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新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2023年8月29日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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冒頭、9月8日に開催する共助資本主義マルチセクター・ダイアローグについて述べた後、記者の質問に答える形で、ALPS処理水放出と中国での不買運動、マイナンバーカード、そごう・西武のストライキ、ガソリン価格の補助金延長、消費税、少子化対策、就任100日、最低賃金について発言があった。

新 浪:(先月7月に行った)夏季セミナー内で、当会とインパクトスタートアップ協会、新公益連盟の3団体で共助資本主義の実現に向けた連携協定を締結したが、その第一弾イベントとして、共助資本主義マルチセクター・ダイアローグ(を実施する)。実効性ある連携を行うべく、9月8日に第1回を開催する。とりわけ共助の部分をしっかりやっていきたい。今のところ300名弱の参加を見込んでおり、皆さんにもぜひ取材にお越しいただきたい。

Q:8月24日に開始した福島第一原発のALPS処理水海洋放出を受けて、中国からの度重なる嫌がらせ(電話等)や現地での不買運動が起こり、政治のみならず経済的にも混乱をきたしている。日本政府による処理水放出決定プロセスの評価と、中国からの嫌がらせにより経済的な影響が出ることへの懸念について、所見を伺いたい。

新 浪:日本政府の行った(処理水放出の)プロセスは、科学的根拠に基づいたものだ。プロセスそのものは正しいと考えている。安全、さらにその上にある安心に向けて、漁業関係者との対話、コミュニケーションを岸田首相、担当大臣がきちんと努力されている。中国からこのような抗議を受けることは、大変遺憾である。残念ながら、政治的背景によって行われているもので、この解決に向けては民間企業ではなく、政治的対話を一層続けていただく必要がある。中国は日本に対して(水産物輸入の全面停止という)厳しい対応を取っている。もう一方で、米中の半導体規制において(情報交換の場を設置することで合意し)緊張緩和の兆しが出てきたことで、今後は対話の可能性がある、対話できる環境が作られつつあるのではないかと感じる。中国も経済面は決してバラ色ではなくなり、苦労している状況である。どこかで糸口が見つかることを期待している。

Q:日本政府は邦人の安全確保や漁業者への風評被害対策支援を具体的に進めていくと表明しているが、その点についてのご意見を伺いたい。

新 浪:まず、風評対策は国としてしっかりやらなければならないことである。これに対して、何をもって十分かどうかは「安心」という観点があり、そこへの配慮を十分にしていただきたい。その意思をもって政府がやっていくことは非常によい政策であると思う。一方、邦人に対してどこまでできるかは(不透明だ)。現実論として、むしろ個別対応よりも、中国との関係づくりをやっていかなければならない。中国は地理的に近い隣国であり、常にコミュニケーションを取れる関係を築いていただきたい。中国政府と日本政府とのコミュニケーションを通じ、邦人に対する被害が起こらないようにしてもらいたい。この対話が非常に重要だと思う。

Q:2024年秋に現行の健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードと一体化する政府の計画について、情報のひも付けの誤りなどさまざまな混乱を受け、保険証の廃止期限の延期を求める声も上がっている。しかし、政府は先日、廃止期限を延期しない代わりに資格証明書の有効期限を最長1年から5年に延ばすことを表明した。マイナンバーカードに対する政府の中間報告の方針について、受け止めをお聞かせいただきたい。

新 浪:日本政府の対処として(1年から5年に延ばすことを表明したこと)は、良いアイディアである。人為的かつシステム的なミスを早期に改善して、国民の皆さんが安心して活用できるよう邁進していただきたい。一つお願いしたいのは、マイナンバーカードを持つと生活にとってプラスになるということ(の訴求)である。以前にも申し上げた(マイナンバーカード交付率が93.8%に達し、オンライン対応可能手続数が全国トップクラスの)都城市の例など、マイナンバーカードによって国民生活のさまざまな手続きが便利になる。そうした具体事例を分かりやすく説明することで、国民の理解を求めていただきたい。各地域の問題解決には多岐にわたり、政府自ら管理することができない。(資格証明書の有効期限を)1年から5年という幅を持たせたのは、国民の皆さんには安心してもらうためであり、評価すべきと思っている。

Q:6月28日の記者会見にて、代表幹事は健康保険証の廃止の期限について「納期」という表現をしていた。この発言について、経済界が日本政府に発注をしたかのような表現として、批判する声も上がっている。改めて当時の発言の背景や現在のお考えをお聞かせいただきたい。

