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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2023年2月28日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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冒頭、未来選択会議第8回オープン・フォーラムの開催予定を紹介した。その後、記者の質問に答える形で、日銀総裁候補への所信聴取、3月1日から中国対象の水際対策緩和、ロシアのウクライナ侵攻から1年、春闘でトヨタ自動車とホンダが満額回答、ラピダス北海道に工場建設表明、機密資格制度などについて発言した。

冒頭発言
櫻 田:近々、未来選択会議第8回オープン・フォーラムの開催を予定している。テーマは「日本らしい、望ましい民主主義のあり方」とした。民主主義についてそもそも論から議論を行いたいと思う。今回も未来選択会議の設立趣旨に則って、あらゆる生活者、ステークホルダーから(参加者を招く)。与野党から若手の政治家にお越しいただくほか、連合、メディア、シンクタンク、日本若者協議会、学識者など、各界のリソースパーソンが議論する。ぜひ記者のみなさんもご参加いただきたい。いま(参加申し込み者数は)数百名程度だが、これから全国経済同友会や全国知事会等にも声をかけて(さらに多くの方に参加いただき)、この未来選択会議が、本会が提唱する「生活者共創社会」の縮図になっていけばよいと思っている。ご支援、ご協力、また建設的なご批判も頂戴できればと思う。

Q:前回2月15日の定例記者会見で日銀次期総裁に植田和男氏を起用する人事案を政府が国会に提示したことをお伺いした。その後国会で植田和男氏への所信聴取と質疑が行われ、「物価は今がピークで今後下がっていくとみられるため金融緩和を継続する」というのが主な内容だったと思う。(政府・日銀の)共同声明についても、ただちに見直す必要はないと発言した。それらを聞いて改めて植田和男氏への期待、資質などをお伺いしたい。

櫻 田:(国会での所信聴取、質疑での発言は)様々な配慮があった上でのコメントだと思う。植田和男氏の一連の発言を聞いて、これまで日銀が行ってきた政策と一致する点が多いと感じるかもしれないが、私自身は、金融政策は景気と物価の現状、そして先行きの見通しに基づいて運営するという一言に尽きると思っている。つまり、(植田氏は)金融政策のプロとしての立場を淡々と語っている結果、これまでの政策と少なくとも表面的には似ているように映るのだが、重要なのはむしろこれからであり、景気・物価の現状と先行きの見通しに基づいて(どうするか)という点だと思う。日銀が(一時的と)想定している(現在のコストプッシュ型の)インフレが、(景気拡大を伴う)ディマンドプル型(に変化して)消費者物価指数の上昇率が2%(を上回る状況)で続くとしても、(物価上昇のペースが減速して)2%の物価目標が達成されないとしても、今後(日銀が)展望レポート(で見通し)を公表するはずである。日銀が様々な統計分析をした結果、2024年、2025年に関して展望レポートの中で(物価目標)2%に届く可能性が見えた(と記載があった)際は今回の一連の発言で示された通り、(金融政策の)正常化に向けて動くと思う。イグジット(金融緩和からの出口)という言葉を使うかは別として、金利をもう少し上方に誘導する可能性があり、その判断がかなり大きな(日本経済の)転機になるだろう。次回3月9日、10日(開催予定の)金融政策決定会合を受けて展望レポートが公表されるので注目したい。一気にイグジット、又は(政策)金利の上方修正に向かうことはないと思うが、(日銀の)金融政策スタンスの変化が見えてくる時期はそう遠くないと思う。

Q:中国を対象に昨年末から強化された新型コロナウイルス感染症の水際対策が3月1日から緩和される。中国本土からの直行便による全入国者を対象としたウイルス検査はサンプリング検査となり、中国本土からの到着便を成田、羽田、関空、中部の4空港に限定していた措置を撤廃し、増便も認めるため、地方にインバウンド需要が波及する効果が期待される。一方、中国本土からの出国前72時間以内の陰性証明提出は継続され、中国は日本への団体旅行を未だ解禁していないため、訪日客回復に不透明感があるという見方もある。中国に対する水際対策緩和への受け止めと、訪日客に対する期待を伺いたい。

