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新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2023年10月31日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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冒頭、日本リスキリングコンソーシアムとの戦略的パートナーシップ締結および認定NPO法人フローレンスとの連携について説明した後、日銀の政策修正、ジャニーズ事務所、経済対策、経済界、大阪・関西万博、ライドシェア、ジャパンモビリティショーについて発言があった。

新 浪:本日10月31日、日本リスキリングコンソーシアムと経済同友会は、日本のリスキリング加速に向けた戦略的パートナーシップを締結した。共助資本主義では、成長の大前提となる「全世代の人財の活性化」を重点テーマと位置づけている。企業が旺盛な投資によって新たな価値を生み出す一方で、人的資本にも投資していく。その活力をもとに企業は再投資する、という好循環を形成することが必要だと考えている。人々が、豊かな文化的土壌のもと、誰一人取り残されることなく、それぞれの生き方が尊重され、互いに思い合い、喜びを分かち合える経済社会を構築していくことを目指す。代表幹事就任に際し、私が所信表明で掲げた3テーマのうちの1つが人材活性化である。働く人々が、慣れ親しんだ組織文化(だけ)にずっとしがみついていくのではなく、外部の環境変化を受けて自分自身を変えて新たな挑戦ができるようにする。そのためにも、今回の連携を第一歩に、経済同友会としてもリスキリング推進に取り組んでいきたい。また、同じく本日、日本の子ども・子育て領域に係る課題解決に取り組む認定NPO法人フローレンスと経済同友会との連携を発表した。「こどもの体験格差解消プラットフォーム」に協働で取り組んでいく。本件は7月6日に締結した「インパクトスタートアップ協会、新公益連盟及び経済同友会の協働に関する連携協定」の一環であり、(フローレンスが立ち上げる)本構想に賛同し、プロジェクト推進などで協働していくこととした。今後もさまざまなセクターの方々と協働・連携しながら、経済同友会は共助資本主義社会の実現に向けて取り組んでいきたい。

Q:本日の日銀のYCC(イールド・カーブ・コントロール)の再修正に対する受け止めと、展望リポートにおいて(2024年度の)物価見通しが2.8%に上方修正されたことによるマイナス金利解除の見通しをどのようにみておられるか。

新 浪:今回は、前回(7月)から間を置かず、結構早いタイミングで(金融政策の修正を)行ってきているのは、世界情勢が非常に不安定で、各国において長期金利が上昇している中、円も非常に難しい状況なっており、日本も例外ではなくなってきた。そのため、(日銀の対応は長期金利)1%に固執するのではなく、柔軟に対応していこうということだ。この柔軟性というのは、市場メカニズムを入れておこうということであり、私はノーマライゼーションに向けての一歩前進であると評価をしたい。しかし、すぐにYCCを始めとしたこれまでの緩和政策を解除するということではなく、徐々に市場に対してメッセージを出しているのだと理解している。そのような将来(の市場の姿)があるんだというメッセージであり、(その将来に向けて)準備もしていかなければならないと思っている。(消費者物価の見通しは、2023年度)2.8%、(2024年度)2.8%、(2025年度)1.7%だ。将来的には物価が下がっていく見通しだが、来年以降は(金利が)上がり、物価は2%を超えていくというメッセージも出している。経済として準備する(必要がある)ことを、メッセージとして出したのではないか、出し続けているのではないかと見ている。

Q:(故・ジャニー喜多川氏による性加害問題を受けて)新しく設立されるエージェント会社に(旧ジャニーズ事務所のSMILE-UP.社長)東山紀之氏ではなく、コンサルティング会社「スピーディ」の福田淳社長が就任するという報道が出ている。今までジャニーズ事務所の運営に関わってこなかった人物がトップに就任することについて、考えを伺いたい。

新 浪:どなたが(新エージェント会社の)社長に就任されるかは、それぞれの会社の考え方であり(私が意見することではない)。新たな方が就任されるのであれば、ぜひ頑張って(運営して)いただきたい(と思う)。外部の方の社長就任に対して、特段、異議を持っていない。(ジャニー喜多川氏による性加害問題が)全体として良い方向へ進んでいると理解している。(新エージェント会社を)運営できる方が(社長に)就任されるという判断であろう。その意思決定を尊重すべきだと思う。

Q:今回日銀は物価の見通しを上方修正した。一方で帝国データバンクの統計などを見ると、値上げ品目がかなり減ってきているというような動きもある。経済同友会の代表幹事として、サントリーホールディングスの社長として物価の動向をどのように見ているのか。また、企業経営者としては、値上げをすることで販売が滞ってしまえば業績に影響が出てくるため難しさもあると思う。その点について、考えを伺いたい。

