ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2022年11月4日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

動画を拡大する

PDFはこちら

記者の質問に答える形で、東アジア情勢、総合経済対策、走行距離課税への自動車税制の見直し案、先端半導体の対中輸出規制などについて発言があった。

Q:北朝鮮によるミサイル発射の挑発行為が続いている。ウクライナ問題、台湾情勢、それから朝鮮半島。経営者にとって、ビジネスを進める上での不確実な危険要素が次から次に増えている。現在の東アジア情勢に対し、経済同友会はどのような懸念を感じているのか、代表幹事はどのような対策を政府に求めたいかを伺いたい。

櫻 田:一朝一夕にはお答えできない大変重要なテーマである。「経済安全保障」では経済と安全保障が表裏一体の問題であると考えられているが、本来はもっと強い関係にあると言える。経済は、安全保障という大きな枠の中の一つの要素であり、安全保障を前提とした上で成り立つ。しかし、逆に、経済が成り立てば安全保障も話が進むということにはならない。残念ながら、民主主義の国も含め、現在の世界のキーワードは「分断」である。米国はもとより欧州でも「分断」が起き始めており、日本で「分断」が起きない保証はどこにもない。このような中では、むしろ安全保障を前提とした上で経済活動が成り立つ。今回、北朝鮮はミサイルを連射している。これは米韓合同軍事演習に対する警告という見方もあるが、大きく捉えれば、核兵器を備えていることを北朝鮮の国内外、とりわけ米国に対して宣言する(狙い)があり、これに対して韓国も一歩たりとも譲るつもりはないとしている。このように安全保障に関するリスクの現実性が非常に高まっている中で、経営をしていかなければならない。ここでは、経済と安全保障が相互に補完される経済安全保障といったことではなく、経済活動は安全保障を前提として成り立つものと考えていかなければならない。具体的に(取り組む必要がある課題)は、サプライチェーン問題の見直しである。例えばエネルギーや先端技術、食料など、安全保障に関わるものを一つの国だけに依存するリスクを回避する必要がある。国民全体、ステークホルダーである生活者全体で、この問題を自分ごとと捉えなければならない時代に入った。危機の現実性が高まったのである。さらに、日本は地震というリスクも抱えている。このことをしっかりと頭に入れ、安全保障のリスクに負けないように挑戦していくことが必要である。

Q:先般、閣議決定が行われた総合経済対策について、櫻田代表幹事は当日発表されたコメントにおいて、電気代・ガス代のいわゆる抑制策は家計負担を緩和する一方、財政的に持続可能ではないと指摘された。円安によるデメリットがメリットを上回っていると言われる現在の状況下で、財政支出による家計支援をどこまで続けるべきか伺いたい。

櫻 田:本会も私も、強い問題意識を持っている。端的に言えば、現在の状況で何らかの財政支援が必要かと聞かれれば、答えは「イエス」である。そして、焦点が物価(上昇)に集まってきている中、物価について(対策が)必要だと思う。ただし、一方で、相対的な問題として、他の先進国のエネルギーや食料を含めたインフレと財政の状況を(日本と比較して)見たときには、明らかに(総合経済対策の規模は)過大であるという印象を持たざるを得ない。具体的に言うと、今般、事業規模で70兆円を超える支援を打ち出し、そのうち真水(と言われる財政支出額)は39兆円である。これは、昨年(11月)の「コロナ克服・新時代開拓のための緊急経済対策」の事業規模79兆円よりも若干小さいけれども、今年4月に閣議決定した「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」の(事業規模)約13兆円と比べると、明らかに異常な大きさになっている。13兆円が70兆円に膨らまざるを得ないロジックは何なのかについて、私自身、今一つ腑に落ちておらず、理解はまだできていない。(事業規模70兆円に拡大した理由は)色々あるだろうが、今回の(総合経済対策の)五つの柱の中に色々な政策(が盛り込まれており)、新しい資本主義(の実現に向けた)、主に「人への投資」についても配分額が示されているが、その(柱の中の)一つひとつ(の施策)については、まだ具体策が出ていない。そのため、予備費の5兆円を含めて、五つの柱のそれぞれに何兆円を使うかは示されているものの、その兆円単位が何の(施策や事業)に支出されるのかはまだ明らかになっていない。明らかになっているのは、これまでと同じやり方・手法で支援を行うエネルギー価格(抑制)を含めた物価対策であり、これ(の財政支出額)が12.2兆円と(他に比べて)圧倒的に大きい。同じ手法による物価対策を継続し、規模をさらに膨らませたことは分かるが、それを良しとしても、いつまで継続するのかという(疑問が生じる)ことになる。(財政支援により)マーケットメカニズムが阻害されて機能しにくくなることははっきりしているため、Exit(するための出口戦略)をどうするのか、いつになれば(経済状況が)どうなったら止めるのか、そのときに生じる駆け込み需要にどう対応するのか。しかも、消費者に直接ではなく卸売業者に対して行っている支援であるため、どういうショックがそれぞれの卸売業者や消費者に生じるのか(についても検討する必要がある)。つまり、Exitは難しく、(財政支援が)続けば続くほど難しくなってくる。このことについて、国民に対するメッセージはほとんど出されていない。(国民が財政)支援に慣れてしまったとすると大変(な問題)である。(総合経済対策の)具体的な内容が分からず、これだけ大きな(規模の経済対策を必要とする)リスクを日本経済が抱えているのか、(総合経済対策で行う施策が)将来に向かってどういうプラス(の経済効果)を生むために必要な対策を用意したのかといった説明がまだされていないことが心配である。もちろん、かねて申し上げている財源にも全く触れられていない(ことも心配である)。