櫻 田:ファクトを申し上げると、今まで(中国本土からの直行便による)全入国者を対象とした検査を実施し、直近の陽性率は(全体の)0.3%と極めて少ない。統計に基づいた判断と思うので、サンプリング検査に(検査方法を)変更することは合理的だと思う。先週末、国内出張から戻って羽田空港に降りた際に、グランドスタッフの方に質問したら、「中国を含めたアジア各国からビジネス目的の訪日客が多く、非常に忙しい」との回答があった。羽田空港に到着して(首都圏で)一泊もせず、そのままトランジットで地方に飛ぶ場合もあるという。そういった意味では、中国経済によい兆し(が見られる)と思っている。(日本)経済の観点で言えば、(中国に対する水際対策緩和は)好ましいと思う。一方、中国が発表する統計がどこまで正しいか、今後どうなるかは、予断を許さないところがある。サンプリング検査に変更した後も中国国内の現状を観察し続けること、直近の情報を収集して臨機応変に水際対策の強化や緩和を図ることは今後も継続する必要がある。ウィズコロナの状態が今後も続いていくと思われるため、今回のやり方(の見直し)で一つの基準ができたわけではなく、臨機応変(な対応)が非常に重要だと思う。(中国からの)インバウンド需要によって各地やそれぞれの観光地が潤う面もあるが、国内や他国から訪れる人流や観光客が(中国からの観光客の増加によって)影響を受けることもある。バランスを見ながら(中国からの訪日客を)考える必要がある。ただ、一般論としては、(中国に対する水際対策の緩和は)良いことだと思っている。

Q:中国に対する水際対策緩和が与えるビジネス面での影響はあるか。例えばビジネス目的で中国を訪れにくい現状が改善され、今までより往来が活発になるか、もしくは、現状困っていないため、今までとあまり変化がないか。

櫻 田:本会会員から直接私に(中国を対象とした水際対策によって)困っているという話は聞いたことがない。間違いなく(中国からの)インバウンド需要は増えてきているし、さらにインバウンド需要は観光客中心と思っていたが、必ずしもそうではなく、ビジネス客が増えてきているようだ。そのこと自体は日本経済にとって悪くない。反対に、日本からの出国者に関して現在(中国から)ビザ発給に関して制限を受けているわけではないので、新型コロナウイルス感染症(対策)の問題で中国を訪れることに抑止的になるとは聞いていない。それよりも、日本国内の企業の中で経済安全保障の観点から中国との取引をよく考えなければならないという動きがあり、その(懸念は)今後減ることはないと思う。

Q:2月24日でロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年が経過した。世界経済ならびに日本経済に与えた影響と今後の見通しを伺いたい。

櫻 田:(開始当初は)1年間も続くと思っていた人はまずいなかったと思うが、(反対に)現在はあと1年で終結するとは思わないという意見が大半であると思う。すなわち、この侵略戦争は長く続くだろう。ロシアのウクライナ侵攻によるショックが、(コロナ禍で)既に厳しい状況にあった(世界経済の)サプライチェーンのひっ迫に拍車をかけたことは明らかである。ただでさえ、(コロナの影響で)輸送コストやサプライチェーンに負荷がかかっていたことに加えて、ウクライナの穀物生産やエネルギー供給、ロシアのエネルギー供給等が影響を受けて、想定をはるかに超える世界的な高インフレが進んでいる。西側諸国は少しでも影響を少なくするため、ロシアへのガスや石油の輸入依存度を下げ、ウクライナを支援しつつ、特に米国は食料についてウクライナ以外の輸入ルートを探ってきた。これらの取り組みにより来年以降(食料やエネルギーの供給やインフレが)さらに厳しくなるとは思っていないが、一方で食料、エネルギーの供給が短期的に元に戻る見通しは立っていない。今後この状態が数年続くという前提のもとで、各国及び各企業は、状況を解消するために努力するに尽きる。日本はレアアースの調達にかつて苦労したことがあったが、現在各企業はレアアースの輸入先を多様化するだけではなく、レアアースそのものを極力使わない技術を開発している。エネルギーについても同じことが起きると思う。ロシアによるウクライナ侵攻を機に、やむを得ずかもしれないが、結果として新しい技術や知恵が生まれる現象自体は歓迎すべきである。