新 浪:値上げに対してお客様がセンシティブになっている状況があると感じている。従って、物価動向にはしっかりと注視していかなければいけない。帝国データバンクの(統計が示す)ような状況は認識している。実質賃金がこの17ヶ月、上昇していない(プラスとならない)状況、原油価格においても中東情勢(の長期化等により再び上昇する可能性)など、どう考えても物価が下がる状況ではないため、センチメントとしては決して消費に良い状況ではないと認識している。しかし、円安(によって)原油価格など海外からの物資を円貨に直せば当然(価格が)上がり、消費が減退してしまう可能性もあり得ることに気を付けなければならない。今回の日銀の対応は、物価上昇が厳しいという(状況)を慮った対応だったと思っている。(日銀の政策決定会合において)どのような意見が交わされたか(は不明)だが、(もしかすると、10年金利の指値オペの上限を)1.5%までにするといった議論もあったのかもしれない。物価の状況について、スタグフレーションにならないようにするために、人手不足が間違いない(状況のもと)、早めに、日本中で賃金が上がることが明確になることが大変重要である。(私は)サントリーの社長であり代表であるわけですが、(早めに賃上げ機運が高まることを期待するがゆえ、)先般、7%の(賃上げを2024年に実施するとの)話を申し上げた。予見性を持って、社員に(対して)大丈夫である、消費者向けのメーカーであり(率先して)消費をエンジョイしてほしいという趣旨がある。中には、何年かに亘って賃金を上げるという会社もある。今後変わらない事実として、人手不足はそう簡単に解決できないということがあり、賃金が上がるのは当然の成り行きである。(賃上げによって)消費も(更に)できるようになっていくという好循環を生み出すために、それが可能な企業は、スタグフレーションにならないように、早めに賃上げをアナウンスしていただきたい。賃金を上げざるを得ない状況であり、スタグフレーションはあまり懸念していないが、それ(緩やかな物価上昇と賃上げの好循環)が現実化をしていくことが大変重要なことである。それがゆえに、今度はもう一歩進んだ日銀の対応もあるのではないかと期待している。

Q:本日、政府が与党に対して経済対策の全容を示した。所得税減税など、岸田首相肝いりの思い切った政策を導入しているにも関わらず、各紙世論調査による内閣支持率は足元でかなり低下している。年末に向けて重要テーマが山積している中、政権運営に与える影響をはじめ、岸田首相の経済政策が国民の理解を得られていない状況をどう見ているか。

新 浪:根本には、やはり世の中で指摘されているように、(岸田首相には)解散総選挙を行いたいとの考えがあるのだろうと容易に想定されるが、私は首班指名を受けた総理大臣は(衆議院議員の任期である)4年間、しっかりと政策を実行することが大変重要であり、これが根幹にあるべきだと思っている。何か政策を実行すれば、支持率が上がることもあるし下がることもある。(岸田首相には)取り組みたいことをしっかりと行い続けていただきたい。(岸田首相が取り組まれている政策課題の中で)私が非常に良いと思っているのは人材流動化(である)。それを可能とするには、先ほど申し上げたリスキリングコンソーシアムのように、自分自身の人生をデザインし、リスキリングをして、その結果として人材が(産業や企業の間で)流動化していくことが日本にとっては最も重要なことであり、(岸田首相には)ぜひこれを実現するために一心不乱に取り組んでいただきたい。一般的に、一内閣(で)一アジェンダ(の成果を挙げて欲しい)。第二次安倍内閣から私は(政府の各種政策会議に)参画しているが、(この間、)人材流動化は非常に難しいと言われ続けてきた。しかし、これだけ人材不足が生じている好機に(取り組みを進め)、少子高齢化の中で軛を脱し、流動化によって賃金が上がる好循環を実現していただきたい。私は(岸田首相には)支持率云々を考えることなく、来年に(自民党)総裁選が行われるとしても、(人材の流動化を)成し遂げていただくことを望んでいる。仮に(所得税)減税が支持率を高めるために行われるのだとしたら、(国民の期待は)そうではないのだろう(と思う)。それよりも重要なことは、(岸田)首相がお話しされる通り、持続可能な賃金上昇のために邁進していただきたい。ただし、前回(10月20日開催)の(代表幹事定例記者)会見でも申し上げた通り、今回(の減税は)与党として(減税対象世帯の)所得制限も考えているそうであり、一年で止めるという話になっているため、現在の物価高に悩まされている国民に対して補助を行うということは良いと考えている。ただ、(所得税減税は)本当に一年で止めていただくこと(が重要)であり、これは(岸田首相も)明言されているために良いと思っているが、根本にある(岸田首相が)最も取り組みたい政策(である人材流動化)をやり抜いていただきたい。