Q:ハイブリッド車や電気自動車(EV)の普及によってガソリン税の減収が続く中、政府税制調査会では、道路の維持費を賄う財源として走行距離に応じた課税について議論を行っている。鉄道のない地方では大きな負担になると思うが、こうした課税の導入が検討されていることについて、お考えをお聞かせいただきたい

櫻 田:税は、国の仕組みの根幹をなすものである。(財源の)これがなくなるのでここを(新たな財源に)という部分的な手当をしようとしているように見える。岸田文雄政権の一丁目一番地の政策である「新しい資本主義」において、どういう国を作ろうとしているか、政府の言うグランドデザインの中で、税はどのように位置づけられているのかという議論がまだ(足りて)ないと理解している。ご案内の通り、ガソリン税を含めて、石油関連製品に関する税金は二重三重になっているという議論がある中で、これについての言及がないまま、ガソリンの需要が減っていくので、電気(自動車)では(ガソリン税を)取ることができないから(代替財源を確保する)といった非常に局所的な議論を、新しい資本主義のグランドデザインに対応する税体系の議論がないままに行っているのは、(検討の順序が)かなり違うのではないか。その前にやることがあるのではないかと思う。同じようなことが、防衛費に(関する財源の手当て)ついても当てはまる。(防衛費の増額まで)時間がないので、新しい税を作る前に、今ある税体系の中で取れるところから取ろうという風に(手当てをしていると)言われても仕方がないような議論の進め方をしていると感じる。(防衛費を増額する)必要性は明らかであるが、国民のみならず企業を含む全ての日本の生活者が、(財源手当てについて)それで行こうと簡単に合意できる話ではない。大変難しい議論になると思うが、やらなければならないのであれば、今からでも、(どのように財源を手当てすべきかという)大きな課題を乗り越えて、結論を出さなければならない。(そのためには)早いうちから、生活者たる国民や企業に対して(グランドデザインに対応する税体系について)説明を行うべきである。それがないままに、各論やテクニカルな話で何とか財源を捻出しよう、デコボコを埋めようと映っても仕方ないような論議の進め方であり、正直言って残念だ。

Q:法人税を引き上げ、その税収を防衛費の財源として充当する検討がされているが、そうした議論が行われていることが、取れるところから取ろうとしているように映っても仕方がないということか。

櫻 田:今の日本の経済成長率と財政赤字の状況を念頭に置いた上では、防衛費や社会保障費が足りないことははっきりしている。足りないところは増やさなければならない。そのためには、経済成長で増やすことと、実額や(税)率(の引き上げ)で増やすことの、二つしか(増収を図る)方法はない。早くやらなければならないし、それは新しい資本主義のグランドデザインの一つと考えている。新しい成長から生まれる税収、新しい分配から生まれる税収、あるいは(総括提言「『生活者共創社会』で実現する多様な価値の持続的創造―生活者(SEIKATSUSHA)による選択と行動―」で提唱している)新しい体系の寄付など、財源が増えていくための議論を、グランドデザインに関する議論(の中で)行わなければならない。揮発油税(の減収)や防衛費という需要が先にあって、その財源をどこから捻出するのかという(検討の)手法はこれまでもあり、現実的だと言われるかもしれない。しかし、それでは「新しい資本主義」はおそらく実現できないし、税を負担する生活者、国民・企業からは、それなら仕方がない(ので課税に応じよう)という納得感を得られないと思う。

Q:電気自動車に対するいわゆるエコカー減税に関して、普及促進のための減税は見切りをつけ、車体重量が大きい電気自動車の道路への負荷を賄うために税金を課すべきとの意見が政府税制調査会の有識者から示されており、自民党税制調査会の宮沢洋一会長も議論は避けられないといった所感を述べている。新しい資本主義の中のグリーントランスフォーメーション(GX)に逆行する動きとも見えるが、どのように考えているのか伺いたい。

