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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2022年6月29日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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冒頭、櫻田代表幹事から未来選択会議、夏季セミナーについて紹介した後、記者の質問に答える形で、令和臨調、G7サミット、電力需給逼迫、賃上げ、東芝、東京都による「育休」の新たな愛称「育業(いくぎょう)」などについて発言があった。

櫻 田:6月18日に未来選択会議第5回オープン・フォーラムを開催した。そろそろ論点も煮詰まってきており、今後の展開の仕方についても内部で検討し、もう少し積極的な対外発信に向けてメディアの方々にも積極的にご協力をいただきたいと思っている。7月7日・8日に開催する夏季セミナーは生活者共創社会をテーマとするが、次回の未来選択会議でも若者を含めて議論していきたいと思っている。とがった意見が出てくるかもしれず、期待していただきたい。夏季セミナーはメディアオープンで行うため、(経済同友会で)どのような議論が行われているのか、(提言や発信内容が)必ずしも平坦な議論をもって結論に達したわけではないということを実感いただける(機会だ)。(参加者への)個別取材の場や、オフレコ懇談も用意しているため、ぜひご参加いただきたい。

Q今月19日に発足した令和国民会議(以下、令和臨調)は、統治構造など三分野で政策提言活動を展開するということだ。経済同友会からの参加者が多いが、どのような活動成果を期待するか。また、櫻田代表幹事も特別顧問に就任されているが、ご自身はどのような関与をしていくのか。

櫻 田:まず令和臨調の設立趣旨、志については私自身も大いに賛成しており、特別顧問として微力を尽くしたいと思っている。本会の副代表幹事も7名が参加しているため、我々の議論が令和臨調の中にも反映されていけばよいと思っている。令和臨調に実現して欲しいと思っているのは、提言活動に留まらず、国民のムーブメントに繋がり、変化が起き、そして国家ガバナンスについても改革が進むことである。提言するだけではこの国は変わらなかったということが、これまでの臨調のみならず、平成の30年間を見ても明らかだ。なぜ変わらなかったのか、変えるためにはどうしたらよいのかという点、むしろそこだけでよいから焦点を絞って議論していくべきだ。あまり制度論や法律論に傾注してほしくないというのが、経済同友会代表幹事としての私の気持ちである。特別顧問職もそうだが、副代表幹事がこれだけ参加しているため、令和臨調でどのような発言をしていくか、必要に応じて議論が出てくると思う。くどいようだが、やはり何としても実現するにはどうしたらよいか、そこにこだわっていきたいと思う。本会の第一のミッションも同じだと思っている。

Q昨日G7サミット(主要7カ国首脳会議)が首脳宣言を採択し、閉幕した。世界的な食糧危機を踏まえた支援措置やロシアに対する追加制裁等盛り込んだが、全体としての受け止めや評価などを伺いたい。

櫻 田:全体としては、日本や日本国民からみて、大変良い成果を生んだのではないか。ともすれば玉虫色、対立軸を明確にしない首脳宣言になりがちであったものが、今回は明らかに価値観を共有しない国という意味で、ロシアはもとより中国を視野に入れながら、民主主義を信条とする国として一致団結し、首脳宣言を発信できたことは大きな成果だ。台湾海峡についても2年連続で盛り込まれている。(中国が推進する)一帯一路構想に対する牽制を含めて、「債務の罠」に言及しながら、(発展途上国への)インフラ投資をしっかりやっていくと数値を含めて宣言した。今年8月にTICAD8(第8回アフリカ開発会議)が行われるが、日本はそこで主体的な立場をもっと明確にして欲しいと思っている。日本の経済団体としては、(アフリカ開発に)経済同友会が一番精力的な取り組みをしていると(国内外で)思われており、我々もそこに大いに期待する。(G7)全体としては、100点満点という言い方が適切かは分からないが、満足すべき成果が上がったと理解している。細かなところでは、特に対ロシアでの制裁について、それぞれの思惑や利害の相違が若干出たのは承知しているが、全体として首脳宣言が採択されたことはやはり大きな評価(に値する)と思っている。

