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新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2023年6月28日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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 冒頭、牛尾治朗 本会元代表幹事のご逝去、『ビジネスリーダーによる多様性ある、公正で、包摂的な社会の実現への協働宣言』、マイナンバーカードについて言及。
 その後、産業革新投資機構(JIC)のJSR買収、株主総会、為替、イールド・カーブ・コントロール、半導体産業、反スパイ法、労働力不足などについて発言があった。

新 浪:まず初めに、(6月22日に)逝去された牛尾治朗 本会元代表幹事についてお話ししたい。私たちの大先輩で、大きな功績を残された経済人であり、私個人にとっても、本会に導いていただいた恩のある方だ。牛尾さんの遺志を受け継ぐとともに、ご冥福をお祈り申し上げる。牛尾さんは「市場主義宣言」を掲げ、構造改革に力を注がれた。民間主導の経済(を目指し)、規制緩和を中心にリーダーシップを発揮されていた。(当時は)私も若い時分だったが、素晴らしい経済人だ、かくありたいと思っていた。自分にその器があるかはわからないが、(そうした牛尾元代表幹事の姿を)目指していきたい。今後日本は、より一層民間が主導する経済にならなくてはいけない。そのために、引き続き構造改革は必要なことである。一方で、牛尾さんが(前線で)活躍された頃とは時代背景も変わってきており、私は共助資本主義社会、支え合う仕組みも大切ではないかと考えている。これを推進していけるよう、経済同友会のリーダーとして励んでいく所存である。二つめに、『ビジネスリーダーによる多様性ある、公正で、包摂的な社会の実現への協働宣言(以下、DEI協働宣言)』について報告する。本件については以前より紹介してきたが、G7諸国在日商工会議所(の協力を得て)、当会会員を中心に568名の経営者に署名をいただいた。これは、経営者自身がDEIを進めていく、多様性をより促進し包摂していくとの内容で、(賛同者の)署名を集めたものである。今般(6月22日)、官邸を訪問し岸田首相に私達の思いをお伝えするとともに、先の国会でLGBT理解増進法が成立したことを契機に、ぜひ国としても多様化を進めていただきたいと申し上げ、署名をお渡しした。私からお話ししたいことの三点目は、マイナンバーカードについてである。これまでも申し上げてきた通り、マイナンバーカードについてはいろいろと不手際があったことはその通りだ。ただ、ミスは透明性を持ってしっかりと報告しながら正していくことが大切であり、ここで重要なのは、デジタル社会において、マイナンバーは非常に重要なインフラであるという点だ。絶対に後戻りせず、しっかり進めてほしい。そして、国民の不安や懸念を払拭すべくしっかりと対応していただきたい。行政に無謬性を求めるのはなかなか難しいことだ。ミスを起こしてもよいとは決して言わないが、(これは)新しい取り組みであり、ミスが起きたからやめよう、後戻しようとやっていたら、世界から1周も2周も遅れていると言われる日本のデジタル社会化は、もう遅れを取り戻すことができなくなる。まさに(今)、急いで取り組まなければならないことだ。このミスをずっと言っていては、私達の日本は明るい未来が拓けない。ぜひともやり続けて、しっかりとマイナンバーカードを普及していただきたい。そのためにデジタル庁には良い事例も(国民に)伝えてほしい。マイナンバーカード交付率の全国トップは宮崎県で、都城市では93.8%に達する。マイナポータルを通じて約300もの行政手続きをオンラインで可能にしている。市民からも大変好評を得ており、こうした事例も出てきている。マイナンバーカードによって国民生活がより便利で豊かになる。これを目指して、ぜひともやり遂げていただきたい。(現行の)健康保険証廃止が2024年の秋と聞いているが、これに間に合うように仕上げることだ。私達民間からすれば納期は非常に重要であり、(期日を)守ってやり遂げることは日本の重要な文化である。健康保険証の廃止については必ず実現するよう、これを納期として向けてしっかりとやっていただきたい。

