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新しい「市場」の創造 - 21世紀への我々の決意 -
- 1996年度通常総会 牛尾代表幹事所見 -

1.はじめに
2.経営者としての責務
3.新しい「市場」の創造
4.おわりに

1.はじめに

現在、わが国は敗戦後にも匹敵する重大な岐路に立っている。創立50周年を迎えて、我々は本日を経済同友会「第二の創立」の日と考え、経営者としての責務を厳しく自覚し、決意を新たに取り組む。

2.経営者としての責務

21世紀まで5年と迫った現在、世界は、冷戦終結から90年代前半を通じて大きく変貌をとげ、さらにこの変化は加速しようとしている。その中で、わが国の戦後経済システムを効率的かつ有効ならしめた前提条件は根底から覆された。にもかかわらず、わが国はいまだ50年の成功体験にとらわれ、21世紀の新しい国造りへの本格的改革に踏み出すに至っていない。

世界は既に大競争の時代に突入し、世界中が激しく改革を競っている。ことに台頭著しいアジアでは、より有利な競争条件を求めて、国境を越えた経済・投資活動が活発に展開されている。また、わが国の消費者もすでに世界を視野に入れた行動をとり始め、自己改革に対して逡巡を続ける政治・行政や企業を遥かに引き離している。これらはまさに市場が主導する経済のダイナミズムの現れに他ならない。21世紀に向け日本経済を再生するには、市場が本来持つ競争を通ずるダイナミックな革新機能をより一層活用していく以外に道はない。

その実現は、何よりも我々経営者自身の姿勢如何である。我々は改革を待つのではなく、率先して行動を起こすべきである。今こそ、我々は制約は大きいが保護された管理型市場から脱却し、自己責任を厳しく問われるがより自由な市場を跳躍台にして活路を拓いていく決意をしなければならない。

3.新しい「市場」の創造

市場は、我々の活動の舞台であり、新しい価値創造の場である。そして、市場は成果の配分とともに、それ以上に厳正に損失と責任の配分を司る。これを恣意的に行うことが如何に困難で、かつ説得的でないかは昨年来の住専問題を見ても明らかである。

我々は、わが国の経済を世界に開かれた、「市場」を中核に置いた民間主導の経済であるべきと考え、そのためにもすべての組織はオープンでなければならないと考える。そのような新しい「市場」の創造のため、以下を提案する。

(1)競争を避けず、積極的に挑戦する

市場のダイナミズムは競争から生れる。競争こそが創造を生み、競争を通して効率が追求されコストの削減が達成される。それにはまず、企業の挑戦を阻害し、競争を妨げている規制は、これを撤廃・緩和しなければならない。また我々自身も競争を避けてはならない。我々自身の行動の中に新規参入を抑制したり、自由な競争を阻害するような慣行や業界の私的規制はないか、業界団体の活動のあり方を含め、厳しく点検する必要がある。

(2)グローバル・スタンダードの市場条件を実現する

国境を越え産業の垣根を超える世界のメガ・コンペティションの中で、わが国は世界に市場を開くことを第一の責任として全うするとともに、その市場の条件を国際競争に耐えうるものにしていかねばならない。確たる歩みとなりつつあるAPECは自由化と市場開放によって、その繁栄を永続的なものにしようとしている。わが国が、世界、なかんずくAPECを視野に入れた最適な産業配置と、より高度なわが国産業構造を築くためには、産業基盤の過度の流出を助長しているわが国市場の不利な条件を早急に取り除き、企業活動を支える税制、企業法制などの市場の条件を世界のデファクト・スタンダードと同等なものにしていく必要がある。

(3)明確なルールを確立し、厳正に遵守する

市場をより自由な競争の場とするには、一方で、公正な競争を維持・促進するためのルールの確立が必要である。市場は明確なルールとその厳正な遵守に基づいて運営され、ルール違反は厳しく罰せられなければならない。我々もこれまで政府の裁量・判断を是とし、あるいは業界の協調や慣習を優先して、市場が下す厳しいが賢明な審判を軽視する傾向があった。これからは常に市場に判断を求め、それを受け入れていく覚悟が必要である。市場の枠組みを規定するルール、市場を監視する中立的な監視の仕組み、市場が公正な判断を下すための情報開示、法制度などを一層充実・整備し、いわば人治ではなく法治に基づく信頼される市場経済の確立に着手しなければならない。

(4)政・官・業、すべての機構をオープンにする

自由で公正な競争を実現するためには、インサイダーを作らない仕組みとしなければならない。それは、政・官・業のすべての組織・機構をよりオープンなものにすることであり、それらの間の関係を透明で緊張感のあるものにしていくことである。従来の協調的ではあるが閉鎖的な仕組みは、その不透明性が国民から支持されないばかりか、経済の効率を妨げている。政治・行政、そして企業の閉鎖性・不透明性と、それに由来する防御的な組織運営、リーダーシップのあり方を改める必要がある。むしろ組織は、人材や情報を内に囲い込むのではなく、より開かれた運営やネットワークの構築によってこそ、グローバル化・多様化する市場の変化に対応していくことができる。

(5)小さな政府を実現する

新しい「市場」の創造に当たっては、政府の役割・機能の聖域なき見直しが不可欠である。従来政府が果たしてきた機能の中には市場機能を活かすことによってより創造的・効率的に代替できるものがある。また、あらゆることを政府に依存する態度を改め、公(パブリック)は民が支えることを我々の行動の原点に据えなければならない。その上で政府の役割を再定義することによって、市場をより市場らしく機能させることができ、「小さな政府」と「質の高い公的サービス」の両立を目指すことが可能となる。既に先送りできない課題となった財政構造の改革も、民がパブリックの精神をもって自立し、市場機能を最大限に活かすとの考えに立って、経済活動や国民生活における官民の役割分担を根本的に見直し、政府の役割を縮小することから着手すべきである。

4.おわりに

我々は、以上の5つの改革の方向を追求することによって、21世紀の新たな国の基盤を創り出すことができると確信する。経済同友会は、戦後50年の「官主導・市場補完」型の経済システムを改め、「民間主導・競争」型の経済システムを創造することを目指し、活動してきた。その過程で、いわゆる日本的システムの長所を残し短所のみを改めるという手法の限界も徐々に明らかになってきた。我々は、全てを新たに作り直す覚悟でグランド・デザインを描かねばならない。そして、それを実現するための21世紀へのアクション・プログラムを、各委員会での検討を通して本年中には完成させたい。

会員各位の積極的参加を求める。

以上


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