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新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2023年9月12日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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冒頭、G20サミットについて述べた後、記者の質問に答える形で、長期金利上昇、ジャニー喜多川氏による性加害・ジャニーズ事務所所属タレントのCM起用、内閣改造、損害保険ジャパン記者会見、ALPS処理水の海洋放出、共助資本主義マルチセクター・ダイアローグについて発言があった。

新 浪:G20サミットについて申し上げたい。(首脳宣言の)結果を見て、グローバルサウスにおけるインドのリーダーシップが非常に力強いものであると感じた。(閣僚会合で成果文書を)まとめられずフラグメントな状況にあった中で、一定の方向性が示せた。これは最近のインドの強さ、グローバルサウスにおけるリーダーシップへの意欲があってのことで、ロシア、中国陣営、日米欧陣営を見つつG20をうまくマネージしたと思う。(首脳宣言に)ロシアの戦争責任への言及が少なかったことは遺憾であるが、(各国の)思惑が交錯する中でうまくまとめられ、世界におけるインドのリーダーシップが確実に上がってきたという印象を受けた。

Q:今週に入り長期金利が0.72%まで上昇した。9年8か月ぶりの水準となったが、受け止めを伺いたい。また、遠くない将来にマイナス金利が解除されると目されているが、これに対する危惧や期待も併せてお聞きしたい。

新 浪:市場は金融緩和政策に変化があるだろうと見越し、長期金利1%までは許容する可能性があると理解している。マイナス金利の改定は(すぐにではないが)相当可能性が高いだろう。今、市場は円安に振れている。マイナス金利の状態は、経済本来のあり様ではない。一定の経済成長があり、実質経済成長率も1%強ある中で、意思を持って金融緩和をしているところ(だが)、市場とのギャップがある。日銀総裁には、そろそろノーマライゼーション(正常化)に向けて(金融政策を)変えていくという思いが(あると見ているのではないか)。現在の円安の状況下において、日米には金利格差ほどの経済格差があるわけではない。それを思うと、危惧するものではないが、もしかすると年内に(政策変更が)あるのかもしれない。また、あっても良いと思っている。ただし影響はさまざまなところに及ぶので、対策は打たなければならない。イールド・カーブ・コントロール(YCC)撤廃の動きが起きてくるまでに手を打つことが重要であり、市場はある程度マイナス金利(の解除)を織り込みつつある。長期金利(の上昇)をベースに、1ドル150円を突破してさらに(円安が)勢いがつくという感じもなくなってきた。一方で、米国の景気は好調で、日本も決して悪くはないが日銀の政策と経済に乖離がある。(長期金利が)0.6%から0.7%に上昇したのは、ノーマライゼーション(正常化)の方向性を見てのことだろう。マイナス金利は早々に解消されるべきであるし、そのようになると見ている。とはいえ、すぐにYCCが撤廃されるという状況ではない。長く緩和を続けてきたので、徐々に(正常化)していかないと経済への影響が大きくなる。「マイナス金利の改定すなわちYCC即撤廃」ではない。(産業の)新陳代謝が起こる可能性があるため、職を失ってしまう方がスムーズにトランジション(移行)できるように、手厚いリスキリングをするなどしっかりとした失業手当がないと、ミスマッチが起こり混乱する。競争力がない企業の(市場からの退出は)仕方がないが、人材は救わなければならない。ミスマッチを解消するためのリスキリング、そしてその前提となるキャリアデザインなど、まさに成長戦略として謳ったものを早く実行しなければならない。その実現とともに、YCCをノーマライゼーション(正常化)すべきだ。マイナス金利についても、2024年春闘を予想できるような状態を作らなければならない。人手不足はそう簡単に解消できる状況ではないので、来年の賃上げはしっかりと行うことで良い人材を採用し、(人材を)リテンション(維持)することがますます必要になる。来年も賃上げが(確かに行われると)確認できる状況になることが、マイナス金利を解除するための大きなポイントであると思う。

