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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2022年7月12日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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冒頭、櫻田代表幹事から夏季セミナー、未来選択会議について紹介した後、記者の質問に答える形で、参議院選挙の結果、新型コロナウイルス感染症第7波への対応、企業物価、最低賃金、安倍晋三元首相逝去の影響、藤井裕久元財務大臣の訃報、保守派の外交戦略などについて発言があった。

櫻 田:先週の夏季セミナーにて、生活者共創社会の骨子を盛り込み『軽井沢アピール2022』を発表した。今期のマニフェストとして着々と実現に向け取り組んでいきたい。そして「いて欲しい国、いなくては困る国、日本」を目指したいと思っている。そのためにも生活者の共創、共に価値を作る構想が必要であり、(軽井沢アピールでは)4つの「生活者共創社会の実現に向けた『生活者』のコミットメント」を発信した。まず一つ目には、人材の流動化によるダイバーシティ・インクルージョンである。二つ目は民間主導による多様なイノベーションである。官製主導のイノベーションでは日本は再生しない。これを「共助資本主義」という言葉で表現した。そして三つ目が人材価値への投資である。強い価値を生む全ての根源は人材にある。人材への投資に向けて様々な仕組みや制度を作っていきたい。最後はアジャイルで信頼される、パーパス・ドリブンな政府への転換を期待している。何のための政策なのか、明確にパーパスを定義することで、政策のパーパスと生活者のパーパスを同期する動きを作っていくべきである。次に「目指すべき将来に向けて今決断すべきこと」として数点を列挙した。経済同友会はシンクタンクというだけでなく「Do Tank」であり、その方針に沿って実現に向けた行動をしていこうと思っている。最後に「経営者・経済同友会が生活者共創のムーブメントを生み出す」という項では、一つ目として「塊より始めよ」を経営者のコミットメントとした。経済同友会は経営者の集団である。まずは経営者自身が自分の所属する会社での実現に向け取り組んでいく。二つ目は「経済同友会3.0へのアップデート」である。経済団体として解決できる課題やテーマ、イシューは少なくなりつつある一方で、マルチステークホルダーとの協業やコラボレーションを通じて実現できるものが多くなってきている。経済同友会はマルチステークホルダーとの接点を作っていきたい。NPOやNGO、学生などあらゆるステークホルダーとの対話やコラボレーションを通じて、共に発信する、共に行動することを検討する。6月18日に未来選択会議第5回オープン・フォーラムを開催し、スタートアップ振興というテーマで、挑戦の量をどのように増やすかを議論した。次回は9月上旬に第6回を予定している。生活者共創社会の主要な論点について若者や官僚と胸襟を開いて議論する予定である。そして、議論の中で対立軸や論点が出てくれば、そのまま発信していきたい。発信は動画配信も検討している。皆様のご支援とご参加、またスピーカーとして個人のご意見もいただきたいと思っている。

Q710日に投開票が行われた参議院選挙では、自民党が単独で改選議席の過半数を獲得し、連立与党が大勝する結果になった。この結果についての受け止めと、岸田政権の今後の経済政策運営に求めることを伺いたい。

櫻 田 : 開票開始直後の結果が見えてきたところで、本会として私のコメントを発表した。(コメントで申し上げた通り)VUCAと呼ばれる、変化が激しく、それも必ずしも良い変化ではない上、先行きが見えない中で、国内のしっかりとした政治的な安定が重要だということを(国民が)明らかに選択したのだと思っている。その意味では、岸田首相には、安定した(政治基盤の)上で、日本が過去30年間実現できなかった力強い経済成長、イノベーションによる成長を何としても実現することにこだわっていただく必要がある。安定政権とは選挙のない政権というだけではない。選挙があったとしても、力強い信念をもって新しい資本主義という大きな構想を掲げられている以上は、その実現に向けて着実に(経済政策運営を)進めていただきたい。その際には、国民から見ると必ずしも優しい政策になるとは限らない。(痛みを伴う)政策、今は(一時的に)厳しいけれども将来のためだという政策も含め、未来志向の下、中長期(視点)で力強い日本を実現するための政策を行っていただきたい。具体的な課題はいくつかあるが、現在、ウクライナ問題をはじめとして、地政学的なリスクが高まっており、中国や北朝鮮、台湾情勢なども考えると、安全保障問題は改憲も含めて議論しなければならないと思う。もう一つの大きな課題としては、全ての政策には予算が必要であり、その財源をどう確保するかも目をそらしてはならない。実現は先になるとしても、すぐに手を打たなければならないことは明らかであり、議論を始めていただきたい。決してこれまでの各政権が積極的に先送りしてきたとは言わないが、社会保障の問題など、実現できなかった課題に果敢に取り組んでいただきたいと思っている。気がかりだった投票率は(52.05%となり)、ようやく50%を超えた。しかし、過去の(国政選挙の)投票率の中では4番目に低い。70%を超えている(国も多い)OECD各国の投票率と比べると、圧倒的に低いことは間違いない。イノベーションによる経済成長に加えて、民主主義をしっかりと守っていく。そのために投票率をいかに上げていくかということについても、もっと真剣な議論を引き起こすべく、(岸田首相には)リーダーシップを発揮していただきたい。

