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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2022年12月13日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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冒頭、本会経済情勢調査会の議論を踏まえ、中国経済に関する前回会見の回答を補足した後、記者の質問に答える形で、防衛費増額の財源と内容、NISAの上限額引き上げ、賃上げ、今年の漢字などについて発言があった。

冒頭発言
櫻 田:前回11月29日の記者会見において、中国のロックダウン(都市封鎖)が日本経済および世界経済に及ぼす影響をどう考えるかという趣旨の質問があった。12月12日、本会の経済情勢調査会で、石油、食品、自動車業界の経営者数名に意見を聞いた。一言で言うと、想定以上に影響が大きい。中国の中央と地方では全く状況が異なっており、中央政府がロックダウン解除を正式に表明していない以上、いつ(方針が)反転するか不明であり、地方は全く緊張を解いていない。地方に工場を置いている企業は、従業員を工場に泊まらせ、交代勤務(を実施している)。今後徐々に(ロックダウンが)解除されるにせよ、既に感染者が最高水準に達している中で、さらに(新規感染者が)拡大することも考えられる。従って、慎重に進めざるを得ない。結果として、中国経済はしばらく低調になるだろうし、想定以上に厳しくなるかもしれない。その影響が日本、アジア、世界に広がるということであった。経営者は一様に慎重であり、楽観していない。

Q:2023年度の与党税制改正大綱の議論が大詰めを迎えており、防衛費増額の財源確保に向け、法人税、所得税、たばこ税を軸に増税する案が浮上している。そのうち法人税の負担が他の税目と比べて大きくなると一部で報道されている。所得税は復興特別所得税の仕組みを転用する案が検討されているようだが、代表幹事のお考えを伺いたい。

櫻 田:(2023年度から5年間の防衛費の)総額は43兆円と報道されている。2023年度から2027年度までの5年間について、(現在の防衛費を基準とした額との)差額をどう賄うかに加え、2027年度以降(今年度の国内総生産(GDP)比2%を基準とした場合)年間11兆円程度かかり続ける防衛費をどう考えるかである。国民の安全保障のための支出であれば、国民全体で負担すべきであり、一時的に(財源が)不足するからといって取りやすい税目から取るのは、租税理論としていかがなものかと思う。ただ、現実は今から(防衛財源を)積み上げる必要があり、まず支出の圧縮に努めた上で、(不足分は)暫定的に付加税を課すことはやむを得ない。問題は、法人税は全企業の3分の1程度しか払っていない現状である。防衛費は国民あまねく負担すべきという趣旨に照らすと、理念と実態があまりに乖離している。一部の国会議員が発言されている通り、現在、企業は懸命に賃上げを含めた人への投資、将来に向けた設備投資を進めている中で、水を差す結果になることは間違いなく、慎重に検討していただきたい。ただ対案を出す必要があり、今後も(防衛財源の)議論は必要と思う。一方、防衛省から(48兆円が必要額として)提出され今回決着した43兆円が(なぜ)必要か、(期間内に)執行が実行可能かという議論が全くされていない点を懸念している。例えば反撃能力を念頭に置いた「スタンド・オフ・ミサイル」に相当程度の予算が計上されている。射程距離を数百キロメートルから数千キロメートルに変えるための研究開発を今から行うことができるのか。マッハ10で(飛行する)極超音速ミサイルは探知や迎撃が困難とされており、既に中国は実現したと言われるが、米国はまだ開発途中であり、全く(開発競争に)付いていけていない日本が今後独自に(開発)できるのか等、いくつか(疑問が)ある。研究開発は必要と思うが、対象となるミサイルの種類や分野が広範すぎると思われる。内容の議論を積み上げた結果、本当に(執行)可能なもので総額43兆円が積み上がっているかについて、全く議論がないまま総額と財源だけが議論されており奇妙である。以前から申し上げている通り、防衛費は機密事項もあり、防衛の観点から全てを詳細に公開してほしいとは言わないが、財源の議論が先走っている感じがあり、今ひとつバランスが取れてない。まだ時間はあると思うので、しっかりバランスを取ってやっていただきたい。これまで、コロナ対策(予算)でも予備費を含め執行期間内に使い切れなかったことが数多くある。国民にとって大きな問題であり、予算の策定過程において十分な議論と審査がされていなかったことになる。同じことを繰り返す可能性があるため、そのような意味で苦言を呈したい。

