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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2022年11月29日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、岸田首相の防衛費増額指示、 資産所得倍増プラン決定、中国でのゼロコロナ政策に対する抗議デモ、内閣支持率低下、新しい資本主義のグランドデザインなどについて発言があった。

Q: 1128日、岸田首相は2027年度に防衛費など関連予算を国内総生産(GDP)比2%にするよう閣僚に指示した。防衛費の財源を確保するため、改めて法人税、所得税の増税案などが出ているが、代表幹事の受け止めを伺いたい。

櫻 田:国民の安全保障を確固たるものにしていく方向性は賛成だ。北朝鮮からミサイルが乱発射される中、一刻も早くという点も同意できる。防衛費GDP比2%という北大西洋条約機構(NATO)が採用している基準を一つの参考値にすることも合理的である。ただし、国民に負担を求める以上はどのような項目を積み上げたら総額いくらになるかについて説明が必要だ。一方、国防の問題であり、ありとあらゆる情報を(政府は)国民に開示せよと要求することは難しく、政府に一定程度(情報開示の)裁量があって良いのではないか。ただ、いずれかの形で(防衛費など関連予算を)監査できる状態にしておくべきであり、その仕組みを担保したうえで、実際に予算が執行された際には、(政府は)考え方と主項目について説明責任を負う必要がある。また、防衛三文書に記載された内容を踏まえて、中長期的に詳細が決まっていくが、財源には様々な意見が出ている。国民全体の安全保障である以上は、応能負担という考え方があって良いと思うが、特定の分野、特定のセクターだけに負担させるのは大いに問題がある。喫緊の課題である防衛予算を赤字国債で調達することも問題だ。防衛の性格上、消費税のように広くあまねく(負担すること)がふさわしい。現段階で消費税、新しい目的税を積極的に導入すべきと言えるものではないが、広くあまねく応能負担すべきと今後も申し上げていく。

Q:1128日、政府が正式決定した資産所得倍増プランは、NISA(少額投資非課税制度)の拡充を柱に、貯蓄から投資へと促している。口座数や投資額の目標も出ているが、恩恵が富裕層に偏るのではないか、日本株に投資するよりも米国株に流れる人が多いのではないか、といった懐疑的な意見もある。こうした点に関し代表幹事の考えを伺いたい。

櫻 田: 新しい資本主義実現会議の分科会で提言された中身は、本会も従来から主張してきたことであり賛成である。個人金融資産は2,000兆円を超えており、かつ高齢者に偏在する事実を踏まえると、「貯蓄から投資へ」の流れを促し、貯蓄から投資、預金から株式へ移すためには、今回の「資産所得倍増プラン」ではスケールが小さい。個人金融資産2,000兆円を流動化させる観点に立った施策はまだこれからであり、最も(効果が)あるのは税だと思う。高齢者はリスク許容度が低く、中長期で見て価値が大きく変動する資産に対する投資姿勢は持っていない。一方、子どもや孫の世代であれば、10年から20年の時間軸で投資できる。高齢者が貯めている資産が、相続や贈与を通じ子どもや孫に移転する際に貯金ではなく投資へ向かうことが確認できれば、税率を下げる等、思い切ったことをしない限り個人金融資産2,000兆円が流動的になるとは思えない。5年間でNISAの総口座数を3,400万口座に倍増させることも様々な手を尽くさない限り実現は難しい。日本人は長い間貯蓄主体であり、固定された考え方はなかなか変わらないため、印象を強く変える施策を出す必要がある。

Q:新型コロナウイルス感染症の封じ込めを図り厳しい行動制限を伴うゼロコロナ政策を続ける習近平政権に対し、中国各地で大規模な抗議デモが起きている。中国で政府の施策に反対するデモが同時多発的に起きることは極めて珍しいと思うが、代表幹事の受け止めと日本経済への影響についてお伺いしたい

櫻 田: 中国国民がマスクをせず顔を出してデモに参加し、「習近平は退陣せよ」と主張するニュースを観て正直驚いた。以前の中国であれば、(抗議デモ参加者は)そのまま牢獄へ連れていかれたと思う。逆に言えば、(今回)公安は手を出すのではなく、身振りで解散せよと示した。推測ではあるが、3期目を迎えた習近平国家主席は、ゼロコロナ政策に対する国内の不満を一定程度発散させることにより(国民の)ガス抜きやストレス解消をさせているかもしれない。またゼロコロナ政策は理想であり現実的にも科学的にも難しいと分かっているため、状況に応じてある程度ゼロコロナ政策を緩和するきっかけを探しているのかとも思う。そうでなければ中国共産党あるいは中国政府からもっと強い表現で(抗議デモに対する)警告や注意が出たはずだ。地方の金融セクターや不動産セクターは相当傷んでおり(金融業界で)かなり不正が増えているので、既に市場は中国経済の成長鈍化を織り込み済みと思う。現在の経済状況よりさらに悪くなるのではなく、中国が以前のように力強く世界経済を牽引するのはしばらく先になるという意味である。かといって、(中国経済が)急速に失速することはないと思う。

Q:中国のゼロコロナ政策に対する抗議デモに関し、全国規模で公然と政府批判が行われることはかつてなかった。今後どこまで抗議デモが広がるか予測できない点は中国経済の新たなリスクになるか、ご見解を伺いたい。

