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新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2024年4月16日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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冒頭、岸田首相の訪米、日本型ライドシェアについて述べた後、記者の質問に答える形で、OpenAIの東京オフィス開設、円安、AI人材不足、エネルギーミックス、子ども・子育て支援金、日本製鉄によるUSスチール社買収などについて発言があった。

新 浪:冒頭、二点申し上げたい。今回、岸田首相が国賓待遇で訪米された。私も晩餐会に招かれ、(現地で岸田首相の)スピーチを聞いた。(そのスピーチに対して)スタンディング・オベーションが十数回起き、米国との絆は非常に深まった(ことを感じた)。日米(関係)の安定、アジアとりわけ東アジアの安定に対して(日米)両国が理解を示し、ともに取り組んでいくことが明確になり非常によかった。加えて、量子(コンピュータ)やAI等の新しい技術についても、ともに取り組んでいくこととなった。これら(量子技術やAI等)の遅れは日本の課題であり、非常によい議論ができた。(今後の)進展が期待でき、大変意義深い訪米であったと思う。もう一点は、ライドシェアについて述べたい。(いわゆる)日本型ライドシェア(自家用車活用事業)が開始されたが、まず、新規参入が妨げられている(点を指摘したい)。(今、)ドライバーが十分に確保できない。東京においてもいえることだが、地方を中心に(日本)各所でいわゆる(交通の)足がないという大変な状況になっており、(現行の日本型ライドシェアでは)供給不足を解決できない。(喫緊の課題を早急に解決しようとする点で)政府の試みはよいことだと思っているが、もう一歩突っ込まなければならないのではないか。また、(乗客とドライバーが互いに評価する)相互評価の制度が(義務付けられてい)ない。お客様、そして運転手(双方にとって)相互評価は(サービスや乗客のマナーを向上するために)非常に重要だ。既存制度の延長線上(にある日本型ライドシェア)では、交通手段が足りないという社会問題の解決はできないのではないか。公共交通手段も当然、(ドライバーが)不足し大変厳しい。そういった意味で、現在の問題を(ライドシェアを通じて)解決していかないと、なお一層大きな社会問題に(なってしまう)。高齢化社会、インバウンドの拡大という(状況では、交通需要がさらに増加して)解決されない可能性があるため、ライドシェアを適切に運用し、心地よい新制度をつくっていくことが必要である。政府には、より突っ込んだライドシェアを(実現し)、国民の不便、そして海外から来日される方の不便を解決していただきたいと思う。

Q:ライドシェア関連で伺いたい。海外と異なる日本版、という点が際立っているが、今後はプラットフォーマーの存在が議論になっていくと思う。その点をどのように捉えているか。また、OpneAI社が東京に新拠点を設立した。経済同友会幹部との懇談予定があると伺っているが、どのような内容だったのか。また、日本におけるAI規制の在り方をふまえ、どうAIを発展させていくべきかについて所見を伺いたい。