Q:国内の新型コロナウイルスの感染者数が急増しており、都道府県の知事からは第7波に入ったというような発言も相次いでいる。こうした中、新たな観光支援策である「全国旅行支援」について、政府は、7月前半を目指していた開始時期を延期する方向で調整に入ったと報道されている。これまでも、感染が拡大すると経済活動に制約が加わることを繰り返してきたが、経済活動と両立させる新型コロナウイルス対策のあり方と、観光支援策の延期に向けた動きについて、お考えを伺いたい。

櫻 田: まず申し上げたいことは、(コロナ禍において)日本だけが特別な事情を持つ国であるとの前提を置くべきではないということである。海外出張をしたが、(他国は)驚くほどの活動ぶりを見せている。第7波と言うかは別として、海外においても、オミクロン株が発生(し、まん延)していることは間違いない。それでも経済とのバランスを大事にして、過度な抑制をせず、何事もなかったかのように経済活動を行っている。これまでのところ日本は、死者数や重症患者数は(世界の中で)圧倒的に少ない。一方で、医療体制の問題、ワクチン接種の効率性、あるいは経口治療薬(の普及)を含め、課題は既に確認できている。したがって、第7波が来たか来ていないか、あるいは、これまでのような、まん延防止等重点措置が必要か不要かといったことについて、国民は正直なところ、聞き飽きていると思う。経済界はもとより、国民が望んでいることは、まず、4回目のワクチン接種はいつ受けられるのか、あるいは、経口治療薬が容易に手に入るようになるのはいつなのか、コストは(どの程度なのか)、それから、医療体制(の整備)である。前回(第6波)のときも、発熱外来のある医療機関について(公表が遅れ)はっきりしない状態がずっと続いたが、現在もそれがどのように改善されているのか明らかでないまま第7波に入ったかもしれず、安心安全(のためには)まん延防止等重点措置(の発動)云々(という議論がなされている)。(これまでに)学んだことが、具体的にどのように活かされているのかについての説明があまりにも足りない。残念ながら、新型コロナウイルス対策を含め、大半(の施策)がそうなのかもしれないが、施策の実行に伴う政策資源(予算)について、補正予算を含め(2020年度単年度で)約80兆円近くが投入されていたにもかかわらず、(コロナ予備費と呼ばれる予算については)その9割の使途が明確になってない(との報道もあった)。もしそうだとすれば、国民の怒りというか、不信感は拭い去れないと思う。参議院選挙で(国民が)安定政権に大きく賛同したことを安心材料とせず、(新型コロナウイルス対策について)何が今までと違うのか、具体的にどのような手を打とうとしているのか、できる限りはっきり説明してほしい。観光については、インバウンドだけで約5兆円の需要を生んでいる。観光産業全体では、おそらく30兆円程度の経済効果、GDP貢献効果があるはずだ。この約5兆円というインバウンド需要は、半導体関連の輸出額よりも多く、大きな効果を生んでいる。雇用を含む波及効果を入れると、もっと多くなるはずであり、観光産業についても(携わる)人の(雇用や生活維持など)命がかかっていることを考えると、(政府は)バランスを取るのではなく、どうすれば経済活動を止めずに今の勢いを維持できるか、そしてさらに上に向かせていくためにはどのような手を打てば危険な状態にならずに済むか、そういう立論で考えていただきたい。(感染を)広げないためにあれを抑えよ、これを抑えよ、という2年間は、もう、過去のものにしたい。それが経済人の1人としての私の思いである。(新たな観光支援策を延期すべきかどうかという点については)今の状況で見る限りは、延期しなければならない理由が明確ではない。

