ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2023年10月3日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

動画を拡大する

PDFはこちら

冒頭、国民皆保険制度について述べた後、記者の質問に答える形で、経済政策、ジャニーズ事務所会見と今後の運営方針、為替、中国で拘束された日本人の刑事拘留について発言があった。

新 浪:9月29日の日本記者クラブでの講演に関して、一部(の発言が)私の本意とは異なる形で取り上げられている。国民の皆様に(発言の意図を)正しく伝えたく、改めて説明したい。私は(講演の中で)「国民皆保険ではなく、民間がこの分野を担っていったらどうかと思います」と発言したが、「この分野」とは(国民皆保険制度の対象外にある)未病領域であり、予防医療や健康増進などの分野のことである。これらは、現行の国民皆保険制度ではカバーされていない分野であり、民間がもっと投資を行うことにより、ヘルスケアなどの新しい産業を創っていくべきだという意図で申し上げた。(民間による予防医療や健康増進で)国民皆保険(の足りない部分)を補っていかなければならないと考えており、そうした趣旨である。(日本の)国民皆保険は、世界に誇れる素晴らしい制度であり、ぜひとも持続可能なものにしていかなくてはならないと常々考えている。全国どこでも一律に(医療)保険の給付を受けられる(国民皆保険)制度の強み、素晴らしさをしっかりと活用しながら、今後とも(予防医療や健康増進などの)さまざまな医療改革を進めるべく発信していきたい。本件に関して、(私の発言意図を)ぜひご理解いただきたい。

Q:岸田首相が10月中の取りまとめを指示している経済対策について、先日、裏付けとなる補正予算案の提出も表明された。今回、賃上げや投資促進に重点を置き、税制優遇措置や電気代・ガス代の補助金延長などの方向性が示されているが、経済対策への期待などを伺いたい。

新 浪: まず、コストプッシュではあるものの、インフレになっているという事実は(重要であり)、デフレの社会とは(様相が)全く異なってくる。賃金を上げていこうというメッセージも多く(の企業から)出されており、こうした意味で、民主導の経済に変わっていくべき時期であり、その際には経済政策の在り方を変えるべきだ。どのように変えていくかというと、(財政出動による)官製経済で需給ギャップを埋めるのではなく、民間が投資をしながら経済を良くしていく(ための対策だ)。今回の経済対策(の方向性)は、この点を十分フォローしていただいている。経済財政諮問会議や新しい資本主義実現会議で繰り返し話をしてきたことだが、民間が牽引する経済に変えていくことで(税収が増加し)、結果的に財政(健全化)の改革につながっていく。そのために(民間)投資を促進し、投資の結果、(企業が)人材をより必要とすることで賃金が上がっていく。賃上げと投資促進は、経済が(デフレからインフレに)変わってくる中で行わなければならない政策であり、今まで(本会が)提言してきた内容に沿うものだと考えている。

Q:補正予算に関しては、ワイズスペンディングの観点からバラマキになっていないか、PDCAサイクルが十分に機能しているかなどの疑問を呈されてきたが、どう見ているか。

新 浪:先程申し上げた(財政出動による補填が必要な)需給ギャップは、既に埋まっている。需給ギャップがない中で補填することは政策的におかしなことであり、今後は(民間企業が)アクションを取ることで減税(などの投資促進)が行われるという政策により、企業の(アクションを)後押しをすることが政府の仕事である。経済の中心がインフレだと(必要な政策が)変わってくる。これまでは官製(経済)で(国内の需給ギャップを埋め)、民間の投資は海外に向かっていたため、(円安が進行しても)Jカーブが効かなかった。そのため、今後は日本国内での投資が進んでいくように、投資に対して減税を行うように(経済対策の)やり方を変えていくこと(が必要)であり、今までの需給ギャップを埋める対策から(政策を)変えていくことが必要だ。一方で、今回、補正予算がなければならないのは、(財政)規律は重要だとしても、名目成長(率の高まり)で税収がある程度増え、輸出を中心とした企業の業績は円安もあって非常に良くなっているのに対し、国民が一番被害を受けている(ためだ)。実質賃金がマイナスであることから、(家計の負担軽減のために)エネルギー価格を国が一部補助することは必要である。未来永劫(負担軽減策を続けること)は当然問題であり、将来的には、(そもそもの)エネルギー価格をどのように下げていくか、それによって政府の支出をどのように下げていくか(の検討)は必要だが、(目下のエネルギー価格高騰に対しては家計への)補助が必要であり、(そのためには)補正(予算の編成)が必要だと考えている。

