新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨
代表幹事 新浪 剛史
冒頭、社会保障制度財源およびNTT法について説明した後、記者の質問に答える形で、神田憲次財務副大臣の辞任、補正予算、為替、賃上げ、中国との会談について発言があった。
新 浪: 政府の少子化対策の一環で「支援金制度(仮称)」の議論が行われているが、社会保障制度財源の大きな方向性について話をしたい。何より重要なのは、何と言っても持続的な賃上げと併せて、社会保険料の負担をこれ以上増加させず、現役世代の手取り、つまり可処分所得が安定的に上がっていくことだ。この点をきちんとピン留めして、社会保障制度の大胆な改革にしっかりと取り組んでいただきたい。足下18ヶ月連続で実質賃金がマイナスとなっており、国民に不安な気持ち(があること)は間違いない。また、社会保険料がずっと上がり続けている中、可処分所得は大変重要であり、ここをきちんと見ていかなければならない。経済界としても、賃上げし私達(の)社員に報いていきたいが、(社会保険料負担の増加により)賃上げ効果が相殺され、働いてる人たちのモチベーションを下げることのないように是非お願いしたい。そのためには、私達(経営者)が社員とともに努力しながら、持続的な賃上げを実施していくことに加え、国においては、ワイズスペンディングによる社会保険料の負担増加の抑制をしっかりと実施し、可処分所得を安定的に向上させていく(ことが重要だ)。私は、これらのことが結果的には少子化対策に繋がると思っている。少子化対策における支援金制度は結構だが、その財源については、働く方々の意欲を削がないようにしていただきたい。支援金制度は時限的(な取り組み)とし、医療・介護制度自体も抜本的に見直していかなければならない。経済財政運営の本筋は、何といっても可処分所得を継続的に持続的に上げていくことであり、(それが)経済が闊達になっているということ(の表れ)である。そして、そこから生まれる税収によって、社会へ必要なサポートをしていくということが基本である。したがって、せっかく実質賃金を何とか(プラスに)しようというモメンタム、機運がある中で、水をかけるようなことのないようにしてもらわなくては困る。何度も申し上げるが、しっかりと可処分所得が上がることこそ、少子化対策の環境作りに繋がる。このことをくれぐれも忘れないようにやっていただきたい。最後に、こども・子育て政策の財源を巡る議論について、来週11月22日に、経済・財政・金融・社会保障委員会より具体的な提言をさせていただく。
新 浪: 二つめはNTT法に関して申し上げたい。基本的には、廃止に向けての議論をしっかりと進めていくことに賛成である。1985年にNTTが民営化されたが、市場を自由化したその時代と(現在では)、規制の前提となる技術を含めて情報通信インフラの環境が大きく変化している。NTT法を具体的にどうするか。私は(国が)株式を売却していくことは結構なことだと思っている。防衛費財源としてという議論ではなく、しっかりと(完全民営化した)自由な企業として、クリエイティブなNTTになってほしい(からだ)。日本において情報通信産業は非常に重要であり、国際競争力を強化していくべきである。現在のような地経学、地政学的に大変難しい時代において必要なことであり、それはNTT一社に限ったことではなく、産業そのものが発展していくことが重要だ。(NTT法をめぐる議論には)二つの論点がある。一つはユニバーサルサービスである。昔のように電話線(メタル回線)を整備していくということではなく、光ファイバーやWi-Fiといった(ブロードバンド、無線通信の提供が軸となる)。離島などへ(ブロードバンドの)ユニバーサルサービスが行き渡らないのではないかと(いった不安がないとは)言い切れない。ただし、これはNTTのみならず、通信事業者全体に一般法として課すものではないだろうか。また、(もう一つの論点は)「研究開発の推進と成果の普及」義務である。これがNTT法の中にあるわけだが、情報通信産業の国際競争力という点で大変重要なことであり、これについては継続的に行っていただきたい。(ただし、)この分野も(NTT法ではなく)通信業界全体に対し、外為法や経済安全保障推進法などでしっかりと管理していくものであると思っている。より深く追究すれば、NTT東西をどうするかということになる。周囲と議論もしたが、私自身はNTT東西を統合していくことが必要なのだろうと考えている。実際に(この二社は)、研究開発した技術の実証ならびに(社会)実装する場である。