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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2022年10月4日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、岸田首相所信表明演説、円安、財源、札幌市の冬季五輪招致、法人税引き上げ案、北朝鮮ミサイル発射、岸田政権発足1年などについて発言があった。

Q : 昨日臨時国会が開会した。岸田首相は所信表明演説の中で、世界規模の物価高と、安全保障環境の悪化などについて国難であると指摘した上で、日本経済の再生が最優先課題であると表明した。中でも、物価高と円安への対応、構造的な賃上げ、成長のための投資と改革の三つを重点分野として取り組むことを打ち出したが、受け止めをお聞かせいただきたい。

櫻 田 : 所信表明演説の内容自体には全く異論はない。大事なことは、(取り組むことの)具体的な中身と、それを実行する手法(である)。さらにミクロの足元の対策と、岸田首相が常々言及している「新しい資本主義」の関係を明確に分かりやすく説明することである。所信表明演説の中でそうしたことについて明確な説明がなく、どちらかと言えば喫緊の課題である物価高への対応が中心であった。足元の課題も大事であるが、今起きているあらゆる経済、社会現象(を受け止めた上で)、これからの日本をどうしていくのか、「新しい資本主義」によってどのような国を作ろうとしているかについて、岸田首相自身の言葉で、より明確な力強いメッセージを発信いただくことを期待している。本会は(近々発表予定の)「生活者共創社会」の中で新しい日本の姿、それを実現するための一つの手法を描きたいと思っており、あらためてご説明したい。

Q : 先日24年ぶりに、政府・日本銀行は円買い介入を行った。昨日、1ドル145円の水準に戻ったが、今の水準は企業にとってはかなり厳しく、デメリットが圧倒的に多い状況だと思う。日本銀行に打つ手がないことは理解できるものの、一方で、財政政策に頼るとしても、財源の議論がないことが一番心配だと代表幹事はかねてより指摘されてきた。補正予算の話も既に出ているが、財源の議論を深めていくためには、どのようにしていけばよいか。経済同友会から政府等に要望していることはあるのか、円安に絡めてお考えをお聞かせいただきたい