Q:NISA(少額投資非課税制度)の投資上限額が大幅に引き上げられる見通しである。政府の狙いは家計の資産形成の活性化と思うが、代表幹事の受け止めと課題があればご所見を伺いたい。

櫻 田:NISA(の拡充)に関し異論は全くない。今回(非課税期間が)無期限となり、投資上限額も大幅に拡大されたことは大いに賛成だ。今後も進めるべきと思うが、目的はNISA(の拡充)ではなく資産所得倍増にある以上、今回(のNISAの拡充のみで)資産所得が倍増するかと言うと非常に厳しい。日本全体の個人金融資産約2000兆円のうち7割近くが高齢者に偏在していることを踏まえると、高齢者から若い人たち、子どもや孫に資産移転をする方法や一般の若手起業家に資金が渡る方法を取らなければならない。具体的には、高齢者はリスク許容度が低いため、リスクを取りうる投資ができる若者に早く(資産を)渡す必要がある。今回(2023年度の与党税制改正大綱で)個人投資家がスタートアップ企業へ投資した場合は税制で優遇する(見通しだ)が、現在の議論は相続・贈与の分野で踏み込む余地があるにも関わらず躊躇している印象だ。少なくとも新しい資本主義の一つの大きな施策として(NISAの拡充を)捉えるのであれば、与える影響が小さすぎると思う。全国民の了解を得なければできない政策では約2000兆円の個人金融資産を若者に回すことは非常に厳しい。課題が一部残ったとしても思い切った決断が必要だ。

Q: 防衛費増額の財源について追加でお伺いしたい。現在、自民党内で増税を先送りして国債発行で財源を賄うべきという意見が一部で強く出ている。国債発行で賄う考え方について代表幹事の受け止めをお伺いしたい。

櫻 田:返済財源をしっかり議論した上で、国債を発行するのであれば、(選択肢として)必ずしも排除する気はない。どうして43兆円必要か議論がないまま唐突に財源の話になっており、党税制調査会の議論のタイミングと合わせたのか、その前に岸田首相が財源について議論するように言ったからか、(何に使うかという)需要の話があまり聞こえてこないので、やはり説明が必要と思う。そのような議論があった上で、不足分はいくらであり、だから(国債発行すべき)という議論はあってしかるべきである。おそらく今回自民党内で議論されているのは、民間企業に対して人に対する投資、設備投資を含めて投資を求めている中、それに水を差すようなことはしたくないという想いからだと認識している。それも金額次第ということであり、具体論がないまま情緒的な議論が多く戸惑っている。判断材料が具体的に示されていないため、現状良いとも悪いとも言えない。政治の議論が先行している印象を持っている。

Q:物価高が続く中、来年の春闘で賃上げがどこまで進むかが注目されている。円安により海外事業が好調で過去最高益を上げる上場企業がある一方、原材料や燃料の高騰によって苦しい企業も多い。企業にとって賃上げをしやすい環境にあるのか、現状をどのように見ているか。

櫻 田:本会内で会員所属企業の状況を情報交換しているが、本当にばらつきがある。円安で換算益が上がったとしても、円安メリットでは追いつかないほど、インフレによる生産コストの上昇が大きく、非常に苦しんでいるメーカーは多かった。一方、円建ての輸入を契約する企業は、基本的に(為替の)影響を受けないので環境は決して悪くないし、売上が伸びる分、利益もそのまま伸びるため、支払余力がある。従って、状況はかなりばらつきがある。一様に言えるのは、大半の企業経営者は、数十年に一度という未曾有のインフレが起きる中、人への投資という中長期的な生産性拡大の前に、社員の中には本当に生活が苦しい人がいるのでその人たちを何とかしてやらなければならないという気持ちが強い。支払能力に関わらず、可能な限り賃上げを積み上げていきたい機運は、高まっている感覚がある。賃上げの必要がないと言う人は、一人も聞いたことがない。

Q:防衛費増額の財源は、政府・与党内で法人税やたばこ税のほか、復興特別所得税も検討されているものの、金額としては法人税の割合が大きい。法人税が先行して議論されていると感じるか。また、復興所得税なども含まれているがこれは国民で広く負担していると受け取ることができるか。

