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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2022年9月13日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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冒頭、『国際水準の水際対策で将来の観光立国実現への布石を』を発表した。その後、記者の質問に答える形で、新型コロナウイルス感染症水際対策、未来選択会議第6回オープン・フォーラムでの議論、為替、安倍晋三元首相の国葬、英国エリザベス女王の逝去、旧統一教会問題などについて発言があった。

冒頭発言

櫻 田:本日、『国際水準の水際対策で将来の観光立国実現の布石を』を発表した。9月7日に政府が水際対策の緩和を決定したが、最近の一部報道によると、10月にさらなる緩和を実施する動きが見られ、大いに歓迎したい。そうは言っても、一律に、直ちに実現できるかは不透明な部分もあるため、(緩和に向けたモメンタムが損なわれないよう)この機を逃さず、他の先進国並みのグローバル基準に早く合わせることで、円安の数少ないメリットを最大限に生かす意図もあり発信した。既にビザ取得(の免除)や入国者数の制限(解除)、個人旅行の解禁なども(政府において検討の)俎上に載っているようなので、10月を待たず可及的速やかに(実施してほしい)ということである。今後、本件に関連する観光再生戦略委員会委員長の伊達美和子副代表幹事、規制・競争政策委員会委員長の間下直晃副代表幹事を筆頭に、首相官邸や自由民主党などに赴き、働きかけを強化していきたい。

Q:ご説明いただいた要望書には、水際対策の緩和が欧米と比べて不十分とあるが、会員企業、特に観光産業からどのような声が上がっているのか、また、政府が10月にも入国者数の上限を撤廃する方向で調整に入ったとの報道もあるが、こうした動きをどう評価するか、お聞かせいただきたい。

櫻 田:一つ目は、インバウンドの観光客の方々がどの国に行くか選択をするときに、日本に(行くに)はビザが必要、あるいは、さまざまな事前検査があるなど、面倒だ、手間がかかるというイメージが、二の足を踏ませるケースが多いようだ。したがって、そのようなイメージを早く払拭しなければ、日本に行きたいが面倒なので別の国にしようというところがあるので、早く改善したい。二つ目は、会議やコンベンションなど、MICE(Meeting, Incentive Travel, Convention, Exhibition/Event:多くの集客交流が見込まれるビジネスイベント)についても、日本での開催をもっと積極的に働きかけて、来年のG7広島サミット開催に向けた機運を高めていきたい。この夏の訪日旅行者数は、コロナ禍前の数分の1にすぎないため、関連業界の皆様は大変苦しんでいる状況で、一刻も早く(水際対策の緩和を)という点は、切実な思いである。9月7日の(緩和された内容)ではまだまだ不十分であり、入国者数の上限と個人旅行の制限などを(他の)先進国並みに全て撤廃し、コロナ禍前の状況に一刻も早く戻してもらいたい。経済と感染症対策は常に両立するものとして考えていかなければならない。ウィズコロナがこれからもずっと続くという前提で、経済社会(活動)を継続していく必要がある。

Q96日に開催された未来選択会議第6回オープン・フォーラムでは、アンコンシャス・バイアスを起点に議論が展開され、総括で、櫻田代表幹事は、政府(の施策)を待つことなくダイバーシティを進める重要性について指摘された。政府の施策で遅いところ、足りてないところはどのあたりかということと、当初、(未来選択会議の準備会合メンバーの間には)アンコンシャス・バイアスを起点に議論を行うことに反対意見もあったようだが、その背景や議論を通じて得られた気づきをお聞かせいただきたい。

櫻 田:(政府の施策を)待っていられないという点について、政府の立場からすれば、(ダイバーシティ推進を)日本全国の(国民)運動にする、あるいは、ガイドラインのようなものを示してダイバーシティ(の進展度合いなど)について積極的に開示するように(企業に働きかける)ということになると思うし、一番大きな点は、労働法制など法律を見直していくことだと思う。それはそれで大事であるが、そういったことを(政府が)やらなくても、アンコンシャス・バイアス(への理解)あるいは、本当の意味でのダイバーシティの推進は、既に今の法律(やルールの枠内)で、経営者がやる気になればできるはずである。そこをまずやろうと(いうことである)。そのために、各経営者は、我が社・我がグループで、いつまでにこうしていきたいという目標を、できれば数値を含めてしっかりと発表していくことができるのではないか。このテーマを選ぶにあたって(準備会合では反対意見もあったが)、閉会時には「やってよかった」と(発言が)あった。(会議開催前に)アンコンシャス・バイアス(の議論をしよう)となったときには、バイアスなのかそうではないのか、言わば神学論争に陥ってしまう(懸念があった)。重要課題に対して論点や対立軸を提示することを旨とする未来選択会議として、それらが明確にできないのではないか、テーマが抽象的すぎるのではないかと心配した。実際にやってみたら、思いがけず、かなり具体的で、建設的な提案があり、これからも(こうした議論を)やっていきたいというふうに変わったと思う。議論を通じていくつかのキーワードが出されたが、はっとさせられたこととして、ともすると、(ダイバーシティ推進は)女性の社会におけるリプレゼンテーション、社会進出ということになるわけであるが、若者世代から、そうではなく、男性の家庭進出が遅れていることが最大の課題で、論点・立論を変えて、この問題を捉えるべきという発言があった。大変印象的であり、近々発信予定の「生活者共創社会」においても、日本の経済社会の活性化、新しい社会作りの中で、「男性の家庭進出」を、キーワードとして使いたいと思った。こうしたことをはじめ、さまざまな成果を得られた会議であった。

