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新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2024年3月27日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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記者の質問に答える形で、EBPM、円安と日米金利差、小林製薬の紅麹問題などについて発言があった。

Q:日銀が金融政策変更を決定して以来、どういうわけか円安が進んでいる。本日も(1ドル151円97銭をつけ)34年ぶりの円安水準となった。経営の視点から、現在の為替水準をどう見ているか。また、これまでは円安が止まらない理由として日米金利差が引き合いに出されてきたが、どう受け止めているか。

新 浪:今後急激に円安になる、あるいは急激に円高になるといったボラティリティは、経営的には大変まずい。今は耐えられるところではあるが、多くの企業では、採算レートはおそらく今よりも低い(円高の)ところにあるはずで、大変頭の痛いところだ。原材料を仕入れている企業では、採算レートを大きく上回ってきているのではないかと思う。経済界としては、日銀の方針転換をある程度予期していたので、もっと円高になってくるだろうと予想をしていた。予想外(の円安進行)となったことで、採算レートが悪くなり経済的にも影響があると認識している。円安の理由については、思ったよりも米国経済がしっかりしており、3回利下げすると言っている割にそうなっていないということが一つだ。もう一つが、円買いになる要素があまりないという点。多くの企業は海外に資産を持っているわけだが、収益を日本に戻すメリットをあまり感じていない。むしろ、ドルでそのまま使った方がよいということで、円に対する需要が非常に低いということがあるのではないか。ただ、投資という意味では日本にも円買いの需要はあるはずで、我々自身にも、海外で持っている資産を日本に投資する動きが起こらなくてはならないのだが、少し足踏みをしている。それができるような環境をつくっていくべきではないか。ただ、国内は金利が低いため、資産を海外に置いて調達、投資をした方がよいという状況にある。そのため一番の理由は日米金利差にあり、それが今後も続くという予想がされているからだろう。だが私は、米国は大統領選挙前にFEDが利下げすることもあるだろうと思う。このままずっと日米金利差(がある状態)が続くのは厳しいが、そうなるとは思わない。大きく跳ねなければ(状況が変わらなければ)いずれ米国が手を打つだろう。そして(日本では)4月以降、とりわけ中小企業はじめ賃金が上がってくる5月、ボーナスが(支給される)6月には、日銀が日本の金利をもう一段(上げる)という可能性もあると見ている。(だが現時点においては、その)もう一段の可能性があまり期待されていない、ということもあるかと思う。

Q:小林製薬の紅麹(の成分を含む)サプリの健康被害の問題について、行政への報告が遅れたことに批判が出ている点と、機能性表示食品の安全性に疑念を抱かせる事態と指されている点について、所見を伺いたい。

新 浪:(小林製薬から行政への報告が)遅れたのは大変まずいことだと考えている。(医師や患者から連絡があった今年1月から2月に)すでに疑いがあり、とりわけ消費者に対して早め早めの対応をすべきであったと思う。機能性表示食品に関して今後重要であるのは、サイエンス(の観点)でこの成分にどのような機能があるのかを消費者によく理解いただくことだ。今回の件は、まだ何が原因であったのかが明らかになっていないため、機能性表示食品に対する政策を議論する以前に(原因を解明しなければならない)。私自身この(機能性表示食品の)制度について今後どうするべきかの意見を持っていないが、(制度自体は)このままでよいのではないかとは思っている。むしろ今回生じた(問題の)原因がまだ明らかになっておらず、(想定しない)ある物質が含まれていたなど、さまざまなことが言われ(ているため)、早くここ(原因)を解明することが重要だ。(今回の小林製薬の)対処の仕方は大変まずかった。(疑いが確認された)2カ月前(に対処していたの)であれば、何かしら(の理由で)含まれてしまった物質をもっと(詳細に)調査することもできたはずだ。問題を起こしてしまった場合の対処(のあり方)が、最もクローズアップされるべき問題だと考えている。原因調査を行ったうえで、今後を考える必要がある。第一に原因調査が重要であり、小林製薬が自ら作った食品の中に、何かしらの異なる物質が混入したのかをつまびらかにすべきだと思う。そのような意味で、もう一度、何か(問題が)起きた際の対処の仕方を明確にすべきだと思う。企業行動としては当たり前のことだ。