とりわけNTTは(情報通信産業における)研究開発に大きな役割を担っており、それを分け(たまま合併禁止とし)てしまうと、そのような(研究開発等の)成果を活用できなくなる危惧がある。ここはまさに、電気通信事業法において、(NTTによる研究開発の)成果という果実を、競合他社を含め、産業全体でしっかりと享受できるということが大前提であり、それをしっかり続け、そのような仕組みを作っていく(ことが肝要だ)。例えば(NTTが推進する次世代ネットワーク構想)IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)が実現できれば、世界を席巻する素晴らしい技術となる。これがNTT東西できちんと活用されるとともに、他社も享受できると担保することが重要だ。KDDIもIOWN構想に参画するということであり、これは通信業界のゲームチェンジになる。このような新技術を実装するためのNTT東西であり、これを切ってしまう(両社を分割したままとする)ことは、最終的には当該産業の発展の妨げになるのではないか。こうした新しい技術が生まれ、そしてうまく活用されることが国益にも適う。(ただし、)「研究開発の推進と成果の普及」義務に基づいて全てを公開するというのは、昨今の地経学、地政学的にはやはり大変問題がある。この点はしっかりと、外為法ならびに経済安全保障推進法で保護していくことが必要だ。最後に(指摘したいのは)、(政府が保有する)3割にあたるNTT株を複数年かけて(売却し)、本当の意味で自由化をしていくということであれば、重要なのは、NTTが企業価値を本当に上げられるのか、いわゆるエクイティストーリーが必要であるという点である。どのように成長シナリオをつくり、価値を高めていくかということも併せて(検討する)必要がある。このようないくつかの付帯条件を持って、NTTが本当の意味で国から離れて発展していく。米国のように(企業が)自由にイノベーションを起こしていくためには、国家主導ではなく、むしろ国が関与しない方がよいこともある。一方で、安全保障面においては国がしなければならいこともあり、これを切り分けて(検討して)いく必要があるのではないか。これらを議論して、発展的なNTT法の廃止もしくは見直しへと進めていくべきだ。ユニバーサルサービスについても、NTTだけ(が担う)のはどうなのかということを踏まえ、抜本的にNTT法を見直し、一般法としていくべきではないかと考えている。
Q:神田憲次財務副大臣の辞任により、第2次岸田再改造内閣以降、政務三役の辞任は3人目となる。(今回の不祥事を受け、)極めて不安定になっている岸田政権への受け止めを伺いたい。(また、そのような状況下で)年末に向けて補正予算案の編成や税制改革などが議論される中、現政権に対する要望を伺いたい。
新 浪:神田憲次財務副大臣の更迭は、相当遅い判断である。財務副大臣という立場を考慮すると、即座に判断しなければならなかった。副大臣・大臣政務官の任命に関して、岸田首相ご自身が、俗に言う身体検査をする時間を(十分に)とって組閣できる(状況にあった)わけではないことは承知している。しかし、何かが起こった際に早期に判断をすることが最も重要ではないか。(ご自身が)任命された国会議員に対する国民感情を即座に察知、判断し、アクションを取る。そのような、これまでの行動の蓄積が現在の内閣支持率に現れているのではないかと(思う)。(岸田首相は)さまざまな施策に取り組まれて大変(重要)な意思決定をされているが、今回のような罷免に時間を要すると、国民の視点からは「(現政権は)意思決定が遅い、大丈夫だろうか」という不安感につながっていると思う。政権が不安定になることは(国民にとって)決して良いことではない。そのため、何か起こった際は早期に判断できる政権運営を強く要望する。
Q:NTT法の見直しについて伺いたい。法改正によって競合他社との公正な競争が阻害される点を踏まえ、自由競争を担保するための方策についてご意見をお聞かせいただきたい。
新 浪:NTT東西の扱いについて、NTTが(NTT法の見直しによって)得られる利益が強大すぎると、かえって(競合他社との)競争を阻害する方向へ向かってしまうため、その点をしっかりと議論すべきである。冒頭、申し上げたような新しい技術を(産業全体で)本当に享受できているのかという面から、電気通信事業法の運用を今後どのように考えるかが大変重要であり、(競合の)各社は非常に危惧している。そのような懸念事項を明らかにして議論し、NTT法の抜本的な見直しとNTT東西の取り扱いに焦点を絞って議論をして、問題の解決を図ることが必要である。NTTは新技術であるIOWNについてKDDIと連携しており、IOWN構想が実現するとエネルギー政策にも大きく影響を与える。そのような果実を各社が享受することで、エネルギー消費の低減とともに、情報通信産業の発展に繋がる。NTT東西が別会社に分割され(たままでい)ると、このような新技術の実証と実装の場が失われ、(産業が)発展しないという考えを併せ持って検討しなければならないため、大変難しさを秘めている。(全事業者が)一体となって、新技術という果実を享受できる枠組みの構築にしっかり取り組んでいく必要があると思う。
