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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2023年4月4日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、中国当局によるアステラス製薬社員の拘束、少子化対策と財源、経済同友会のあり方や存在意義、英国のTPP加盟、国土交通省元事務次官による民間企業への人事介入、賃上げ、未来選択会議などについて発言があった。

Q:先般、アステラス製薬の社員が反スパイ法違反容疑で中国当局に拘束された。率直な受け止めと、経済界あるいは企業として対応手段や対応すべきことはあるか、今後どのように対応すべきか、お聞かせいただきたい。

櫻 田:第一に「大変困った」という感想である。このような事態は今回が初めてではなく以前もあったが、共通しているのは(中国は)法治国家として(中国当局は)「法のルールに従って執行し、逮捕した」と言うが具体的にどのような事実が法に抵触したかは一切明らかにされていない。帰国直前になって(アステラス製薬の社員を)逮捕する事態が起きてしまったこと自体が解せないというか、なぜこの時期に(逮捕したか)という気持ちを含め、(中国で)経済(活動)をする企業として、予見可能性がさらに低下し、さまざまな意味でより慎重にならざるを得ない。(日中首脳の間で)日中関係の重要性やハイレベル協議の必要性を合意していながら、一方でこのような事態が起きることは、中国の予見可能性は相変わらず高くなく、何が起きるか分からないということだ。従って、(中国での企業)経営は、経済安全保障の観点を含め、メリットやデメリットをより慎重に考慮し、経営判断や投資判断をしていかなければならないと思う。このような事態に不幸にも巻き込まれたアステラス製薬を含め、日本の経営者は、駐在員の安全を当然第一に考えるとともに、今回林芳正外務大臣が迅速な行動をとったが、このようなことを引き続きしっかり行ってもらうようお願いしつつ、常日頃から外交当局、日本の外務省との関係を強化していきたいと思っている。

Q: 少子化対策についてお伺いしたい。3月31日、児童手当の所得制限の撤廃などを含む少子化対策のたたき台が発表された。これについての評価と、財源は明記されていないと思うが、社会保険料の上乗せのほか、こども国債などの声も出るなか、財源をどのようにお考えか伺いたい。

櫻 田:本日(メンバーについて)一部報道があったこども未来戦略会議について、設置することを3月31日に岸田首相が会見で明らかにされ、財源も(その会議の場で)議論するということであったので、(財源が)テーマに挙がっていると理解している。本日(少子化対策の)財源をどうするか申し上げるつもりでいたが、少なくとも(政府は)財源を議論する場を作り、こども未来戦略会議で議論されたことがおそらく骨太の方針に反映されるため、財源も決まっていくと思う。一方、私が聞く限りにおいては、財源は、国債では持続可能性が問題であるため、社会保険料が適当だという話が広まっているようだ。また社会保険料か(という心情である)。どうして(財源として)消費税が出ないのか、正直に言って、個人的には非常に疑問である。(政治的に)消費税は鬼門と思われているかもしれないが、消費税が(既存の社会保障関係支出の)目的税(化)しているから適切ではないということかもしれないが、少なくとも社会保障財源として消費税を(新たな少子化対策のために)使うことは国民全体(の間)でおかしいとは決してならない。新型コロナウイルス感染症対策の予備費がいつの間にか物価高対策の財源として使われることより、筋が通った話だと思う。(少子化対策の)財源は社会保険料よりも税という形で、持続可能性を求めていくべきと思っている。社会保険料に依存することで、既に医療、介護、年金含め労働者、家計の社会保険料負担は限界に近づいている。世界的に見ても、(日本の)社会保険料負担の水準は非常に高いなかで、国民的議論や国会での議論が(十分で)ないまま、(財源が)社会保険料に依拠することが決まりがちな(風潮に関して)、私はやや心配だと思っている。

Q:経済同友会は、牛尾治朗代表幹事や小林陽太郎代表幹事の頃から自由闊達で時代を先取りした議論を行うスマートな印象があり、その後の長谷川閑史代表幹事の頃には政府に協力して政策を動かしてきたと思う。櫻田代表幹事は非常に幅広い提言をされ、行動する政策集団、“Do Tank”として活動されていることに、敬意を表する。櫻田代表幹事が考える経済同友会の在り方や存在意義、経済同友会らしさについて伺いたい。