Q:EBPMの関連で伺いたい。日本は緩やかな危機に対処できない国だと言われて久しい。無駄をなくしていこうと延々言われているものの、なかなか改善されない。(経済・財政・金融・社会保障委員会の提言『EBPMの徹底に向けた基本法の制定を~国民に信頼されるワイズ・スペンディング~』において、)各地経済同友会やNPO・NGOの方々とも手を組み、さまざまな事例を見せていくという話があったが、政治や世論を覚醒させるためには、良い事例を示すのか、もしくは厳しい事例を示してショックを与えるのか。どちらの手法で進めるイメージを抱いているのか。

新 浪:両方だと考える。例えば、広島県呉市が(予防医療によって人工)透析を大幅に減少させたという事例がある。しかし、各市町村が視察に行っても「すごい」で終わってしまう。良い事例を示すだけでなく、行政が横展開するための予算を反映させなければならない。もう一つ(の事例として)、高知県と神奈川県(との医療費・病床数の地域差)は以前からずっと指摘されているが、これは深い議論をすると「一人あたり医療費」は基本的人権の問題にも及ぶような話である。私が経済財政諮問会議のメンバーになった頃は、年齢係数を掛けると福岡県が(高知県よりも医療費等が)多かった時期もあったが、(地域差が経年的に)全く変化しないのは、やはり地方自治にも関わる(問題だ)。地方自治において、どの県や市がしっかりと取り組んでいるということをランキングで示すなど、明確にしていくことが必要なのだと思う。しかし、(実態が明確になれば)内閣府は責められるため嫌がる。だから、どこか(の組織)がそのようなことを行わないといけない。例えば、一人あたり(の支出)は同じにもかかわらず、なぜ自分の県や市の教育レベルが低いのか。このような見える化は非常に重要であり、安倍政権時代に始めたものの、途中で終了してしまった。おそらく、さまざまな団体から「なぜこのようなものを示すのか」と批判をされた(のだろう)。知事会においては、(結果が)良い自治体が非難され、悪い自治体の声が大きいと(いったことも耳にする)。やはり、非難されてもどこかが(自治体格差の見える化を)やらなければならず、経済同友会がそのようなことをしていかねばならないのではないかと感じている。雑誌などでランキング等の結果を取り扱っているものもあるが、データの正確性の観点でEBPMが非常に重要だと思う。また、北風政策と太陽政策のいずれを取るのかという政策的な問題は、議論をしていかなければならない。安倍政権時は、インセンティブを出していたが、ディスインセンティブも行わなければいけないのではないかと(議論があった)。知事に権限があるのにもかかわらず(是正に向けた政策を)発しないのであれば、例えば普通調整交付金を減らす。そうすると、仕方がないので(是正を)やらざるを得なくなる。つまり、打つ手があるのに打っていないだけなので、このような具体論まで突っ込んで議論をしたらどうかということだ。今後、EBPMを実施することによって、(取り組みを)しているところは(例え是正に至っていなくても)インセンティブをもらえるような提案をしていく必要があるのではないかと思う。