Q:先日、政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)が化学メーカーのJSRを買収すると発表したことへの受け止めを伺いたい。また、国主導の企業買収による企業再生や業界再編は成功例が少ないと感じるが、考えを伺いたい。

新 浪:これまでの国による企業買収は、国として大切な事業をしている企業の経営が厳しくなった際に救ってきたという経緯がある。今回は、脈々と非常に良い経営をしている企業の買収であり、これまでとは大きな違いがある。国家戦略としての半導体のあり方は、非常に重要である。現在における国際緊張、とりわけ地政学・地経学において、半導体がこれだけ重要なアイテムであり産業であることは、言うまでもない。その(半導体の)一部の技術を有しているJSRのビジネスを国家戦略に位置づけた表れであると思う。まさに、現在の国家戦略にマッチしている。1980年代前後は、日本の半導体産業が非常に強かった。日本において、半導体が国家の戦略不可欠性を確立し、今回の投資が有益となることを期待している。

Q:株主総会が今週ピークを迎える。取締役の選任など、株主提案が増えていることについてどのように考えているのか。また、東洋建設の総会では、大株主が提案した候補者が取締役の過半数を占め、会長にも就任した。このような異例な事態について、所見を伺いたい。

新 浪:株主総会において、取締役選任などさまざまな意見を持って株主提案をすることは、基本的にはアクティブになったことであり、よいことだと思う。アクティビストの存在など(企業によって)状況はさまざまであるが、企業価値が短期的ではなく中長期に資するものであるかが、非常に重要である。取締役になる方が、どのような役割を果たし、どのような企業価値を(中長期に)もたらすのかという観点だ。そのような方々が選任されているのかを議論することは、非常に良いことだと思う。再度申し上げるが、短期志向では絶対に会社がおかしくなると考える。個社(東洋建設)の業績等はわからないが、仮に業績が非常によく、隆々としている会社ならば是認される。そうではなく、今後の業績が非常に厳しいのであれば、大株主だとしても上場企業であり、少数株主の意見を聞いて企業を一層よくしていくことが必要だ。業績がわからないため、一般論では申しあげられないことだと思う。上場企業であっても、過半数を所有している大株主として会社への責任があり、かつ業績がよいということであれば、この(東洋建設の)ようなケースはあり得るが、(業績が)そうでなければ、別のフォローを考えなければならないと思う。

Q:為替円相場について、昨日ニューヨークで1ドル144円を付けた。直近では143円90銭と急ピッチで円安が進んでいる。日本経済に与える影響について代表幹事の考えを伺いたい。

新 浪:日本経済、また経営において重要なのは予見性であり、為替の乱高下は大変頭の痛いところだ。1ドル150円にいくのか160円にいくのか(という懸念はある)。これ以上円安が進行することは、非常に耐えがたい状況になりつつある。ただ、今の日本経済に(今後)そのような水準になる要素があるのか。これだけ海外からの投資(が活発化し)、国内(の経済活動)が活気を帯びて、サービス産業においても人件費をカバーできるようになってきており、円が急に安くなる理由はもう無くなってきているのではないか、とみている。これ以上金利は下げようが無く、日本経済が底堅くなっている中で、そろそろ日本の経済がよくなっていくということがあってもよい。従って、円は評価されやすくなりつつあるのではないかとの期待がある。一方で、一般的には、介入は経済の活力とは関係ないため、財務省を中心に、これ(現在の為替水準)はいけない(国益を損なう)という意思を示したことは良かったし、本来の力がもっとあるということを内外に示したということだと思う。今後は、日銀がどのような姿勢を示すのかを我々自身は考えていく必要がある。私自身は、日本の経済がこのまま底堅く推移するのであれば、YCC(イールド・カーブ・コントロール/長短金利操作)等の大枠を少し見直すことはあっても良いと思っている。