櫻 田 : 本会は、財政と持続可能性と社会保障の問題は表裏一体(と認識している)。それ以外にも、教育や、昨今では特に安全保障の問題で財政負担が一層増すことははっきりしており、財源の問題を避けて通ることはできない。本会は以前から、サステナブルな財政状態に持っていくために消費税率を少なくとも19%程度まで引き上げる必要があると試算の上発信している。ただ、当時の試算は安全保障、つまり国防の強化やパンデミックを含む国難、危機に対応する資金は想定していない。それらを考えるとさらに財源が必要になる。(2020年度は)補正予算が第3次まで積み上がった。また(最近では当初予算案も)100兆円(超えが)常態化してしまっている中で、今回また大規模な補正予算の積み増しがあるようだ。これまで(コロナ禍の前まで)の補正予算の編成は数兆円程度(であり)、それでも補正予算の割合としては大きい。補正予算が桁違いに多くなっている中で財源について依然として議論されていないばかりか、(議論)することを意図的に回避しているように映らなくもない。こうした状況を大いに懸念している。今回英国で(ポンドが急落した)例は日本に警鐘を鳴らしたのではないか。英国は日本ほどの財政赤字ではないものの、財政黒字ではない中で、英トラス政権と中央銀行が互いに逆の方向に加速したように映ってしまい、結果、ポンドが(対ドルで一時的に)37年ぶりに暴落してしまった。(この問題で)言えることは新政権として減税を打ち出したトラス首相が、財政をどのように改善していくか触れないまま減税に踏み切ったため、財政規律に関して金融市場が警鐘を鳴らした(ということである)。(ポンドの急落で)慌てて富裕層の減税を撤回すると表明した途端(対ドルでポンドが)元に戻ったということなので、財政規律に対する立場がぶれると為替が狙われることを日本も他山の石としてしっかりと踏まえておかなければならない。現在まだ(円は)暴落にはなっていないが、中央銀行も政府も財政赤字を課題として認識しており、それを解消しようとする意欲、能力があり、(財政規律の維持に対する)実績を少しずつ作っているという三つが揃っている状態が続いているから(円の価値が)保たれている。今のように、財政に負荷のかかることを進んで先に決めて、財源をどこに求めるかについて本格的に議論していない状態が続けば、金融市場は(財政規律の維持に)本気か、大丈夫かと思わないとは限らない。そうなると円は狙い撃ちされる可能性があることを英国のポンド(の暴落)は示したのではないか。今の円安は、一般的には(日米)金利差によると言われているし、私も第一の要因はそう思っているが、国力や円の価値を必死で守るという日本の態度に疑問が出てきたときは、単に金利差だけでは解消できない。一方で金利を上げればいいという議論があると思う。もちろん金利を上げることで経済が減速するため、弱りつつある日本経済に対してはマイナス(に働く)かもしれないが、円の暴落よりは良いのではないかという見方がある。しかし日本銀行が政策金利として使っている無担保コールレート(オーバーナイト物)、短期金利は、2004年以降20年近くも0.5%を超えていない。金利を上げると言っても、それを1%に持っていくことは不可能だと思う。そうだとすれば、金利を上げればいいという議論もできず、八方塞がりの状態である。やらなければならないことは、日本の国力を回復させ、競争力を上げるために何よりもまず生産性と収益力を上げることである。そのために目先の経済対策より日本経済が持続的に力強くなるための方策を、国民や民間企業に真剣に投げかけて一緒に考えていくことが大事であり、財政に頼って何十兆円というカンフル剤的な資金を注入することが、結果として良いことになるとはとても思えない。

Q : 札幌市が2030年冬季オリンピック・パラリンピック招致を目指して活動している。市民の支持拡大や東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー選定をめぐる汚職事件の影響など、さまざまな課題がある。札幌で冬季オリンピック・パラリンピックを開く意義や経済的なメリットをどのように見ているか。

櫻 田 : 単純に経済効果を試算すると、(五輪開催は)マイナスよりプラスが大きいと聞いている。しかし、単純な経済効果だけ(考えれば)良いのかという議論(がある。)今回(東京五輪で)汚職事件が起きて、国民はがっかりしている。オリンピックで経済効果を得て浮上する(といった)カンフル剤のような(一時の)刺激で日本経済を持続的に引っ張ることはできないため、国民、何よりも(地元の)道民、市民が是非やろうという気持ちになることが大事だと思っている。現時点ではタイミングがあまりにも悪い。札幌市が目指す2030年冬季オリンピック・パラリンピック開催に関して、道民で諸手を挙げて賛成という方は必ずしも多くないと理解している。その状況が変わることが(開催の)大きな条件になると思う。日本が成熟した経済になった以上、日本経済を活性化する、日本を知ってもらう意味でのオリンピック(開催による経済)効果は必ずしも求める必要はないと思う。地元(に住む)人たちが是非(やりたい)という気持ちが必要だと思う。

Q : 防衛費増額の財源として法人税を引き上げるという案が一部で浮上している。代表幹事の受け止めをお聞かせいただきたい。

櫻 田 : 何のための防衛かというと国民のための防衛であり、国民全員から負担能力に応じて徴収するのがあるべき姿だと思う。そもそもなぜ急に防衛費(増額の議論が進んでいるの)かと思っている。(現状)5兆4,000億円(の防衛費)を国内総生産(GDP)比2%に増額すると10兆円超になるが、防衛費以外に社会保障や教育(に関する費用)はどうするのか。各分野(で必要な)費用がバラバラに議論されていて、優先順位もなく、国民の間で議論されていない。防衛費、教育費、社会保障費、炭素税(などの議論を)個別に扱うべきではない。「新しい資本主義」という(枠組みの)中でどのような国や社会を作りたいのかという議論があり、抽象的な議論は必要なく(具体的に)財政をどれくらい健全にしなければならず、そのための負担をどのように求めていくかを政府は提案すべきだと思う。議論もなくとりあえず防衛費が必要なので(法人税を引き上げる)というのは、筋が通った話とは思えない。