Q:ジャニーズ事務所とのスポンサー契約について伺いたい。故・ジャニー喜多川氏による性加害問題を受けて、大手企業が所属タレントの広告起用を見直す方針を打ち出している。サントリーホールディングスも同事務所から納得のいく再発防止策や被害者救済策などの説明があるまでは新たな契約を結ばず、現在の契約も満期で終了し更新しないという方針を示している。サントリーホールディングスの経営者として、自社の方針を決めるにあたり、同事務所の再発防止策やガバナンスに対して、不十分だと感じた点があれば教えていただきたい。また、性加害の長期化など一連の問題に対する受け止めを伺いたい。

新 浪:第一にチャイルド・アビューズ(児童虐待)は絶対にあってはならない。記者会見で謝罪があったが、(ジャニーズ事務所の)現体制が児童虐待に対して真摯に反省しているのか、大変疑わしい。再発防止に向けて、ガバナンス体制を強化することを(世間へ)示すことができたのかどうかは大いに疑問であり、(会見内容からは)そうではないと認識している。調査内容を受けたジャニーズ事務所の対応は不十分である。世界の企業や海外メディアからも注目を集めており、所属タレントの起用は児童虐待を認めることになるため、国際的な非難の的になる。日本企業は断固として(ジャニーズ事務所に対し、児童虐待を許さないという)毅然たる態度を示さなければならない。サントリーホールディングスでは(ジャニーズ事務所とのスポンサー契約について)明確なスタンスを示した。(各企業が広告起用見直しに動いているのは)このような事象だと思う。一方、所属タレントの方々には(広告への起用を見直すことになり)大変心苦しい。ジャニーズ事務所も同様に(所属タレントに対して心苦しいと)思うのであれば、救済策やガバナンス構造の見直しなど対応するべきではないか。社名の継続についても、被害者の心境を真剣に考えるべきである。サントリーホールディングス、また経済同友会の代表としても大変遺憾である。被害者の方々や(被害者の)ご家族の立場に立つと、絶対にこのようなことはあってならない(と思う)。

Q:ジャニーズ事務所の対応について、追加で二点伺いたい。一点目はジャニーズ事務所の救済策やガバナンスの見直しなどにおいて、具体的にどのような部分が不十分だとお考えか。二点目は社名の継続について、先ほどの発言の裏を返せば、社名を変更すべきとのお考えか。

新 浪:一点目について、再発防止に向けてさまざまな目線で経営すべきである。ニ点目については(社名が残ることで)被害者の方々がどのようなイメージを持つかを想像すれば、自明である。

Q:明日(9月13日)の内閣改造について伺いたい。現状、国内外でさまざまな政策課題が山積している中で、政権運営や政策運営における改造内閣への期待や注文、スタンスについてのお考えを伺いたい。

新 浪:明日のことであるため(詳細は)まだわからないが、経済(においては)、実質賃金がマイナスであるため、インフレに悩む国民に寄り添い、経済政策をきちんと(遂行)できる体制を作っていただきたい。そして、人材の流動化で賃金を上昇させていくことを政策として掲げ、やりきる体制をお願いしたい。また、マイナンバーもいくつかの課題を抱えているが、きちんとやりきって(いただきたい)。デジタライゼーションの基礎であり、継続的にこのような基盤を作る(ことが肝要である)。今は飛び抜けて経済状況が良いわけではないが堅調であり、またインフレの状況を考えると、経済を回すうえで非常に重要なことは民間主導の経済となるようしっかりとワイズスペンディングを行い、経済が活発化する(ような)生きたお金の使い方となる財政運営、そして金融運営を実施していただきたい。このようなことがインプリメンテーション、つまり実現できる内閣になっていただきたいと思う。(経済活発化に向けて)良いところまで来ている。デフレからインフレになってきたため、モードを変えて民間主導の経済にする、それを実現できる内閣にしてほしい。

