新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨
代表幹事 新浪 剛史
冒頭、自民党総裁選・立憲民主党代表選について述べた後、記者の質問に答える形で、総裁選の論点である解雇規制の見直し、政党法、選択的夫婦別姓制度の他、円高の影響、インフレに伴う経営者意識の変化、米国大統領選、USスチール買収等などについて発言があった。
新 浪: 今回の自由民主党総裁選、立憲民主党代表選にあたり、両党ともに、どういう国になったら良いと考えているのか、(国民が)ワクワクするような国家像をもっと議論していただきたい。(投開票日までの残り)数日の間に、(各候補者には)こんな国にしたいという情熱をもっと感じられるように、思いを(国民・党員に)伝えてもらいたい。所得倍増や賃金をもっと上げていくというのは素晴らしいことであり、(その他にも候補者の)皆さんがそれぞれに語っている公約は素晴らしいが、その結果として(日本を)どんな国にしたいのか。特に自民党総裁は首班指名されることになるため、(各候補者には)今後の選挙期間内に、ぜひともこういう国を作りたいということを語っていただきたい。(各候補者が)どういう国が良いと考えているかは(公約を)読んでも分からず、フラストレーションを感じているため、日本が進むべき国家像・将来像は何か、人口減少によって働く人が少なくなる中で、どうすれば国民がワクワクする国になるのかを伝えてもらいたいし、国家像をぜひとも議論してもらいたい。(国家像・将来像に)正解は多分ないだろうが、国会議員に当選し、総理を志している各候補者にはそれぞれ自分の思いを持っていると思うので、大いに議論していただきたい。もう一つ(総裁選・代表選の議論の中で)不足していると思うのが経済財政政策の転換だ。デフレからインフレへと変わろうという方向性にあり、日銀の(金融)政策も変化している中で、政府は3兆円程度と推計しているGDPギャップも解消されていく過程にある以上、デフレ下で重要だった財政政策からデフレ脱却後の民間投資を誘発していくことを考えなければならない。デフレの下での財政(政策)に頼った経済ではなく、今後は(インフレの下で)見える姿を変えて、民間(部門)の余剰資金をどう活用するのかという点についてぜひ議論していただきたい。膨張した歳出をいかに少なくして、むしろ民間にもっと投資をしてもらい、消費を活性化していく。こういう(インフレの下での)あるべき姿を踏まえ、EBPMを徹底して歳出をきちんと見直していくという発言がどの候補者からも聞こえない印象がある。経済の大きな変わり目にあるという感覚が我々と異なっており、民間主導経済と述べている候補者もおられるが、どのように民間(部門)に投資してもらうかをしっかりと議論してもらいたい。同時に、そのための財政はどうあるべきかを考える必要もあり、民間(企業)に投資してもらうために減税を行ったとしても、その結果として(法人)税収が増えるのであれば良いことでもある。こうした観点から、国の財政(政策)を有効に活用するために、(政策効果を検証してより効果的な政策立案を図る)EBPMを徹底しようという議論を(経済財政諮問会議などで)行ったのであり、継続性を持って取り組んでもらいたい。また、民間(企業)が投資するためには、規制改革・規制緩和が大変重要であり、もっと取り組むべき分野がある。今回大変好感を持っているのは、各候補者が本会も非常に重要だと提言してきた予防医療や健康長寿(のための施策)に言及している点だ。候補者の多くが主張している人材活性化に向けた(労働市場の)流動化についても、その通りだと思っており、国民の可処分所得向上にも言及されるなど、(個々の)政策について良い議論がなされていると思う。(一部候補者が主張している)金融所得や金融資産に対する課税については、本会では、NISA(やiDeCo)に影響が生じない範囲であればある程度の引き上げもあり得ると考えており、前回の定例会見で申し上げた通り(金融所得の税率を)25%位に引き上げることがあってもよいだろう。財政健全化や今後の防衛費や子ども・子育て支援の予算をどう手当てするかについて、新総裁にはしっかりと見直しを行ってほしい。ただし、少子化対策や防衛力強化をやらなければならないという方向性は間違いない以上、その財源の候補として、こういう金融所得課税なども考えていく必要があるだろう。その意味でも、冒頭に申し上げた(日本が進むべき国家像・将来像を国民に示してほしいという)ことが一番重要だと思っている。