Q:先日閣議決定された補正予算について伺いたい。一般会計の歳出額13兆円の内訳をみると、あらかじめ打ち出されていた物価高対策は約2割(2.7兆円)に留まり、最も大きな項目は国土強靭化であった。この経済対策について見解を伺いたい。また、経済対策の財源として新規国債の発行額が8.9兆円に達する一方、長期金利は上昇している。今後の利払い費の増加をどう受け止めているか。
新 浪:国土強靭化については、本年の夏をはじめ、この数年にわたり温暖化によって大変な(災害が頻発している)ことは事実であり、(災害対策としての)強靭化は行わなければならないと思う。そのため、補正(予算)ではなく(当初予算に)一般化することも必要かもしれない。財政投融資など、方法はいくつか考えられるだろうが、(今回の)補正予算で措置したのは、今すぐに行わなければ地方(自治体)の予算執行も少し遅くなり、来年の風水害に対応できないという面もあるのだろう。いわゆるインフラが(老朽化によって)傷んでいるため、その意味でも対応は必要だ。ただ、もう一つ重要なことは、(国民への)しっかりとした説明であり、やはり説明責任を負っていただきたい。物価高に対して、いつまでエネルギー(価格)対策を続けるのかは非常に悩ましい点である。(日本は)鉱物性燃料を33兆円も輸入している中で、(為替相場が1ドル)151円を超えたままでは大変な負担を強いられるため、物価高の大きな要因となっている円安(を是正するため)に、今も続いている日銀の(金融緩和)政策についてロードマップを描いて(変更を)考えていかなければならない。日銀の(YCC修正)は(企業に緩和終了の)準備をせよというメッセージだと受け止めている。私は金利のある経済と呼んでいるが、(内外)金利(差の解消)を考えていかなければ、物価高の抜本的な解決はできない。そのため、中間層や(生活が)苦しい方々には1年だけと期限を決めて(財政出動で)対処しないといけないくらい(物価の高騰は)厳しくなっている。エネルギーと生鮮食品を除く(消費者物価指数の伸び率は)4%を超えており、今回(補正予算で対策を)行うのは良いと思うが、(併せて)抜本的対策を考えていかなければならない。長期金利が上昇していく中で、赤字国債を今後も発行し続けることは得策ではないが、金利のある経済へと一気にトランジションすることは難しい。そのため、先ほど申し上げた通り、金利のある経済へのロードマップがなければならない。そこで、(先々を考えず)今だけの(状況を考えた)対応を行っているように見えるこの経済対策に対し、経済財政諮問会議の(民間議員)メンバーは危惧を覚えており、(今後)赤字国債に頼らないようするにためにも、金融政策と財政が結びついている現状についてしっかりと議論していく(必要がある)。民間を中心に100兆円以上の投資が国内で予定されていること、人手不足も当分続いていくことが予見され、実質賃金が上昇する可能性も大変高い状況にあることから、円安対策という面とともに、長期金利が上昇していく前提では、国債をこれ以上発行できない方向へと強い圧力がかかっている。結論としては、そろそろ赤字国債を発行しない経済財政運営をどうしていくか(考えるべきだ)。
社会保障(改革)にも通じるが、昭和(的なるもの)から令和へと(政策運営の)やり方を変えていかなければならない。経済が急成長していれば国債を償還できるが、低成長の中では赤字国債(の発行)を最小限に留める経済運営を考える必要がある。したがって、重要なのは経済を成長させ、民間が発展することで税収も増えていく(好循環の確立である)。岸田首相の発言でも示されているが、(今はまだ)実態が伴っていない。原因は時間軸であり、すぐには実現できない中で大変な(状況にある)方々に対応する必要があるが、金利のある経済に向けた財政運営を嫌でも行わざるを得ない状況になっている。今回(赤字国債を)発行することについて、やはりかと思う一方、(今後)大きく減らしていくことが重要である。例えば、1年なら1年の間に民間主導の経済をどう実現するか、規制改革や社会保障改革を進め、より(政策の)効果が上がるように民間参入やデータ活用へと動いていくことが現政権には必要ではないか。赤字国債をこれ以上発行しない経済とは金利のある経済のことでもあり、(その方向へ)向かってもらいたいと経済財政諮問会議で強く発言している。したがって、(赤字国債の発行は)決して良いことだとは思っておらず、ぜひ(これ以上は発行しないように)していただきたい。