新 浪:(日本政府に)こうしなければならないと(発注のような意で)言っているのではなく、政府として早期にシステムを改修してもらいたいと思っている。タイムスケジュールを決めているのであれば、そこへ向けてしっかりと取り組んでいただきたい。(決して、)期限を決めたのであれば不手際について取り組まなくとも、(健康保険証を)廃止すべきだという趣旨ではなく、早期に問題解決していただきたいという趣旨で申し上げた。

Q:昨日、そごう・西武の労組がストライキを予告し、実施される可能性が高くなってきたが、これに対しての受け止めと、新浪代表幹事が労使交渉で大事にされていることや注意されていることなどがあれば伺いたい。

新 浪:労使交渉が早くまとまってもらいたいと思っているが、正直、本件の詳細は承知していない。労使交渉の重要性は、やはり働く方が不安を覚えないようなコミュニケーションが必要である。セブン&アイ・ホールディングスはお客様から非常に信頼されている企業であり、(今回の件も)さまざまなコミュニケーションを十分にされたのだと思うが、このような結果になり、もしストライキとなったら大変残念である。しかし、最大限(ストライキの)回避(に向けて尽力)をされるのだろうと思う。今回、どのような交渉がされていたのかは、あまりオープンになっておらず、私からどのようにすべきだというコメントを言える立場でもない。近年ではストライキが実施されることはかなり少なくなっている。今後どのような展開となるのか、メディアを通じて理解していこうというスタンスである。

Q:処理水について質問したい。水産物に限らず、化粧品のような全く異なる分野にまで(不買運動が)広がっている。過去にも歴史問題や様々な事柄で近隣諸国において(日本製品の)不買が広がっていくことがあったが、経済成長を持続してきた中国で不買運動が広がっていることをどのように見ているか。また、(不買が長引くと)経済への影響が大きくなっていくと思うが、一過性で終わるのか(という点について)、見解を伺いたい。

新 浪:(不買運動の背景として)大いに考えられるのは、とりわけ若い人たちの失業率の高さなど外形的なことから考えると、中国国内にストレスがあるのだと思う。日本の製品に問題があると認識し、(中国の)消費者が(不買に)動いているのではないと思うが、私の見るところ、徹底的に不買運動が長く続くような問題ではないと思う。領土問題のような話ではなく、日本が科学的に、非常に慎重に考えた処理水の対応が(中国国民に)あまり知られておらず、このような反応となっているのは、おそらく米中関係に対する緊張、米国と歩調を合わせる日本へのストレスが根底にあるのではないかと想定している。他方、米中で商務長官と(商務相との)コミュニケーションが始まったことがプラスになれば、このストレスも少しずつ柔らぐだろうが、若い人たちの失業率の高さなどが(ストレスの真因で)問題が起こり、そこ(不買運動)に至っている可能性もあるかもしれない。何か(きっかけとなる事象が)起こればストレスが出てくる(ため)、米中間ならびに日中間でこのような問題が継続する可能性はある。現在の状況からすると、中国経済は不動産の問題などさまざまなことが起きており、非常に難しい。そのような中で、(不買運動は)どこか(一点)にストレスが集中していくという現象ではないかと思っている。(一点に集まったストレスは)根本的に何かを揺るがし、国家間の大きな問題に発展する。林芳正外務大臣が(中国の日本産水産物禁輸の撤廃を求めるべく)WTO(の枠組み等で対応する)と話されている。(処理水放出は)科学根拠に基づいているため、本当に解決できない問題があるわけではない。非常に頭の痛い話ではあるが、(中国には)このようなストレスがきっとあるのではないかと想像している。

Q:冒頭の対中問題の質問に対する回答で、「政治的な対話を解決の糸口に」と発言されたが、公明党 山口那津男代表の訪中が中国側から「今はタイミングではない」とサジェスチョンされて延期になった。会話の糸口もつかめない現状において、どのように解決に向けて動いていけばいいのか。

新 浪:今、日本製品云々(不買運動)が起きている中で公明党の山口代表が(中国を)訪問されると、中国の政治サイドにも火種が飛ぶ可能性もあったのだと思う。だから、(中国側は)安全策で(延期を伝えたのであり)、日本の政治とコミュニケーションを遮断したいとは思っていないのではないか。なぜなら、(日中両国は)経済が結びついており、サプライチェーンを含め、お互い切っても切れない関係にあるからだ。半導体などセンシティブで技術的に高いレベルの(製品の)話とは異なり、通常のもの(コモディティ製品)はお互いに頼り切っている。本当に中国と日本とは切っても切れない関係にある。そのような(日中経済の結びつきが強い)状況下に(ある一方で)、日本の製品は云々(買わない)と国民が一気に燃え上がっているときに公明党代表が(中国を)訪れたら、国としても対処は決して楽ではない。だから、今回(訪中を)断ったことを「中国は日本を遮断した」と見ない方がいいと思う。対話を続けていくことが必要だと思うが、タイミング(も重要)だ。

