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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2022年8月30日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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冒頭、『第二次岸田改造内閣に対する意見―成長と分配の好循環実現に向け、税と社会保障、労働市場の一体改革を求める―』と、未来選択会議第6回オープン・フォーラムの開催予定を紹介した。その後、記者の質問に答える形で、第二次岸田改造内閣に対する期待、原発政策・エネルギー問題、為替、新型コロナウイルス感染症水際対策、旧統一教会問題などについて発言があった。

冒頭発言

櫻 田:本日、『第二次岸田改造内閣に対する意見―成長と分配の好循環実現に向け、税と社会保障、労働市場の一体改革を求める―』を発表した。(先の参議院選挙で)安定政権(の基盤)が確立し、今こそ抜本的な構造改革や新しい資本主義の実現に向けて本格稼働するタイミングであるため、この機をとらえて意見をまとめたものである。新型コロナウイルス感染症対策、エネルギー、経済安全保障、ウクライナ戦争を契機としたグローバルな物価上昇、(その対応としての)金利上昇、為替など、山ほどの課題を抱えている。いろいろある中で、本会として、すぐにでも取り組んでほしいこととして、三つに絞り込んだ。エネルギーや安全保障などは、年末に向かって政府が様々な施策を出してくると思うので、その都度考えを発信していきたい。コストプッシュ型インフレへの本格的、本質的な対応が喫緊の課題と考えており、(その意味においても)産業・企業の新陳代謝と生産性の向上によって、持続的に賃金の上昇が続く経済構造を実現していくことに、今から対応しなければ間に合わない。こうした危機意識のもと、税・社会保障・労働市場の三位一体改革、持続可能な財政構造の実現、成長のエンジン、とくにイノベーションの起点となるスタートアップの成長促進、この三点について特に主張したい。

一点目、税・社会保障・労働市場の三位一体改革についてであるが、持続的な賃金上昇を実現するための一番大きなポイントは、閉じた労働市場ではなく、外部労働市場の活性化が欠かせないということである。すなわち、働き手が、より自分に合った職場に向かって流動化していくためには、外部労働市場の活性化が絶対必要である。これを早期に実現すべく、法整備を含む対応をしてほしい。これによって、人々は、安心して自分の能力に応じて適正なところに移り、(能力を)発揮する。そして働き方も多様になっていくと考えられるが、(厚みのある外部労働市場の形成には)包摂的なセーフティーネットが必要である。戦後守られてきた今の雇用制度の前提は、フルタイム勤務、あるいは終身雇用である。外部労働市場の活性化を通じて労働者の流動化、最適化を図っていくためには、企業だけではなく政府が制度としてセーフティーネットを構築していく必要がある。抜本的な見直しを先送りせず取り組んでいただきたい。

二点目、セーフティーネットを構築するためには資金が必要で、そのためには、持続可能な財政構造がなければならない。(新型コロナウイルス感染症の経済的影響に対して講じられた)雇用調整助成金(の特例措置)も正常化に向けて動き始めてきたが、財政は相当痛んでいる。財政健全化の道筋を示すにあたっては、賃金上昇と経済成長の好循環、特にこの労働市場と財政、社会保険の観点で見ると、現役世代の負担があまりにも大きすぎる(ことが問題だ)。増税に至るまでは非常に時間がかかるが、社会保険はいつの間にか(保険料が上昇している)という世界である。その意味では、(現役世代に偏らず)広く公平に負担する消費税を中心とした歳入構造(への転換)に向けて、議論を早急に開始すべきである。

三点目は、スタートアップの成長促進についてだ。イノベーションなくして成長なし、そのためにはスタートアップが必要だということはもう何度も言われているが、なかなか実現しない。(その理由の)一つは、グローバルな資金が日本に入ってこないことだ。よくイコールフッティング、あるいは、レベル・プレイング・フィールドという言葉を使うが、日本では、税制や規制が邪魔をして、スタートアップが生まれにくい、あるいは(海外の)ベンチャーキャピタルやベンチャーキャピタルファンドが、日本で投資を行いにくい環境が依然として存在する。欧米に比べると、イコールフッティング、レベル・プレイング・フィールドが確保できていない。こうした点を早期に見直すことで、ベンチャーが必要資金をしっかりと得られるようにしていく必要がある。