Q:YCCそのものを撤廃するというよりは、バッファーを(設ける)ということか。

新 浪:YCCを撤廃したら、いわゆる2%(の物価上昇)を確実に実現するということまでは確認されてないと思う。(よって、)YCCを1%程度にするということはあってもよいと思う。もう少し日本経済を見ていかなければならないが、インフレの定着というのはある程度認められていることではないだろうか。人件費が非常に上昇してきていることは顕著に表れており、(一方で)人手不足は大きな課題として地方にまで及んでいる。そのため、(各企業や地方において)既に賃金の上昇を始めている。(従って、)私はYCCを少し緩めること、広げることはあっても良いと思う。

Q:DEI協働宣言について、官邸で署名とともに岸田首相に提出されたとのことだが、どのような反応を示されていたか。また、LGBT理解増進法は配慮事項が盛り込まれるなど直前での修正などもあったが、通常国会での成立を受けて、今後期待する取り組みや多様化の進展、懸念点などを伺いたい。

新 浪:LGBT理解増進法については、まず第一歩であると思っている。これが成立せずに廃案となってしまった場合には、しばらくの間、こういった(性的マイノリティへの理解促進を図る)法律は成立しなかった可能性もあった。その意味では、今般、与党や(成立に)賛成した国民民主党、日本維新の会の方々が努力して、良い議論が行われたと思っている。重要な点は、ここが第一歩であるということだ。岸田首相には、我々が(DEI協働宣言を)持参したのは民間も(多様性ある、公正で、包摂的な社会の実現に向けて)努力する(という決意を表明するためであり)、法律成立を受けて、国としてもぜひ促進し、趣旨を周知していってくださいと(申し上げた)。(岸田首相は)それについてニコリとされ、わかりましたというコメントがあった。今後は、何と言っても生活における公正性(エクイティの実現が重要)であり、その大前提は(性的志向に基づく差別は)人権(侵害)であることから、今まで悩まれてきた方々が堂々と生活できる環境作りを、民間企業が主導でやっていく(決意を示すために)我々企業(経営者)は署名を行った。(DEI共同宣言の意図は)今回の(LGBT理解増進法)成立を契機に、各企業が判断し、DEIを進めていくということだ。

Q:過去、半導体や液晶ディスプレイなどの分野で国による様々な支援が行われたが、成果が挙げられなかった事例も多い。民間のことは民間に任せるべきである一方、経済安全保障における重要性も考慮する必要がある中、(産業革新投資機構(JIC)によるJSRの買収について)民間企業の経営者から見て、成功のために政府が留意すべき点を伺いたい。

新 浪:熊本県で進んでいる(台湾積体電路製造(TSMC)の工場誘致・建設の)件は、大変良い事例になってきている。雇用を生み、日本が半導体をしっかりと生産するという証明であり、それを北海道でも行うということだ。日本がファウンドリを行うというのは、1980年代前半にアメリカの圧力によって日本の半導体産業が優位性を失ったのを立て直すこと(を意味しているの)だが、それを行う上で、政府は、中途半端な逐次投入による予算支出はやめた方がよい。やると決めた以上、より一層ここには財政資金をつぎ込み、戦略的不可欠性ある半導体産業をしっかりと作り直すというコミットメントをしていただきたい。それがあると予見性が高まるため、民間企業も一緒に投資を行うことができる。(Chris Millerが執筆した)『CHIP WAR』に記載されている通り、1980年代前半に(日本の半導体産業は)大変な圧力を受けた。その背景には、米国にとって(日本が今の)中国のように(経済面で)脅かす存在になっていた(ことがある)。しかし、現在は、(日本と米国は)一緒になって取り組もうという世界(の環境)であるため、ぜひとも(政府には半導体に)注力し、本当に(品質の)良い半導体を製造する国として、水や知的な労働者も多い(という強みを活かしてほしい)。(同時に先端半導体の製造拠点の集積に)基づいて、併せてエンジニアやサイエンティストも育成することも行っていただきたい。(政府の政策による)予見性があると、民間企業としても低金利を活かしてこの分野(への投資)に力を入れることができ、それが(経済安全保障上の)最大の防御にもなる。このような意味で、(政府には)日本が半導体でしっかりと生きていける体制を作っていただきたい。あえて、もう一点付言すると、エヌビディアのように(先端半導体を)設計ができる優秀なエンジニアを、国内のみならず海外からも呼び集められる仕組みまで(視野に入れて取り組んでほしい)。半導体(産業)の裾野の広さは相当大きなものであり、AIにも関わるものであるため、基盤である半導体を日本が作り上げることで、日本を明るく元気にしていっていただきたい。(半導体だけでなく)その周りの雇用も創出されるといった効果もあるため、(政府には)ぜひとも中途半端ではなく、しっかりとやり遂げるようお願いしたい。