Q:トヨタ自動車や本田技研工業の春闘について、早い段階で満額回答が出ている。確実に気運は盛り上がっていると思うが、受け止めをお聞かせいただきたい。

櫻 田:(賃上げに対する)気運は盛り上がっていると思う。気運は、「気」なので、気が大事である。気運を本物のモメンタム、勢いにつなげていくことが重要だ。(賃金を)払える企業は、目一杯払っている。そうではない企業も無理して可能な限り払おうとしている。(業績が振るわず)どうにもならない企業も、ベースアップは難しくても、せめて定期昇給で、もしくは一時金で(払おうとしている)。各経営者、各企業が本当に必死で努力していることが伝わってくる。問題は、気運の「気」が今年いっぱいで終わらないことだ。今年は出せるけど来年は厳しいという(状態の)企業は、(賃上げの)気運が高まっているので、(今年)賃上げすべきか(という問い)に対して、冷静に考えるべきだと思う。重要なことは持続可能性であり、外的要因があれば別だが、今年は満額回答だが来年はゼロ回答となる、(今年)無理して出してしまい(来年は出せない)ことは起きないようにしてほしい。経営者の説明責任は非常に重要であり、組合がある企業は組合と、そうではない企業は従業員代表と話しながら、定期昇給やベースアップを含めて何パーセント賃上げの回答を出すか、今年は一時金で回答するが来年以降は必ず(賃上げを実現する)と回答するか、今後のモメンタムについて根拠が説明できるようにできたら良い。具体的には、一つ目は、より収益の上がる事業経営をしていきたいため協力してほしいと伝えること(が重要だ)。二つ目は、企業によって違うと思うが、大企業はもとより、中堅・中小企業を含めて、今の日本に必要なのは人材、そして才能の流動化である。人材の流動化が起きている国は、確実に経済の勢いが増す。米国は、これだけ金利が上昇しているにも関わらず、なお失業率が低い。労働市場の需給が逼迫しており、人手が足りていないわけだが、一方で、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)などの大手IT企業であれだけ従業員をレイオフしながら(全体として)失業率が下がっているのは、(レイオフされた労働者を)吸収している企業があるためである。結果として、経済の熱気がさらに高まっていく。したがって、金利について利上げ幅は縮小するが利上げは継続すると(FRBは)言っているが、これは強い(経済である)。日本も資本主義かつ民主主義の国として、同様の状態が起きることが好ましい。人材が流動化し、(労働者が)働きたい企業にそれぞれ就職しながら、失業率は下がらないことが続いていくことが(望ましい)。今年度の春闘において、一番重要なのは、持続可能性はあるか、人材の流動化が起きているか(である)。もちろん、インフレに負けない、(物価上昇率)4%に負けない賃上げ自体が重要かもしれないが、さらに重要なことは日本経済が今後とも大きな課題である生産性(向上)、人材の流動化に向けて一歩踏み出しつつあるかを検証することだ。

Q:次世代半導体の生産を目指すラピダスが、北海道千歳市に工場建設を行うと正式に発表したが、北海道に拠点が置かれることに対する期待や所見を伺いたい。また、5兆円の公費による投資が必要と言われており、今朝の閣議後会見で西村康稔経済産業大臣は必要な支援はすると述べていたが、国の公的支援をどの程度まですべきと考えるか。戦略的な物資であるため、国が積極的に支援すべきか、あくまでビジネスとして民間が行うべきか、考えを伺いたい。

櫻 田:まず(ラピダスが)北海道に投資して工場を建設することは大いに歓迎すべきだと思う。(立地する)地方の経済活性化というレベルの話にとどまらず、北海道でこれだけ大きな投資が行われることは、道内経済にも、北海道に人材をひきつける点でも、大きなメリットがある。それを国が支援することについても、とても素晴らしいことと評価したい。少なくともラピダスが生産を目指す2ナノメートルの最先端半導体は戦略物資になると思うし、背景には経済安全保障上の問題が色濃く関与している。したがって、官民連携という言葉はよく使われるが、これまでとは違い、単に経済を盛り上げるという意味ではなく、安全保障の観点から官と民の連携はどうあるべきか、法律ができつつある中で具体的に試され示されていくケースになると思う。今回の5兆円規模の投資のうち、国の支援がどこまでになるか、まだ正確に決まっていないと思うが、その割合やどの資金をどの会計から出すかを含めて、先行事例となっていくため、多くの企業や他国が注目していると思う。いずれにせよ、新たな概念、フレームワークによる官民連携が初めて試されるケースになると思う。同様のことは、今度はGXでも起きると思うため、大変期待して見ている。透明性の高い官民連携の形が見えてくればいいが、矛盾するようだが、他方で経済安全保障である以上、あまり高度な透明性を求めすぎると、戦略的な意味がなくなるため、その点を含め、今回の事例は大いに注目したい。

(ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に関する回答の補足)
櫻 田:元々米中貿易摩擦、(米中間の)ソフト・ウォーから始まり、ウクライナが(侵攻される)中で、日本国民の経済安全保障を含む安全保障分野への危機感が一気に高まったことは間違いないと思う。高まった危機感を一過性のものにせず、我々の子どもや孫(の世代)でも持続可能性がある安全な良い国をどのように作っていくかという議論を早く始めなければならない。持続可能性という以上は財源の問題が出てくるため、「あれもこれも全部」とはいかない。子育て支援も、防衛費も、社会保障費も、何もかも全部とはいかないため、どこかで優先順位を決めなければならない。財源をどこに求めるかも議論する必要があるが、個人的には、どの分野においても国民あまねく(負担する)という点では、消費税、あるいは消費税のようなものを導入しない限り、持続可能性がある財源とはとても言えないと思う。一方で、計算方式によっては、コロナ対策として100兆円近い財政資金が投入され、その相当部分が赤字国債で賄われているわけだが、それらが使われた結果、どのようなプラスがあったか、使途は何であったかについて説明責任が十分果たされているとはとても言い難い。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」にならないようにきちんとした仕組みが必要と思う。その意味で、以前から本会は説明責任だけではなく、検証を行う機関として独立財政機関が必要であると提言している。(国家予算の)使途についても同様(に持続可能性の観点から重要)であると思っている。

Q:2月22日、経済安全保障分野におけるセキュリティクリアランス制度創設に向けた政府の有識者会議が開かれた。経済同友会は2022年2月16日に発表した『経済安全保障法制に関する意見』の文中で、同制度の導入を提言していた。同制度の必要性を改めてお伺いしたい。現状日本にセキュリティクリアランス制度がないため、日本企業が米欧の企業や大学と共同研究が出来ず、ビジネスチャンスを失っているという認識はあるか。

櫻 田:今回(2022年12月に政府が策定した防衛力整備計画に基づく)防衛費増額によって、結果的に多くのビジネスチャンスが生まれることは否定すべきものではなく、また悪いことでもないと思う。現在は安全保障と経済の境目が極めて分かりにくくなっている。まして最先端技術は、(研究)時点で分かっていなくても、元々は民事で(技術が用いられ)、後から軍事転用できるものが多くある。経済安全保障が(国家)安全保障の中にある以上、その(経済安全保障の)領域が拡大していき、ビジネスチャンス(につながること)はあると考えている。それ自体は悪いことではない。セキュリティクリアランスについては、二つの側面があると思う。一つはご質問の通り、(諸外国と共同で行う)ビジネスの機会を逃さないかという点である。もう一つは、今回のウクライナ侵攻で示された通り、安全保障は実弾を使って破壊行為をすること以外に、サイバーテロ、デジタル技術を用いて敵の居場所を察知して正確に狙うこと、ドローン等の無人(攻撃も含まれる)。(現在の安全保障において)情報の流れは極めて重要になる。同じ価値観を有する他国の中枢や諜報機関が持っている情報を、交換しあえることは非常に重要だと思う。よって、その二つの観点から、セキュリティクリアランス(制度の導入)は(日本に)不可避である。ロシアによるウクライナ侵攻が(もたらした)結果として、国民、企業を含めたあらゆる生活者の危機意識が(日本で)非常に高まっている現状の機会を逃すと、また「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ことになりかねない。セキュリティクリアランスに関して真剣に議論(いただきたい)。(セキュリティクリアランス制度)導入にあたって、障害を克服しようという機運がなくなることを危惧している。是非(政府は)しっかりと進めてほしい。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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