Q : 本日北朝鮮が弾道ミサイルを発射した。代表幹事の所感を伺いたい。

櫻 田 : 良くないことだと思うが、慣れてしまうことは怖い。金融市場は反応せず、政府は「(北朝鮮に対して)最も強い表現で非難(した)」と(松野博一官房長官が)声明を発表したが、段々(北朝鮮から弾道ミサイルが発射されることに)慣れてしまい、仮に設計ミスやロケット(エンジン)の不具合によって日本本土に落下しそうなことが分かった際に、どのような手段があるか(多くの)国民は分かっていない。迎撃ミサイル(を瞬時に命令できる)防衛システムがあり、(日本に弾道ミサイルが)落下する前に撃ち落とせるという(政府の)説明があれば安心する。技術的に最先端を行っているとは思えない国のミサイルなので、これだけ(発射実験が)続くとそのような(設計)ミスもあるかもしれない。フェイルセーフ(故障や誤作動、誤操作は起きるものだという前提で、安全に制御するシステム)のように、万が一のことがあっても国民を守る仕組みができていることを政府が説明すれば国民も安心する。悪い慣れができてしまったのは、危険な兆候だと思う。

Q : 今回北朝鮮から発射された弾道ミサイルは5年ぶりに日本列島上空を通過したが、安全保障や防衛費に関する議論に影響を与えるか、代表幹事の考えをお聞かせいただきたい。

櫻 田 : (弾道ミサイルが日本上空を通過し)Jアラート(全国瞬時警報システム)が鳴るのはやはり怖い。昔のように空想の範疇ではなく、身近な自分ごととして国民が国防や安全保障を捉えはじめた。もちろん(ロシア・)ウクライナ戦争や台湾をめぐる米中対立問題もあり、さまざまな意味で日本の安全保障を自分ごととして捉えざるを得ないことが起きている。そのうちの一つとして、北朝鮮のミサイル(発射実験の)乱発は、安全保障や防衛費に(関する議論に)大きな影響を与えると思う。

Q : 本日、岸田政権が発足1年を迎えることについて、評価をお伺いしたい。

櫻 田 : 岸田政権が誕生する前から、日本は徐々に長い坂を下っている状況だ。令和の年こそ日本が再起するラストチャンスだと言って、経済同友会の幹部役員とさまざまな議論をしてきた。(経済同友会は)世界から見て「いて欲しい国、いなくては困る国、日本」の(実現の)ために、どのようなことをやっていけば良いかを議論し、提言してきた。岸田政権が誕生した際に「新しい資本主義」を提唱された。今年1月のダボス会議で、岸田首相は全世界のリーダーに向かって、日本はこれから「新しい資本主義」を作り上げ世界に発信し、日本の国民にも分かりやすく示すと力強く宣言した。私は大変感動して(この演説を)聞いていたし、今も期待している。「新しい資本主義」の全体像が(今後)日本をどのようにしたいかは(岸田政権発足から)1年で明確になったとは思わない。(「新しい資本主義」の)グランドデザインも同様で、すぐ実施すべきことが含まれた重要な政策の集合(体)であるが、どのような国を作ろうとしているのか、(それは)どのような素晴らしい国なのか、何が新しく今とどのように違うかを岸田首相からもう少し説明いただきたいと思う。今のままだと、欧米や先進国に対して劣後しているところを埋め合わせ、何とか追いつき、可能であれば一部を追い越していこうということだ。具体的に示されることを大いに期待している。

以 上

(文責: 経済同友会 事務局)


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