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経済3団体長 新年合同記者会見 経済同友会 新浪剛史代表幹事発言要旨

日時 2024年1月5日
出席者 十倉 雅和 日本経済団体連合会 会長(幹事)
新浪 剛史 経済同友会 代表幹事
小林 健 日本・東京商工会議所 会頭

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新年合同記者会見における新浪代表幹事(左)

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冒頭、十倉会長より能登半島地震および羽田空港における衝突事故について述べた後、記者の質問に答える形で、2024年の日本経済の見通し、2024年春闘の賃上げ、人手不足・雇用、金融政策、大阪・関西万博などについて発言があった。

十倉会長冒頭挨拶 :(略)

Q : 2024年の日本経済の見通しについて、どのようなご所感をお持ちか伺いたい。

十倉会長 :(略)

新 浪:先ほどの(新年会での)挨拶にもあったが、賃上げと物価の好循環が鍵となり、今年はそれを始める年であると想定している。4月以降、昨年を上回るような賃上げが起こるだろうと理解している。その理由は、既に昨年の後半からさまざまな企業から、5%を超える賃上げについて声明が出されている(からだ)。これが社会通念・ノルムになっていくような年にしていかなくてはならず、そのようになり得る年ではないかと考えている。よって、4月以降は実質賃金が上がっていくような環境になっていくと思う。また、政府によるいわゆる投資減税など、国内投資が実行される環境づくりもしていただく。これ(このような動き)が今年は出てくる。そのような中で人材が流動化していき、同時に人材が不足してくる。これらもモデレートなインフレになっていく大きなポイントとなると思う。このように、賃上げが起こりやすい環境ができれば、国内経済を前向きに見て良いのではないか。一方、海外(情勢)がかなりきな臭い。海外に依存している部分については、大変厳しくなっていくかと考えている。特に、地政学的なリスクについては考えていかなければならない。例えば、中東において突発的に何かが起こると、原油価格にも影響し、米国FEDも金利を下げず、日本はまた円安で厳しくなり、場合によっては金利を下げざるを得ない環境も生まれてくる。景気は良くなると思うが、昨年以上に課題を抱えているため、それらの状況を見ながら経営をしていかなければならない。そして、やはり(海外の)選挙の動向が非常に重要である。これも地政学とともに大きな課題になると(思う)。米国の大統領選挙、台湾の総統選挙など、不確実性が高まっているため、国内における経済活動を一層活発にしていくことが大切であり、日銀が予想するCPI上昇率2.8%を上回る経済、実質賃金で1.5%増加(と考えれば)、名目賃金で2.8%+1.5%+αくらいになっていると思う。また、税収も増えていくという中では、歳出をどのように上手に使っていくかということも重要である。

小林会頭 :(略)

Q : 2023年の春季労使交渉でおよそ30年ぶりの賃上げ水準が達成されたが、既に労働組合側からまた前年を超える要求水準が出てきている。経営側としては2024年の春季労使交渉をどのように位置づけているのか、また、高い要求水準に対して経営側としてどのようにこの春季労使交渉に取り組むのか、改めて教えていただきたい。

十倉会長 :(略)

新 浪:第一に、何と言っても二年連続で賃金が上がっていくこと、とりわけべースアップが非常に重要だと考えている。日銀が2.8%と(2024年の)CPI(の上昇)を予想しており、大企業はそれを超えるレベルとして5%以上の賃上げを行っていくことが重要である。そして、その結果が中小企業にも(賃上げが)カスケードダウンしていくことが重要であると思う。十倉会長も話された通り(賃上げを)社会通念にしていく必要があり、賃金は上がるものだという認識を(社会に)どのように作っていくか。そのためには、継続的に上げていかなければならず、二年目(となる今年)は継続して上がっていくかの試金石になる非常に重要な年である。先ほど申し上げた5%、そのうちベースアップはやはり(日銀のCPIの見通しである)2.8%を超える3%が必要であり、実際にそうなっていくだろうと考えている。第二は、この(企業による賃上げの)中で考えなければならないのは、可処分所得が重要であるという点だ。(政府が)社会保険料を上げていくということがあると、せっかく(企業が賃上げの)努力をしていても、(国民が所得をまた)取られてしまうと(感じて)、逆の社会通念・ノルムが形成されてしまう。賃金は上がらず、社会保険料の増加で(可処分所得はさらに)減少するというこの30年間のノルムを逆転させるためには、賃金を上げるだけではなく、社会保険料が上がらない、とりわけ大きな割合を占める後期高齢者負担金などをいかに上げないようにするか(が重要である)。(経済財政諮問会議に)10年携わる中で社会保険の中には大変な無駄があると感じており、無駄を減らすことで、働く人々が可処分所得も上がっていくんだと実感する社会を作っていくことが必要である。政府には、社会保険料を上げるのではなく、効果のない施策のコストをカットし、効果のある施策に支出するワイズスペンディングとEBPMを行っていただきたい。この二つをしっかりと行うことで、(2024年を)ノルムを作るための試金石の年にできると考えている。