Q:昨日1ドル=139円台となり、歴史的な円安局面から円高への修正が進んでいる。足下の円高進行について日本経済への影響をどう見ているか。
新 浪:(円高の進展が)少し急だと感じている。企業経営を行う上で、ボラティリティが最も困る。米国(の利下げ幅)が0.25%ではなく0.5%になりそうだという見通しが広がっており、日銀も様々に考えていることも承知しているが、企業にとって(為替の)急な変動は大変困る事態である。円安が修正されるという方向性は良いが、徐々に修正されるべきものがあまりにも急に進むと企業経営上は(かえって)難しくなる。ここまで一気に(円高方向に)進んだという印象を持っており、どこまで進むかなどの経営上の心配事になっている。(企業の)安定した経営のためには、(企業が)対応策を検討できるペースで徐々に(円安修正が進む)というのが最も望ましい。0.25%の(政策金利)引き上げを考えていたのが、急な(円高の)動きにならないように少し配慮し、日銀が時期を見直すのではないかという見方も分からなくはないと思っている。
Q:デフレからインフレに移行する過程において、経済同友会の会員である経営者の方々のマインドやメンタルに変化があるのか。
新 浪:人件費がどんどん上がっていくことは、所与のものとして考える(べきだ)。デフレの一番の大きなポイントは、外部から輸入するものが高くなったという外的要因(にあった)。(これに加えて、)円安が(その影響を)より拡充していった。(しかし、)今後も変わらない(問題)は人手不足である。これを解決するためには、やはり賃金が上がらなければ(ならない)。また、年収の壁といった制度的な問題も解決しないと、人手不足は解決できない。さらに、(現在日本には)300万人以上(の在留外国人が)おり、そういう方々が定住したり、入れ替わりが活発になったりすることで、外国人の方々の活躍が賃金の向上に繋がる可能性もある。それとともに、物の値段、いわゆるサービスの価格も上昇するため、一定のインフレが続くことは(多くの)皆さんが感じていることだと思う。人手不足はどの企業にとっても頭の痛い(課題)であり、賃金を上げざるを得ない状況である。(これに対処するためには、)生産性向上≒デジタルイノベーションが必要で、これにはさらなる投資と投資を実現するための人材が必要となり、いたちごっこになる。結果として、人件費が上がり続けるということは(避けられず)、皆さんも理解されていると思う。
Q:自民党総裁選の関連で労働市場改革、特に小泉進次郎氏が言及している整理解雇の4要件について伺いたい。リスキリングの強化や再就職支援の義務化など、大企業を念頭にした内容だが、そもそも、大企業はリスキリングの強化など既に動いている。このような解雇規制の見直しが、果たして労働移動の流動性を高めることに繋がるのか。
新 浪:労働移動は既に始まっており、大企業においても良い人材が結構(社外へ)抜けてしまっており、頭が痛い。給料だけではなく、やりがいや社会性が企業として求められている。企業が価値を上げていくためには、良い人材を採らなければならず、(自社のポジションを改善する)競争戦略の状況にあるということだ。解雇法制について議論が必要ということはその通りである。戦後の製造業を中心に経済発展する中で出来たものであり、見直さなければならず、「人材が動き始めた≒賃金が上がる」という今のタイミングは、この議論をしやすいと思う。しかし、もともとは、この解雇法制の問題というのは、大企業というよりも中小企業の問題であると私は理解しており、小泉氏もそういう認識だと思う。また、金銭解雇(解雇無効時における金銭救済制度)については、詳しい説明(議論)が必要だと思っている。これまで、中小企業において(整理解雇の際に支払うべきものを)支払っていなかったケースが多く見られ、やはり問題だと思っていた。(解雇無効)だからといって(元の職場に)戻ることはなかなか難しい面があるが、今は(解雇後に)動く(転職する)先があるため、(金銭解雇について)議論すべきタイミングなのだと思う。