櫻 田: 予測するには情報が少なすぎるが、(新たなリスクになるか否かは)どちらもあり得ると思う。3期目を迎え一定の地位を確立した習近平政権が、国内外に向けかつての戦狼外交のように強く厳しい態度から(変化し)優しく余裕ある姿を見せたいため、軟着陸を目指すことも考えられる。一方、今回の抗議デモが、黄色い傘を掲げ「雨傘革命」と呼ばれた2014年の香港反政府デモのように広がる恐れがあれば、強権発動に出る可能性がある。どちらに振れてもおかしくないという点では予断を許さない。そうならないことを期待するしかないし、ここで強権を発動しても中国の政治や経済にとってほとんどプラスに働かないと思う。希望的観測だが、(今回は)軟着陸しつつ(中国が)より民主的な国家に変容していくことを期待したい。もしかしたらそのきっかけが出始めたのかもしれない。

Q:中国では、ゼロコロナ政策の下、人々が外出し通勤、通学することが難しい状況が続き、各地で大規模な抗議デモが起きたように社会的な混乱も出てきた。中国市場に商品を供給する上で、個別の企業活動にどのような影響が出ているかお伺いしたい。

櫻 田: 大々的かつ明示的な政府批判が出たのは(11月24日夜新疆ウイグル自治区での火災を発端とし)この1週間の話である。この影響がどのような産業、企業に影響するかという議論はまだしていない。既にアップル社製品の製造を請け負う台湾企業フォックスコン・テクノロジー・グループ(が中国の河南省鄭州市に設ける製造施設)で労働争議が起き(従業員と警備員の)衝突が生じた。そういった動きとゼロコロナ政策がもたらすストレスは関連していると思うので、(同様の動きが)広がる恐れはあると思う。そうなると、特定の産業ではなくあらゆる産業に影響する可能性がある。まずサプライチェーンに影響が出る。輸出先としての中国市場は既に大きく縮小しているが、さらに長引くようであれば、(中国の)GDP予測はさらに下方修正となるだろう。また、日本が期待しているインバウンド需要は統計指標を見る限り、ゼロコロナ政策もあり、コロナ前に比べてまだ数分の一である。国別旅行者で見ると、インバウンド需要が見込める中国人(訪日旅行客)がより減少しているため、日本が受ける恩恵は減少している。様々なところに影響が出てきているのは間違いないと思う。今後1~2週間で本会会員に(個別の企業活動への影響を)ヒアリングしていきたい。

Q:中国ゼロコロナ政策下の従業員管理に関して、企業がどのように対処しているか具体例を伺いたい。

櫻 田:今回の反政府デモを含め、(従業員による)暴動や騒動が各企業、特に日系企業にどのように影響しているかは改めて調べてご報告したい。現時点で、個別の案件は伺っていない。

Q:最近のマスコミ各社の調査で、内閣支持率は30%台前半と低迷している。代表幹事の受け止めと、岸田文雄内閣に対し叱咤激励があれば、お聞かせいただきたい。

櫻 田: 国民の一人、生活者の一人として、そして経済人の一人として話をしたい。やはり何より大事なイノベーションと経済成長、それに向けた国民のマインドセットを変えていくこと、これが国のトップの役割であり、これをできるのは首相しかいない。(現在は)新しい首相を選ぶ余裕が十分にある状況ではない。新しい資本主義を掲げる以上、岸田首相は国民が付いていきたくなるグランドデザイン、ビジョンを早く示してほしい。これまでも色々と検討され、具体的に出されているが、グランドデザイン、ビジョン、国の形は、まだ全体像が示されていない。これは、岸田首相の最大のミッションである。さらに、現在日本に迫る危機の一つとして国防、安全保障の問題がある。安全保障の問題は、国内の政権の人気・不人気とは無関係に訪れる。突然ミサイルが降ってくる可能性もある。その意味でも、現在の政権がしっかりしていないと困るし、時間的余裕はない。次に、猛烈な自然災害(の問題)である。 (2021年以降)思いがけないほど(自然災害が続発した)。このようにアップダウンが非常に激しい日本において、自然災害があり、国防の問題があり、そして新しい国の形に変えていかなければならないことを考えると、内閣支持率が上下したからといってやるべきことは変えず、まっすぐしっかり進んでいただきたい。応援という意味ではなく、実際にやっていただきたいという切なる願いである。

Q: 「スタートアップ育成5ヶ年計画」と「資産所得倍増プラン」が決定され、次は来年6月の骨太、成長戦略でフォローアップするスケジュール感と思う。岸田政権は、新しい資本主義について(代表幹事が期待されるほどの)グランドデザインやビジョンを示さないまま先に進もうとしているのではないか。この点について受け止めをお聞かせいただきたい。

櫻 田: もしそうだとすれば残念だ。今回示されたNISAの拡充、iDeCoの加入可能年齢引き上げ、スタートアップへの投資額引き上げは、もちろん大賛成である。遅きに失したとは言わないが、早くやるべきだ。ただ、冷静に考えれば、これは欧米がやっていることに早く追いつこうと言っているだけである。欧米に追いつくことが岸田政権の新しい資本主義であり、グランドデザインであるというならば、とても落胆する話であり、何が「新しい」のかと思う。岸田首相は2022年1月のダボス会議で、日本が新しい資本主義のあり方を国内外に示していくこと、それを簡潔に日本国民にも分かりやすく示していくことを宣言した。立派なスピーチで感激した。しかし、現在行われていることは具体的ではあるが、欧米との差分を埋めていくというこれまでの成長戦略と何も変わらないものだ。これはグランドデザインとは呼べないだろう。(今後に)期待している。

以 上

(文責: 経済同友会 事務局)


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