小林会頭 :(略)

Q : 2024年の人手不足や雇用に関してお伺いしたい。23年11月の有効求人倍率は低下したとはいえ、引き続き需給は逼迫するという意見が根強く、今年は物流や建設業界で「2024年問題」もあり、中小企業にとっては引き続き人手確保は厳しい状況だと思う。そのうえで、24年の人手不足や雇用の見通しについてのお考えと、あわせて企業が対処すべき取り組み、政府に求める施策などについてお伺いしたい。

十倉会長 :(略)

新 浪:2024年は労働力の確保が大変厳しくなるのは自明の理だと思う。賃金(の引き上げ)を含めた人への投資をしない、またはできない経営(を行う)企業は非常に厳しくなる。一方で、「生産性を上げてから賃金を上げよう」という方向から、「人材に対する投資をしてイノベーションや生産性を上げる」と、考え方のパラダイムが変わった。2024年がパラダイムシフトを物語る年になるのではないかと予想している。既に2023年から、賃上げができない企業が(市場から)退出せざるを得ない環境も生じているが、私はこれを是とする。(退出は)経営力の差(による帰結)であると思う。つまり、(2024年は)企業の競争力を問われる年になる。このような状況下では新陳代謝も起こるが、政府にお願いしたいのは、労働力をどのように作っていくか(という)供給面(を強化する政策)も推進しなければならない(ということだ)。供給面を強化する意味で、(労働者の)キャリアデザインの下でのリスキリング、労働(力)の流動化(が必要だ)。大企業のみならず中小企業にも、労働力が還流する仕組みを作っていく。(また、)年収の壁をいかに取り除くかは、2024年だけで解決できる問題ではないが、2年半をかけて、今回の(年収の壁・支援強化パッケージの)補助金をベースに仕組みを作る。年金(保険の仕組み)をどのようにして(制度設計)するのか、第3号被保険者や第2号被保険者、第1号被保険者をどのように(制度変更)していくかについて、結論を得る年にしなければならないと思う。そして、65歳以上でも働きたい方々はいるため、リスキリングは全世代で行うべきである。生涯現役(を実現し、)結果的に生涯年収が上がる社会を作るきっかけとなる年にしなければならない。政府に対しては供給面の強化を要望しながら、我々(経営者)自身は企業戦略としてよい人材を確保する。賃金(の引き上げ)や人材投資を行い、人材を確保していく。

小林会頭 :(略)

Q : 賃上げについて伺いたい。働き手の7割を占める中小企業の賃上げが実現するかどうかは取引価格の引き上げが重要だという考え方もある。日商からは、取引価格に原材料費だけでなく労務費、つまり賃上げ分も含めて上乗せすることが重要だが難しいとの指摘もこれまでにあった。人件費の取引価格への転嫁について企業で認識が広がっているのか、課題はあるのかについて教えていただきたい。

十倉会長 :(略)

新 浪:公正取引委員会がこれだけ厳しく(指導を)し企業名まで出すことで、レピュテーションリスクになったということもあり、大企業の中でも相当に意識は強くなったと思う。ただ、産業によってもずいぶん異なる。(下請けの)多重構造にあるところはなかなか浸透しないのが実態で、言うは易く(行うは難し)、これを本当に浸透させるには時間がかかるため、あの手この手を使ってやっていく必要がある。例えば、CPI上昇分は交渉上自動的に(賃金を)上げるなど、何かしらの仕組みをつくらないと浸透していかない可能性もある。こうしたことを見ながら、公正取引委員会はじめ経産省などが制度の改定をしていかなければならない。今後最も問題となりそうな物流業界は、2024年問題もあるためずいぶん改善するだろう。そうでなければモノが運べなくなってしまうからだ。加えて、サービス産業も(構造が)多重化しているが、ここも人材が採れなくなっているため(改善が見込まれる)。人手不足というのはまさにこの(賃上げという)課題解決の大きなテコになるのではないか。ただ、繰り返しになるが、2024年だけで解決することではない。しかし、(解決に向けた動きが)大きく広がっていくことは間違いないと考えている。