Q:昨日、ジャニーズ事務所が故ジャニー喜多川氏による性加害問題について2回目の記者会見を行い、新会社設立や社名変更、被害者への補償方針などを発表した。9月12日の代表幹事定例記者会見において、ジャニーズ事務所1回目の会見で発表した対応は不十分だと指摘されたが、昨日の会見で発表された対応策をどう受け止めているか。

新 浪:(1回目の会見で発表された対応から)前進したと考えている。新会社設立や(補償を行う現ジャニーズ事務所との)分離などの話があったが、一番重要な、被害を受けた方々がきちんと救済されることが大前提である。こうした意味では、将来的に(ジャニーズ事務所から)SMILE-UP.に名前を変えるこの会社が、全被害者に対しきちんと救済するのかをしっかりと見届けていく必要があると考えている。(新会社との分離や法を超えた補償などの2回目の会見で示された)考え方は大変良いが、今後、実際に実現していく姿を見ていかなくてはならない。被害を受けた方が将来的にも安心して生活できる安寧が非常に大切であり、それを強く期待するとともに見届けていく必要がある。一方、新しく設立される会社が今後どのように運営されていくのか、また、新しい会社(とエージェント契約を結ぶタレントの中)にも被害に遭われていた方がいると思われるため、SMILE-UP.という名前になる現ジャニーズ事務所が将来的にどのように救済を行っていくかも、見ていかなくてはならないと考えている。

Q:今回の発表内容を受けて、ジャニーズ事務所所属タレントの広告起用を行ってきた企業は今後どう対応すべきか。

新 浪:救済がきちんと行われるかを見なければならない。(現ジャニーズ事務所と新会社に)分けたが、東山紀之氏は両方(の代表取締役社長を)務められる。このことについて、新しく設立される会社(と契約するタレントの中)にも(過去に被害を受け)救済されなければならない方がいるため、どのような救済がなされるのかを見届けなければならないと(同時に)、新しい会社でも再発防止のためにどのようなガバナンスが行われていくのかもしっかりと見ていかなければならない(ための兼務である)と私は解釈している。広告主として、スポンサーとしては、今後、(救済や新会社とタレントとの)契約がどのようになっていくのかもまだ把握していないため、詳細を伺い、(救済や再発防止の)状況を見極めて判断していくべきである。

Q:(2回目の)ジャニーズ事務所の記者会見を受けて、サントリーホールディングスでは(広告起用の)方針を変更する動きはあるのか。動きがない場合、(今後)何を基準に方針を変更していくのかを伺いたい。

新 浪:先ほど申し上げたとおり、(1回目の会見で発表された対応から)前進したと考えている。新会社との契約については、被害者への救済や再発防止に向けたガバナンス構造など詳細について(まだ)理解していない。まず、そうした話を伺い、継続してガバナンスの徹底を求めていきたいと思っている。(双方が)納得する形であることを前提に、(広告起用の)再開を検討することになる。(よって、)今すぐに再開するというものではない。

Q:日本のリーディングカンパニーとして、取引先の人権侵害にどのように向き合うべきだとお考えか。

新 浪:人権侵害は大変重要なイシューであり、今後もこのようなことがあってはならず、断固としたスタンスで臨んでいきたい。今回、海外で(本件が)相当報じられたことによって、日本そのものがそう(人権侵害を容認する国)なのではないかと言われたことを私自身、大変悔しく思っている。日本企業は、世界で良い商品を売り、消費者に喜んでいただいている。そこに一点の曇りがあることによって、私たち(日本企業)の信念を違う形で捉えられてしまった。この教訓を生かして、再度人権を考え直しながら、グローバライゼーションを進めていきたい。

Q:(前述質問で)「被害者への救済をしっかり見届けていく必要がある」と発言されたが、ジャニーズ事務所の記者会見では(被害者への)補償開始や補償終了後に廃業することを発表しており、(見届ける過程において)いくつかの節目があるのではないか。一連の措置(ジャニーズ事務所所属タレントの広告起用などを巡る各社の対応)が解除されるとすれば、どのような時期が節目のイメージに一番近いとお考えか。

新 浪:声を挙げたことで本当に報われたと思う被害者が多く出てきてくれることだと思っている。周りの目があり(被害を受けたと)言えない方もいるだろう。そうした方も含めた徹底した救済措置が実現されること(が重要)だと思う。法を超えた補償は大変よいことだが、お金の問題だけではなく、トラウマを負った被害者の心のケアにもぜひ取り組んでいただきたい。(今回のジャニーズ事務所の記者会見は)そうした(取り組みの)意思表示だと考えている。(広告起用の対応解除は)時期で決めるものではないと思う。