櫻 田:(税負担を求める議論である以上、)全員が喜ぶことはない(問題である)。現時点では、喜ばない国民が多いと思われるが、一方を立てればもう一方が立たない以上、多くの軋轢や摩擦が生じるのは当然だと思う。ただし、(道路)インフラの維持・向上を進めるために税が必要であることは間違いない(中で)、今後(税収が)減っていくかもしれないガソリン税についてどう考えるか(は重要である)。この点については、以前から申し上げている通り、目的は(二酸化炭素排出量の)ネットゼロ(の実現)であって、内燃機関を無くしてしまうことではない。同時に、日本経済全体にとって、色々な業界がある中でも(自動車業界が)恐らく最大の雇用者を抱えている業界であるため、単に経済・産業構造の転換を慎重に進めるという視点ではなく、積極的な内燃機関の活用による日本らしいネットゼロの達成方法を模索するべきとの考えを、依然として私は支持している。電気自動車を世界的な(普及促進の)流れの中で導入すること自体には反対していないが、(予算配分の)優先順位として、ただでさえ不足している税財源を電気自動車導入に積極的に充てるべきか、よく議論した方が良いと思う。本当に国民が(電気自動車の普及を優先すべきと)思っているのか。(日本は)他国と違って自然災害が多発する国であり、(9月に米国フロリダ州を襲った)ハリケーン「イアン」では、塩水の影響かもしれないが、一度浸水した電気自動車を使用すると、簡単には消火できない火災が発生する(恐れがある)ことも分かってきた。こういう中で、内燃機関やその技術に基づいた限りなくネットゼロに近づく技術の開発を、今から諦めてしまうべきではないと思う。そのためには政策と財源が必要となってくるため、拙速に結論を出さず、どこに(税財源を)配分すべきかについて議論し、生活者である国民の理解を得るべき大きなテーマだと思う。新しい資本主義に基づく新しい日本を創るにあたり、税財源をどうすべきかについて、もう少し国民・生活者の議論があって然るべきだ。簡単ではないことは分かっているが、専門家集団の議論だけに頼って新しい国づくりを進め(た結果)、後に議論が足りなかったと言われるよりも、(国民・生活者の納得を得る努力が)大事であり、(税財源のあり方は)しっかりと議論すべき(テーマ)だと思う。テクニカルな議論に偏らない方がよいと考えている。

Q:米国商務省は先端半導体技術の対中輸出規制を発表し、半導体そのものだけでなく、人材等も対象に含め、日本など同盟国に追随するよう求めている。対中規制が幅広く強化される中で、中国経済、日本企業への影響をどのように考えるか。また、日本政府にどのような対応を求めるか、お考えを伺いたい。

櫻 田:安全保障(の対象)が経済面に広がり、経済安全保障という新しい概念(が生まれた)。まず日米同盟が(日本外交の)基軸であると思っている。力による(一方的な)現状変更から、自由で開かれた(インド太平洋)地域を守っていく上で、日米同盟だけではなく、QUAD(日米豪印4か国)をはじめとした同じ価値観(を持つ同盟国・友好国)が必要と思っている。従って、(対中半導体輸出規制の)方針や方向性は反対すべきものではなく、賛成である。ただ、今後半導体そのものや人材について、より細かい定義がなされると思う。最先端半導体が2ナノメートルと言われる中、(規制対象の)12ナノメートル(の半導体)は現行技術に近く、かなり厳しい(規制である)。最先端技術はともかく、12ナノメートル(の半導体)技術が中国等に渡ると危険かは分からないが、規制すべき対象の製品、人材について、このような場合は駄目という(具体的な)形(の規制に)にしなければならない。企業経営には予見可能性が高い方が良く、後で「それも対象なのか」という事態にならないようにしてほしい。国防に関わるため、全て事細かに(規制内容を)公開せよとは言わないが、可能な限り日米でまず対話を進めてもらい、日本(企業)にとって致命的な制約にならないよう、政府にやってもらうしかない。(日本政府は)既に考えていると思うが、民間(企業)の状況をよく理解いただきたい。どの技術であれば(経済的)制約がないか、(反対に)どの技術が業績に大きな影響が出そうか、実務的に難しいかをさらにヒアリングした上でやっていただきたい。人材も同様であり、半導体技術は非常に広範囲に及ぶため、どのような技術を持っていったらいけないかをしっかりと(日米間で)詰めていただききたい。方向性はおかしくないと思うが、今後細部の詰めにあたり、実務的に大きな影響が出ないようにしてほしいと申し上げたい。

以 上

(文責: 経済同友会 事務局)


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。