新 浪:プラットフォーマーなど、(ライドシェアの担い手となるべき事業者については)方法論が様々あると思う。その際に、現行のタクシー会社をベースにした制度のままでよいのだろうか。プラットフォーマー、すなわちデジタルを活用(する事業者も新規参入)して、一般の方々が運転手となり、サービスを提供できる仕組みが必要だと考えている。現行の(日本型ライドシェアの)ままだと、(ドライバー不足という)大問題の解決にはならないため、(コスト削減や業務効率の向上のために)デジタルをフル活用した仕組みが必要である。それがあるからこそ、(より)安全(な)運行ができるのだろうと思う。今回のフレームワークの中で、車両に対する保険等がきちんと規定されていることは評価すべきだが、なにせ(ドライバーの)数が足りない。これに対して、(ライドシェアの安全性を)増強する上でもデジタルのフル活用が必要であると考えている。
本日、OpenAIのBrad Lightcap COO他幹部が(本会を)来訪された。日本に(アジア)初の支局を設立されることは大変ありがたく、それに伴いデータセンター開設に向け協議を進めていくことは、日本への投資機会として非常によいと考えている。日本に支局ができることで、OpenAIをはじめAIそのものをどのように活用していくかについて直接やりとりできるようになる。(これは)経済の活性化にとって非常によいことだと思う。(当会幹部との懇談では)どのようにすればOpenAIを中心としたAIの良さを社会に理解してもらえるのかについて(今後)協議していこうと(議論した)。私から申し入れたのは、本会会員各位に(AI活用の)事例をどんどん案内(共有)してもらいたいと(いうことだ)。いかに(AIが)便利であるのか(が認識されることで)、AIを活用した人手不足の解消に繋がっていくのではないかと考えている。(事業運営にAIを)アプリケーションしていくことが、非常に重要だ(と話した)。(また、懇談のうち)半分以上の議論は、インフラの話だった。データセンターが開設されると非常に多くの電力が必要になるため、電力不足という問題をどのように解決していくかは重要なことだ。日本は経済産業省を中心に電源構成について(第7次)エネルギー基本計画を発表していくが、(日本が今後の電力不足に対して)問題意識を持っていることから日本の前向きな姿勢を評価したのだろう。半導体の開発・製造についても、AIは非常にレベルの高い半導体を使うため、OpenAIは熊本や北海道などで展開されるハイエンドな半導体の開発にも携わると思うが、それらの取組みが日本の技術発展に繋がっていく。(OpenAIは技術発展の)リード役になると大いに期待をしている。一方で、フェイクニュースを中心に、誤った情報が拡散されるリスクがある。誤った情報をどのように規制していくかについて世界的に議論をしているが、日本はデジタル(分野)で2周、3周の遅れをとっている。この点でニーズがあったのだと思う。AI規制のあり方は、大変難しい。フェイクニュースや、IPの無断使用などに対する規制のあり方は、世界と議論しながら導入していかなければならない。技術的にも、米国や欧州とともにAI規制に取り組まなければならないと思う。(各地域と歩調を合わせて)規制を設けることは、なかなか難しいが、必要なことをやっていかなければならない。まずは、平易なところから活用していくことが必要ではないかと思う。そういった意味で、今回(のOpenAIの日本進出は)ウェルカムだ。新たな経済社会、時代の転換点を日本が迎えている時に、OpenAIは大きな一助になると考えている。

Q:1ドル154円台で円安が急速に進んでいる。円安が日本企業や日本経済に与える影響について伺いたい。インバウンド消費の好調や輸出系企業の株高というプラス面がある一方、原材料価格を押し上げたマイナス面もある。また、このような状況を変えるために為替介入や金融政策の変更といったことが考えられるが、政府や日銀に求めることはあるか。

新 浪:これ以上(円安が進行し)、155円、160円に向けた状況になってくると、当然コストプッシュのインフレとなり、現在の実質賃金がマイナスの状況では国民生活に対して負(の影響が及ぶこと)になるのは間違いないだろう。今回の円安は、購買力平価からすると行き過ぎている可能性があると感じており、是正が必要なレベルになってきている。しかしながら、為替介入でトレンドが変わるかは疑問だ。意思を示すことには意味があると思うが、重要なのは、基本的な経済がまず良くなっていくことである。一方で、(中東問題といった)地政学的な難しさがあり、これが落ち着いていくことが必要だ。原油価格を中心とした中東問題は、私達が手をつけられる話ではない。しばらく(中東問題が)続くとすれば、円安がさらに発展していく可能性がある。だからといって、金利を左右することは得策ではない。コストプッシュという特殊要因ではなく、賃金が恒常的に上がり、しっかりとした経済のもとで物価が形成されているのであれば、日銀も動く(利上げする)必要があるが、地政学的な要素(という特殊要因のもとで金利を上げること)は国民に負(の影響)を強いる(与える)ことになる。6月から(所得税・住民税の定額減税により)国も少しお金を使うと理解しているが、それとともに賃上げも起こってくるということが目前に来ており、(それまで)しばらくは国民の負担感が非常に苦しい状況だ。この地政学的な問題は、米国大統領選の行方にも関わっており、バイデン大統領はいかにここを収めるかに腐心している。中東問題がこれ以上広がらないよう対応していくものと期待している。4、5、6月と賃上げが繋がってい(くことが期待され)るところであり、(これまでの)コストプッシュ(を背景とした)暗い消費動向に繋がる経済が緩和される可能性もある。(とはいえ)楽観視はできず、正直頭の痛い(問題であり)、日本(だけ)で解決できることではない。一方で、米国のFRB(連邦準備制度理事会)は、米国の景気が堅調であることから、金利の引き下げ(時期)を(当初6月頃と言われていた市場予想よりも)後に持っていくという話があるが、原油価格が上がり大変厳しい状況は米国も同じである。他力本願ではあるものの、米国の利下げが早期、遅くとも7月には起こるように期待をしたい。米国消費経済は決してよいとは言いえず、利下げをしなくともよいという楽観的な状況ではないと思っている。米国の金利は大変重要な要素だ。残念ながら、地政学的な中東の問題を解決する力が日本にないことを考えると、やはり国民経済として考えなければいけないのは、エネルギーを中東に頼ったままでよいのかという点だ。今後、政府が発表する(エネルギー基本計画における)エネルギーミックスを考えた上で、ぜひとも考えなければならない。中東依存を大きく変えなければいけないという戒めにもなると理解している。