櫻 田:2027年までの一時的な財源の不足部分を補填するという観点から、本格的な税率の改定ではなく、付加税で対応する考え方は理解できる。しかし、なぜそれが法人税なのか。さらに中小企業の負担を軽減するという議論がある。今後5年間で真にやらなければならないことは、円安時でも対応できるよう日本の中小企業の生産性や世界における競争力を高め、賃金を支払える状態にすることである。中小企業を保護する、しかも中小企業という定義に当てはまれば一律に保護するやり方では、今後中長期的に、分厚い中間層を構成する最も重要な層である中小企業が伸びていく希望を持てない。本当に(経営が)厳しい中小企業には一定の配慮をすべきであるが、定義上中小企業に当てはまる場合一律に負担を軽減するという議論は持続可能性と、本来あるべき分厚い中間層を作っていくという観点で、逆行していると思う。

Q:防衛費について43兆円という数字だけが先に議論されており、その内容が議論されていない。巡航ミサイル対策や、民間企業に対するサイバー攻撃に対しても予算を割くべき等の意見があればお伺いしたい。

櫻 田:どのような費目で43兆円という額になっているか明らかになっていない。民間企業に対するサイバー攻撃の対策費用は防衛費に計上されていないと思う。一方で、海上保安庁の費用は(防衛費に)含まれると聞く。何が防衛費に当たるか定義を明確にした方が良い。また、ウクライナへの軍事侵攻では大砲があっても銃弾がない状況になっていると聞いている。有事の際は銃弾の在庫や生産能力、収容能力が問題となるが、銃弾は法律の定める下、相当厳しい制約で保管しなければならず、そのような施設も必要となる。これらを勘案した上で、43兆円の(防衛費の)予算要求になっているのか。要求している予算を現実的に執行できるのか。しっかりと説明を受けた上で(財源について)議論したいということが多くの国民の声であり、国会でそのような議論をしてほしい。(内容を)全て教えてほしいということではなく、金額の大きな、典型的な費目を確認すれば、今回の防衛費の予算要求が妥当であるか、執行が可能なのかが見えてくる。そのような説明がないまま、意見を求められても論評しにくいというのが正直なところである。国民が置いてきぼりの議論となっている感がある。

Q:防衛費増額の財源に関し法人税を増税する案が浮上している件に関して、「取りやすいところから取る」という発言があったが、従来は所得税が増税の標的になってきた印象がある。消費税、所得税、法人税の3つの基幹税のうち法人税のみ税率が下がってきた経緯もあるが、米国では法人税を上げる動きもある。他方、財界の要望を受けて法人税の租税特別措置が広がった経緯を鑑みて、特別措置を整理縮小すべきとの考え方もある。法人税だけが狙い撃ちをされているという発言の趣旨についてお考えを聞かせてほしい。

櫻 田:(防衛費の財源としての増税について)2023年から2027年までの5年間の不足分をどうするかという議論と、2027年以降、GDP比2%程度を達成した後の税のあり方は異なると考えている。当初5年間の不足分は実態として法人税を支払っている企業が少なく、中小企業を一律に扱うことに疑問があることから、法人税だけを狙い撃ちにするのはいかがなものかと申し上げたが、あくまでも5年間の時限措置(における課題)と考えている。(防衛費は)子どもや孫の世代を含む後々まで負担する必要があるため、2027年以降の(防衛財源の)あるべき税制は、法人を含む国民全体であまねく負担する形が防衛の考え方に沿っており、それは消費税に類するもので対応していくべきと思う。まだ時間があるので、今からでもしっかり議論していただきたい。

Q:今年の漢字が「戦」となったが、感想を一言伺いたい。また、代表幹事の考える今年の漢字についてお聞かせいただきたい。

櫻 田:良いことも悪いこともあったため、印象に残っている(今年の漢字)は、確かに「戦」と思う。良い意味で「挑戦」、悪い意味で「戦争」、その両方を含む意味で「戦」はバランスが取れている。(自身の今年の漢字は)悩んだ末、複数考えた。あってはならない(安倍元首相)銃撃事件が起き、旧統一教会問題、戦争、東京オリンピック・パラリンピックを巡る不祥事もあった。難字だが、「りっしんべん」に「感」、遺憾の「憾」と思う。次に思い浮かんだのが、衝撃を受け、攻撃を受けたため「撃」。過去選ばれた今年の漢字は、全て(画数が少ない)簡単な漢字であり、難しい字はない。「憾」、「撃」は非常に難しい。次に「驚」であるが、この漢字も難しい。せめて来年が明るい年になるよう、今年を夜明け前と捉えて「暁」という字を挙げたい。暗いことや嫌なこともあったが、来年は明るい年になる(期待を込めて)「暁」としたい。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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