Q:本日、日本銀行が6月の企業物価指数を発表した。調査開始以来、過去最高になり、上昇幅も前年同月比で9.2%と高くなっている。これに対し政府に何を求めるか、企業や消費者はどのように受け止めるべきか。

櫻 田: 日本発の原因でない点があることは押さえておく必要がある。従って、その原因に遡って手を打つことはなかなかできず、それが今のコストプッシュインフレの最大の課題である。コストプッシュであって、ディマンドプルではなく、強い需要により起きているインフレではないため、打ち手が極めて限られていることは、残念ながら認めざるを得ない。参議院選挙を経て少し変わってくるかもしれないが、今まで政府が打ってきたインフレ対策は各党とも選挙前は(主張し)、いわゆる補助金的な施策で痛みを緩和しようとしてきた。それ自体が間違っているとは言わないが、一過性のものにすぎないことは誰もが認めるところである。一旦補助金を出すと、出し続けなければ痛みは緩和できない。逆に言えば、世界の中ではまだインフレ率が相対的に低く、かつ、財政状況が極めて悪い日本が、カンフル剤というと少し言い過ぎかもしれないが、そのような手法で痛みを緩和し続けることのマイナスの方が、大きくなってくると思う。ただ、一般論としての平均値ではなく(ミクロを見れば)、それなりの所得を得ている人たちが感じる(生活)必需品のインフレによる痛みと、生活に困っている人たちが感じる痛みは全く違うことははっきりしている。従って、社会的弱者に対して何らかの支援をすることには賛成だが、その際にはどこにどのような(支援を必要とする)方がいるか、しっかりと焦点を当てて支援金を出していくことが必要である。ガソリンや重油も、農業も同じ(で、焦点を当てて支援をしていくことが大事)かもしれない。そのようにピンポイントで支援金を出していくことはやらざるを得ないが、それだけでインフレそのものを抑えることはできない。外発・外来性(のインフレ)なので、今は何とか耐えるしかない。政府には、世界と比べて日本の状況はどうなのかということを、国民に対し客観的にわりやすく説明してほしい。例えば、(世界中で販売されているビッグマックの価格を比較すれば各国の物価水準がわかるという)ビックマック指数という指標があるが、(そのような指標を参考に説明をすれば)世界の食料品の上昇に比べて、日本はそこまでではないことがわかるはずである。(一方で、)そうは言っても世界に比べて日本の賃金が上がっていないため、賃金をどのように上げていけばよいかは民間が考えるしかない。民間に必死で考えさせる。そして、払えるところはしっかり払うよう促すだけではなく、各企業は、よい意味での説明責任を負う覚悟で経営をしていくことが大事である。

Q:先日、厚労省中央最低賃金審議会で議論が始まった最低賃金の引き上げについては、今回の参議員選挙でも大きな論点になった。最終的な決着点はどのようにあるべきか。

櫻 田: 今年度の最低賃金の具体的な決着点についてコメントする立場にはないが、正直なところ、何が合理的であるのかがわからない。審議会で議論された結果はそれぞれの利益代表の合意点なので、科学的に説明できるものではない。ただ、経済同友会では、OECD諸国の中で最も低いレベルにある最低賃金は時給単価1,000円以上に引き上げるべきであることを伝えてきた。このスタンスは全く変わっていない。ただ、根源的な問題はなぜ賃金が上がらないかである。そして(重要なのは)この問題が今年一年だけではなく、何十年も続いていることである。どうして20~30年もの間、日本の中小企業の生産性が上がらないのか。今度こそ、よい意味でのメスを入れるべきだと思う。日本国民の中間層の生活の質を上げるためには、働き手の約70%が勤めている中小企業、企業数でいえば(日本の)99%を占める中小企業に本格的なメスを入れることが必要であり、これをなくして新しい資本主義はない。私たちが主張する、生活者と共に価値を作っていく「生活者共創」も絵空事になってしまう。今度こそ、世界の中で競争力のある中小企業をどうやって作っていくべきか、中小企業の生産性に国民的な議論の焦点を当てるべきだと思っている。