Q:電力需給逼迫注意報や電力需給逼迫準備情報が発表され、節電の呼びかけが行われているが、経済同友会として、会員に対して何らかの呼びかけを行っているか。また、今冬に続き電力需給が逼迫する中、国内外のさまざまな情勢を踏まえた上で、エネルギー政策や電力システムの抱える課題についてお考えを伺いたい。

櫻 田:東京都がHTT(H減らす・T創る・T蓄める)を進めているが、節電を含む喫緊の対応について、本会会員の所属企業に対して周知している。(節電については)当然やっていくが、そのことよりも大きな問題は、(今年3月に起きた)福島県沖の地震で損壊した火力発電所の(完全な運転再開に)時間がかかっているところに想定外の猛暑が来たこと、さらには、外国発(の問題)ではあるが、燃料費の値上がりが重なったことである。これらについては、(福島県沖の)地震が起きて初めて分かったことではなく、そのような事態が起こればこうなるだろうとあらかじめ分かっていたはずなので、なぜもっと早くアクションを取らなかったのか、十分に反省する必要がある。このような事態になった以上、明らかなことであるが、安全性が確認できた原子力発電所は再稼働させることを、今以上に進めていかなければならない。いつまた同じことが起きるか分からないため、その点をしっかり望みたい。猛暑の影響で太陽光発電の供給がたまたまよくなっているが、今すぐに議論し行動に移さなければならないことは、原子力発電所を早く再稼働させることである。また、太陽光発電を含む再生可能エネルギーをさらに進めることに加えて、まさかのときに関東と関西の間で電力を相互に供給できるよう、周波数が50ヘルツ(地域)、60ヘルツ(地域)に分かれている問題を早期に解決することである。問題ははっきりしているので、(その解決を)早くする以外にない。

Q:経団連の第1回集計によると、今春闘の賃上げ率は2.27%と昨年を上回っているが、ベースアップはこの一部に留まっている。現状、エネルギーや食料品等の価格高騰で消費者物価指数が2%以上伸びているが、賃上げが物価上昇にも追いついているのか、お考えを伺いたい。

櫻 田:明確に、実質賃金は下がっていると言わざるを得ない。外国発(の要因)とはいえ、原油価格、輸送コストなどの上昇の結果、生活必需品が値上がりしているので、数字的に見ても(賃上げが物価上昇に)追いついていないというレベルではなく、実質賃金が下がっている。これについて、底上げを行う観点ではベースアップの考え方はもちろん必要である。ただ、これからの日本を考える上では、まずベースアップありきではなく、成果をどのように配分するかについて、折り合うかどうかは別として、企業と労働組合は議論しなければならない。企業側は、生産性上昇分について、成果給の形でしっかりと配分していく。配分にあたっては、賃金をコスト(として捉えるの)ではなく、価値を生む非常に重要な生産要素(の一部)として、労働というものに対してその価値対価を払っていく(という意識改革が必要だ)。これまで、生産性が上がった分について(賃金は)据え置かれたというか、はっきり言えば上がってこなかったため、これからは労働分配率を高めていく必要がある。残念ながら、働く人たちの賃金が上がっていない中で、来年に向けてまずやらなければならないことは、とにかく必死で生産性を上げることである。企業側は、労働分配率を上げたとしても株式市場や金融マーケットが(その理由を)理解できるよう、ストーリーをロジカルに組み立ててマーケットと対話をしていく(必要がある)。IRや株主への発信などを行いながら、労働分配率を上げていかなければならない。世界的に見てもこれだけ日本の平均賃金が低くなってしまった現状は、経営者として看過できない、深刻な事態と考えていくべきである。