Q:目下の円安の状況をどのように評価しているのか。日本の政府や日銀が金融政策などの諸政策においてどう対応するべきか、所見を伺いたい。

櫻 田:全体的にみて、円安は日本経済にプラスになるとは言える状況ではない。理由は経済構造が変わったからである。これまで為替は、予見可能性が高く落ち着いていることが一番良いとされていたが、明らかに最近の経済同友会内の議論では円安がデメリットになっているという企業が多い。円安の原因・背景は日本の低金利にあり、裏側には(各国の)インフレが影響しているとすれば、インフレの収束と金利の関係が注目されるが、先日、米国ワイオミング州ジャクソンホールでの経済シンポジウム(通称:ジャクソンホール会議)でパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は、米国・FRBはインフレファイターとしてのスタンスを貫くと発言した。それまで、米国や世界のマーケットは、景気を冷やしすぎるオーバーキル状態になる前には利上げを止めるはずだと思っていたが、その考えが裏切られた状況である。円安にメリットはなく、(円安が進んでいる)原因が金利にあるとすれば、日本銀行も金利を反転させる必要があるようにも思うが、ECB(欧州中央銀行)はすでに一旦金利を上げることを宣言したものの為替が(ユーロ高の方向には)戻っていない。これはユーロ圏でもドル独歩高が起きているからである。同じことが日本円についても起こりうるであろう。金利を反転させたからといって円安が是正されるとは限らない。円安に対する打ち手がない中で、低所得者を中心にインフレに困っている方々に対して短期的に(財政)支援することは反対しないものの、財源や回収方法について何ら議論がされていないことが非常に心配である。先進国の中でこのような財政状況であるのは唯一日本だけである。結論としては、打ち手はないので頑張るしかない。企業は生産性がどうすれば上がるかということを考え、また円安の効果で利益を得た企業はそのメリットを受けた分を下請け企業等に還元していくことも一つの手としてあるだろう。ただし、これは政府が関与する話ではない。

Q安倍晋三元首相の国葬について世論調査等でも賛否が分かれているが、代表幹事の考えを伺いたい。また、もし招待状が届いた場合には出席されるか。

櫻 田:安倍晋三元首相に対して、弔意を表すことについては賛成である。また、国葬として行われることについても、私個人としては反対していない。(岸田首相は)国葬に関わる費用について可能な限り事前にしっかりと説明をした上で、国葬が終わった後にも結果を説明するとのことなのでその報告を待ちたいと思う。少なくとも新型コロナウイルス感染症対策のように費用の用途を明確に説明しきれないことがないようにしてもらいたい。また、もし国葬に招待された場合は、私のスケジュールが調整できるようであれば、ぜひ出席させていただきたいと思っている。

Q:先ほど代表幹事から「『男性の家庭進出』をキーワードとして使いたい」という発言があった。96日に開催された未来選択会議第6回オープン・フォーラムの中で出た発言とのことだが、どのような点で遅れていると感じるか。