Q:ガソリン価格抑制に対する補助金について伺いたい。政府与党は、現在の補助金を年末まで延長する方向で調整に入った。これをどう評価されるか。また、現在の燃油価格上昇の原因を考えると、出口戦略がなかなか描きづらくなっており、(補助金の措置は)いつまで必要になるのかについてもお考えを伺いたい。

新 浪:一つ目については、経済財政諮問会議でこれ以上延長すべきではないといった発言があったが、ここにきて私は延長する政策は正しいと(思っており)、支持したい。実質賃金がマイナスになってしまっており、国民生活、消費経済は決して楽ではない状況になっている。(実質賃金は)15ヶ月マイナス(が続いている)。国民の感覚としては、インフレは5%程度、少なくとも4%強はあるわけだが、もし補助金がなければ1%程度の(物価への)上乗せになり、実質賃金がさらに下がってしまう。現在の円安やこういった(物価高の)状況が誰にとってプラスなのかというと、名目経済成長によって税収が増える(国である)。値上げによって、消費税(収)も上がっているはずだ。円安がゆえに企業の業績もそれなりに良いため、法人税も将来的に上がる。(一方で、)誰が損をしているかというと、国民である。そのバランスを取る上では、この(ガソリン補助金)延長を年末まで実施するのは正しい判断だと思う。つまり、(税収増等で)貯まったところから、国民をサポートするという点で今回は本当に(延長を)行うべき良いタイミングだったと思う。(国民生活の)安心材料になる。ましてや、地域においてはガソリン、軽油は非常に重要なものであることから、この政策を早く出したことは評価すべきだ。さて、出口戦略をどうするかというところだが、実質賃金をいかにプラスにしていけるかによって見えてくると思う。極端かもしれないが、決してデフレ時代が良かったと言うわけではないが、デフレの時代は、実質賃金はプラスだった。今の4%を超えるインフレ下では実質賃金がマイナスだ。国民生活はどちらが厳しいか。適正なインフレ下において(企業が生き残るには)明日に向けて何か手を打たなければならないが、デフレ下では明日に向けて手を打たない方がよい(という消極的な戦略が奏功してきた)。適正なインフレの方が経済活動の活性度は上がるが、ここにきて悪い物価高になっている。この根本的原因は、やはり賃金が十分上がってきてないと(いう点にある)。実質賃金をもっと上げられるような方向性に持っていくためには、私達企業が、来年に向けて一層賃上げを(行い)、これ(賃上げ)を継続する、人手不足であるがゆえに最低賃金も将来的にさらに上がってくる、という予見性を出していくことである。加えて、有為な人材が流動化することによって賃金が上がる、そしてまた、いわゆるHigh Pay(高賃金の仕事)、つまりそれなりに高い(賃金を伴う)良い雇用がもっと生まれてくる(といった状況を作り出すことが重要だ)。例えば、(新設される)半導体の工場周辺にそういう状況が増えている。こうしたことにより、賃金の高い雇用がどんどん生まれ、サービス産業においてももっと賃金が上がっていくといった絵が見え、実質賃金がプラスになっていくという予想がされない限り、国民生活はなかなか厳しい。そのような中、(補助金政策の)出口戦略が今のところは見えない。実質賃金のプラスが数ヶ月続くようになれば、出口戦略を考えることが必要になってくる。一方で、円安をどのように考えるかということがある。これは他国頼み(の部分があるの)だが、米国が現在の金利をさらに上げるのかというと、2024年には大統領選挙もあるため、金利を下げる可能性もある。日本は(これ以上の利下げは)できないため、(対ドルレートが現状)145円(にとどまらず)、150円を超えていく可能性もあり、このような状況がいかに変わっていくかということが重要である。円とドルの関係、これはまさに金利差であるが、この状況が2024年になって変化し、実質金利がプラスになる傾向値が出てきた時に出口戦略というものが実現していくと(思っている)。一方で重要なのは、デフレ(という状態)に日本経済が慣れてしまったため、金利のある経済というものに慣れることが重要だ。一気に(出口戦略を)行うと経済が大変厳しい状況になるため、少しずつ出口戦略に向けて(慣らしていく)。先般、日本銀行が実施したイールド・カーブ・コントロール(の修正)は、金利がある状況に(国民を)少し慣れさせたいというメッセージである。ただ、為替に対して連邦準備制度理事会が強気になったため、少し当てが外れた(状況になった)。出口戦略に向けて少しずつ慣らして、(状況を)見ながら実施していくための大きなキーポイントは、実質賃金が恒常的に上がっていくと国民が予見できるようになることであり、これが重要ではないかと思う。また、中小企業においては、大企業の下請け構造(により人件費を上げにくい点)を、より一層人件費に移転(転嫁)できるように努力をしていく必要性がある。中小企業の方々の賃金が上がっていくことが非常に重要で、公正取引委員会ならびに経済産業省が指導していく必要があり、いずれも(中小企業の賃金上昇に向け)とても努力をされている。(出口戦略に向けては、)このようなことをしっかりやっていただくことだと思う。

