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新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2024年2月16日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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記者の質問に答える形で、日経平均株価、日・ウクライナ経済復興推進会議、春闘(春季労使交渉)、GDP、大阪・関西万博などについて発言があった。

Q:東京株式市場で日経平均株価の上昇が続いており、今日も38,000円台となり、あと一歩で史上最高値という状況で、バブル期以来の水準になった。現在の株価の水準に対する受け止めと、この株高の背景、今の株価が日本経済の実力を示しているのかどうかという点について伺いたい。

新 浪:株価は期待値(の表れ)だと思っている。期待値(に表れている)ということは、期待を裏切ってはいけないということに尽きる。このような期待に至った理由は、いくつかある。日銀の政策も、いわゆるデフレからモデレートなインフレに変わっていくという方向性がいくつかの事象で示されており、賃金も本年4月以降は上昇していくだろう。また、新NISAをはじめとした貯蓄から資産形成を(促進)すること(動き)など、株式(の価格)に政策的にも(影響している)。非常に大きいのは、東京証券取引所のガイドラインが大変評価されている(ことが影響している)。(そのような)いくつかのファクターがある中で、(投資家の)ポートフォリオにおいて、ポジティブではなく受身ではあるが、中国(への投資)から日本へ(の投資)という(ことも要素として考えられる)。周りを見渡すと、(足下における)日本の政治はガタガタしているが、基本的な政策が大きく変わることはなく、新たな政策が実施されている。また、人が動く(人材の流動化)とか、最も大きいのはいわゆるコンソリデーション(合併・統合)や新陳代謝が健全に行われてくることも期待されているだろう。ただ、今の株価を(1ドル)150円で割る(ドル換算する)と、そんなに(株価が)上がったのかと見る向きもあり、やはり円安のファクターはある。円安に関しては、日銀がいずれ政策を少しずつ変更する(動きの)中、市場はこのままの(低)金利政策がずっと行われるとは思っておらず、円安のファクターは我々が思っているほど(の懸念)はないのかもしれない。マイナス金利はいずれ解除するだろうし、YCCは実質なくなっており、1%程度とアバウトになっていることに意思があるわけではない。フォワード・ガイダンスはとうになくなっている。このように、日銀の政策は非常にモデレートにやってきている。一方で円安(状態の継続)も大きく修正は(当面)ないだろうと思う。なぜなら、一気に今の(金融)緩和政策を引き締めることはしないと(いう市場予想が)安心材料にもなっている可能性がある(からだ)。現状のように政治が停滞して(いくことが続き)、やらなければいけないことが起こらない(実現しない)と困る。二つあるが、一つは首相の掲げた人材の流動化と賃上げのしっかりとした道筋(を立て)、国は下請け泣かせのないように、公正取引委員会を活用してこれを実現することが重要だ。もう一つは、コンソリデーション(合併・統合)や新陳代謝が行われる中で、中小企業に対する補助金を出し、新陳代謝を止めるようなことがあれば、株価が下落すると思う。株価が下がれば、新NISA(に対する投資家をはじめ、国民皆)に迷惑を掛けてしまうということでもある。(よって、)絶対やってはならないのは、新陳代謝を止めることだ。(投資家や市場等は)新陳代謝を非常に期待している。新陳代謝が起こるのは、人材が行く(移動する)ところがまだあるということだ。人材不足が起こっており、確かに需要と供給のバランスはミスマッチがあるが、マクロ的には、(人材が)行く(移動する)ところがあるような環境にある。その中で、(補助金等の対象を)企業を救うためではなく、人を救うのだというポリシーにすること(が重要であり)、「人を救う(と同時に)企業も救う」ということでは(新陳代謝を阻害し、投資家や市場等の)期待を裏切ることになるため、今後の政策としてしっかりと改めていただくことが必要だと思う。新しい資本主義を中心とした成長戦略においても、経済財政諮問会議の場でも、首相はしっかりと意思をお持ちになっており、この期待に応えていただけると思っている。これは(日経平均株価が史上最高値をつけた)1989年とは違う状況であり、大きく実体経済に対してプラスになる可能性がある。投資も、(民間企業に)200兆円(ともいわれる現預金が)積み上がっているが、これ(その資金)は速やかにデリバーさせないと(実体経済に届けなければ)いけない。(202310-12期の)GDPが下がっているのはそのようなことが(原因で)ある。(実態経済への)投資をしてもらうために、先ほどから申し上げていることを政策としてぜひ進めていっていただきたい。人が動いていく一方で、会社(の新陳代謝)は経営の問題であり、補助金を出して新陳代謝を止めることのないようにすることが重要だ。