Q:東芝は現在10社から買収や出資提案を受けており、これから選定を本格化していく見込みである。それを判断する取締役会12人のうちほとんどが社外取締役で、その中にはファンドから推薦された4人と、ファンドの現役幹部や業務執行者2人も含まれ、半分を占める状態にある。コーポレートガバナンスコードでは社外取締役の登用がよいこととされているが、東芝の取締役にファンド関係者が入っているような状況についてどのように見ているか。経済産業省は、東芝は原発事業や防衛事業など国にとって重要な事業を担っており、国益として支援に値する企業だと述べているが、産業革新投資機構(JIC)の名前が出てきたことに対し民業圧迫と言われると、尻込みする様子も見られる。これまでの振り返りと、国益としてどう考えるかを伺いたい。

櫻 田:様々な要素が絡んでいるため、明確な回答は持ち合わせていないが、社員の方々は堪らないと思う。今も昔も東芝は素晴らしいエンジニアや優秀な人材の宝庫であり、この状態が続けば続くほど、国外にブレーンが逃げて行きかねない。これだけを捉えても(長引く混乱が)国益には全くなっていない。安全保障という観点では、法の趣旨に則ってのことになるが、少なくとも原発の技術をしっかり持っているという点を考えれば、東芝が所有権を含めて外国資本の下に回ってしまうのは、国益にとってプラスとは言えない。ガバナンスという観点から社外取締役の役割やファンドについて述べると、教科書的には、様々なステークホルダーを代表する社外取締役がいる中で、身内の論理でなく物事を決定していくのは悪いことではない。一方、ファンドも様々な要素を削ぎ落としていけば、(出資した)会社の売買価値が上がり、買った時よりも高く売れることは、表面的にはファンドが望むところである。短期的な売買価値を上げることと企業の中長期的な価値を結び付けるのは、そう簡単にいかないと思っている。ファンド(そのもの)がいけないのではなく、ファンドが提案している短期的な価値上昇のスキームに対して、中長期的にはむしろもっと待った方がよいということがあったときに、それを説明できる社外取締役が(いないことが懸念される)。ポートフォリオとして様々な方に社外取締役になっていただき、社内の執行部の意見を聞きながら判断していく構造になっていることが一番良いガバナンスだ。しかし、現在の状況を見ると、少しファンドの意向が強すぎるような構成に見える。社外取締役を辞任した方も、社外取締役やファンドがいけないということではなく、(社外取締役の属性に)偏りが見られることに対して株主の意向を公平に反映しているものとは思えないといった理由で辞任されたと理解している。

Q:本日、東京都が募集していた育休の新しい愛称が「育業(いくぎょう)」に決まった。仕事を休む期間ではなく、社会の宝である子どもを育む期間と位置づけ、意識を変えるための愛称である。小池百合子都知事が「育業してきますと胸を張って言える社会にしたい」と述べており、育休を取りやすい環境をつくりたいという意図のようだ。これまでは女性が出産や育児のためにキャリアを止めたり縮小したりしており、一方で、幹部候補生(の数)が少ない中で自社から取締役に女性を登用するにあたり(企業も)苦労していると推察するが、代表幹事ご自身の反省も含めてお考えを伺いたい。