Q:年末に向けて、少子化対策の財源が議論されると思うが、経団連の十倉会長は「少子化対策の財源は社会全体で薄く広く負担すべきだ」「消費税の議論から逃げてはいけない」と語ったと一部で報じられている。実質賃金の減少が続く現下の状況で、増税は正しいとお考えか。

新 浪:消費税(率)を上げられる(ほどに活力のある)経済になれば良いと思う。つまり、今はそういうタイミングではないということだ。2021年5月に、本会は「持続可能な財政構造の実現に向けて〜長期の経済財政試算を踏まえて〜」を発表し、(内閣府の試算に基づいて2050年まで計算すると)公債等残高対GDP比を発散させず、将来にわたって(財政を)安定的に推移させるためには、(消費税を)19%(に引き上げる規模の財源確保が)必要だと報告をしている。しかし、これは試算であり、(消費税率を)19%にすべきと提言しているわけではない。そのため、消費税の議論をする前に、何と言っても経済を(持続的な成長)軌道に載せなければならないのであり、実質賃金が減少している時に消費税(率引き上げ)の議論をするのは、若干時期尚早ではないかという印象を持っている。消費税について決して議論してはならないと述べているわけではなく、タイミング(の問題)だ。政府は歳出改革といっているが、まだ何をどのように行うかが明確に示されていない状況であり、やはり歳出改革をしっかりと(行い)、そして歳入改革へ(移行)、としていかなければならない。名目(経済成長率)が上がってくるということは、税収も増えてくるわけであり、その意味で(税収増も)併せて(考えて)いく(必要がある)。マイルドなインフレということは、企業が活躍しなければならない(局面である)。デフレは物の値段が下がっていき、(貨幣の)価値が上がっていくという状況であり、企業が(投資で大きな)リスクを負うため、民間(主導の)経済運営は大変難しい。そのため、しばらくの間、財政が相当補ってきたが、今後、適正なインフレによって資金の価値が下がっていくため、民間(企業)が動き、また動かざるを得なくなる。こうした状況になれば、(経済全体の)活力が上がっていくため、当然税収増などにつながっていく。今後、高齢化や少子化の対策で支出が拡大するというときでも、名目(経済)成長率が4~5%という水準に上がる場合には、税収も伸びていく。乗数効果を見て、税収もしっかりと把握しながら(財源の手当てを)考えなければならない。そのため、今は実質賃金をどう上げていくかに邁進するべきではないかと思う。何度も申し上げるが、(消費税の)議論をしてはならないと言っているわけではなく、(議論を行う)タイミングが重要であり、今の経済(状況)では、まず賃上げの実現に邁進することが必要だと思っている。

Q:少子化対策は財政の議論になりがちだが、残業ではなく朝型勤務に切り替えることで社員の出生率が高まった例などを見ると、民間企業が取り組める対策や行うべき対策も多いのではないか。

新 浪:男性が育児休暇をより多く取得して子どもを育てられる仕組みを作ることが必要であるが、大企業では相当実現してきており、またそうでなければ、男女を問わず優秀な社員が集まらないという状況も生じていると思う。課題は中小企業であり、誰かが(職場から)抜けてしまうと、なかなか代わりとなる社員がいないため、やはり中小企業で働く方々をしっかりと支える仕組みを考えていく(必要がある)。こども未来戦略会議でも議論を行ったが、ここが非常に重要である。そのためには、(経営)体力的に厳しい中小企業を財政でサポートするなど、社会環境を作っていくことが国の行政として必要な役割ではないかと思う。したがって、税収をより増やしていくことが重要であり、同時に、税収や社会保障(費)を本当に意味のある(効果的な)使い方としていく歳出改革が今後議論されていくことに期待をしている。この(少子化対策の中小企業)部分は民間企業だけでできるものではない。企業の多くは中小企業であり、中小企業で働く皆さんが子どもを持ちたいと思える環境作りをしていくことが非常に重要ではないかと思っている。