Q:AI活用の進展に伴い、AI人材の不足が懸念される。既に高額報酬での人材獲得競争などが開始されていると聞くが、日本企業はAI人材の不足や獲得にどのように対応するべきか。

新 浪:例えばインド工科大学など、高度外国人材の活用が重要な要素ではないか。(人材定着のために)家族で来日できる体制を早期に検討し、受け入れやすく魅力ある環境を作る必要がある。中長期的には、(日本でも)工科大学の要員を増加させる必要があるが、(指導する)教授(の体制)もしっかりしなければならない。鶏と卵の関係ではあるが、そのような教授も海外から(人材を確保して)増やさなければならない。国内だけで解決できる問題ではないため、高度外国人材も視野に入れるべきである。ビジネス(の現場)と指導側(アカデミア)の両方で活躍いただく必要があり、(特に)指導側の人材が大変不足していると思う。

Q:国内で日本人の人材育成を行うのではなく、教育レベルでの対応が不可欠ということか。

新 浪:AI開発という技術面と、AI活用(アプリケーション)の2つがある。AI活用(を行う人材)は社内で十分に育成可能だと思うが、AIを設計するなど高度なレベルについては、海外やアカデミアからの人材(確保)や、アカデミアでの人材育成が必要である。また、AI活用に関しては個社での人材育成に加えて経験者採用という流れになるだろう。

Q:ライドシェアについて、冒頭「もう一歩突っ込まなければいけない」とおっしゃっていたが、これはデジタル以外の問題意識があるということか。

新 浪:安全運行やGPS、また運転をされる方の履歴(管理)、トレーニングなど、基本的な(安全管理の)面においてはデジタルの活用が最低限必要だと思っている。ライドシェアは既存のタクシーに代わるものではなく、デジタルを活用して(交通需給を把握し、)一般の方々が必要な時に、安全にお客様を(目的地まで)乗せる仕組みだと思う。したがって、前述の(デジタル技術を活用する)プラットフォーマーが基本(的な運行管理主体)だと考えており、これ(新法制定による新たな制度)を早く構築していくこと(が必要)ではないかと思う。今回、タクシー(事業者)をベースに(解禁)したということは、その延長線上で(タクシー事業者以外の)プラットフォーマーでも事業をできるようになるということだと思うが、既得権益的な意識で(運行管理主体をタクシー事業者だけに限定するようなことは)やってはならないと考える。