既存の制度は、依然として昭和の名残をたくさん残している。(第二次岸田改造内閣は)新型コロナウイルス感染症への対応をチャンスと捉え、今申し上げた三点について、まず手がけてほしい。

もう一点お伝えしたいことは、未来選択会議についてである。9月6日に第6回オープン・フォーラムを開催する。今回は、初めて分科会形式を採用し、24名の方にリソースパーソンとして議論をリードいただく予定だ。これまでの未来選択会議では、挑戦に満ちた日本をつくるという方向性のもと、起業家や研究者、官僚、NPO代表など、各界の若手リーダーや学生などを交えて、教育、規制、社会保障など、様々な仕組みをどう変えていくかの議論を行ってきた。若者世代からは、今の日本には挑戦しようという人が少なくなってきた気がする、(その背景として)失敗したら叩かれる文化がいまだに残っている、横並びの意識も強いといった声が上がっている。残念ながら、日本の持つ(社会)風土のマイナスの部分、そういったマインドセットが邪魔をしているのではないかという声が多く聞かれた。このことが、30年間にわたって日本が変われなかった、変わりたくなかった理由なのではないかという仮説を持っている。近々、本会は、「生活者共創社会」の実現に向けて提言を発表する予定であるが、こうした若者世代の問題意識と多く(の認識)を共有している。今回のオープン・フォーラムでは、生活者共創社会の考え方をたたき台に、リソースパーソンの間で活発な意見交換を行う。今後、この未来選択会議を一層充実させていきたい。

Q:先日発足した第2次岸田改造内閣に対して、印象と期待を伺いたい。

櫻 田:第2次岸田改造内閣では、それぞれの得意分野で政策を実行してきた経験をもつ閣僚が任命されており、大いに期待している。先ほど発表した『第二次岸田改造内閣に対する意見―成長と分配の好循環実現に向け、税と社会保障、労働市場の一体改革を求める―』で強調した3つのポイントについても取り組んでいただきたい。政治家の最大の使命は、政策を論議し、実現するための方法を整えていくことである。今回は、旧統一教会問題が重なり、国民がそれに尋常ではない不快感を示している。これを真摯に受け止めて、政治家は積極的に自らを点検し、その結果を公表することが必要である。既に河野太郎 消費者担当大臣が霊感商法対策検討会を立ち上げ議論をされているほか、各省庁でも苦情やトラブルについて正式な窓口を開いて情報を収集されている。この旧統一教会問題のみならず、今回のようなトラブルの可能性があることについて、今後は政府がしっかりと対応していかなければならない。旧統一教会に関する問題は既に数十年にわたって存在している。今回、安倍晋三元首相の暗殺事件が起きたことでこの問題が国民に大きく注目されたが、なぜここに至るまで大きな問題にはならなかったのか、自問自答していくべきである。このようなことが二度と起きないようにするのが重要なテーマである。これを契機に、日本とはどういう国であるのかをしっかりと考えるべきだ。この旧統一教会問題にのみ時間を使うのではなく、一番大きなミッションにしっかりと取り組み、国民にその成果を示していただきたい。

Q:先日岸田首相が原発の活用を進める方針を示した。これまで想定していないと言ってきた新増設や建て替えを進め、原則40年、最長60年としてきた運転期間の延長も検討するという。来夏以降に、追加で7基の再稼働を目指す方針も表明した。従来、経済団体は原発の活用を政府に求めてきており、かなりそれに沿った内容と評価できるかと思うが、今回の首相の方針について見解を伺いたい。

櫻 田:一言で言うと、大いに歓迎する。よく決断してくださった。表現が難しいが、今回ロシア・ウクライナ戦争という危機があり、政治決断を促進したのであろうと思っている。結論としては大いに評価したい。その中で(新増設については)次世代革新炉、新しいタイプの原子力発電、おそらくSMR(Small Modular Reactor:小型モジュール炉)を含むものと思うが、これらは日本が技術をしっかり持っている分野であるので、新しい日本を作っていく上でも、ぜひ進めていただきたいと思っている。ただ、原発だけではなく(日本が抱えている)エネルギー問題は他にも山ほどある。2050年(CO2)ネットゼロに向けて、(取り組みが)原発だけというわけにはいかない。来夏に(原発)7基が動いたとしても、2050年には(電力供給が)全く足りなくなるというのは明らかであるし、仮に、(原発の)耐用年数を40年から60年に延ばしたとしても、やはりそれだけでは足りない。経済同友会は、従来から縮原発を訴えてきた。現下の状況ではやむを得ないものの、最終的には原発の割合を下げていこうと(いう主張だ)。(再稼働には)まだまだ国民とのコミュニケーションが必要だし、地元の理解(も必要である)。原発に限らず、再生エネルギー(全般)についても同様だ。例えば太陽光であれば、電磁波障害や森林伐採(の懸念もあり)、風力発電は洋上風力が中心になるので、水資源、海洋資源、地元の漁業組合等、色々なことがある。ありとあらゆる全てのことを俎上に載せて議論を開始する決断を(岸田首相が)されたと私は解釈したい。(エネルギー問題は)原発だけではないと思っている。

