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新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2023年5月30日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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記者の質問に答える形で、マイナンバーカードを巡る一連のトラブル、日経平均株価、就職活動に関するルール、EBPM、独立財政機関などについて発言があった。

Q:マイナンバーカードに関して、誤登録や他人の情報を紐付けるミスが相次いでいる。経済同友会は、マイナンバーカードをデジタル化の基盤として推進する立場にあると思うが、混乱ぶりをどのように見ているのか。所感をお聞かせいただきたい。

新 浪:今回のさまざまな問題は、人為的なミスやシステムの問題(であり)、既に問題(の原因)は明確になっているため、マイナンバー制度に対する国民の信頼を高めてほしい。一方で、マイナンバー制度は大変重要なインフラであり、絶対に後戻りしてはならない。人為的ミスを再発させない、システムの不具合を起こさない(仕組みを構築した上で)後戻りしないことを前提に、国民の信頼を(得るために)活動いただきたい。岸田政権が掲げる(行政手続きの)デジタル完結をしっかりとやり遂げてほしい。マイナンバー制度がなければ、将来的に医療、介護、年金、運転免許証等あらゆる(分野)に支障をきたす。マイナンバー制度は(あらゆる行政サービスの)中核に位置する。そのため、マイナンバー制度を(前提としたインフラを)しっかりと作り上げてほしい。

Q:昨日5月29日、日経平均株価は一時31,500円まで上昇しバブル崩壊後の最高値更新を続けているが、株価上昇へのご所感を伺いたい。要因として外国人投資家の買い増しや日本企業の自社株買いなどが挙げられているが、現在の株価水準が日本経済や日本企業の力強さを表しているのか、まだ日本経済や日本企業に潜在能力があるのか。

新 浪:(日経平均株価の上昇は)期待値だと思う。いくつかのポイントがあると思うが、一つは、労働の活性化、賃上げに(企業が)手をつけることへの期待値である。(2010年代初めに企業の)六重苦、七重苦問題と言われた中で、(一時期の)円高に対して円安(になった)ため、問題のいくつかは解消されたが、(今に至っても)最も解消されていないのが労働者(にまつわる)問題だ。(今回の株価上昇の背景として)労働法規というより労働移動によって賃金が上がるという明確な方向へ日本(政府)、経済界が同時に向かっており、平均で3.8%(賃金が)上昇したことが(投資家にとって)大きなメッセージとなったと思う。(日本は)労働の硬直性が大きな課題だったが、ここに手が打たれるのではないかという海外の投資家の期待がある。もう一つは、海外投資家からみると、円安により(ドル建てで)換算すると当然(株価に)割安感がある。また、労働の問題にも関わることだが、PBR1倍に満たない企業が多く存在する点でも割安感がある。(総じて)割安感を解消する期待値があると思う。

Q:マイナンバー制度について、「後戻りしない」とのことだが、立ち止まる必要はあると思うか。

新 浪:ないと思う。人為的なミスが起きることはある程度想定できた。(マイナンバーと被保険者番号の紐付けを)手作業で行うこと自体がよくないと思っていた。(手作業であればミスは)起こるはずだし、起こらないわけがない。(日本各地に)自治体があり、全員(正確に)作業できるならばそれは凄まじいことである。ある意味で矛盾しているが、手作業の問題点があるから、マイナンバー制度を導入するわけである。ここを乗り切らなければ、同じような問題が起こる。昔、社会保険庁の(年金記録)問題があった。起こしてはならないが、(どうしても手作業で)ミスは起こる。それをある程度認めていかなければ、インフラが構築できない。過去にやってこなかった(新たな)インフラを構築することは非常に大変である。手作業以外に(紐付けの方法が)存在したかは置いておいて、インフラを構築し、最終的に(マイナンバー活用による)応能負担を実現してほしい。社会保障(分野におけるマイナンバーの活用)は大変重要な(社会)基盤になり、最終的には(個人の)資産を把握することも必要だと思う。マイナンバー制度なくして日本の歳出改革はできず、さまざまな不具合が起こる。運転免許証をマイナンバーカードと一体化するなど、今までさまざまな議論を積み重ね、かなり時間が経っている。過去10年間、マイナンバー制度に携わったが、(ここまで)よく進んできた。(今回の一連のトラブルは)問題ではあるが、(マイナンバー制度の推進を)止めることは絶対にあってはならない。河野デジタル相には、しっかりと再発防止に努めてもらうとともに、国民にマイナンバー制度をより分かりやすく説明し、重要性を理解してもらうよう発信してほしい。(マイナンバー制度を)ますます推進し、国民が「マイナンバー制度があってよかった」と思う利便性を提供してほしいと思う。