Q:先週、損害保険ジャパンがビッグモーター問題に関する記者会見を開催したが、本日の閣僚会見では、鈴木俊一金融担当大臣が損害保険ジャパンに立ち入り検査を実施する旨を明らかにした。櫻田謙悟前代表幹事の所属企業でガバナンス上の問題が起きたことについて、どのような感想を持たれているか。また、櫻田前代表幹事は、SOMPOホールディングス会長として「自分自身に責任がないとは言わない」と述べつつ、自身の処分については調査委員会の報告を待って判断すると発言された。櫻田前代表幹事は在任中に他社のガバナンス問題や不祥事について厳しい発言をされていたが、今回の対応についてどのように受け止めているか。

新 浪:今後(行われる見込み)の金融庁の調査や社外弁護士による(第三者委員会の)調査(が現在行われている)ということで、櫻田前代表幹事自身が発言されていた通り、(それらの)結果次第だろう。自分自身の責任がないとは言えないということは、(責任が)全くないと言っているわけではない。今後の金融庁の(立ち入り)検査が最も重要であり、そこでガバナンスに何かしらの問題があったという結論になれば、金融庁としても何かしらの(処分を)判断をすることになると思う。調査結果を見て(ガバナンス上の責任の有無を明らかにする)ということが最も重要だが、今、(調査結果が)わかっているわけではない。やはりそのような(明らかになった)事実に対してはコメントすべきだが、事実が(明らかで)ない中ではコメントすべきではないと思う。ガバナンスに欠陥があれば会社としての責任があるわけだが、問題は(事業会社の経営判断に)どれだけ(ホールディングス会長)の責任(が伴うべき)なのか、責任の重さというものが重要であり、それはやはり調査結果次第だと思う。

Q:SOMPOホールディングスの問題に関連して、ホールディングスは事業会社のガバナンスにどこまで責任を持つべきかについて伺いたい。また、櫻田会長が代表幹事を務めている時期にこの問題が生じているが、代表幹事という日本経済界のリーダーと企業の最高経営責任者を兼務することにより、自社の経営が疎かになってしまう恐れはないのかについて考えを伺いたい。

新 浪:ホールディングスの傘下に同じ規模の会社が何十社とあれば、(それぞれの)事業にどこまでのガバナンスを行うかという(課題もある)。各社によって(状況は)異なると思うが、ガバナンス上で重要な事項に関しては、常に何かあれば報告される回線があって然るべきであり、(今回のケースは)売り上げの多くを占める相当に重要な大きな子会社である(ため、なおさら当然だ)。しかし、個々の取引そのものをどこまでチェックし、その内容を親会社であるホールディングスに報告するかどうかは、その会社次第だと思う。(損害保険ジャパンの)事情がどのようになっており、報告義務がどうなっているかは私も存じ上げないが、やはり経営者として、(櫻田会長が)自身の責任がないわけではないと言われていることが最も重要である。(代表幹事)在任時にご存じだったか否かは別にして、重要な問題が発生したことに対しては、櫻田会長が言われるように全く責任がなかったとは言えない。そのうえで、どの程度関与されていたかということの責任や、親会社であるホールディングス(として)の責任が問われると思うが、会社によって相当違いもあると思う。ただし、最終的にはこれだけのことが起こった以上は、(櫻田会長に責任が)全くないとは言えないと思うし、(櫻田会長)ご自身も(責任が)全くないとは言われていない。どこまで(の責任を負っているか)かは、どこまで(ホールディングスに)適切な報告がされていたかということでもあり、その意味でも(第三者委員会の)調査結果を見る必要があるだろうと思う。二つ目の、自社の経営が片手間になったと(いう質問への回答は)、どこまでのガバナンスを負っているか(による)。ガバナンスという一つの言葉の中で、(業務執行の)細かいレベルまで見るのか(は明確ではない)。微に入り細に入り見ることはできないためホールディングス(の組織体制)とするわけであり、重要な人事や大きな投資判断のガバナンスやリスクをどこまで取るのか(が重要な役割だ)。現在、代表幹事の職を務めつつ、私もホールディングスの社長を務めているが、常にどんなことであっても、自分が信頼するリスク担当役員が重大だと言う件は常に相談ができる(仕組み)になっている。恐らく損害保険ジャパン、SOMPOホールディングスもそういう体制になっていたのではないかと思う。片手間になったのではなく、リスク案件は、多分にある一定のレベルまでは(事業会社に)任せ、一定以上は(ホールディングスに)伝えてくれと(いう仕組みだろう)。この一定のラインが会社によって違うのではないかと思う。ただし、重ねて申し上げるが、何か重大な問題が起こった際には、どんな場合でも(ホールディングスのトップに)責任の一端はある。代表幹事を務めているかいないかは関係なく、(事業会社の問題についてホールディングスのトップは)ある程度の責任はある。ただ、どこまでの責任があるかの問題だと思っている。