Q:先ほど、エネルギーミックスを考える上で、中東依存の低減などの対応が必要とおっしゃったが、(具体的には)どのように考えているか伺いたい。

新 浪:安全が認められ、地元の方々から理解をいただいた原子力発電の再稼働(をしていく)。今まさに政府がやられていることである。これに加え、風力(発電)なども(推進していく)。(立地可能な)地域は限られるが、漁業権等の問題を地元の方々と対話し早期解決に努めなければならない。また、地熱(発電)についても踏み込んでいかないとならない。これらは、トレードオフだと考える。行うのか否か、行わないなら生活上のエネルギーコストが非常に上がるが、どちらが良いのかということであり、そろそろ解決をしなくてはいけない。(そのため、)一部可能な地域においては、地熱(発電)も行い、(その際は)温泉事業者に問題がないか、国立公園・国定公園の景観をいかに壊さず行うかなど、このようなこと(対話)を諦めてはいけないと(考える)。できることは全て行い、中東依存をどのように解消していくか。今回、米国との間でも(液化天然)ガスの取引(のポテンシャル)が(大いに期待)できると理解しており、中東から別の地域に依存を(シフト)する。米国は自国で十分に(自国の)エネルギー供給を賄えるところである。将来的には、中期ではより安全になったSMR(の活用)、長期には核融合をはじめとした研究開発をしていく。このようなことで日本としても多くのオプションを(持つべく、)研究、実証、実装していくことであり、やはり(最終的な肝は)技術である。新しい技術は安全性が非常に重要である。各地域の方々のご理解が得られるような努力は、最大限行わなければいけないことだと思う。ただ、(最も)申し上げたかったことは、(前述のトレードオフ)どちらにするのかという、国民的議論をしていかなければいけないタイミングだろうと(いうことだ)。(現在まで)これだけ(化石燃料に)頼ってきてしまった。(これからの日本は)どのようなオプションを考えていくかという大きな(国民的)議論を行うタイミングに来たのだと思う。

Q:新たな子ども・子育て支援金は(公的)医療保険と合わせて徴収され、企業も一定の負担をすることになるかと思うが、これによって今後の賃上げの機運に水を差すのではないかという指摘も出ている。本日の国会で、岸田首相は賃上げの阻害にはならないと答弁しているが、新浪代表幹事の認識を伺いたい。

新 浪:医療保険料に(支援金が)プラスされれば、その分可処分所得が減ることになる。私は、まずはそのような(医療保険に上乗せして徴収する)ことを行いながら、並行して歳出改革を始めていただけるのだろうと理解をしている。歳出改革が起これば、後期高齢者(医療制度医療費の)負担金や健康保険料の軽減、もしくはいわゆる中間層から低所得層までの保険料が減額され、代わりに高所得層は今まで通りに払う、といったことが起こる。歳出改革によってそのような工夫が行われることを期待している。正直、現状の社会保険料に、非常に無駄があるということは間違いない。そこに手を付けていただかないと、賃上げをして、実質賃金を上げていこうと(いう趨勢に水を差す)。足下は(実質賃金が)マイナスであり、可処分所得を上げるということが国民経済において最も求められていることだと思う。逆行しないよう、歳出改革を行う(べきだ)。一人あたりの医療費が高知県と神奈川県で雲泥の差があるのは、高知県の病床数が多すぎること(が原因)だ。このような負(無駄)がすでに検証されているのだから、早くやめる。また、処方箋もリフィルが可能になったにもかかわらず、まだ非常に(活用が)少ない。既にある制度を加速度的に動かしていくことも、しっかり行っていただきたい。このようなことから、働き手のポケットから取るという安易な方策ではなく、政治が主導して社会保障の改革を行う、つまり医師会との対話をきちんとしていただきたい。その結果として歳出改革を実行する。歳出改革も併せて首相主導で実行していただくこと(が前提)で(この支援金を)理解している。

Q:日本製鉄によるUSスチール社の買収について、双方の経営陣が合意し、USスチール社の株主総会でも了承されたが、労働組合と大統領選挙を争うバイデン大統領、トランプ前大統領が反対する姿勢を示している。こうした現在の状況をどう見ているか。