Q:「ミスは必ず起こる」とのご発言について、企業経営の視点で言えば、ミスは起こる前提で先手を打ってさまざまな対策を講じることがあると思う。フェールセーフという考え方も浸透している。今回マイナンバー制度を巡る一連のトラブルを見る限り、その考えはなかったか。

新 浪:(日本は)過去の政府、行政において、ミスに対応するプランBを作らない国であり、その点は(マイナンバー制度)に限らず問題である。何をするにもミスは起こるが、(それを前提として)対処することは日本文化が最も苦手とするところである。なぜなら、初めから出来なかった場合を想定することに対して、(やり遂げる)根性がないと言われる(場合があるからだ)。民間(企業)にも一部同様のことはある。だから(ミスなく)やり遂げろと言われる。今回(一連のトラブルを)早期に発見し、対処しているので、問題がすぐ発覚した点はよいことではないか。どちらかと言えば、今までは問題が表面化することを恐れ、発覚するまで時間がかかっていた。現政権と河野デジタル相が問題を隠さずに表面化したことは、非常に重要なことで、それゆえ信頼を回復しやすくなった。問題を隠さなかったことは非常によかった。

Q:政府の就職活動ルールでは、6月1日に採用面接が解禁予定だが、商社などの企業は採用を前倒しする動きが広がっており、人材獲得競争は激しさを増している。こうした動きをどのようにご覧になるか。そもそも就職活動のルールがあること自体について、ご意見やお考えがあれば伺いたい。

新 浪:実際、この(就職活動)ルール通り(の採用)になっていない。ルールは、順守されて初めて、皆がルール(の持つ)意味を共有できる。一方で、人材獲得が競争になっていることは悪いことではない。このルールを守ろうとする時は、人が余っている時であり、いわゆる買い手市場になっている時だ。これほど人手不足の現在、よい人材を採りたいという売り手市場の中で、ルールを守れと言うのは実感としては相当無理がある。企業側も、よい人材を採る、育成することに必死になっており、なかなか就職活動ルール通りにはいかないだろう。ルールがあること自体については、それが守られるルールならよいが、(本件については)恐らく難しい。このようなルールを作ること自体が難しくなると思うし、今後、(新卒)定期採用ではなく経験者採用がますます増える。経験者採用が段々増えていくことはよいことであり、(それに応じて新卒採用の)位置付けは下がるだろう。人材の流動化をすればするほど、経験者が入る。新卒(採用)もやらなければならないが、全体(に占める新卒採用の割合)は100%だったものが、8割、7割、6割と下がっていくのが大企業の傾向だと思う。まだまだ6割になっていない企業もかなりあると思うが、例えばサントリーは既に30%から40%が(新卒採用)以外(の採用)である。就職活動ルールの是非は大変疑問である。解決しなければならない課題は、大学で勉強すべき時間を割いて、(学生が)就職活動で大変な思いをする点と認識している。この問題は常につきまとうし、正解がないと思う。(就職活動の)ルールが存在する以上、守るよう励行しなければならないが、そのような状況ではないというのが実感である。

Q:現状、政府会議で毎年就職活動のルールを見直している。2週間以上のインターンシップの実施を条件に、選考開始を3ヶ月ほど前倒しする方針も出ているが、就職活動ルール自体をもう止めた方がよいというお考えか。