Q:(DEI協働宣言に関して)6月22日に首相官邸を訪問され、記者の取材を受けられたのは、新浪代表幹事、田代桂子副代表幹事とどなたか。

新 浪:(本会「社会のDEI推進委員会」の)星野朝子委員長、齋藤弘憲常務理事である。

Q:中国の改正反スパイ法が7月1日からいよいよ施行されることにより、おそらく日本企業にとって(これまでよりも)非常に活動がしにくくなると思う。スパイの対象範囲が非常に広がることについて、経済界としてどのような懸念をお持ちになっているのかを伺いたい。

新 浪:(3月に)アステラス製薬の社員が拘束されてしまったが、中国政府にはなぜ(拘束)なのかを明確にしていただきたいと(思う)。何をもってスパイ(活動)になるのか、何を言った場合に(反スパイ法違反で)捕まるのかという、実はそういう(疑問の)気持ちを抱いている。民間の中には、機微に触れないようなもの(技術等)もある。(日本と中国は)お互いに切っても切れない関係であり、中国で(ビジネスを)やろう、中国とやり取りをしようと思っていても、このような(何がスパイ行為に該当するのか)ラインの引き方がわからない反スパイ法によって、冷水をかけられるようなところがあるのではないか。下手をすると、どんな解釈でも(することが可能で)スパイにされてしまう。そのようなことが無いように、もっとわかりやすい線引きをしっかりしてもらいたい。ただ、(要因の)一つに、米中の緊張においてはtit for tat(やられたらやり返す)をしていることがあげられ、このような状況なっているのだろう。(重要なのは)米中ともに線引きをしっかりすることだ。決して、我々民間は、中国との関係を切りたいわけではない。(中国との関係を断つ方向に)どんどん進んでしまうことは、非常にまずいと感じている。

Q:北海道をはじめ地方都市では、おそらく都市部に輪をかけて、少子化に伴う人口減、働き手不足が深刻になっている。経済同友会としてどのように取り組まれていくのかを伺いたい。

新 浪:まず、年齢バイアスを外していくことだ。15歳から64歳がOECDの生産労働人口になっているが、65歳以上でも(まだまだ)働ける方が出てきている。今後、もう少し意識的に考えていかなければならないことが二つある。(第一は)65歳以上の方々も働きやすい職場のあり方、(第二は)正規雇用で女性が働いきやすい環境だ。2人(共働き)で働いているケースもあると思うが、とりわけ地方においては、働きたい方がより長時間働けるようにする。特に、サービス産業等においては103万円、130万円の壁問題がある。解決に向けていくつかのオプションがあるとは思っており、本会としては早期に政府に対して提案をしていきたいと考えている。その際に重要なのは、地方の方々のご意見も伺いながらやっていきたいということ。本会の経済・財政・金融・社会保障委員会ならびにサービス産業活性化委員会、これらの委員会で何が一番の解決策になるのか(を議論していく)。この103万円、130万の壁問題における(解決策は)、おそらく正規雇用で(世帯)2人が働ける環境作りだと思う。また、今後ますますインバウンドが増えることが予想されている中でも、ホテル旅館は6~7割の稼働だという話を聞く。(サービス産業における課題は、)もっと稼働しやすくすることと、どうすれば思い切り値上げができるかということだと思う。本会としては(この課題の解決策も)ぜひ提案していきたい。繰り返しになるが、地域の方々のご意見、そして各地域経済同友会の皆さんのご意見も伺いながら(提案をしたい)と思う。(また、)103万円、130万円の壁問題は、非常に大きな問題だろうと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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