何でも良いという話ではなく、いくつかの条件の下、乱用とならないようにすることが必要だと思う。しかし、中小企業においては(これまでのルールを不当な解雇に)乱用されていたケースが残念ながらあった。今後は、働く人(の権利)を守らなければ、企業は生存することが難しい時代である。最終的には、戦後に作ってきた制度を全て見直し、今の時代に合った形を議論していくことが必要であり、新しい世代の候補者には、ぜひタブーなく議論をしていただきたい。金銭解雇ということを前提に、どのようなルールにしていくのか。整理解雇の4要件すべて必要なのか、3つで良いのか、このような議論をすべきと考える。ただ、ここ(解雇規制のテーマ)がメディア(や国民)の話(関心)の中心とは思っておらず、やはり政治改革をどのようにしていくかということがすごく重要なことだ。どのような国家像にしたいのか、だからどのような政治改革をしたいのか。そのために必要な国会改革をぜひやってもらいたい。日本の頭脳が集まっている国家公務員をあんな(国会対応の)質問(作成)に使わないでもらいたい。国会議員全体の改革をきちんとしていただきたい。また、政治資金の問題は、今がチャンスなので、この機会にぜひしっかりと議論してもらいたい。政策的なことに政治資金を使うのであれば、どのような国家像にしたい、だから必要な金を使う、ということをわかりやすく説明し、各候補が争ってほしい。
Q:金銭解雇については、自民党総裁選候補者の中では河野太郎氏がその必要性について言及されている。その主張について、新浪代表幹事としては是とすべき、その方向で進めるべきというお考えか。
新 浪:私は、会社の規模に関係なく、金銭解雇を議論すべきだと思う。これまでルール違反で解雇をしてしまっているケースが実在する。その際、(元の職場に)戻るということは、結構難しい。(解雇には)理由(とその説明)が必要であり、それに対して金銭で対応する。特に、中小企業においてはそのようなことが必要なのではないかと思う。今までタブーとしてきた議論をしていく必要があり、その中で企業の不都合なことも出てくるのだと思うが、それらを出して議論をしていくべきだと思う。だから、私は何でもどんな場合でも金銭解雇が良いと言っているわけではない。きちんとした事由があり、乱用のないようにしていかなければならない。しかし、(現状のルールにおいても)乱用が起きてしまっている部分もあり、これらも併せて議論していくことを今後の政権運営でやっていただきたい。それよりも、やはり国家像(を示す)と共に政治改革をしてもらいたい。自民党は大変な不信を招いており、首班指名をされた方が(政治改革を)実行し、国民の信頼を得ていくことが大事だ。(改革の1つである)ライドシェアは、地方の社会問題だと捉えており、このような改革も大いに必要だと思う。しかし、まずは不信感を取り除き、どのような国にしたいということ(国家像)を示さなければいけないのではないか。また、実際に(政治資金が)どのように使われていくのか、透明性と必要性を明確にしていけば良いと思う。政策スタッフが必要だと言うことなら、その分資金が必要であると(示すべき)。問題は、入る金は明らかにしているが、使途もクリアされていないことであり、(使途を明確にすることで)正々堂々と運営できるようにすることが重要ではないかと思う。
Q:USスチールの買収阻止についての見解を伺いたい。
新 浪:英語で”This is a political context.”もし政治の問題がなければ問題なくOKになる案件であり、そしてCFIUS(対米外国投資委員会)でしっかりと審査すれば問題のない件だと思う。また日本製鉄がUSスチールを技術面などで支援しなければ、USスチールの生存にも関わる話のため、大統領選がなければ何の問題もない件だ。
Q:(米国)大統領選について、カマラ・ハリス副大統領とトランプ前大統領、各候補者が大統領となった際のメリット・デメリットや日本経済に与える影響について、どう考えておられるのか伺いたい。