櫻 田:教科書的な回答をするつもりはないが、私自身もこの4年間、経済同友会らしさというテーマをずっと考えてきた。経済三団体でみると、他の二つ(の経済団体)はそれぞれ、中堅・中小企業の大集団、大企業の集団であり、SOMPOホールディングスも経団連で活動している。ただ、(他の2団体は)企業が会員になる点が、我々と異なる。本会は(企業経営者が)個人として参加する。1946年に本会設立時の「設立趣意書」を何度も読んでいる。悩むことはないが、「経済同友会とは何か」を考えるとき、必ず設立趣意書を読み直すが、まさに焦土と化した日本を再び勃興させるために命がけで脳漿(のうしょう)を絞りきり、この国のために経営の専門家として全力で取り組まねばならないと(書かれている)。しかし、そのように叫んでいたのは今と比較するとまだ若い方々だった。当時、終戦直後にGHQによる財閥解体が行われ、いわゆるベテラン経営者たちが現役を退かざるを得なかったなかで、まだ30代もいた部長級あるいは若い常務級の方々が何とかしなければならないと集まった。もしかすると今こそもう一度本会にこの(設立時の)想いが求められているのではないかという結論に至った。なぜなら当時は追いつけ追い越せ(の精神)で焦土に化した日本を欧米の水準にもっていくため、まず欧米からしっかりと学び、(日本の産業を)より良いもの、より優れたものにしていくことに取り組み、戦後20数年間で(日本は)GNP世界第2位まで到達した。従って、(欧米という)ロールモデルがあるなかで、いかに早く効率的にキャッチアップするかが当時の経済の役割で、それに向かって若い経営者たちは何をすべきかを議論し、政府に対し提言していた。政府、各企業、経営者、国民の目標がほぼ同じであり、同一性があったと思う。代表幹事に就任した2019年当時を振り返り、目標を考えてみると、GDPだけでは(十分では)なく、GDP世界第3位を維持することでもない。日本らしさとは何なのか。失った過去の30年間があり、取り返さないといけない状況だったが、結局目指すべきロールモデルや目標、どのような国にしていけばよいかが明確でないという状況だったと思う。そして、これまで模索してきたわけだが、平成(を経て)令和の現在に至って、ようやく新しい資本主義という言葉が出てきたが、新しい資本主義が目指す国家像は、本会が設立された1946年当時の「欧米を目指せ」(という国家像)とでは、大きく状況が異なる。一つには、量ではなく質も重要ということ。また、当時と異なる複雑な経済安全保障や外交関係にあること。さらに、国民の価値観が多様化したこと。さまざまな違いがあり、目標を一つに絞りきることができないのが現在であり、そのなかで経済団体が目指すのは、経済をしっかり立て直す、成長させるだけではなく、(社会を構成する)国民、生活者と共に生きるステークホルダーの一つとして、経済団体の目指すものをはっきりさせることだと思っている。その意味で、(任期である)4年間、特に最後の1年間で、本会の仲間と議論して決めたのは、生活者共創社会である。政府も含めたあらゆる生活者が、共に価値を作っていく国を目指す。具体的に目指すことは何かというと、ハピネス、世界一幸福な人の多い国を目指すことである。ただ、(個人の)気持ちとして幸せ、ハッピーであればよいということではなく、具体的にGDPに代わる分かりやすい指標で生活者共創社会は世界に冠たる幸せ度が一番高い国であることを、国内外に示すものを作りたいと考えている。これを公表した点は、本会ならではと思っており、他の経済団体と異なるところと思っている。その一つの象徴的な舞台が、2020年に発足した未来選択会議である。未来を選択するための会議であり、本会以外のステークホルダー、具体的には18歳の高校生から70歳を超える経営者や生活者の方に参加いただいた。行政やメディアも入り、あるべき日本の姿やそれを決めるための方法について議論してきた。すでに(未来選択会議の)開催は8回を超えた。これらは、この4年間のなかで、“Do Tank”として本会らしさを発揮できた具体的な事例と思っている。

Q:先日、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加国は英国の加盟を認めることで合意した。受け止めと日本経済への影響について見通しを伺いたい。