新 浪:現状、(ルールを)順守する企業がどれだけあるかと考えると、そうは(多くは)ない。(とは言え、新卒獲得競争が)過熱した結果としてルール(策定)となった(経緯がある)。自由競争にしてよいかは、過熱(しているか)状況を見極めなければならない。守られないルールであれば、もう一度見直さなければならないが、(新卒獲得競争の過熱が)学生の授業やさまざまな活動に支障をきたす可能性もある。早く(就職活動が)終われば(それはそれで)よいため、悩ましいところである。企業経営者としては本当によい人材に多く来てほしい。改めて考えると、(就職活動)ルールを決める必要があるか(という問い)は悩ましい。正直、ルールを止めるべきか、実態を調査しないと分からないが、少なくともさまざまな企業を見る限り、ルールは守られていないと思う。(就職活動のルールを)順守しない場合、企業の風評リスクになるかどうかである。よい人材が欲しいことは悪いことではないが、(ルールが)形骸化するのであれば見直さなければならない。ただ、(ルールを)無くすべきと言い切れる判断軸を持っていない。

Q:現在の大学2年生から、2週間以上のインターンシップを行った場合、早期に内々定を出せるルールが策定される。2週間以上学生を受け入れることは、職場にとってかなり負担であると企業側から聞いている。売り手市場の中で、インターンシップは新卒採用した社員の定着率向上に寄与するため、現場の負担の大きさを考慮しても、企業はインターンシップを受け入れざるを得ない。インターンシップの負担とメリットについて、どのように考えるか。

新 浪:インターンシップは、まだ多く(の企業に)広がっているわけではないという認識だが、必要性は世間で言われている(通りだと思う)。(企業)負担に関して、本会会員から課題である(という声が)あまり挙がっていないのは、まだ試行段階だからだと認識している。学生の資質を測る上で、(インターンシップは)あった方がよいと思うし、(学生との)出会い(の場)であり、(選考する上で)判断しやすいのは事実である。ただ、人気企業はインターンシップに参加できない人の方が多くなる。それが公平かどうか(という問題)がある。(学生を)採用する上で、インターンシップを(経験した)人から選ぶとなると、我々(企業側)にとっても(選択肢が)狭まると感じる。インターンシップ(に参加できる学生)は限られ、(インターンシップを)実施する際にも選考作業が必要となり、自己矛盾が出てくると思う。インターンシップ経験はよいと思うが、(経験とは)インターンシップだけではない。例えば、社会起業家と一緒に何かをやり遂げるなど、自分が特別なことをした経験が重要と思う。自らが他の学生と違う(経験)を持っているかを(企業に)アピールする上で、A社、B社、C社で(インターンシップを)経験した、あるいはNPOで勤務した、クラブ活動でキャプテンやマネージャーを務めた等、(他の学生と)異なる経験がすごく重要だと思うし、(人材を)選ぶ上で大きなポイントになる。(採用者は)インターンシップ(経験者)に限るとか、(採用活動の)中身を決めてしまうことに課題があると感じる。インターンシップはよいことであり、(採用側が)意思決定する上で一つの要素であるが、それが全てであるとは思わない。本会はインターンシップを重要な活動として促進しており、インターンシップを否定しているわけでは全くない。

Q:来年度予算に関し、政府は5,000程度の事業でEBPMを導入することを検討していると話が出ている。例えば新規に空港を作りたいと予算要求する官庁が、需要の想定を膨らませ、過大に効果を見積もるお手盛り評価になる可能性があり、信憑性の懸念がある。EBPMは、かつて民主党政権が実施した事業仕分けや行政事業レビュー等、さまざまな手法があると思うが、代表幹事が想定するEBPMのあるべき姿を教えていただきたい。