Q:昨日(9月11日)、一回目の福島第一原発の処理水放出が終了した。西村康稔 経済産業大臣も「安全に進められている」という認識を示したが、これまでを振り返って感じたことを改めて伺いたい。

新 浪:政府は、大変丁寧に(処理水の放出を)実施されたと思う。地元との対話も行い、一回目の放出が順調にできたことは評価に値する。残念ながら中国からの同意は得られなかったが、あくまでも安全であり安心できる(放出を実施すべく)、科学的根拠に基づき、ALPSALPS(多核種除去設備)のような技術も導入し、希釈して最大限の注意を払って(放出が)行われた。とりわけ、地元の漁業をされている方々に(安全性の)理解はしていただいた。岸田首相も西村経済産業大臣も(福島へ)出向いた。また、(岸田首相は首相官邸で全漁連、西村経済産業大臣はいわき市で福島県漁連と)対話に臨んだ。大変重要な役割を自らがリーダーシップを執って実行したことが、今回(一回目の放出が)完了したことの大きなポイントではないかと思う。閣僚が一致団結して、とりわけ岸田首相のリーダーシップのもとで行ったことを私は評価したい。

Q:損害保険ジャパンが開いた9月8日の記者会見の中で、SOMPOホールディングス櫻田会長は「早く報告が欲しかった」と説明していた。リスク案件として、これは大事な問題だから耳に入れて議論しなければならないという報告がなかったということ自体が、ガバナンスが上手く機能しなかったのではないかと思うが、その点はホールディングカンパニーのトップである櫻田会長の責任だとお考えになるか。

新 浪:櫻田氏が「全く責任がなかったわけではない」と発言されたのは、おそらくそれ(ガバナンスが機能しなかったこと)を指しているのだろうと思う。しかしながら、(ホールディングス制においては)ある程度(事業会社に)任せていくものであり、このバランスが経営上非常に重要なことだ。よって、ホールディングスが箸の上げ下げのようなことまで(事業会社に)指示をしているのでは何の意味もないし、当然のことながら事業を健全に拡大することはできない。(事業を)大きくするためには(事業会社に)任せてやっていくが、(ガバナンスは)この狭間にあり、どのレベルまで(ホールディングスへ)報告をするかはあくまでも任された人(事業者側)の考え方によるものだ。しかし、結果責任は一番上の人にある。その責任がどこまであるかは、どのような体制を敷き、その体制に基づいて(事業運営を)やっていたかにもより、また、報告を上げる風土という(側面もある)。このようなことを金融庁ならびに社外取締役を中心とした第三者委員会が調査されるのだと思う。

Q:櫻田氏自身は現在、損害保険ジャパンの取締役を兼ねており、以前には同社の社長も務められていた。ビッグモーターという大きな取引先との関係について全く知らなかったと説明しているが、そのようなことはあり得るのか。