Q:週明けの2月19日、政府は日・ウクライナ経済復興推進会議を開催するが、経済界もしくは日本企業として、ウクライナの復興に対してどのように取り組んでいくべきだと考えているか。また、ウクライナでのビジネスにおける期待感についても伺いたい。

新 浪:ビジネスにおいて(日本とウクライナは)深く関わっているわけではないが、このウクライナの戦争における(日本にとっての)意味合いは、東アジアが危機に陥る可能性があるということだ。クリミア(のロシアによる併合)から始まっているが、ある国が他国を侵略することを認めるようなことがあってはならない。私達日本ができることは、経済(支援)や人道支援であるが、できることをウクライナに向けてしっかりと行い支えていくことが、その後の私達にとっても非常に重要なメッセージになると(考えている)。将来的に、中国そして北朝鮮が東アジアの安定を揺るがす可能性があり、そのような事態(に備えた際)のメッセージとして、同盟国そしてlike-mindedな(同じ気持ちを持った)国々がウクライナをしっかりと支えている(姿を示すべきだ)。その一環として、(当然)日本も例外ではない。武器の輸出(という支援)の可能性はあるが、私達に期待されていることはそれではなく、いわゆる人道支援(である)。NPOの方々が(現地に)行かれたりしているが、そのようなこと(を期待されているの)だろうと認識している。ウクライナには非常に歴史的な意義があり、ここで戦争や侵略を認めることになると、さまざまなところでそれを許すことになるため、(決して)許してはいけないという意識を日本も持って、(支援に)臨むべきだと思う。

Q:春闘(春季労使交渉)について、2月15日および16日を目途に労働組合の要求が一通り出揃った。大企業の中には6~7%以上の賃上げをすでに労働組合と妥結したという報道もある。大企業に至っては(新浪代表幹事が会見にて発言された)3%のベースアップを含め5%以上の賃上げ率の実現が期待できる数字が上がっている。このような(賃上げの)動向について、どのように捉えているかお聞かせいただきたい。

新 浪:小林健 日本商工会議所会頭の話では、中小企業まで(賃上げの動きが)拡大しており、人手確保のためにやらざるを得ない状況となっている。日銀は(昨年10月時点の展望レポートにて)CPI(消費者物価指数)上昇率を2.8%と示していた。いま(1月展望レポートでは)2.4%となっているが、そのような意味で(約3%程度の物価上昇率を基準にした)3%のベースアップは妥当だと(思っている)。3%を目指すことで、初めて実質賃金がプラスマイナスゼロになるため、それを超える5%にするという方向性を(企業間で)共有できているのではないかなと(思う)。いずれにせよ昨年と比較して、(3%プラスアルファの)賃上げ率を目指す企業が多いと考えている。中小企業も似たような傾向であり、そうでなければなかなか人も集まらない。経験者採用が増加している中で、(給料が上がらない企業は人材獲得の点で)大変マイナスになる。そのようなことを踏まえると、本年45月は(賃上げは)良い状況となり、(それに加え)ボーナスもある程度期待できるため、消費、さらに夏の旅行シーズンにプラスにも働くと予想している。

Q:株価についてお尋ねしたい。(日経平均株価が史上最高値の38,957円をつけた)1989年12月の日本は、ふわふわとした空気だった。当時と比べ、(史上最高値に迫る勢いの)今の日本経済のムードをどのように見ているか。

新 浪:いわゆる街中のムードと株価には大きな差があり、大いに注意しなければならない。バブルに踊ったという後の反省はあるわけだが、(1989年)当時は街中(のムード)と株価はかなりマッチしていたと思う。現在、街中のムードはまだ全く上向いておらず、その中で株高が進んでいることに対しては、一般の方からすると何なのかと(思ってしまうのが)正直な実態ではないか。地政学的な要因もあり欧州、米国は金利を上げたが、(その前に)相当緩和をしてきた。マネーの行き先として、これまでになく日本に(資金が流入し)、その一角を担っている。その意味で、この(高値を付けている)株価が(今の)我々の経済力だと思わない方がよい。経済力とは消費が牽引するものであり、(今の株高は)消費にそのまま繋がっているという状況にはない。先ほど申し上げたとおり、期待を裏切ると一気に下がるし、下がったときの方が市中に与える影響は大きい。これを怖いことだと思った方がよく、(今の株高に)ぬか喜びをしない方がよいと思っている。

Q:昨日発表された10-12月期の実質GDPは2四半期連続のマイナス成長となった。現在、春闘で賃上げに取り組む雰囲気が広がっている中で、内需や個人消費が弱含んでいるとのデータだったと思うが、現在の個人消費や市場環境をどう見ているか。