Q:時期で決めるものではなく、「被害者の補償への詳細が固まること」「新会社での(タレント)契約形態の詳細が見えること」「再発防止策」の3つが、タレントの広告起用再開の条件だと理解して良いのか。

新 浪:昨日のジャニーズ事務所の会見内容は前進だと理解しているが、今後の具体的な動きは把握できていない。どのように実施されていくかを注視する必要がある。進み具合によって時期は自ずと定まると思うが、この条件が揃えばよいというものではない。時間がかかるかもしれないが、(被害者の)心のケアに(企業として)努力するという姿が何よりも重要であると思う。東山氏が社長に就任される新会社においても、(タレント活動を継続する)被害者に対してしっかり対応されることを期待している。ジャニーズ事務所所属のタレントは、日本に明るさを提供してきた方々である。新会社で早期に(活動が)再開できることを願っている。一歩前進はしたが、今すぐに(広告再開)は難しいだろう。

Q:所属タレントは、個人・グループ(単位)で個別に、新会社とエージェント契約を結ぶと発表された。エージェント契約によって、広告起用の再開に向けて進みやすくなるという理解で良いのか。

新 浪:わからない。個人毎とグループ両方の契約は、やりづらくなる(面もある)と思う。一人ずつの契約というのは大変だろう。今後の契約方法についてはまだ了知していない。

Q:東山氏は昨日の会見でも「見て見ぬふりをしてきたと言われても仕方ない」とおっしゃったが、旧会社はともかく新会社のトップにも据えることを経済界はどのように見るか。

新 浪:私はその(詳細な)事実がわからず、今後クリアになっていく中で判断すべきことだと思っている。事実がわからない段階で判断すべきものではない。

Q:従前から、(新浪代表幹事も)日本は児童虐待に寛容な国だと思われることは心外だとおっしゃっており、そもそも論外であると思う。昨日の会見において(新会社の副社長に就任する)井ノ原快彦氏が、性加害の温床になってきた数百人の子どもたちを育成するシステムについて、基本的には変えないという趣旨を述べたが、このシステムを変える必要があると思うか。

新 浪:この(タレント育成の)システムがどのようなものなのか、私は詳細を存じ上げない。しかし、児童虐待は絶対にしてはならないことであり、(よって)重要なことは再発防止であると申し上げている。新会社に移行しても、第三者の(視点をもった)ガバナンスが必要であり、絶対に再発をさせないということが重要である。その点をきちんと担保することが肝要だと思う。

Q:現在、為替は1ドル149円まで下落しており、FRBの利上げが長期化するのではないかという見方もある。先ほど、民間投資が海外へ向かってしまうことでJカーブ効果が出ていないという発言があった。円安が進むと原材料高となるが、日本企業への影響や懸念、経済政策も含め期待したいことを伺いたい。

新 浪:(1ドル)150円近いこのタイミングで何も手を打たないと、もう少し(円安が)進む可能性も(あり得る)。米国のインフレが収まったかどうかはわからないが、本音としてはFED(連邦準備制度)によって(金利を)下げてくれればよいと(思う)。米大統領選は景気を良くすることが第一条件であり、一つの考え方として、米国ではFEDが(金利を)下げることができる。そもそも金融政策とはインフレを前提としたものであり、我々の唯一の期待がそれ(米国の利下げ)では困るが、2024年に大統領選があり、その点にはやはり期待がある。これだけ(を頼みにするの)でなく、日銀が金融政策を考えていくためには、やはり賃金が本当に上昇していくこと(が必要である)。今、実質賃金がマイナスという状況を考えると、10月末~12月にかけて、企業が将来の賃上げに対する展望を(どのように)出していくかに掛かっているのではないかと思う。植田日銀総裁もそれらを見て判断すると発言している。私は、多くの企業が賃金を上げる方向へ向かうと思う。(賃金が上がる)となると、YCC(イールド・カーブ・コントロール)を操作するのか、マイナス金利に手を打つ(解除する)のか、場合によっては双方を行うのか、さまざまな方策があると思う。年末までに、何らかの手を打ってもらえると(よい)。(また、)日本は(石炭、石油、LNGなどの)資源を海外から約33兆円輸入している。貿易の赤字(の原因となる資源高)は、直接家計にも響くことから、今の状況でよいということはない。金利を上げると中小企業においては非常に大変で苦労されることもあり、それには別途対応するなど方法論を考えていかなければならない最終的には。金利のある民主導の経済を目指さなければならない。よって、1ドル150円近辺の状況は良いことではない。これを正して金利がある活発な経済を我々企業が目指すべきところだ。今まではどちらかというと政府に需給ギャップを埋めてほしいと頼んできたが、そうではない経済を目指すという(変換点が)、日銀が続けてきた異次元の緩和を修正する大きなポイントではないかと思う。

