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民間活力を引き出す構造改革を
- 1997年度通常総会 牛尾代表幹事所見 -

1.はじめに

ペルーの人質事件

ペルーの人質事件の解決にむけて、テロに一切譲歩せず、人質の安全の確保と作戦の成功のために現場が最善の努力をするという、フジモリ大統領のリーダーシップに大変感動した。毅然とした態度で原則を曲げないフジモリ大統領の姿勢が、国際的に支持された。世界の大きな座標軸の中で、同質的で十分に開放されていない日本の社会通念と世界とは、ずれがあることを痛感した。そういう意味で、今回の事件は学習効果のある忘れられない事件であった。グローバリゼーションという観点から、世界第2位の経済国として、今後の教訓としたい。

動き出した構造改革

活性化に向かう日本経済

日本経済の中で活性化する分野が増加しつつある。日本社会の構造改革もようやく動き出した。先の政府の発表によれば、わが国の経済は、成長率ゼロ%台の時期を含むとはいえ42ヶ月間上昇し、期間からすると岩戸景気に並んだことになる。確かに成熟段階に入ったわが国では、かつての高度成長期のような高い伸び率の経済成長は望むべくもない。また構造改革の過程で全ての産業、全ての企業が一様に好調感を享受できるわけでもない。それでも、昨年の成長率がOECD諸国の中で最も高い3.6%であったことも考えあわせれば、日本経済の足腰はかなりしっかりしてきている。

民間主体の活性化を本流に

いま必要なのは、明るさが見え、円高の行き過ぎが是正されてきたこの時に、官から民への転換をいっそう加速し、経済活性化の流れを本流にすることである。そのためには着手されつつある諸改革を、この時期にこそ、総合的に、かつスピードアップして進める必要がある。その観点から、我々は現政権が推進する「6つの改革」を積極的に支持し、その実現に協力したい。

2.構造改革の本格始動を

グランド・デザイン変更による財政構造改革を

不十分だった97年度予算

構造改革の進展をいっそう目に見えるものにすることが重要である。残念ながら、財政構造改革元年が標榜されたが、97年度予算ではその方針は十分に反映されず、掛け声倒れに終わった。それは、古いグランド・デザインを残したままでの財政構造改革が如何に困難であるかを示した。97年度予算は執行段階での大胆な節減はもとより、公共事業など、補正予算による歳出の追加は認めない。

古いグランド・デザインの破棄

国土の均衡ある発展
所得の均衡

予算編成は内閣主導で

総歳出の大幅削減

98年度予算の編成は、構造改革の象徴として、改革の入り口と位置づけられる。わが国財政の実態は、財政赤字の辻褄合わせで解決できる域をはるかに越えている。まず、古いグランド・デザインの破棄を決意することから始めねばならない。政府は「6つの改革」を通じて、21世紀の新たな日本のグランド・デザインを打ち出し、それに沿った財政の姿を作り上げるべきである。それは、官から民へ、規制から市場へという大きな流れの中で、「国土の均衡ある発展」ではなく「個性ある地方の自立」を、「所得の均衡」ではなく「自立した市民が主役の活力ある社会」を目指すものでなければならない。こうした新しいグランド・デザインの下での予算は、内閣の主導でなければできない。具体的には、まず古いグランド・デザインで固められた中央・地方を含めた総歳出の大幅削減が不可欠であり、歳出項目別にメリハリのある削減を実施すべきである。その際、公共事業はもとより、地方への交付金や補助金、ODA、防衛、社会福祉、教育など、一切の聖域を排除し、全経費を新しいグランド・デザインに照らして、抜本的に見直す。そして、行政組織改革については、「民ができることは全て民で」という基本思想を徹底し、中央・地方を含めて簡素で効率が高い「小さな政府」の実現を目指す。

自己責任による金融システム改革を

始まった金融ビッグバン

経営者の自己責任の貫徹

護送船団方式からの決別

民間金融機関の経営者は、金融システム改革を念頭においた、生き残りのための具体的対応をとるべきである。新北海道銀行の設立や日債銀が行った外国企業との提携、子会社の整理、資産の売却といった動きは、経営者の現実的な決断として評価できる。これらは、金融システム改革の具体的な道筋になっていく。さらに、来年4月からは改正外為法が発効するのをはじめ、多くの改革関連法案が提出され、日本版ビッグバンが本格化する。その場合、金融機関の経営者は新たなビジネス・チャンスを掴むと同時に、厳しい対応を迫られることになろうが、ステークホルダーズに対する明確な情報開示を前提として、自らの経営責任において対処していかねばならない。決して従来のような護送船団方式や監督官庁主導であってはならない。そうした経営者の自己責任に基づく判断と努力によってこそ、企業や個人にとって利便性が高く、効率的で魅力のある金融資本市場を作る金融ビッグバンの目的が達成できる。その意味で、本年と明年は金融界にとっては、大変重要な年である。

遅れる税制改革

そして、金融ビッグバンの実行にあたっては、郵貯や財政投融資の改革が並行して行われると共に、税制などの条件整備が不可欠である。とりわけ、国内外の資金移動が自由になる中で、金融関連税制がグローバル化されなければ、わが国金融資本市場はかえって空洞化しかねない。もはや財源論に固執している時ではない。グローバルかつ総合的な観点から早急に結論を出し、来年4月に間に合わせるべきである。