新 浪:昨年との対比においては、昨年は世界中のサプライチェーンで(調達)コストが上昇しているため、(商品の)値上げは仕方がないという(消費者の意識)レベルが大変高かったと認識している。一方、今はどうかとなると、(昨年と同じ水準の)値上げがそのまま簡単に受け入れられるか(は難しい)という感覚である。人件費が上昇しているが、それをどのように(消費者に)値上げとして受け入れてもらうかを(各社が)四苦八苦している。サプライチェーン(の調達コスト上昇分の転嫁)だと分かりやすいが、この段階になると即座に(人件費上昇分に相応する)23%の値上げをさせてもらうことは難しい。消費は昨年に比べて楽な状況ではないと思っており、何かしらのイノベーションや付加価値(向上)を行って値上げさせてもらうということになるだろう。デフレの時代でも、(コンビニチェーンを経営してきた)自分の経験からすると、おにぎりをはじめとして、付加価値を高めた商品はお客様が買ってくださっていた。間違えてはならないのは、ある程度の余裕のあるお客様は沢山いるけれど、将来不安があるためにお金を貯蓄してきたことだ。(今回のGDP速報を見ると)その状況に戻りつつある可能性が少しある(と懸念しており)、昨年も含めて将来不安は常に存在してきた以上、どうやって不安解消を図るかという命題が(未だ消費者の間に)30年にわたる慣性として残っている。今後、モデレートなインフレが進み、賃金も今年の45月に(上昇する)経験をすることになるだろうが、過去25年以上も起こってこなかったことは(今も)起こらないだろうと消費者は思っている。それが10-12月期の個人消費がマイナスになった(原因だろう)。投資についても、そのあたり(の慣性)は意識していかなければならない。人手不足などの話もあるが、今後は(個人の)投資も行われてくるとは思うし、新NISAの効果が所得に具体的なプラスとなって戻ってくれば、消費(を後押しする)材料になる。ただし、根源的には、自分の生涯年収が増加するという確信が持てなければ、個人消費がぐっと増えることはないと思う。日本は労働時間が減少しているが、経済同友会も政府も、例えば65歳ではなくて75歳まで(希望に応じて働くことができ)、生涯現役で生涯収入が増えるなど、(国民が)もっとポジティブになるような経済社会を創っていく必要がある。色々と申し上げたが、社会保障が本当に持続可能なのかなど、まだ根本的な問題は解決していない。(賃上げが進む)2024年度はこうした課題に挑戦できる年であり、我々や政府、他団体と一緒になって社会保障改革などに着手することが必要である。今回の少子化対策では、(支援金の財源として一人当たり)約500円を負担するが、基本的な課題は政府がワイズスペンディングを徹底し、消費者が(将来は)大丈夫であるという認識を持ち、(働きたい人は)75歳ぐらいまで現役で働けるという環境ができれば、自ずと生涯年収が上がって消費も拡大していく。繰り返しになるが、根本的な問題点として、まだ深刻な(将来)不安があるということを忘れてはならない。株価が上昇しているが、根本的な問題がなくなったわけではない。

Q:大阪・関西万博のトイレ(建設費)が1棟約2億円という話が浮上している。被災地が「水を使えない」「トイレも流せない」という状況の中で、1棟約2億円のトイレをどのように考えるか。

新 浪:(1棟あたり)どのくらいの数のトイレを(設置する前提で)お話されているのか(にもよるだろう)。(また、会場全体の)規模から見て(1棟あたり)約2億円(かかる)のが妥当なのか、その経済感覚が私の中に存在しないためお答えできない。

Q:(同規模の1棟あたりの)相場は3000万~4000万円で、デザイナーズトイレにして技術的に費用をかけたということらしい。

新 浪:今でも珠洲市(を始めとした被災地)が大変な思いをしているにも関わらず、(トイレ1棟約2億円という費用は)被災地の気持ちから離れているのではないか、という指摘が質問の主旨だと思う。そのような一面もあるのかもしれないが、(万博会場の)トイレを何らかの意思を持って表現をしたいということであれば、それは一つの考え方だと思う。例えば、ベンチャー(企業が開発したトイレ)で、モニターせずとも常に綺麗になっているかをデータで示すことができるなど、(工夫を凝らして)さまざまなことができるトイレが存在する。よって、(トイレ建設費の多寡は、)トイレの意義をどのように捉えているか次第だろう。現在、被災地に関してはさまざまな問題があると認識をしているが、(万博の開催で被災地の復旧・復興に)支障が生じることにはなっていないと認識をしている。(トイレ建設費1棟)約2億円に何かしらの意義を持っており、当然(必要な)スペックをきちんと示して入札が行われたということだろうから、このスペックに意味があるはずだ。そこ(スペックの意味と入札額)を比較しなければ、(正当な)評価はできないのではないだろうか。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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