Q:円安が進んでいる。日本企業にとってプラス・マイナスの両面があると思うが、経済界への影響について見解を伺いたい。

櫻 田:かつての経済構造ではなくなった日本にとって、(円安の影響を)秤にかけるとマイナスの方が大きいと言わざるを得ない。これを是正するためには金利を上げるしかないが、今、この経済環境において金利を上げることはまさに苦渋の決断であり、日本銀行はアンビバレントな状態にある。4‐6月期においてはコロナ禍で影響を受けていた消費や設備投資も持ち直してきていたものの、現時点では足踏みをしている。その原因は質の悪いコストプッシュなインフレーションである。この環境では金利を上げることはできないため、財政を使ってインフレ対策をせざるをえない。だが、それはあくまで短期的な話である。既にコロナ禍で補助金に慣れてしまった経済を脱していくためにも、一番必要なのはイノベーションを通じた生産性の向上と、それに基づく中長期的な経済成長である。一方、使い切ってしまった財政に関して、今後はどのように財源を求めていくのかを議論しなければならない。財政の裏付けなしに、セーフティーネットや人への投資、防衛費の増強を伴う安全保障はありえない。支出と歳入は裏表の関係である。支出の議論をするだけではなく、どのように歳入を増やしていくかについても議論しなければならない時期に来た。このことを積極的に発信していくべきである。

Q:新型コロナウイルス感染症の水際対策について伺いたい。来月から入国制限がさらに緩和され、1日あたりの入国者数の上限引き上げや、ワクチン3回接種者への陰性証明提示免除などが講じられると言われている。G7なみの円滑な入国を目指すと岸田首相が宣言してから結構な時間が経ったと思うが、現状について受け止めは。

櫻 田:時間がかかった感じはするが、やっと門が開くことを歓迎したい。ただ、(入国者数の)上限撤廃には至らず、グローバル対比では慎重に過ぎる気がしないではない。経済と規制の両立について、今必要なことは、新型コロナウイルスで傷んだ経済、それによって痛んだ人心、そういったものをしっかりと支え復活させることである。世界で、特に先進各国が対応していることは、非常識だとは思わない。日本はグローバル経済の中でしか生きていくことはできない。グローバルスタンダードをよく見ながら、1日も早く、それに合わせた状況にしてほしい。まだ十分とは言えないし、まだ十分速いとも言えない。専門家の意見を聞いて専門家が判断するのではなく、専門家の意見を聞いて政治が判断する。特に岸田首相が判断することは極めて健全なことである。経済の専門家の意見も聞き、議論していただきながら、バランスの良い判断で、グローバルスタンダードに早く落ち着いてほしい。

Q:エネルギー問題についてお伺いしたい。長期的に見れば原発の活用も有効だが、今年の冬は、原発の活用だけでは厳しいのではないか。足元で、サハリン2の先行きが不透明な状況であり、オーストラリアがLNG(液化天然ガス)の輸出を絞る話も出ている。民間の動きを含め、今冬を乗り切るためにどのような政策が必要か。