新 浪:トランプ前大統領の場合は、貿易(問題が大きな焦点である)。日本は多くの投資を米国に行っているが、貿易において関税が(さらに)かけられるのは頭の痛い(問題だ)。しかし、防衛に関しては、駐留米軍の費用負担や自国の防衛力強化の要求などについては、日本は対策を打つ力も持っており、(既に)コミットしてきたため大きくは変わらない可能性がある。ただ、若干気になるのは、北朝鮮との交渉についてである。韓国は(日本にとって)友好国であり、今まさに協力体制を築いているため、この流れを変えないでいただけたらと(願っている)。同盟という問題に対してトランプ元大統領が今までと違う流れを作る可能性もあるので、そこは懸念材料だ。台湾有事に関しても、アライアンスの一環として米国やオーストラリア(場合によってはAUCUS)などの友好国と協力する体制が崩れるかもしれないという危惧がある。カマラ・ハリス副大統領については、これまでの外交方針が大きく変わることはないだろうと(予想している)。ご本人は外交に対する経験があまりないため、わからない(面が多く)ひとつだけ(実績として)わかっているのは国境問題である。これまでほとんどバイデン大統領が実行されてきたので、カマラ・ハリス副大統領に何ができるかはまだ見えてきていない。しかし、カマラ・ハリス副大統領には熱意があり、何かをできる期待感もある。ただ外交問題に関しては(現在の方針から)あまり変化がないと考えている。日本にとってどちら(の候補者)が良いかという点では、共和党やトランプ前大統領(が政権を取ると)、何か大きな動きがありそうで、世界の混乱がおさまる可能性もあり、両者とも良い面も悪い面もあると(捉えている)。(一方で)カマラ・ハリス副大統領が大統領になれば、これまでの流れが続くため、予測しやすい(というメリットがある)。トランプ氏も決して予測不可能というわけではなく、過去の発言や行動からある程度の予測は立てられる。ただ、米国の政治は大統領だけでなく、議会の動向も重要である。例えば、税制について、カマラ氏は増税を、トランプ氏は減税を(志向しているようにみえるが)、議会がどうなるかもしっかりとみていかなければならない。現在、上院は今のところ共和党が(優勢な)雰囲気があるので、もしカマラ・ハリス副大統領が大統領になれば、政権運営が難しくなるかもしれない。彼女の思い通りに政策が進まない可能性もある。共和党の主流がトランプ前大統領の考えを支持している場合、ひょっとすると外交政策にもこれまでとは異なる動きがあるかもしれない。そのため、大統領選だけでなく、議会が共和党になるのか民主党になるのか、上院や下院(の行方)も(注意深く)見守る必要があると思う。
Q:USスチール買収について、米国大統領選がなかったら問題なかったというのはその通りだと思うが、中間選挙を含めると2年に一度はこのような問題が起こる素地がある。そう考えると、ラストベルトのような琴線に触れる案件や、あるいは全米鉄鋼労働組合についてもう少し対策をするべきだったという話もある。日本製鉄ほどの会社であるため、もちろん最善のことは尽くしたとは思うが、もっとやりようがあったのではないか。あるいは新浪代表幹事であれば、ビーム社等をうまく買収されてきたことを踏まえて、もう少しうまくやるべきことがあったのか、もしくはなかったのか。この視点で見た場合、米国のカントリーリスクを考えれば、もっと慎重になっても良かったという考えはあるか。
新 浪:多分、買収とはまさに相手との交渉のタイミング(が重要)で、このタイミングでなければ逃すという可能性もある。一方で、政治は動いており、その意味でこのタイミングでやらざるを得なかった環境だったのだと思う。大統領選があるが、米国にとって悪いことではないということを自認していれば(買収提案を)やる(と思う)。選挙後、ひょっとしたらCFIUSがOKする可能性もある。その意味で何が悪かったということはあまりないのではないか。私も必要であれば、その買収は何としてもやろうとする。そういうこと(理由)で落ち度があったとは思わないし、私は実は(USスチールの買収が)できるのではないかと思っている。これは大統領等が止められる話ではなく、CFIUSというきちんとした中立的な機関が国にとって問題があるかどうかを審査するもので、(大統領等によって)その審査に影響を与える可能性があるのかどうか私は承知していないが、CFIUSがNOと言わない限り、大統領が止めることができるのか(疑問だ)。ただCFIUSにいる人たちが何か異議を唱える等(可能性)はあるが、一般論からするとこのCFIUS(による審査)は通るという前提を考えて(買収提案を)やられたのだと思う。