ROE重視の積極的企業経営を

進む二極化

成長部門をさらに伸ばし、増やす

現在、企業経営を見ると、業績や株価などが産業別に、また同じ産業内でも企業別に二極化が進んでいる。これは市場が産業や企業を厳しく評価し、選別し始めたことを意味している。そうした中で重要なことは、活性化した分野がさらにダイナミックな成長を遂げ、経済全体をリードすることである。そして、一方の極である低成長部門の中から、できるだけ早く高い生産性をもつ企業が誕生し、成長部門に合流してくることが期待される。わが国経済の二重構造が市場開放と競争原理によって解消され、高い生産性と強い国際競争力をもった、より高水準の産業集団に収斂していく。そのエネルギーこそが経済成長の活力の源泉になる。ダイナミックな成長分野には、減税が最も適切な政策であり、低成長分野には、改革、とりわけ規制緩和や金融ビッグバンなどの産業構造改革が重要なポイントとなる。

ROE(株主資本利益率)

その場合の企業にとって重要な経営指標がROE(株主資本利益率)である。経済はますますグローバル(国際性)、フリー(自己責任)、オープン(透明性)の方向に進みつつあり、企業も市場でますます厳しく評価されるようになる。その最も重要な評価基準がプロフィット(収益)である。収益重視は従業員や顧客といったステークホルダーズの利益を軽視することではない。むしろ、ストック・オプションや能力給の導入により従業員の活力を引き出し、また顧客のニーズに報いるなど、ステークホルダーズの利益を守ることが、長期的に持続可能な収益の向上に結実する。つまり、これまでの経営姿勢とは全く異なり、収益を中心としてステークホルダーズに成果を還元できるような経営システムの時代が到来しようとしている。

税制改革を改革のメニューに

税制改革を先送りしてはならない

「税収中立」では真の改革にならない

個人最高税率50%

法人実効税率35%

「6つの改革」の基本目標に減税を据えよ

経済の基盤は民間活力である。その民間活力を引き出すための税制の再構築を急ぐべきである。「増税なき財政再建」を支持しつつも、それが単なる財政収支の改善にとどまり、減税を先送りするものであってはならない。財政再建は歳出と歳入の両面にわたる一体的改革であるべきで、税制改革も、税収全体あるいは税目ごとの税収を変えない範囲で、部分的な手直しをする「税収中立」では真の改革にならない。新しいグランド・デザインに基づいて、歳出を大幅に削減すれば、遅くとも2000年までにはグローバルな標準に近づくことができる。すなわち、所得税・住民税を含めた個人の最高税率を50%に、中央と地方を含めた法人の実効税率を35%にまで引き下げることが十分に可能となるのである。日本とともに最も税率の高かったドイツは、グローバルな時代に備えて税制改革を着々と準備しつつある。日・米・独が同じ税制に基づく市場を構築することが、世界経済の活性化にとって不可欠である。国際標準の税制の実現を目指して、官需主導の経済から民需主導の経済を構築するためにも、政府は「6つの改革」の基本目標として、減税を視野に入れるべきである。

3.新しい課題への経営者のリーダーシップを

21世紀に向けた新しい民間主導の経済社会を構築するための変革のプロセスは、大変厳しく、民間企業と社会は共同して取り組んでいかなければならない。その際、最も重要なのは、民間経営者のリーダーシップと経営姿勢である。

環境問題

21世紀を迎えるにあたって、環境破壊阻止が先進国、途上国を問わず世界共通のテーマになっており、「ゼロ・エミッション社会」の実現が提唱されている。今年12月には京都で温室効果ガス排出規制条約国際会議が開かれる。日本は議長国として成長段階の国を含めた各国の主張をまとめなければならない。基本的には「ゼロ・エミッション社会」の実現にむけ、動き出さなければ、地球環境を維持できないという段階に来ている。もはや、大量生産、大量消費、大量廃棄という戦後生まれた消費型経済では成り立たない。

雇用問題

一方、当面の改革にあたって雇用問題は避けて通れない。我々はヒトを大切にする経営姿勢を堅持しつつ、多くの企業でリストラを行ってきた。産業構造の変化の中で、労働市場の流動化促進と個々人のエンプロイアビリティ向上努力は欠かせない。企業経営者は単なるリストラを越えた生産性向上や新事業展開による雇用創出に取り組まねばならない。つまり、日本の人間尊重の経営という基本姿勢を保ちながら、メガ・コンペティションの時代に対応することが必要である。そして、雇用転換の円滑化や失業保険の拡充に万全の措置を講ずることは、政府のなすべき重要な課題である。

4.おわりに

「市場主義宣言」

官から民へ、それを受けとめる民の自覚

我々は本年1月に「市場主義宣言―21世紀へのアクション・プログラム」を発表し、経営者の役割を強調した。しかるに、市場経済において最も大切な経営者への信頼を損なう行為が繰り返された。経済の主役を官から民に移すという歴史的転換は、それを受けとめる民の自覚なくして実現できないのみならず、ようやく動き出した改革の動きを後戻りさせかねない。我々民間経営者の行動が今後のわが国経済社会の道筋を決めるのであり、その責任の重さは計りしれない。

経営者の社会的責任

我々は、未来に対する企業の方向性を定めるとともに、新しい経営者像を模索し続けなければならない。30年ほど前、木川田代表幹事は、経営者の社会的責任を主張された。そして、再び、経済同友会の伝統ともいえる経営者の社会的責任を個々の会員がどのように考え、経済同友会としてどのように取組むかが、経営者自身の課題として問われる時代となっている。

以上


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