櫻 田:今回、夏を何とか乗り切れたということになっているわけだが、その前に、なぜ(供給)予備率3%を切るような状態が起きたかというと、色々な(要因が)同時に重なってしまった(からである)。私は、夏がこれほど早く来ると思っていなかったと聞いている。それでエアコン(による電力)需要(が高まった)。何とか(今夏を)乗り切れたのは色々と(要因が)あったのだろうが、雨が随分降ったものの、思いのほか暑さが去るのも早かった(ことが大きい)。天候が良かった日中はできるだけ太陽光発電を使い、夜はLPガスを使った(こともあるだろう)。偶然とまでは言わないが、悪いことと良いことを重ねて乗り切る(ことができた)。何とかここまでこられたが、送配電網や、来夏まで原発が再稼働しないことは課題となった。冬についてどうかという質問だが、少なくとも今よりも(新たに再稼働する)原発が増えることは多分ない。そうすると(今夏と)同じようなことをやりながら、(電力需給のひっ迫を)しのいでいくしかなく、寒くない冬であってほしいというのが一つである。加えて、今回で節電の意識が高まったが、さらに国民全体、特に消費者側よりも(電力使用量が)多い企業側が、今から準備しておくことだ。ありとあらゆる手を尽くすほかに打ち手がない。ただ、冬を過ぎれば、今の見通しでは石油(価格)も頭打ちになっている可能性があり、天然ガスも値段が下がってくるのではないかと言われている。国民の知恵と努力で乗り切るしかないのではないか。

Q:再稼働を目指す7基の中には、東京電力柏崎刈羽原発の6号機と7号機、東北電力女川原発2号機が含まれる。東日本の原発は、東日本大震災以後の11年間全く動いていない。先ほどの代表幹事の発言から、経済同友会は縮原発の姿勢に変わりないとのことだが、原発を再稼働させるには、今後地元の理解がより必要になる。次世代型原子炉を考えるにあたっては、20年後どうなるかをもう少し考えないといけない。最終処分場の問題も出てくる。岸田政権が原発再稼働に舵を切ったことに対しどのような意見を言っていくかは経済同友会にとって重要なことだと思うが、どう考えるか。

櫻 田:8月24日、第2回GX実行会議が開催された。本来であればGXを通じてイノベーション、成長を(実現しよう)という議論(の場)であったと思うが、足元のエネルギー危機の中で、年末・冬をどう乗り切るか、そのためにできることは全部やろうと(いうテーマになったと)理解している。そのため、(エネルギーの安定供給に向けた)論点、やるべきことが列挙されたと思う。その中で今回岸田首相の指示があったように、新しい原発(を増設する)ということ(が示された)。今までは(原発の)新設は考えないと言っていたのが、「新しい技術については前向きに」となっている。これはSMR等と思っているが、そういったものに対しては経済同友会として今までもマイナス(な意見)ではない。地元の理解を得るために、具体的に、しっかりと逃げずに向き合って説得していく、そのために何が必要かを提言していきたいと思っている。いずれにしても、原発なしに(CO2ネットゼロを掲げる)2050年を迎えることはないし、2050年以降も原発ゼロはないというのが現実的なシナリオであるため、今、SMR等に舵を切ろうとしていることは、未来志向という意味では大変良いことだと思っており、必要な提言は積極的にしていきたい。冒頭に、第二次岸田改造内閣に対する意見として労働市場の流動化、財政の持続可能性、スタートアップの成長促進を挙げたが、次はエネルギーだと思っている。良いタイミングで、時期を逃さないように提言を出していきたい。

Q:昨日、霊感商法の被害対応に関して消費者庁で有識者検討会の初会合が開かれた。旧統一教会は社会的に問題のある団体であると思うが、政治家や自民党の一部の議員は、票を獲得するためにこの団体と関わりをもった。政治と宗教といった捉え方ではなく、そこに問題があると思うが、改めて代表幹事の見解を伺いたい。

櫻 田:現時点ではまだ司直が入っている状況ではないが、少なくとも、政治はもとより法制も世論を無視することはできない。過去がどうであったかということではなく、未来に今回のようなことを起こさないためにも、苦情やトラブルを調査した結果、旧統一協会が社会的に問題のある性格を持っているとすれば、それにふさわしい対処をしていくという動きに繋がっていくであろう。今回の件が時間と共に薄れていくと、また似たような問題を繰り返すことになる。一国の元首相の命が奪われた暗殺事件を契機に始まったこの問題に関して、しっかりと国民が納得する形で決着をするべきである。ただし一方で、信仰の自由という憲法の問題もしっかりと意識しなければならない。何しろまだ事実が詳らかになっていない。政府は各省庁に窓口を作り、消費者庁では霊感商法対策検討会を正式に立ち上げたが、これに関しては我々も注視していきたい。うやむやにしてはいけない。

以 上

(文責: 経済同友会 事務局)


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