新 浪:これは会社によって全然(状況が)異なり、あり得るとも言える。ご本人が(知らなかったと)述べており、それも多くの方がいる(会見の)中で述べたのだから、知らなかったのだと思う。

Q:ビッグモーターの問題が大きくなってきた時、新浪代表幹事は(7月25日の定例会見で)「いずれ淘汰される会社だったのではないか」と述べられた。(先週の)損害保険ジャパンの記者会見では、取引の再開にあたってビッグモーターとの関係を重んじるあまり、保険の契約者のことに思いが至らなかったという説明があったが、これは損害保険ジャパンもいずれ淘汰される会社の側に入ってしまうということか。

新 浪:会社にはさまざまな危機が来る。損害保険ジャパン、SOMPOホールディングスが(淘汰されるか否かは)、今回の件をどのように捉え、今後のガバナンスや体制作りをするかだと思う。私が思うに、(保険金不正請求や器物損壊の疑いなど)ビッグモーター社が行ったことは完全に犯罪だ。そのような会社が世の中に生き残れるわけがなく、経営判断(の誤りという損害保険ジャパン)とは質的に違うことであると思う。経営判断の誤りを二度と繰り返さないようにしていこうと危機を乗り切った会社は伸びる。きちんと教訓に残せば、それらが後々見えない資産になっていく。しかし、ビッグモーター(の不祥事)は全く異なる問題であり、見つからないまま続いていたら、社員は(ビッグモーターで)仕事をやっていく意義がなくなってしまう。(不祥事が)見つかり、(これを機に)本当に(会社を)浄化をするということであれば、また再生する可能性もある。ビッグモーター(が行っていたこと)と損害保険ジャパンの話は、全く異なる問題だと思う。

Q:ジャニーズ事務所の問題は急に表に出てきたわけではなく、(これまでも)長い歴史があった。その間、日本社会全体として対応が鈍かったと指摘をされている。企業ではCM起用見合わせ等が相次いでいるが、対応が遅かったと考えるか。

新 浪:これまでどういう方がどのように認識していたのか私は存じ上げないが、(今回、性加害が)公表され、被害者が訴え、そう(事実)であったと明確になった。これだけ明確になったことで、我々企業として看過することができないのは当然だが、それ以前は事実がわからない中でさまざまな噂が流れていたと承知している。私自身は聞いたこともなかった。また、多くのファンがいる中でこれだけのことが起こり、(社会への)影響が大きいことも考えなければならないと思う。働かれている(ジャニーズ事務所所属)タレントの方々には本当に気の毒だと思う。どのように対処したらよいかは私の専門分野でないが、ただ望むべくは、被害に遭った方々の救済をジャニーズ事務所としていかに行うのかを示していただきたかった。明確に、より大きな枠組みで打ち出し、専心していただきたいと思う。チャイルド・アビューズによる(被害者の)心のトラウマは想像以上だろう。それを考慮する必要があるのではないか。

Q:(性加害の噂について新浪代表幹事は)知らなかったということだが、最高裁の判決で、ジャニー喜多川氏による性加害に関する記事の真実性が確定した案件が(過去に)ある。その点も含めて、日本の社会、企業、我々メディアの感度が鈍かったということか。

新 浪:その通りだと思う。これを契機にもっともっと感度(を高める必要がある)。ここも反省しなければならないと思う。人権(に関わること)である。

Q:先日、共助資本主義マルチセクター・ダイアローグが開催されたが、公開部分が限られていたので(詳細な)内容を教えていただきたい。さまざまな社会的課題をあのような形で解決していく取組みは非常に良いことであり、期待している。12テーマのラウンドテーブルがあったが、それらが有機的につながっていき、一つの社会的なムーブメントや政治的な受け皿のような動きになる、そのような可能性や期待があるのか伺いたい。もう一つは、大企業とスタートアップの連携による経済面での効果をどう期待しているのかお聞きしたい。