Q:支持率はあくまでも指標の一つでしかないが、岸田首相が進めている経済対策や中長期的な人材流動化などの政策が国民にうまく伝わっていないとの見方もできる。岸田首相の長所として「聞く力」が挙げられるが、「伝える力」についてはどう見ているか。

新 浪:現在までの支持率(の推移や)、(骨太の方針などを)見ればわかる通り、さまざまな意思決定を行っている。安倍政権ができなかった課題や少子化(対策)についても(政策決定を)行っている。意思決定をされているが、事実として現在の支持率からすれば、(国民には)伝わっていないと言えるのだろうと思う。したがって、しっかりと伝える努力をやれば良いと思っており、(岸田首相が)行われていることの多くは決して間違っていないと思っている。

Q:サントリーをはじめとしたグローバル企業では、旧ジャニーズ事務所所属タレントの広告起用を見直す動きが相次いだ。新浪代表幹事は、放送局の対応が非常に手緩いことに問題意識を強く持っていたと思う。放送局の中には(旧ジャニーズ事務所所属タレントを)報道番組のキャスターとして起用し続けたり、年末の歌番組にも新たにキャスティングしたりしている。(ジャニーズ事務所をSMILE-UP.に)社名変更したことで(過去がリセットされたと見なし)、(放送局の中にはタレント起用を)元に戻そうという雰囲気があるのではないか。実際、被害者への補償も始まっておらず、新エージェント会社の全容はまだ見えない。(所属タレントの)独立性がどの程度担保されるのか(も不透明で)、(新エージェント会社の)ガバナンスも不透明だ。放送局の対応の現状について、どのように考えているか伺いたい。

新 浪:(各放送局の対応は)非常にまだら模様だと思っている。ひとつ重要なことは、スポンサーである企業が(起用に対するスタンスを)明確にしている(ことだ)と思う。(放送局の対応が)手緩いか否かは主観的なものだが、私はスポンサーから大きな影響を受けていると認識している。巷に相当(多く)の方々が(見ている中で)、放送局が放映する番組によって、(旧ジャニーズ事務所タレントの起用は)さまざまであるが、(起用に対する)流れは大きく変わってきていると認識をしている。これから新たに(行われる被害者への)補償やそれに関する動きを見守りたいと思う。(補償を遂行するために)旧ジャニーズ事務所が(SMILE-UP.と新エージェント会社に)分かれたのだと期待をしている。また、新生の(エージェント)会社に対して疑念を持つ会社も多くスポンサーにいるため、(同じ)放送局の中でも(放送)番組によって(旧ジャニーズ事務所所属タレント起用を)外すこともある。(これらのことから、旧ジャニーズ事務所タレントの起用は)まだら模様でありながらも、前進をしていると考えている。今後、私は現在の状況から児童虐待は認めないという考え方が(日本に)浸透していくと期待をしている。私が(会社の経営について)事細かに言及する必要性はない。私は、日本の企業がしっかりと(チャイルド・アビューズを認めないという意識に)目覚めて、そのために大きく流れは変わっていると認識している。

Q:9月(の朝日新聞インタビュー)の段階では、番組での(旧ジャニーズ事務所所属タレントの)起用を継続する、あるいは新たに起用するケースでは(番組スポンサーとして)資金提供をしないというオプションもあり得ると話されていた。その考えに変わりがないか伺いたい。

新 浪:(考え方は)変わっていない。グローバル企業ないしは日本の企業がほとんど(スポンサーとして)資金提供しないと判断している。(判断の根拠となる)考え方として、人権(遵守)並びに「児童虐待は絶対に許されない」ことを明確にした(ことがある)。私は、今回、日本の企業がスポンサーとしての対応を見直し、かつ資金提供しないことを明確にしたと思っている。ただ、最終的に、(旧ジャニーズ事務所所属タレントの起用について)どの放送局がどのようになっているかを詳細に承知していない。しかしながら、(起用見直しの)流れはできているのではないかとみている。ただ細かいことを言えば、商権はどう移動するのか(ということをはじめ)、非常に難しい面もある。(それらを踏まえ、SMILE-UP.と新エージェント会社の)二つになったのだと思う。だから、旧ジャニーズ事務所が持っていた商権を新エージェント会社に移さなければならない。このような商権の移動は税務など(すべきことが多くある)。我々企業人からすれば、たいへん難しい。そういうこと(具体的なプラン)がこれからいろいろ実行されていくという期待をしている。実はすぐ実行はできない。本質的(にできない)。SMILE-UP.と新エージェント会社の二社体制をまず決めたこと、我々企業が「児童虐待は絶対に許されない」と明確にしたことが大きく進んで、(起用見直しの)流れはもうできていると考えている。