櫻 田:(未来選択会議第6回オープン・フォーラムの中で)アンコンシャス・バイアスというテーマで出てきた(際の発言である)。子どものアレルギー対応の食品に力を入れている企業が、その取り組みについて「アレルギーのお子さんをお持ちの『お母さん』達から評価いただいた」と紹介していたという話が披露され、食事を用意するのは母親となぜ決めつけるのかという点から(議論が)始まった。このように、日本全体にアンコンシャス・バイアス(が存在する)。育児は女性がするものと(決めつけている)。授業参観についても、(周囲から)「ママが来てくれないのか」(と言われる)。世間一般が女性に(家事や育児を)期待することが普通になっていて、そこに男性が(参加する)と「えっ」と(驚かれる)。多くの場合、母親が家事や育児と結びつけられている。理由はさまざまであるが、一番大きな理由は、父親が、家事や家庭のマネジメントに積極的に参加していないからである。母親にも仕事があるにも関わらず、なぜか父親だけ、「俺には仕事がある」と言ってもおかしくないとされる。日本は人手不足であるだけではなく、女性の(社会における)リプレゼンテーションが足りない。イノベーションを起こすためには、ダイバーシティが何よりも必要である。ダイバーシティの最も根源的な部分は、ジェンダーだと思う。男だから、女だからという理由で、役割が決められてしまってはイノベーションが起きないため、まずそこを直す。次は年齢のダイバーシティだと思う。60歳代と20代が、同じプロジェクトで上下関係ではなく、仲間として働けるか。次は国籍だと思う。難しいが、もしかしたらもっと早く起きるかもしれないのは、LGBTQを含めたダイバーシティである。日本は変化をするまで時間はかかるが、一度動き出すと急激に(変化して)いくので、そこまでいけば、LGBTQを含めたダイバーシティ大国に日本はなれるのではないか。そうなれば、間違いなく新しい意見や見方からイノベーションが生まれ、(新しい)商品やサービスを出てくる。(ダイバーシティが成長への)最大の鍵だと思っている。

Q:ダイバーシティ&インクルージョンについては、企業、家庭、地域によって、また分野によってさまざまである。家父長制度があり、それを壊すために戦後間もない頃に民法の改正が行われたものの、やはりそれぞれの家庭の中で、男女の役割分担が日本に根付いてしまっている部分があり、それを壊すのは容易ではない。企業における女性の活躍については、個々の企業によって差異があると思うが、現状を変えていくには、どこが一番大事だと思うか。

櫻 田:どこが出発点なのかということ(だと思う)。鶏が先か、卵が先かという話に似ていると思うが、日本において企業はかなり大きな影響力(を持っている)。裏を返せば、(社会を)変えない力も変える力もあると思っている。例えば、日本の就職制度、受験制度は(日本の雇用慣行に)色濃く結びついているし、(日本は)世界的に見ても、経済団体が(就職活動の)解禁時期の議論をしている珍しい国である。いわゆる偏差値が高いと言われている大学からどれくらい多く(学生を)取るかが人事部の重要な使命になっていて、(大学を)卒業したらすぐに就職するのが当たり前であり、5年ぐらい世界を見てくる(という学生には)「何をぶらぶらしているのだ」となってしまう。戦後焦土と化した日本を復興しなければならないときは、皆が我慢して、同じ目標に向かって、同じことを効率よくやる文化(が強み)だった。逆に、今はその文化がデメリットになりつつある。ダイバーシティや創造性(が日本社会に浸透せず)、スタートアップが育たず、大企業がリスクを取らないと言われている。我々経営者が変わることによって、受験制度にも極めて良い影響を与えることができるかもしれないと思う。新しい社会を作っていく上で、最大のステークホルダーの一つである企業が変わることが非常に重要だと思っている。それを受けて、どのような大学に行くか、どのような会社に入るか、どのような生活をするかも変わってくるはずだと思っている。政府に頼るのではなく、民間企業である我々が変わっていくことが日本を変えていく一番大きな力だと思っている。

Q98日、英国のエリザベス女王が逝去された。代表幹事の所感を伺いたい。

櫻 田:「君臨すれども統治せず」という世界で、70年(間にわたり)、君主として君臨した。その間、政治家、皇族を含めた世界中の首脳とお付き合いされる中で作られたネットワークと、英国に対する良い印象を70年間保ってきたのは偉業と思う。心からご冥福を祈るとともに、チャールズ三世新国王が、御母堂の思いを引き継いで英国の尊厳を今後も維持してもらいたい。そして、日本とも親しい関係であってほしいと思う。

Q:旧統一教会との関わりについて、先週自由民主党の調査結果が公表されたが、今週に入り報告漏れが報道されている。調査結果の受け止めとともに、企業の危機管理対応の面から見た一連の対応への受け止めについてお聞かせいただきたい。