小林会頭 :(略)

Q : 小林会頭から、年の後半には金利がある世の中に戻るのではないか、との発言があった。金利がある経済が始まると、資金調達のコストが上がり、円高が進むかもしれない。中小企業ないしは大企業も含め広く経済界として環境変化を受け止める準備ができているかお伺いしたい。

十倉会長 :(略)

新 浪:いくつかの条件があるが、米国FEDがどのように動くかだ。(米国の金利上昇が)少し控えめになってきたため、日銀の対策はおそらく今年の後半にやってくるのではないかと思う。ただ、後半というのは最も遅いタイミングであろう。一番確認しなければならないのは、(春闘後)4月にどれだけ大手企業を中心に賃金が上がってくるかという点だ。(日銀から金融政策変更の)メッセージは実はすでに出されており、(経営者は)皆、覚悟している。私個人としては、今夏頃にボーナス(支給額)と合わせて(状況を見て)実行する可能性があると思っており、遅くて下期だろう。金利のある通常の経済(への移行)が必要だが、政治的には財政に影響する。だが、金利があり正しい財政を運営する大きなポイント(換点)にもなるため、私は日本経済の将来にとっては正しい姿だと思っている。そして、新陳代謝も起こりやすくなるため、経済のダイナミズムが起きてくる。こうした意味で、早めに(金融政策変更を)していただくのがよいと思う。ただし、準備も必要なため、やはり4月以降、皆が賃金は上がるのだという感覚が得られてから実施していただきたい。

小林会頭 :(略)

Q : 建設業の残業時間の上限規制が4月に開始するが、能登半島地震の復興にも人手が必要ということで懸念されている。既に、大阪・関西万博の建設問題でも人手不足が言われているが、何よりも震災復興が優先されるべきだと思う。万博による建設人材不足と人件費が高騰しかねない問題についての考えを伺いたい。

十倉会長 :(略)

新 浪:能登半島の地震で、どれぐらいの被害がありどのような復興をするべきかということは、まだ(全容が)わからない状況だが、正直に申し上げて、大変厳しい状況にあると思う。各地経済同友会、サントリー(の現地支店等)、NPOの皆さんとコミュニケーションをしていると、非常に甚大な被害が起こっている。こうしたことを考えると、やはりまずは不便な(状況を強いられている)、大変厳しい状況にある方々への対応が第一だと思う。一方で、(万博の開催が)遅れて良いというわけではない。しかし、日本国が世界に示すべきHumanity(人道)という意味で、どのような姿勢を示して(万博を)行ったら良いのかという点では、十倉会長は(2025年 日本国際博覧会協会の)会長・代表理事も務められている大変難しい立場での発言だったと思うが、まだどのような(被害)状況かわからない中で、(優先すべきは震災復興と万博の)どちらからなのかを決めるべきではないと思う。ただし、先ほど申し上げた通り、そのような(甚大な被害という)事実(が生じているの)であれば、私は人命第一でしっかり(判断)すべきであり、世界は理解してくれると思っている。ご存じの通り、私ども(サントリーホールディングス)もスポンサーを務めている。(昨年誤解を招いて)お騒がせした言葉であるが、「納期」について、そのようなこと(事情)であれば、スポンサーも十分に理解ができるのではないかと考えている。繰り返しになるが、まだ(被害の全容が)わかっていない。ぜひとも事実がわかった上で判断すべきだと考えている。

小林会頭 :(略)

新 浪:補足すると(万博を)やめるべきという意見ではなく、(震災対応により開始が)遅れるということである。(万博は)必ずやらなければならないと考えており、この点は誤解のないようにお願いしたい。

以 上
 (文責:経済同友会 事務局)


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