Q:(経済同友会は、)不人気(歓迎されない)部分も含め、具体的な提言をこれから検討されるのか。

新 浪:そのように考える。多くが不人気な(歓迎されない)ものとなるのではないか。しかし、(対GDP比での国及び地方の長期債務残高は)先の大戦(の頃)よりも悪い状況にある。民間が頑張って、特に賃上げをしていこうという中においては、次は(政治が社会保険料を上げない等を)実行してほしい。他の(経済)団体も同様の主張をされていたため、(経済)三団体が共にそのような話をしていくべきだとも思う。後期高齢者負担金もどんどんと増え、上手く活用されているかにかかわらず上昇してしまっており、隠れ消費税的に保険料が上昇している。(賃上げの成果は)4月~6月頃に表れてくるが、国民が求めているのは、やはり可処分所得が恒常的に上がっていくことだ。賃金が上がったから社会保険料を(上げても)払えるだろう、というのは大きな間違いである。子ども・子育てに関する新たな政策は大いに結構であるものの、経済同友会としては保険料を上げないでほしいと再三主張している。しかし、内情では(保険料を)上げる方向へ向かっているのではないか。これから、国民生活が本当に変わっていくためにも、政治が(すべきことを)しっかりしていただきたい。今回、政治(とカネ)の問題点が噴出したわけだが、ぜひリカバリーショットを打っていただきたいと思う次第である。

Q:小林製薬が製造した紅麹による健康被害問題に関連して、サプリメントや健康食品業界、各社事業に対する影響をどう見ているか。

新 浪:小林製薬が早期に(健康被害を生じた)問題を解明しないと、(サプリメントや健康食品の)業界に影響が及ぶことはあると思う。(小林製薬が)行った対応には問題があり、即座に対応しなかった責任は大きい。したがって、まずは経営陣(の責任)が云々(と言う)前に、(健康被害をもたらした)問題点は何だったのかを早期に解明すべく、全力で取り組んでいただきたい。そうでなければ、原因が明らかにならない限り、(様々な製品に)疑いが生じる。(サプリメントや健康食品に対する)風評被害によって(商品の供給が滞れば)、健康を大切に思われているお客様が、自分に必要な栄養を摂りたいと思っているにもかかわらず、(必要な栄養を)摂れなくなってしまう可能性が生じる。結果、(サプリメントや健康食品で得られる)大きな効果を失うこともあり得る。罪深いことにならないよう、小林製薬は早急に対処すべきだと思う。

Q:代表幹事は常々、税金を投じる以上は乗数効果の高い施策を優先すべきと述べられている。しかし、非効率であっても必要な施策もある。EBPMやワイズ・スペンディングにより、行政の予算策定において重要性の検討が置き去りにされるとの懸念についてはどう考えているか。

新 浪:道路工事の乗数効果が昔ほどは高くないことは承知している。しかし、安全のために行わなければならない事業はやるべきであり、いわゆる震災対応などはしっかりと行うべきだと思う。その意味では、価格は高くとも耐久性がある(施設・設備)をどのようにEBPMで評価するかなど、EBPMに関わる(公共政策の)研究が進められており、新たな研究(成果)を取り入れていくことが必要である。EBPMを専門とする研究を、複数の大学でしっかりと行ってもらうことが必要だ。多くのデータの収集(と分析)をすれば、どういった工事が効果的なのかなどが明らかになってくる。その際、これまでのように道路工事を全国各地で行うのか、過疎化が進んだ地域まで行うべきなのかといったさまざまな議論が必要となるが、これはEBPMの問題というよりも地域創生という政策の観点で考える必要がある。震災に関しては、地震災害に強い耐久力のある道路に変えていくことをやらなければならないと思う。マクロ経済の面では、デフレ下で需給ギャップが存在していたときに国の予算で埋めることは仕方がないが、需給ギャップがほぼ解消されつつある今の状況では、(EBPMで重視すべき)乗数効果を測定することが可能であり、(政府の予算を)民間の投資を誘発する政策に充てるべきと主張している。したがって、経済運営を行う政府がマインドを変えて、民間に任せていくことが必要だ。民間は(投資の)効果を出そうと努力するため、乗数効果が高まり、EBPMの数値は改善していく。(デフレ経済だった)過去30年は国が政策によって経済を維持しなければならない状況だったが、そうした状況に(再度)ならないようにするのが今後の財政(政策運営)のあるべき姿であり、同様に日銀も通常の(金融)政策に戻る判断をされたのだと思う。一点補足すると、EBPM(による政策運営)が難しいと学術的に言われているのは基礎的なR&D(研究開発)であり、確実性は低いかもしれないが、(国として力点を置く)分野を決めて一定の予算を投じなければならないと考えている。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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