らの手で選ばなければならない。それを実現するための制度改革を年内に決断し、実行するスピード感覚が必要である。国民も世界も、そんな政治、行政を望んでいるに違いない。

3年前、代表幹事就任にあたり、「21世紀へのアクション・プログラム」の策定に取組むことを活動の目標に掲げ、昨年の年頭には「市場主義宣言」を発表するなど、我々は一貫して構造改革を主張してきた。それは、改革なくして明るい未来は拓けないからである。

21世紀の始まる2001年1月1日までに、2年半を残すのみとなった。我々は、この貴重な世紀末にやるべきことに全力を注ぎ、21世紀に生きる次の世代に、魅力ある姿でこの日本を渡そうではないか。本年がまさに正念場である。今大事なのは、早急かつ大胆な改革への取組みである。政治家も官僚も経営者も、総力を結集して改革を実現しなければならない。

以上


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。