Q:財界の消費税等に関する提言を巡って、泉房穂 前明石市長が批判を強めている。批判するのは自由だが、その中で「財界のお偉いさんたちはスーパーで買い物をしたことがないから生活のリアリティがわからない、物価高も実感してないんでしょう」と述べている。新浪代表幹事は、スーパーで買い物をしたことがあるか。

新 浪:(私は)ローソンの社長を務めていた。泉氏のことは存じあげないが、失礼なことを言わないでいただきたい。他の(財界の)方のことはわからないが、そのようにバサッと(財界を一括りに)する捉え方があまりにも稚拙だ。ローソンの元社長であり、(現在も)消費者の方々にご愛顧いただけなければいけないサントリー(社長)でもある。スーパーにもコンビニエンスストアにも行くし、「(物価が)高くなったな」という印象も持っている。そのようなご発言をされる意図や趣旨がよくわからない。私たちは、先ほど申し上げた通り、(生活が)厳しい方々がおられるため、所得減税についても「良し」と言っている。逆に(泉氏は)我々に何を求めているのか。消費税については、(本会は)経団連と考え方が異なる。(消費増税は)いずれは議論をすべき問題だと思っているが、経済同友会代表幹事として、今すぐに議論すべき問題ではないと言っている。消費税の議論はするな、ということを(泉氏は)おっしゃっているのか。批判するのは簡単だが、(具体的に)何をしてほしいのか。スーパーに行ってみてこの(物価高の)厳しさを知り、そのうえでどうしてほしいというのかが(全くわからない)。

Q:さらに、泉 前明石市長は「(経済)同友会は個人の集まりで柔軟だったが、2023年4月に新浪代表幹事が就任してから『経団連化』が強まった」「経団連は組織中心だから頭が固い」と述べている。

新 浪:経団連も良いところがあり、経済同友会にも(良いところが)ある。そのような発言をして何の得があるのか。社会を明るくする意味で物申しているとしても、(いったい)何をしたいのか。批判することによって、周囲の関心を集めたいだけなのか。経済同友会が批判されることは結構だが、経団連化をすることがなぜ悪いのかがよくわからないし、(そもそも)経済同友会は経団連化をしていない。各々が意見しさまざまな政策提言をしながら、学び、そしてネットワーキングもしている。逆に、経済同友会に入会していただき、一緒に(活動を)やってみてはどうか。批判があるのであれば、私は経団連化(という表現)の趣旨がよくわからない。経団連も国のために一生懸命活動をされており、経団連が悪いという話も私は聞いていない。(経団連も経済同友会も)それぞれの立場で日本の国家のために提言していくことは、大いに結構なことである。(そして、)最終的な判断は政治である。ただ、経団連と我々(経済同友会)は、(消費税の議論に対するスタンスが)異なる。それが理解されていないのであれば、私のコミュニケーション不足であり、反省しなければならない。

新 浪:一つ申し上げられることとして、現状、経済界が世の中に評価されているとは思っておらず、信頼されていると勘違いをしてはならないと思う。我々が(これまで)主張してきたこと、行ってきたことが評価されているとは思っていない。前明石市長がおっしゃったことが、(おそらく)経済界全体に対するwarning(警告)だとすれば、それは理解できる。ただ、表現が異なるのではないかと感じるものの、経済界全体として反省しなければならないことはあると思う。例えば、賃金を上げてこなかった、人材育成をしてこなかったなど、さまざまな(実行できなかった)ことによって、経済界が言うことが国民の方々になかなか信頼していただけていないという実態があることは反省しなければならない。まさに人材流動化を行い、賃金を上げ、その上で生産性を上げていこうと(状況が)大きく変わってきていることを経済界がしっかりと応援し、そして国民生活が豊かになるよう努力と反省をしていかなければならない。その点は取り違えないようにしていただきたい。ただ、経団連と経済同友会、それぞれがどのよう(な団体)であるか(という主張)は理解できないところがあるが、「経済界が正しいから言うことを聞いてほしい」といったことは全くない。むしろ、昔ほど経済界は国民に評価されていないため、その信頼を取り戻さなければいけない状況にあることを理解しなければならず、戒めとして考えていくべきだと思っている。