Q:安倍元首相は、首相辞任後も広く強い影響力があった。今後、安倍元首相が不在となることで、経済政策や防衛政策、外交面でどのような影響が出ると思うか。

櫻 田: 党内においてはしばらく意思決定に時間がかかる状況が起きるかもしれないが、自民党として最後は一つにまとまるであろう。安倍元首相自身も一般的には財政積極論者とされ、外交についてもタカ派に近く、旗幟鮮明に対応するべきところはそうされていた。安倍元首相に限らず、一本線のみで物事を考えることはしないのが政治家でもある。従って、安倍元首相が不在となっても財政積極論や改憲、旗幟鮮明に(対応)されていた外交が大きく変わることはないと思っている。同じ考え方を持っている政治家は他にもたくさんいる。安倍元首相と岸田首相の主張も、決定的に違うところはないと思う。違いがあるとすれば財政についてであるが、安倍元首相も現職時代に財政規律を無視してもよいなどとは言っていない。ただ、優先順位と時間軸は課題であり、この点で岸田首相とは若干異なるかもしれない。結論として、安倍元首相のご逝去によって自民党内や日本の政治がぐらぐらと揺れることはないと期待している。

Q:本日、財務大臣や民主党の幹事長を務めた藤井裕久氏が死去した。消費増税などに尽力された方であるが、訃報の受け止めについて伺いたい。

櫻 田: 直接お会いしたことはないが、藤井氏の主張を聞くにつけ、理念をしっかり持っているだけではなく、経済財政については、日本でも一級の見識を持っておられる政治家であったと思う。(民主党政権に)藤井氏がいたことで、当時の野田佳彦首相とともに消費増税が前に進み、(引き上げが)実現したことは間違いない。ここに来て、日本に大きな価値を残した政治家が相次いで亡くなることは、政界にとっては大きな損失である。その損失を埋めて、なお余りあるほどの優秀な政治家が出てくることを願ってやまない。

Q:先般亡くなられた東海旅客鉄道株式会社葛西紀敬之名誉会長は、技術流出の懸念もあり、対中国で厳しいスタンスを取られていた。また逝去された安倍元首相は、生前、防衛費の対GDP2%への増額を掲げられており、自民党内の保守派に対して影響力を持っていた。政界・財界の保守派の論客が亡くなったことで影響はあるか。

櫻 田 : 影響はあると思う。保守派の定義にもよるが、一つの国を、一つの言葉や政策で(集約して)表していくことは、ますます難しい時代に入ったと思っている。マルチステークホルダーという言葉があるが、「生活者共創社会」の説明で申し上げた通り、一人の人間が色々な顔(側面・役割・機能)を持っており、色々な価値観を体の中に抱えながら、一つの結論としてある行動を行うのと同じように、中国という国をかくかくしかじかの国であると定義することは難しくなってきているし、(定義することは)危険だと思っている。ただし、今、そして当面は中国共産党にとってマイナスとなることは恐らく実現しないという前提を置きつつも、中国との関係を完全に絶つことは、べき論やできる(できないといった次元)ではなく、まず不可能だと思う。メイドイン中国の製品を一切拒絶できる国は、世界に無い。是々非々と言えば簡単すぎるが、付き合ってよいことは何か、話し合ってよいことは何かを、色々な局面を見ながら臨機応変に(考えて決定し)、交流する、(あるいは)反対側にあるリスクを考えて止めるということだ。経済安全保障という枠組みの中で考えながら付き合うのであり、そういうことを考えながら決断する保守派は(政財界に)残っていただきたい。中国があらゆる面で悪いというラベル・レッテルを貼るのは、保守派ではないと思う。ただし、個人的な意見を申し上げれば、ロシアは相当厳しいと思っている。少なくとも現在の(プーチン大統領)政権が続いている限り、是々非々で臨機応変に対応することができるかは疑問だ。とはいえ、新しい政権がもし何らかの形で登場してきた場合に、ロシアという国にレッテルを貼って見ていくことは危険である。あらゆるものが多面的になってきているため、その意味では、G0やT2と呼ばれる断片化された国際社会の中で、国も企業も相手のどの側面を見て何をするのか、本当に難しい判断を迫られている。しかし、大事なことは、安倍元首相が始められた地球儀を俯瞰した価値観外交であり、価値観だけは(判断にあたって)揺れることがあってはならない。

以 上

(文責: 経済同友会 事務局)


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