櫻 田:欧州の大国である英国がTPPに加盟したことは、非常に重要かつ象徴的な意味があると思っており、大歓迎と申し上げたい。英国の(TPP参加に向けた)勧誘を積極的に働きかけ、今回の成果に結びつけた日本の関係当局に敬意を表したい。欧州の大国である英国がアジア、特にTPPが対象とする環太平洋地域にプレゼンスを示したことは、自由で開かれた地域(内の)経済や安全保障に必ず良い影響をもたらすと思う。同時に、英国の環太平洋地域へのコミットメントが示された点も歓迎する。経済的な観点で見ると、英国の参加によりTPP(参加国)のGDP(総額)が一気に拡大するとは思わないが、戦略的、質的な意味は非常に大きい。

Q:先般国土交通省の元事務次官が民間企業の人事に介入する事案が発生した。未だにこのようなことが起きたことに関して、どう受け止められるかお聞かせいただきたい。

櫻 田:事実とすれば残念だし、「李下に冠(を正さず)」の正反対である。事実とすればあってはならないと思う。当事者に話を伺ったわけではなく、実態は不明だが、もしあのような(報道されている)形で許認可権を持つ側と許認可によって影響を受ける(側)、メリットを受ける企業体の関係が続いていたとすると、やはり健全な関係にはならないことは明らかだし、結局さまざまな観点で誤解を生む可能性がある。官公庁に勤めている人が退官後に民間企業で勤めてはならないというルールはないはずなので、問題は利益相反が明らかに見えるところは、(再就職先として)回避すべきということである。逆に言えば、日本は労働人口が減っているなか、有能な人材を有効活用することは何ら問題なく、しっかりとしたルールに基づいて(元々官公庁に勤めていた人材を)有効活用するのであれば、官から民間企業に勤め直したことが天下りでよくないという風潮は誤りだと思う。今回はそのような(健全な再就職という)事例には見えない。明らかに許認可権を持っている側、それによって影響を受ける側との関係の中で、圧力とみられるものがあった。一方、(今回問題になった)企業には指名委員会があったと聞いているが、指名委員会はどのような機能を働かせていたかが気になる。一般的に指名委員会はそのような部分を監督し、防波堤になることで、正しいガバナンス(体制)を構築するわけであり、さまざまな意味で、今回の事例は「まだそんなことがあったのか」とがっかり感を惹起させる可能性がある。きっちりとした対応をされることを期待している。

Q:春闘について改めて伺いたい。集中回答日からおよそ1ヶ月が経とうとするなか、例年を上回る大幅な賃上げが続いている。それについての受け止めと、今後の課題として、持続的な賃上げが重要と言われ、今年大幅に賃上げした企業が多いと思うが、持続的な賃上げについてお考えを教えていただきたい。