新 浪:政策に費やした費用の効果測定をするのがEBPMである。効果測定する上で(政策の結果を)見える化(すること)は非常に重要であり、(EBPMは)いくつかのデータ(を基に)どのような効果が出たか、KPIを上回るかどうかで(判断する)。実施する際に重要なのは、複数年度で実施することである。1年で(課題を)解決できる政策があればよいが、そうはない。基本的には、経済財政諮問会議の下に(専門調査会として)設置されている経済・財政一体改革推進委員会にEBPMアドバイザリーボードがあり、そこでどのように(EBPMを)やるべきか議論し、具体的には、GIGAスクール構想等で実施している。投資、予算付けした費用に対して効果がどれほどあるか、KPIで(把握する必要がある)。KPIを設定し、本当に効果が見られたものには費用をより使えばよく、効果がないものは即座に(政策の実施を)止めるのではなく、当初設定したKPIにどうすればより近づくか議論し、結果的にどうすることもできない(政策)なら止める、(そういった)議論が(EBPMによって)できる。これが、歳出改革の中核になる。結果的に効果が出る形で費用を使えたら、ワイズスペンディングとなる。その根幹はEBPMの仕組みを作ることだが、データをどのように活用すればよいかがとても重要である。アカデミア、大学に研究してもらい、その部分に予算をつけて、結果的にどのような仕組みであれば、EBPMに基づいて歳出改革ができるか(考える必要がある)。(歳出)改革はただ減らすだけではなく、よい(必要な)歳出は増やし、その代わり意味のない歳出は減らす、もしくは(政策手法を)やり直すべきである。そのため、政策には効果を示すKPIが不可欠である。ただKPIが定められない(政策)もあり、あまりに(検証期間が)長いものは難しい。例えば国が実施する基礎的な研究開発はEBPMに向かない。一方、今回の少子化対策は(EBPMに)向く。(以前はKPIを設定)しない政策もかなり多かったが、経済・財政一体改革推進委員会で(政策ごとに)KPIを設定する(ようになった)。とは言っても、数値的なデータだけではなく、定性(的なデータ)もしっかりと見る必要がある。(政府は)予算を支出しているため、予算に対しどのような効果があったか、乗数効果を見る必要がある。(予算を要求する官庁が)EBPMを行った結果、上手く(政策が)回っていると分かった箇所は予算拠出を続ける、もしくはもっと増やすよう要求する(ことにつながる)。 ただ(質問にあった)多くの(政策)についてEBPMを実施するとは聞いていない。経済財政諮問会議で岸田首相から「EBPMは非常に大切であり、実行していきたい」と聞いているが、どの分野でどのように本気で実行していくかは今後議論すると思う。財務省がその気になることが必要不可欠だが、今まで実施したことがないため、その部分は疑問である。(EBPMは)米国や英国では当たり前だが、複数年度で実施する必要がある点が壁となっている。単年度ベースの政策では、非常に近視眼的に(政策)実現(を目指すこと)になり、良い効果が出ない。財務省はこの(問題に)大学(等の研究機関)と一緒にしっかりと取り組む姿勢が必要である。(現在は)まだそうなってはおらず、そうなりつつある状況と思う。

Q:経済同友会が長年主張している独立財政機関の設置について伺いたい。設置を主張するだけでなく、どうすれば実行できるかに踏み込まない限り、実現は難しいのではないか。例えば、独立財政機関は財務省が抵抗しており、財務省は国税庁と一体化して強大な権力を持っている。国税庁に対し、さまざまな人が物を言えない構造がある。例えば財務省と国税庁を切り離すべきという統治構造改革を主張しないのか。

新 浪:問題の本質は財務省と国税庁にあるわけではない。国会、与党、野党、国全体の統治機構の問題であると思う。財務省はむしろ(独立財政機関の設置を)賛成する側に回ると思う。独立財政機関が設置された場合、小規模の補正予算を通したいと(政府が)考えても(予算を通すことが)できなくなり、本来あるべき姿になる。ワイズスペンディングに向け、独立財政機関が設置されれば、EBPMは必須の考え方となる。国は、財政を司る際にしっかりとした原則を持たなければならない。特に国会のあり方、国はどう統治されるべきかを(考えなければ)、独立行政機関を作ったとしても、最高意思決定機関である国会が指示に従わない(ならば意味である)。国のあり姿、統治機構をどうするかは、私が座長を務める令和臨調第1部会「統治構造」で議論した上で、提案していきたい。そして、令和臨調と本会は同一歩調を取る。本会はこれまで独立財政機関の実現を一貫して主張してきたため、令和臨調と一緒に(実現に向け)取り組みたい。

以 上

(文責: 経済同友会 事務局)


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