新 浪:ぜひとも(買収が)成功して欲しく、日本製鉄にエールを送りたい。時代の変わり目を迎えており、日本企業が世界(市場)に進出して需要を取り込むことが大変重要になっている。そのため、今回、(日本製鉄が)取り組まれていることは意義がある。サントリー(ホールディングス)も世界で最も大きな市場である米国に進出し、それを足掛かりに世界の需要を取り込もうと取り組んでいる。そのため、(日本製鉄には)ぜひとも成功していただきたいし、次に続く企業も出てくる(ことを期待する)。現在の円安の中でも、果敢に買収に取り組まれていることに敬意を表するし、日本企業はかくあるべきと思う。一方で、大統領選挙の年であることから(日本製鉄にとって米国企業の買収は)大変難しい状況であるのは事実だと思うが、諦めずに、年内に処理しなければならないテクニカルな問題についてもぜひやり遂げていただきたい。(今回の買収が)CFIUS(対米国外国投資委員会)で問題視されることはないと思う。同盟国であるにも拘らず問題になるのであれば、日米間での技術協力は事実上できないことになるため、CFIUSが障害になることはないと理解している。問題は労働組合の感情ということになるが、(USスチール社の所在地が)スイング・ステートであるため、労働組合と日本製鉄幹部の間で議論し尽くすしかないと思う。バイデン大統領、トランプ前大統領ともに、労働組合が賛同していない中では(買収に)賛成とは言いづらいのが現在の選挙戦の状況であるため、ひとえに労働組合との対話(が重要)だと思う。ぜひとも(買収を)成功させていただきたいと思っており、成功すれば米国内におけるトヨタ自動車や本田技研工業などの自動車工場に質の高い部材を提供できることになり、米国の自動車産業の競争力(向上)にもつながるため、米国にとっても良いことだと思う。日米は今回(の首脳会談)で、一層の技術提携を進めていこうとしており、労働組合(との合意)という大きな課題はあるにしても、私は大変理に適った買収だと思っている。

Q:円安にはプラスの面もあるが、現状では行き過ぎた円安という面もある。現在の円安は、企業経営上、プラスとマイナスのいずれの方が大きいかについて、代表幹事のお考えを伺いたい。

新 浪:本来であれば、Jカーブ(効果)がもっと現れてこなければならないが、超円高から一定の円安へと戻ったアベノミクス初期の頃に想像していたのに比べて(効果が小さい)。1ドル80円台の当時に生産設備が相当、中国やASEANなどの海外へと移転してしまい、当然、そうした工場が現在も稼働しているため、思っていたほど、円安による(輸出拡大の)効果は大きくないことが実証されたということだろう。自動車をはじめとして輸出(増加)が期待される製品もあるが、世界経済の需要がどこまで大きいのかとなると、景気が良いと言われる米国も(金融引き締めで落ち着くだろうとの)期待に対して相対的に景気が良く、思っていたほどは落ち込まないという程度であり、どこが(日本からの輸出を)受け入れられるのかが重要だが、中国も今の経済状況では需要に力がない。米国への輸出を拡大する観点では、米国に(日本企業は)工場を整備して(製品を)作っており、本来であれば日本から部品を輸出して米国で利益を上げることにより、円安によって一層利益を上げるという交易条件上は良い効果が期待される。日本企業の損益計算書は円で換算されるため、海外で上げた利益は(円安の効果で)日本ではより大きな利益になる。海外に(生産設備を)進出して利益を上げれば円貨ではより大きな利益を上げたことになり、この利益がベースとなって(国内の)賃上げ(の原資)になっている。したがって、海外で収益が上がれば、(円安により日本企業の会計上)見た目は良くなってくる。しかし、日本でも製造しており、サプライチェーンの中で原材料価格なども高くなってきている中、各企業によって違うとは思うものの、(円安が)この水準にまで進むと、日本国内における生産や販売という面では、負(の影響)が生じてくると思う。実質賃金が6月から7月にプラスに転じてくれば値上げも可能になるが、現在、食品などの値上げはまだ3,000品目にも届いておらず、決して値上げがしやすいという環境ではないため、企業にとって国内経済は厳しい。Jカーブ効果が現れるのは海外(市場)であり、特に若干景気が良い米国における自動車などの産業では、ドル建てでの利益を円に換算すれば利益が増加したように見えるが、現在の(円安)水準では、全体で見ると企業(経営)も厳しいと思う。各社のデータをまだ見ていないため、詳細はわからないが、値上げしやすい環境であれば(円安にプラスの)意味があると思うが、そういう状況ではない。企業物価も0.8%上昇しており(価格に)転嫁できれば良いが、昨年のように(価格転嫁)しやすい状況ではないということに加え、(ウクライナとイスラエルで)二つの大きな戦争が起こっていることで消費者心理も好転していかない可能性があるため、現在の円安は企業にとっても痛みがあると思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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