Q:今年3月にスパイ容疑で中国に拘束されたアステラス製薬の日本社員が、9月に刑事拘留された。このような事態への懸念の高まりにより、(中国)現地で事業を行うリスクが浮上しているが、新浪代表幹事から見て日本企業に変化が出てきているのかを伺いたい。一方、中国の影響力を考えると(中国を)無視していくわけにはいかないため、今後どのように付き合っていけばよいと思うか。

新 浪:大変懸念すべきことだと思う。Anti-Espionage Law 、いわゆる反スパイ法は、経済人として中国に投資をする上で非常に大きい心理的な壁となる。一方でセキュリティ(を高め)、もう一方では経済を活発にしたい、この二つのどちらを本当にやりたいのかがわからない。しかし、日本にとって隣国であり、経済においても切っても切れない関係であるため、反スパイ法をクリアにしていただきたい。これは、民間外交においてもさまざまな形で伝えている。そして、政府にも伝えていただいている。隣国である中国と付き合う上でぜひ期待したいことは、今回の処理水(放出に対する反発)のような問題が起こらないよう、岸田首相と習主席とのトップ会談がなんらかの形で開始され、切っても切れない関係が明確になっていくことだと思う。日本企業は、今すぐ中国に大きな投資をするというより、現状維持ができたらいいと思っているのではないか。今後、両国がより良い貿易や投資ができる環境にしてもらいたいが、どうも日本は米国一辺倒だと見られている。隣国である中国と接点を持っていきたいという日本の考え方を示すべきである。一方、半導体をはじめとした高いレベルの技術は、今後、経済安全保障や(セキュリティ)クリアランスなど、別次元できちんと行う必要があると思う。サントリーのようなコンシューマービジネスにおいては、お互いに良いものがあれば買えばよいし、現地生産もしていく。セキュリティに関係がない分野は、どんどん交流を深めるべきだと思う。ファクトとして(中国とは)切っても切れない関係であることを再認識し、政治的にもパイプを構築していただきたい。ただ、不明確な形で捕まってしまうようなことは、やはり怖い。そのようなことがないようにしてもらいたい。

Q:新浪代表幹事はかねてから(故・ジャニー喜多川氏による性加害の)被害者の救済が第一にあるべきで、そうしなければ通常のビジネスには戻れないと述べている。現在、478名の方が(被害の)声を上げ325名の方が具体的な相談をしていることが明らかになったが、このボリューム感を考えると、満足のいく救済がなされるまで相当な時間を要すると思われる。被害者救済は、年単位で注視しなければならないイメージということか。

新 浪:私は、年単位ではなく(少しでも)早く(被害者救済を)やらなければならないと思う。逆に(被害者救済が先々に)延びたら、今まで声を上げた方々(の心)が萎んでしまうのではないか。結局、声を上げたが救済されなかった、救済しない会社ではないかと言われてしまう。(よって、重要なことは)早く(被害者救済を)やっていただくことだと思う。(現ジャニーズ事務所と新会社の)二つに分けたが、新会社(と契約するタレント)の方々にも(必要な)救済をすることによって、早く活躍できる場をきちんと作ることが非常に重要だと思う。被害を受けていない方もいらっしゃるのかもしれないが、被害を受けられた方に早く(補償内容を)提案し実行されることを望んでいる。

Q:新浪代表幹事は一歩前進だとおっしゃったが、具体的にどのような点が前進したと考えているか。

新 浪:二つの会社に分けて社名を変えたことは前進だと考えてよいと思っている。

Q:チャイルド・アビューズ(児童虐待)に対する視線の厳しさは、日本より遥かに欧米の方が強い。ジャニーズ事務所の会見で出されたスキームはまだわからないところが多いが、「新しい会社になったから付き合いができる相手」だとグローバルな目線で見なされていくようになり得るとお考えか。

新 浪:なり得る可能性はあると思う。私たちが(被害者)救済に対してきちんとした視線で見ることと、やはりガバナンス(への注視)だ。新しい会社ではこのようなこと(性加害)が再発しないのだとガバナンスで明確にすることができれば、外部からも、解体して新た(な企業)になると見なされると思う。(重要なことは)そのためのガバナンスの仕組みが、クリアにわかりやすくなっていくことだと思う。

Q:ただ、現時点においてはまだそれ(ガバナンスの仕組みの明確化)ができていないため、動向を注視しなければならないということか。

新 浪:そのとおりだ。そこがクリアになるように期待をしている。私たち日本企業としても、それを大いに期待をしている。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。