Q:円安が一時152円になっていることの受け止めを伺いたい。実質賃金が上がったとしても、円安によって国際的な賃金水準から見れば全く上がっていないという状況にもなりかねない。これは果たして国益に適うのか。そのような視点も含め、考えを伺いたい。
新 浪:複雑な方程式だと思う。YCCそのものが相当崩れてしまっている。(先般の日銀によるYCCの柔軟化後に)長期金利が上がっているということは、不自然な市場コントロールを行っていることに対し、やはり市場は厳しい(眼で見ている)。一方で、(日銀は)これ(金融緩和)を守り抜くのではないかと思われているし、米国は2024年に金利を下げないのではないかという思いが市場の中ではある。先般、ニューヨークへ2週間ほど行ったが、大半の人は、FRBは2024年に金利を変えないと言っていた。そうだとすれば、日本が変えなければ(金利を上げなければ)、これ(円安という状況)は変わらない。今のような不自然なコントロールに対して、市場が反駁している。今の日本の経済力に鑑みると、151円は安すぎる。(過去に)コンフォタブルだった(水準として)110円程度の時期があったが、80円の時期と比べるとJカーブ(効果)が無かった(ため、いくらが良いということは一概に言えない)。私は製造業に9年いるが、(製造業は)工場を相当(海外に)移してしまっており、今の円安は、恐らく国民生活上マイナスになってるのは間違いないことだと思う。YCCを撤廃し日銀の政策を変えることが経済に与える影響と、国民経済の今の非常に厳しい状況と、どちらが本当に良いのかという狭間にあると思うが、そろそろ国民経済に与える影響の方が圧倒的に多くなってきてるのではないか。今の金融政策は終焉させていかなければならず、(現在の)市場はそのことを物語っているのではないか。米国はある程度経済も良い。日銀も、来年は(物価上昇率が)2.8(%)だと言っており、ビハインドザカーブ(※景気や物価の上昇に対して、意図的に利上げのタイミングを遅らせる金融政策)を意識している。市場は、既に(物価上昇率が)2%を超えており、なぜ(利上げを)やらないのかというメッセージがここにある。私はそろそろ(金融緩和政策が)限界に来ていると思うし、国民経済を害するものになってきてしまった(と思っている)。赤字国債を発行しやすい(政府と日銀の)関係もある。先ほど複雑な方程式と申したが、あちらを立てればこちらが(立たぬといったように)つらくなる。しかし、今は、(金利を上げない方が)つらくなるのではないか。確かに住宅ローンや、中小企業や信用金庫などではさまざまなこと(金利負担の上昇に伴う借入負担の増加など)があるだろう。しかし、そのようなところを救済する仕組みの方が、(金利を上げないことによって金利差による円安が継続することと比べて)恐らく安上がりに済むのかもしれない。このような、いわゆる(複雑な)方程式で考えて早期に対応しないと、本当に国富を失うことになっていくのではないかと大変懸念している。
Q:代表幹事は早々に(サントリーHDで来年も7%の)賃上げの方針を決めた。経営者が賃上げをためらう要因として、一旦上げると下げられないという賃金の下方硬直性がある。労働法制で賃金の減額が労働条件の不利益変更にあたるため(賃上げをためらう)という議論があるが、経営者としてどのように感じているか伺いたい。
新 浪:私は賃上げをすることで(モチベーションを高めることが重要だと考えている)。みずほリサーチ&テクノロジーズの研究では、2030年には(労働力が)700万人足りないとされている。このような人手不足の中で、よい会社を支えているのは人であり、人々のモチベーションを高くすることで生産性が上昇する。さまざまなデジタルツールを提供したとしても、やる気がなければ生産性は上昇しない。私はいち早く賃上げすることによって、「あの企業は(賃上げをして社内のモチベーションを高めたいという)意思を持っている」と早く示すことが必要だ(と思う)。よい人材を(集め)、社内のモチベーションを上げていくことが、企業戦略にとって非常に重要だ。コロナ禍の時から、現在のような人手不足になることはある程度見えていた。しかし、他の問題が多く、人手不足にあまりフォーカスしてこなかった。