Q:(ジャニー喜多川氏による性加害問題を受けて)新たに設立されるエージェント会社の社長が誰になるかについて、新浪代表幹事は(質問に対する応答の中で)賛成でもなく異議もないとお話しされた。新エージェント会社の社長に誰がなるかということ自体は、サントリーホールディングスとしての対応を変更するに至る判断材料になりうるのか伺いたい。

新 浪:どういう社長かを存じ上げないため、その方が新エージェント会社をどのように運営していきたいかが公になればその起用(の是非についてお答えできる)。ただ、重要なのは、(被害者への)救済が先であることだ。(被害者への)救済がどうなされるかが明確になることが非常に重要だ。被害を受けられた方々がどうなるか、新エージェント会社にも(過去に)被害を受けた方もおられるだろう。そのような基本的なことがまず重要だ。(新エージェント会社の社長に就任される方が)どういう認識を持たれているかという(ことに尽きる)と思う。

Q:(新エージェント会社の社長に)誰が就任するかについては、特に(判断材料にならないか)。

新 浪:どなたが社長に就任されようが、今後の方向性をきちんと理解している、そして、二度と児童虐待が起こらないという大前提のもとにコミットして経営することがまず重要だ。再発は絶対してはならない。そういうことに認識の強い方であるのは、最低限必要な要素だと思う。

Q:大阪・関西万博の建設費が最大500億円上積みされることが正式公表された。増額分は政府・国民・経済界の三者が負担することになる。上澄みの責任や安易に(建設費を)上積みしている事実に経済界としても声を上げる必要があるのか。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会の副会長として代表幹事は関わっているが、これらについて、見解をお聞かせいただきたい。

新 浪:資材が高騰している中で、(建設費の)上積みは当然予想される。(大阪・関西万博)成功のために中途半端な(対応は)絶対にやってはならない。そうした意味で、必要なものは(費用を)上積みせざるを得ないのだろう。建設費の上澄みに関する内容を詳細に把握している訳ではないが、経済界・民間企業を中心として、前売り券を各企業に積極的に購入いただくといった努力を行い、皆で協力して成功させることが考え方として必要だと思っている。

Q:本日(10/31)開催された、日本リスキリングコンソーシアムの講演で代表幹事は、全世代のスキルアップを推進すると発言されていた。コンソーシアムでは、地方や女性でリスキリングの格差が生じていると言及されていたが、外部労働市場が整備されていないため、収入増が見通せず、労働者のリスキリングが増加しないという問題もある。環境を整備した上で、リスキリングを推進するのであれば理解できるが、順序が逆だと思っており、そうした点について代表幹事の考えをお聞かせいただきたい。

新 浪:リスキリング・アップスキリングの話は置いておき、ポイントがある。(現在)経済同友会会員のビジョナル株式会社 南壮一郎取締役社長をはじめとして、(労働者が)スキルを習得することによる収入増を可視化したサービスなど(HRテクノロジー)に関する市場が徐々に生まれている。副業・兼業に関するサイトも生まれている。経済界としても提言しており、国と共にそうした(市場を)作ることも検討している。新しい資本主義実現委員会でも、ハローワークで紹介する職種において、転職時の収入が比較できる方法の検討や制度の運用などを(「三位一体の労働市場改革の指針」で)提言している。スキルに応じた年収の変化が見通せない状況では(労働者がリスキリングを行う)指標にならないため、(労働者に)レファレンスできる取り組みの展開と共に、既にそうした市場があると認識している。リスキリングとアップスキリングは異なると思っている。基本的に本人が今保有しているスキルに追加して何をやるのか、自らが時代の要請に合ったものに(変化)しようするのがリスキリングであり、自身のスキルのレベルを上げるのがアップスキリングである。両方が必要だと思っているが、重要なのはリスキリングだけではなく、キャリアデザインである。今6万人いるキャリアコンサルタントより強化して、自分でキャリアを再設計した結果、60歳・65歳以降の自分の人生に必要なスキルが分かった上で、リスキリングしてもらわなければならない。もう一つ(の問題)として、人手不足の中で(職の)ミスマッチが起こっている。どのような業界でミスマッチが起こっており、何をすることが必要かをしっかりと示すことが必要である。例えば、2024年問題として、トラック・タクシーの運転手、医者などは人手不足と言われており、改革しなければならない。生産性向上のツールとしてデジタル、働き方改革の実施、賃金と関連していく。そのため、日本は先々賃金が下がるような要因は一つもないと思っている。また、日本は労働者が不足しているため、「年収の壁」は大変重要な問題である。政府は2年半で解決するという意思を持ち、(経済界も)共に協力することが重要だと認識している。制度設計として、労働意欲のある女性の方の環境整備や(人材不足の)サービス産業の改善、そして70歳や75歳になっても働ける環境の構築について検討する必要がある。例えば、暦年で年齢を示すのではなく、健康年齢で表すなどさまざまな工夫によって、労働力を確保しなければならないと思っている。