新 浪:まず、政治的な受け皿という目的は、あまり考えていない。企業がNPOやインパクトスタートアップの方々とマッチングをする場(を期待している)。企業のパーパスにマッチしたNPOやインパクトスタートアップの方々と知り合い、そこで(協働で)やりましょうとコミットメントを得ていく(ことが目的である)。そのようなことが12のラウンドテーブルで行われた。例えば、貧困家庭で育てられた子どもが企業の食堂を経験する等は、すぐに実行できる。このような場所で何を食べたという思い出を作り、子どもに楽しかったと思ってもらえる。NPOの方々が苦労されていることに、企業が協力できる。そのような(すぐできる)ことから、もっと複雑なことまで(コミットメントをして)、そして(それらの活動が)企業のパーパスに合っていく、このようなことを実現していきたい。また、公が行うことと、公が行えないこと、もしくは企業しか行うことができない分野があると(思う)。企業が一般的に行わないことは経済効果がないことだが、(マルチセクター・ダイアローグの中で)議論したのは、「経済効果はなくても、企業に社会の問題解決を考える人材が育ち、そのような人材が企業を支えていくことになっている(のではないか)」。ある意味でリベラルアーツなのだが、NPOやインパクトスタートアップの方々など、今までと異なる分野に接することで視野を広げ、また問題解決に参画することによって人材が育成され、社会課題解決の糸口ができていく(と考える)。私は、(共助資本主義とは)最終的には今のような無駄なお金を使わずとも公助が効果的になる、いわゆる国民経済的な効果があると思っているが、そう大きなことでなくとも小さなことの積み重ねが企業経営にも役立ち、そして社会課題の解決ができれば、経済同友会としても大きな一歩になるということで(このような取組みをしている)。ただ、NPOもインパクトスタートアップも(これまで)大企業と接点を持ってきておらず、お互いに唾を飛ばして議論するような関係には(まだ)なっていない。そのため、回数を重ねていくことが必要であり、難しいコミットメントもできるようになっていくのではないか。企業も学ばなければいけないし、NPOも企業というものを学んでもらう。そのような場づくりを経済同友会としてやっていきたい。その結果、助け合っていく社会をつくり、一方でアニマルスピリッツによって新たなものもつくる。この合わせ技ができる社会をつくっていきたいと思っている。経済効果や政治的な効果などではなく、(小さなことの)積み上げでやっていくということだ。

Q:10年以上前の「新しい公共」との違いは何か。新しい公共は民主党政権時に政府が音頭を取っていたが、(共助資本主義とは)全く違うものだとお考えか。

新 浪:重複しているところもあると思う。(中心となる)上のメンバーはあまり変わっていない。藤沢烈 新公益連盟理事や大西健丞 ピースウィンズジャパン代表理事、(今村久美)カタリバ(代表理事)などが今も(中心で)やっている。そのような方々がいらっしゃるので他のNPO(も次々に参画した)。そして大きく変わったのは、当時はなかったインパクトスタートアップという(存在である)。例えば、パタゴニアのように社会問題の解決をしながら利益を上げていくという企業も出てきた。もしくは、公ではなく自分たちで行うことで安くなった分を(ソーシャル)インパクトボンドの資金提供者へお返し(配当)するなど新しいビジネスモデルが生まれてきた。当時と現在の発想は、大きく変わるものではないと(思う)。私は(新しい公共の)メンバーだったので(そのように感じる)。理念は一緒だと思うが、異なるとすると、企業が一層コミットしていることだと(思う)。10年前に比べステークホルダー資本主義となり、問題(課題)への発想は少し違ってきているのではないか。資本主義は良いが問題も大きい、そのような(視点からの)発想が(現在は)企業にあるのではないかと思う。(新しい公共の)当時は官邸、松井孝治 内閣官房副長官を中心とした問題意識であり、(現在の問題意識とは)少し異なるかもしれない。しかし、理念は一緒のような感じがする。(その理念とは)公に頼らないということである。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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