櫻 田:企業ではそのような(調査結果への報告漏れといった)ことは起きないとは言えないが、(調査の)手法が違うと思う。本件は、想定した通り、自由民主党の議員が一番多かったが、その多寡や関係の有無を調査する前に、旧統一教会は、法的に見てどのような課題を持った組織か、はっきりしていない。個別に刑事訴訟、あるいは民事訴訟に発展しているケースもあるようだが、旧統一教会全体として、反社会的勢力のような位置づけになっているかというと、そのような定義はまだされてないと思う。今後、司直が調査をしていく中で、最終的にそのような判断があれば、当然のことながら毅然として、排除していくということであるが、まだその過程にあると思う。また、国会議員については、現時点では公職選挙法あるいはその他の法律に触れている人はいないと思う。そうすると、あとは好ましいか好ましくないかという議論になってくるわけだが、実は、この点は非常に重要である。好ましくないと思っているから、国民は怒っている。それは、最終的にどのような形で審判されるかというと、選挙や、報道機関が行っている政権や党に対する調査の結果に反映される。それを見ながら、法には触れていないけれども、国民を代表する国会議員としてどう思うのかという説明責任を、各人が負う。そして最後は、国会議員自身で進退を決めるか、そうでなければ選挙で決まるということである。この整理を、しっかりしてほしい。問題を一元的に集める形で、専門職や既に割り当てられた各省庁の窓口が調査を行う。法に触れていない以上、国会議員は、責任、ミッションを果たしてもらいたい。それは足元で言えば、インフレ(への対策)であるし中長期的に見れば、日本経済をどうするかということである。さらには、最近あまり議論されていると思っていないが、新しい資本主義とはどのようなものかについて、グランドデザインを詰めていかなければならない。(政府が)個別の成長戦略を発表していることは理解しているが、GXやDXのみで新しい日本を作ることができるとは思わない。その意味でやるべきことをもっと議論することが、国会議員や国会の役割である。

Q:日銀が金利を上げた場合でも日米の金利差による円安傾向は是正しないとのことだが、1ドル150円をはるかに超えて、170円台~180円台の円安になるのではないかという見方もある。どの程度まで円安が続くか、櫻田代表幹事の見解を伺いたい。

櫻 田:私個人は、1ドル150円台まではいかないと思うが、根拠はない。日本のファンダメンタルズは急速に悪化しているのではなく、ゆっくりと悪化しつつあるため、購買力平価で見たら1ドル150円を超えるほど日本経済の体力や技術力が(脆弱だ)とは思っていない。そこまで悲観していないし、(投機筋が)売り浴びせてきても耐えられるだけの力を持っていると思う。金利差がテーマとなっている今般のドル円、ユーロ円ではなく、それ以前の(円)相場は、財政赤字に対する懸念があった。先進国で最悪の対GDP比約2.4倍の財政赤字を抱える中、なぜ一気に円安に振れないのかは、ファンダメンタルズが良いからではなく、財政赤字について是正しようとする意思があり、是正しようとする能力があり、是正しようとしてきたという実績と今後もその実績を積んでいけるという(理由であった)。この三つが揃っており、日本経済を為替で攻め立てても、投機筋は負けると感じたのだと思う。金利差を除いて考えていけば、同じことが言えると思う。ファンダメンタルズはそこまで悪くなく、(日本円の)実力はもっとあるべきで、日本経済はより成長していくはずである。ただ、新しいことをやる、変わっていくという強い意志と、将来に対する国民の期待が足りないということに尽きる。

Q:未来選択会議第6回オープン・フォーラムでは、第三分科会で社会的合意形成に関する議論があった。安倍晋三元首相の国葬については、国民の間で賛否が大きく割れているが、今回、政府が国葬を決めたことに判断上のミスがあったとすればどのようなことだったのか、見解を伺いたい。

櫻 田:国葬に際しての判断は、数学的に決まるわけではない。おそらく(政府には)国葬にしたいという判断があったのであろう。その判断を論理的に評価することは今の法律上の解釈では難しい。誰かが決めなければならないので、岸田首相や内閣が決めた。それに対して納得感が足りず不快感を持っている人が、調査上では過半数を超えているということである。過半数を超えているから間違っているということではない。社会的合意形成とは、必ずしも全てを多数決だけで決めることではない。多数決で決めないほうが良いこともある。また、社会的合意形成は(現在の)投票や調査だけで図れるわけでもない。例えば、SNSを使った調査やインターネットサーベイ・投票などを活用することも考えられる。また、未来選択会議第6回オープン・フォーラムでは、党や大臣・議員の判断に対して賛否を述べるのではなく、政策そのものに対して賛否を述べるべきではないかということが話題となった。今回の国葬に関しても、岸田内閣が決めたことに対して賛否を問うのではなく、国葬自体に対して賛否を問われたら迷う方もいるだろう。ここをしっかりと議論しないと、社会的合意形成が図れない。政党・議員に対する意思決定ではなく、政策を中心に置いた意思決定をすることがとても大きなポイントであり、新しい意思決定の手法が見いだせないかと思っている。

以 上

(文責: 経済同友会 事務局)


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