Q:タクシー運転手の人材不足について、ライドシェアの話が非常に盛り上がっているが、それらに関するお考えを伺いたい。

新 浪:本会では、2020年に「『日本版ライドシェア』の速やかな実現を求める-タクシー事業者による一般ドライバーの限定活用-」を提言している。(ライドシェアを)やると決めた上で、各地のタクシー会社と連携して配車アプリケーションを利用しながら、タクシー事業者ではないドライバーの方々にしっかりとした研修を行い運行の安全性を確保すると共に、ドライバーは自分の時間がある時にライドシェアができる体制を構築することが重要である。そのため、Uber Taxiとは異なる体制で良いと思っている。ライドシェアに重要なことは無謬性、つまり、安全は絶対必要だが、何か起こったらいけないということではなく、神奈川県で「神奈川版ライドシェア検討会議」が設置されているように、さまざまな実験をやりながら早期に問題を抽出して解決していく必要がある。

Q:ジャパンモビリティショーについて伺いたい。現在開催中であるが、参加企業で最も注目が高いのは中国企業のBYDであり、何台もの新型EVを発表している。他方、日本企業はEVの試作車を発表しているが、販売間近の車種は数えるほどしかなかった印象だった。日本のEV政策、方針について、どのように受け止めているのかを伺いたい。

新 浪:正直、なかなか悩ましい。難しいと思っているのは、電源である。結局、EV(が電気)で動いていても、その電源が石炭やガス(由来)のエネルギーでは、あまり(EVの)意味がない。EVの問題と言うのは、クリーンなエネルギーのサプライチェーン(の上流)から垂直統合の仕組みができているかどうか(という点にある)。日本の場合、リニューアブル(由来)のパーセンテージも非常に低く、原発も低い。そうすると、EV普及を化石燃料(由来の電源)で行うということになってしまうため、その点を解決しなければいけない。おそらく、中国の場合はそこ(の議論)を飛び越してEVを進めているが、(それは)車(モビリティ)のヘゲモニー、つまり覇権をどこに持っていくのか(という考えの表れであろう)。日本の場合は、ルール作りの根本の部分(クリーン由来の電源)があまり進んでいないのは本当に良いのか、という議論があると思う。もう一点は、(EV推進によって)中小企業が大変厳しくなる。(EVはガソリン車の)パーツが3分の1、もしくはそれ以下であり、そのようなトランスフォーメーションにどのように対応していくのかという議論もトヨタなどでされている。専門ではないため、私自身も何が正しいのか(悩ましい)。EVを進めていくと決めたら、(電力サプライチェーンの)上流を全部見直さなければいけない。つまり、どの電源で(発電を)するのか(ということだ)。このようなことを合わせ技で(上流から下流まで)全部取り組まなければならない。私は、根本は全てエネルギー問題なのだと思う。現在、経済同友会ではタスクフォースも立ち上げながら、エネルギーについて(議論を進めている)。政府が示している(将来の)電力使用量は人口(減少)とともに減退する前提で作られているが、今後デジタライゼーションが進めば、30、40年後はより多くの電気が必要になる。それらも踏まえた上で、電化をしていくべきだということであれば、EVへ一気に移行すべきだ。私はあまり悲観しておらず、日本はEVにシフトする技術や能力をいくらでも持ち合わせていると思う。ただ、(EVシフトによって)業態を変えなければならない方々をどうするのかという議論をしなくてはいけない。あとは、エネルギー政策の難しいところを早く解決する必要があり、根本はそこにある。一定を頼らなければならないものの、化石燃料(由来の電源)をいかにへらしていくか、そして、今後のデジタル化やAIの使用、また半導体の生産(増加)によって、エネルギーが一層必要となる。それに耐えられるエネルギー大綱を作る、見直す必要があると思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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