Q:8月上旬で就任から100日を過ぎた。就任当時、アクションプラン作成や副代表幹事と方向性を早期に決めていきたいとおっしゃっていたが、現時点においてどのような状況か。スタートダッシュを切れたか。

新 浪:実は本日、正副代表幹事会において議論をし、素案的なものが(まとまった)。(近日開催する)1-dayミーティングで正副代表幹事が集まり(議論の深掘りを行い)、(その後)統合政策委員会の方々と最終的な詰めをしていく予定であり、目下実行している。共助資本主義の共助の部分においては、先ほど申し上げた(マルチセクター・ダイアローグの)ような活動を(予定している等)、経済同友会としてこれまでと異なるさまざまな方々との接点作りをこの100日の中で(実行に移しており)、(今後)一層具体的なプランにも落とし込んでいく。社会保障関係や、いわゆる103万円、106万円、130万円(の壁)の問題なども議論が進んでいるが、(この問題は)やればやるほど難しい。この大問題においてもぜひ成案を出していきたい。委員会活動が始まり、「(代表幹事任期満了の)4年後にはこのようにしたい」という目標については、(就任から)100日で粗々できたとご理解いただきたい。詳細については、いずれご披露したい。

Q:最低賃金について伺いたい。地方では(中央最低賃金審議会が示した目安額に上乗せするケースが相次ぎ)、人手不足が相当効いてきていると思われる。その受け止めと、代表幹事が主張されている最低賃金1,500円という目標に向けて、経済財政諮問会議などの場でもっと短期間の目標設定をすべきといった議論を呼びかけていくお考えはあるかを伺いたい。

新 浪:人手不足については、トラック運転手の2024年問題などを見据え、すでにいろいろなものが準備に入っている。(コロナ禍で、ある業界での仕事を)退職された方が元の仕事に戻らず、別の仕事に就いて戻ってこないというケースも多い。いわゆるニューノーマルな世界に戻ってこない方もおり、それは世界的な問題となっている。もう一つ、日本独自の問題としては、75歳以上の方が徐々に引退されていったことだ。新型コロナウイルス感染症の(パンデミック)中からその兆候はあった。そういった中で、最低賃金が本当の意味の最低になってしまった。(つまり)コロナ禍前はデフレであり最低賃金を出すのは大変だったが、この風景が大きく変わってしまった。その意味で、私は最低賃金のプラスアルファとして次はどこを目指すか(を考えていくべきだと思う)。(全国加重平均ではなく)全体が1,000円になるにはどうすべきか、5年程度の目途で1,500円にするにはどう実現していくか、といった(プランが)必要である。人手不足をどうカバーしていくか(という問題)もある。OECDでは生産年齢人口を15歳から64歳までと定義するが、日本においては70歳まで引き上げるという政策を掲げてもよいのではないか。実はデータ的には、50歳前後になると健康レベルにおいて偏差が出てくる。慢性病を抱える方が一定数出てくるが、それを予防する、悪化しないようにすることで70歳、場合によっては75歳まで働ける(ようにする)。AIはノーコード(開発ツール)でもできるので、高度な技術者だけでなく、ベテラン、シニアにも対応できる。サントリーでも、ベテランのノウハウをAI化する検討を始めた。人手不足と日本の健康寿命を考えると、やはり65歳までではなく70歳程度まで(生産年齢人口を)引き上げれば(働き手が)ずいぶん増える。103万円、106万円、130万円の壁といった問題の解決(に向けても)、まだ働きたいと思っている方を労働投入できるように(すべきだ)。もちろん皆がみな、フルに働きたいと思っているわけではないが、日本にはまだ余力があって、そこをどう実現していくかは健康寿命を延伸していく(ことも必要だ)。実際、70歳で働いている方もずいぶん多い。日本の特徴として健康寿命が(他国に比べて)長いということ(を加味し)、ケアをしながら(働く)、慢性病を抱える方は働くにあたって問題にならないレベルにコントロールしていく。悪化してから医療を受けるのではなく、その前から手当をしていくような仕組みに変えていく。そのためにマイナンバーのデータが必要であるし、健康関係のデータが非常に活きる。当然、デジタル化、AI化がものすごく進む。こうした何かしらのきっかけによって、生産性高く働けるようになるし、(生産年齢人口の)数も増える。日本にはまだ働ける人たちがいらっしゃるのではないだろうか。そうした政策を打ち出すことは、HXとしてよいと思う。そのような中で、最低賃金1,500円を目指していくといった(打ち手の)組み合わせが重要である。日本はまだまだ人手不足への対応ができる(余地がある)と思っている。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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