蓋を開けてみたら、(人手不足が深刻化し)大変な状況になっていた。人口統計は絶対変わらず、間違いなく労働力が足りなくなるため、いくつかの対策を打たなければならないが、それでもおそらく(労働力が)足りない。これらを考慮すると、(生産性を高めるために)賃上げをすることが間違いない方程式だ。そして、大手の企業が早く賃上げの意思決定をすることによって、全体のモメンタムも上げる。サントリーHDは(2024年も)賃金を7%上げると表明しているが、4割を占める中途採用者、(そして社外の人材からも)賃金が高い企業に(いたい・)行きたいという気持ちを持ってもらう。このように、賃上げあるいは人材獲得競争が起こることはよいことだと(思う)。その結果として、生産性が上がってくる。ここで申し上げたいのは、(日銀が政策)金利を上げれば中小企業が大変になるが、(その際、)企業ではなく人を救わなければならない。失業なき労働移動は非常に難しいが、それを目指すために(働き手に)キャリアデザイン(のサポート)をし、新しい職場を探せるようにしていくことが必要だ。特に、重要なのは50歳以上の方々だと思っている。今の政府の議論は、どちらかというと20代、30代、40代のリスキリング、キャリアデザインである。しかし、団塊ジュニアをはじめとした50歳以上が(労働力として)大変多く、まだまだやる気もある。ベースアップもするので、(賃上げの対象には)50歳以上も含まれる。例えば、キャリアデザインをして75歳まで社会との接点を持ちたい(と考える方もおり)、現在の会社ではなく、次の会社で働くことができるように環境整備をすることも、人への投資だと(思う)。結果として、(自分のキャリアデザインに沿った)将来があるから、今を一生懸命頑張ろうということで生産性が上昇するため、そのような環境整備をしなければならないと思う。繰り返しになるが、50歳以上の方々のリスキリングは非常に重要である。中小企業においても50歳以上の方々が多い。何となく50歳以上の方々が忘れられている感がある。しかし、その頑張りが日本の経済を支えている。若い人たちは(リスキリングやキャリアデザインに対する)意識もある。生涯現役という(意識をもってもらう)ことで、今の職場で頑張っていただくことが重要ではないか。(環境変化の)端境期にあって、人手不足にも関わらず賃金を上げられないと思っている経営者がいるのは事実だと思う。(賃上げするか否か)どちらの方向性に進むかによって、おそらく企業の将来が決まると思う。今(すぐ賃金を)上げなくとも(経営が)何とかなると思っていると、おそらく企業としては立ち行かなくなる可能性が高い。本当に残念ながら、賃上げができない企業は(経営が)厳しくなることが現状だと思う。そのため、(賃金を)上げたら(労働条件の不利益変更に該当し、賃金を)下げられないから(賃上げできない)と躊躇していると、社員がいなくなってしまうし、社員が集まらなくなる。これが現状だ。そのような大変厳しい状況になっていると思う。
Q:今後の外交日程の中で日中会談や米中会談(の開催)が見込まれ、明日は日中CEOサミットもある。新浪代表幹事は中国に対してどのような表明やコミットを求めるか。
新 浪:中国が(経済的に)切っても切れない関係であることは、自明の理である。ただ、それでも怖いのは反スパイ法である。(抵触するか否かが)どのような観点なのかよくわからない。今回岸田首相が、習近平国家主席とその点について忌憚なく話ができればいいのではないか。我々産業界が、中国(とのビジネス)をやりづらいと感じているのはその点にある。「一人あたり」は別として、4%強の成長をしている国というのはなかなか存在しないため、やはりそれ(中国とのビジネス)はGDP(への影響)からすると大きい。(中国は)消費を伸ばそうともしており、決して無視できる国ではなく、(ビジネスを)行いたい。(しかし、)企業各社はクリーンハンド(の法則でビジネスを行うことが)できず、捕まるのではないかと思えば、(各企業は中国とビジネスを)しない。そこでクローズアップされるのはインドだが、インドなりの難しさが当然ある。(各企業)皆が(インドとビジネスをする方向へ)進めば、やはり(インドも)高飛車に出る(だろう)。(中国の反スパイ法において)何をしてはいけないのかわからず、手探りで(中国とビジネスを)行うのは非常に難しい。少なくともガイドラインが出され、その点がクリアになると良い。データ(に関する法規制)については承知しているが、(反スパイ法については)わからないため、しっかりとクリアにしていただきたい。
以 上
(文責: 経済同友会 事務局)