Q:恐らくCFIUSの審査を大統領はひっくり返せると思う。大統領選後に(審査を)やり直すという動きになっているようだ。それを含めて米国投資のカントリーリスク等の点で、今後日本企業にとって(米国への投資に)少し慎重になる原因になるのか。
新 浪:あまりないと思う。要は、どこに投資するのかも比較論であって、カントリーリスクにおいて確かに米国は今二分されており、それが(今後)ますます進むかもしれないし、時間とともに二分されていたものが戻ってくるかもしれない。しかし、それと経済はまた別のものであり、(米国は)経済のダイナミズムが常にある国であり、それが他国で、例えば中国に行きましょうと(いう)比較論だと思う。あとは国内でやるか(だ)。この意味において、米国の魅力度は今回の件で無くなるわけではないと思う。私ども(サントリー)も米国への投資は継続的にやっていきたいと思っている。鉄という部分と、私どもは特に米国の心であるバーボン(買収したビーム社製品)を持っており、その意味では非常に注意はしている。しかし投資をし続けて、きちんと働いている人たちとの対話をすれば、できるという自負と自信を持っている。その意味で、投資を続けることは十分できる国である。一方で、米国は建国以来他国から干渉もされないし、他国に干渉しないという(思想)が元々根っこにあり、オバマ(元大統領)の時代からそれに戻ってしまっている。もう世界の警察はやらないと(いうスタンスだ)。ブロック化が生まれている中で、友好国の第一として、地政学リスクからしても米国は我々としては最も投資しやすいところ(国)であると思う。
Q:(新浪代表幹事より)総裁選について、政治資金や政治改革についてしっかり議論すべきというご発言があった。政党法の制定について主張する候補者もおり、経済同友会としても政党法の制定を公約に掲げるよう提言している。今回の総裁選は、政党法の制定を議論するチャンスなのか。あるいは制定そのものが政治資金問題や政治改革に対する特効薬になり得るのか。新浪代表幹事の認識を伺いたい。
新 浪:政党ガバナンス(に取り組む)よりも法律を制定した方が良い。そのためには、時間や議論が重要だが、(政治資金問題や政治改革への)特効薬になるかどうかは、法律的な運用面もある(ため、分からない)。自民党は国民の信頼を失った中で、政党法の制定前にどのように信頼を回復するかを今後、考えなければならない。政治資金問題を明確化することで、国民の信頼を得ていく必要がある。政党法は今日・明日では完成せず、時間を要する。その過程で国民から信頼を得られるような行動をしなければならない。そのためには、資金の使途やなぜそのようになったのかという説明責任を果たしていくことが必要である。(法律制定の前に)やるべきことはあるが、今回、候補者が問題提起していることは大変良いことである。本会としてもその通りだと考えている。
Q:(総裁選の主要な論点である)選択的夫婦別姓の導入について、旧姓の通称使用拡大を主張している候補者もいる。経済界が懸念している「事務処理コストの増大」という観点では、通称使用の拡大によって解決する側面もある。そうした中、経済界として選択的夫婦別姓を推進する理由を改めてお聞かせいただきたい。
新 浪:本当に不都合が解消できるかは、今、不都合を感じている女性の方々から意見を聴取し、最善策を模索するべきだと思う。最初から反対を唱えてしまうと議論ができないが、(今回の総裁選では)前向きに議論しようと考える候補者が多く、大変良い。実態を踏まえた法律になるよう、ぜひ取り組んでいただきたい。本会の調査によると、(選択的夫婦別姓を)しっかりとした法律として実現させることで、さまざまな不都合が生まれないと認識している。まずは(法律として導入できるような)方向性にするため、オープンな議論をできることが(解決への)第一歩である。最初から(議論の)余地がないような状況は避けていただきたい。
以 上
(文責: 経済同友会 事務局)