櫻 田:私もその点について大変強い関心がある。まず大幅な賃上げの勢いとその結果については、安心という以上に、本当に良かったという思いが強い。ただ、揚げ足を取るつもりはないが、インフレに負けない賃上げかについては、(消費者物価の上昇率が)4%を超え、(民間予測の賃上げ率の)集計結果が定期昇給込みで3.8%という(数値)が出ているため、単純な数値比較では、平均では(物価上昇に賃上げが)勝てていない。ただ、ここ数年で最も高い賃上げである点は、大変良いことと思っている。問題は、(今年の)賃上げで、働いている人たち、家計が明るい気持ちを持ち、経済(の好循環)に向け、(消費に)財布の紐を開き、あるいは投資する行動に出るかどうかだ。ここが一番の課題と思っている。(賃上げが)今年1年だけ(の事象)であり、同様の期待が来年はできないならば、おそらくまた貯蓄に消えてしまう可能性がある。貯蓄に回ったものはそのまま銀行預金にとどまり、投資に回らない今までの悪循環を繰り返す可能性があるため、注視する必要がある。どうしたら良いかは二つある。(一つ目は、)今までも申してきたが、今年は精一杯賃上げを実施した社長が、「今年は皆さんの生活をインフレから守るため日ごろ(の貢献)に報いて、全力を挙げて精一杯(賃上げを)実施したが、来年以降は雀の涙(程度の賃上げになる)」という話になった場合、(労働者の心情は)悪くなる。逆に、「今年はここまで(の賃上げ)だが、来年はもっと賃上げできるように頑張る自信があり、そのために一緒にやろう」という話であれば、従業員も(先行きへの期待に)納得するだろう。(労働組合に)回答する際の社長メッセージが非常に重要と申し上げてきた。私はそこに注目しているが、なかには慎重な回答、コメントを出している企業があると思う。二つ目は、感性的、感情的な話ばかりでは困ると思い、構造的(な話である)。潜在成長率のなかで、労働投入量の生産性やGDPへの寄与率を調べたところ、残念ながらずっと足下で低下している。これはさまざまな要因があるが、労働投入量は、労働時間にも置きなおされるため、コロナ禍における新しい働き方によって、結果的に労働時間が減ったことが、生産性向上に良い影響をもたらしていない。その結果がずっと続くならば、経済学的に言えば、新しい働き方は生産性に寄与していない結論になってしまうので、これは何としても回避しなければならない。来年度以降恒常的に賃上げを続けるためには、今まさに賃上げが良い形で収束したところなので、次はどうしたら新しい働き方を通じて生産性を向上させるかである。具体的には、労働時間は短くアウトプットや生産価値は多くするために、各企業が、各個人を含めいかにイノベーションを起こすかという議論や行動を開始しないといけない。そこを怠って(単に賃上げが実現して)良かったになってしまうと、良くても来年も(今年と)同じ結果、下手するとさらに生産性が低下し、人件費だけ上がる悪循環になるため、非常に気にしているところだ。そうした議論はこれからだと思っている。本会も議論するし、世論も議論(を後押しする風潮)に変わることを期待したい。

Q:未来選択会議についてお伺いしたい。昨年末、櫻田代表幹事は、経済同友会の外に未来選択会議を独立させるという発言があったと記憶している。経済同友会と異なる意見も多数出てくるため、自由闊達な議論をしたいという趣旨だったと思うが、現在どのように進んでいるのか。背景として、新浪次期代表幹事と異なることを言うために未来戦略会議が存在するのか、経済同友会と異なる意見を言えるような場にしたいという発言かとも思うが、どのような真意があるか教えていただきたい。

櫻 田:正確には、本会や本会の代表(幹事)と異なる意見を認める、認めないといった議論ではない。未来選択会議は日本の生活者、あらゆるステークホルダーの意見を持ち寄り、議論し、国のあり方や、意思決定、社会的合意形成のあり方について、経済界だけではなく、学生、経営者、メディア、アカデミアも交えて、どのような選択肢があるかを議論するために、本会は(議論の)場を提供し、(会議体の)運営に協力する(役割である)。これまでは本会の資金で運営してきたが、今後も同様のやり方で(運営した場合)、あらゆるステークホルダーによる意見(交換)が活発に行われ、仮にそこでまとまった意見、といっても必ずしも一つにまとまる必要はなく、二つ、三つ(の形に整理された)意見が、本会の提言内容と異なる場合はどうするかという議論も行った。それはそれで受け入れ、未来選択会議で出された見解、意見として公表したらよいという考え方がある。一方で、せっかく(未来選択会議が)本会発の形で(活動している会議で)あれば、そこで出された意見が仮に(本会の)委員会が公表した提言と異なるのであれば、委員会と未来選択会議の提言内容をぶつけて、議論し、より良い提言を出すこともありではないか(という考え方もある)。いずれにせよ、(未来選択会議の)目的は、さまざまなステークホルダーが忖度なく議論する場となることであり、本会だけが主役で、本会(だけが議論を主導する)ことがない方法は何なのかということが重要である。一つは、(未来選択会議を)本会の外に出すことであり、もう一つは、本会の中に置きながら、若者や本会会員でない人たちの意見をしっかりと取り込むことである。現在、議論を始めたところであり、遅くとも2023年度内に、外に出すか、中で続けていくか、方向感はどうするのか、(結論を)出したいと思う。形式的に(未来選択会議が本会の)中(にある)か外(にある)かより、どうすればさまざまなステークホルダーによる忖度なしの意見を(本会の提言内容に)反映できるか、本会の懐の深さを示せるかについて議論を始めたところだ。


以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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