櫻 田:社外取締役を除けば、国内では部長級に占める女性の割合はまだまだ少なく、反省しなければならない。個人的な経験を含めて、家事や子育てにおける女性と男性の負担は絶対に五分五分ではなく、相当程度が女性の負担になっている。加えて、今や共働きは当然で、むしろそれが経済的にも精神的にも家庭の幸せに繋がると考えた時に、問題はマクロではなくミクロだと考えている。マクロでは、例えば育休推進運動に反対する企業はいないだろう。一方、個社として考えた時に、経営者から部長、部長から課長とミクロに降りていくほど、結局、その人が育休を取得した分を誰がどう補填するのか解決策を提供しないまま、しっかり頑張ってくれという精神論で終わっている。「育業」はムーブメントとして大賛成だが、経営者としては、どうして(育休を)取れないのか、どのように仕事の配分や意思決定の仕方を変えるか、あるいはテレワークをしやすい環境にすれば育休が取れるようになるのか、というところまで降りて(考えて)いかなければならない。そこが圧倒的に足りていない。(私が提唱する)「生活者」という視点では、CEOや経営者も、(個人的な別の側面では)父であり母であり、祖父や祖母でもあるわけで、自分たちの生活や周りを見れば「育業」がいかに重要かはわかるはずだ。そうした声を素直に社会に持ち込み、会社に上げることが重要である。これをスローガンや運動ではなく、コーポレートガバナンスレポートに開示しようという動きがあるが、「育業」の進展が最終的には従業員のエンゲージメントを高め、営業成績を上げ、最終的には業績に繋がることははっきりしてきた。仕組みを導入して「育業」を推進し、それを誇れるような会社こそ社会に認められ、成果を上げていくと考えている。これはきれいごとではなく、実際に証明できる考えで、当社もチャレンジしているところである。エンゲージメントが高くなると業績が良くなると一般的に言われているが、それを相関関係など統計的に証明できないだろうかと(構想をしている)。それができれば非常に大きな非財務状況の開示になる。

Q:相関関係とは、自身の会社で調査してみようということか、それともどこかに調べて欲しいということか。

櫻 田:当社で調査する。難しいのは転居や転勤の問題である。育休を取った女性が復職し、しばらくの時短勤務期間が終わると成長の機会ということで転居を伴う転勤命令が出ることがあると聞くが、それは全くよくないことである。キャリアと子育てを両方考え、本人自らが希望するケースもあるが、そうでないにも関わらず辞令を出すケースもあるため、本人の意向を汲みながら男女関係なく(判断していく必要がある)。転勤をどう捉えるかは、これからのリクルートや社員のエンゲージメントに影響してくるため、現時点で明朗な答えを持ち合わせていないが、検討しなければならない課題である。現在少しずつトライを始めたところである。

Q:電力需給と賃上げについて伺いたい。先ほどの回答で、原発を再稼働すべき、賃金を上げていくべき、というのはもっともだが、足元でどのような対策を取れるのかという問題がある。原発を動かすには、政治が決断して地元の理解を得る必要があるが、現状、参議院議員通常選挙期間で、原発は今までもほとんど再稼働されていない中、今夏の間に地元の理解が得られるのか。梅雨明けして夏に入り、これからますます電力が必要になるが、原発の再稼働を待っていて電力不足を防げるのか、(足元の問題に対し)どのような手当があるか。また、日本の賃上げは年に一度春闘で決まるシステムのため、賃上げのモメンタムはあるものの、物価が上昇している現状でも来年の春まで月例賃金は上がらない。では賞与で賃上げするしかない、という話になるが、賞与も半期に1度であり、夏季賞与は既に終わったため、次は冬まで賃上げしないのかという話になる。日本には制度上の問題があるのではないか。物価が上がっていく中で、個人消費が萎めば景気が腰折れして、今後景気が戻っていかないのではないかと思う。賃金の上げ方にどのような手段が取れるのか、経営者である代表幹事のお考えを伺いたい。

櫻 田:いわゆるベースアップという制度で(給料の)底上げをしていく考え方は、一定の年次までは必要だと思っている。給料のほとんどが生活給であり、貯蓄に回す余裕がない方、一般的には若い世代や賃金水準の低い職種では、やはりベースアップという考えが必要だ。だが、ベースアップがずっと続いていくのではなく、ある一定の年齢や職種になれば成果給に変わっていくべきで、年1回の賃上げという発想ではないと思っている。ただ、これは議論の(余地が)あるところである。例えば工場で働いていて、時間給でないと成果を測れない人については、やはりベースアップと時間給が関係してくるだろう。結局のところ、人手が足りていないのは間違いないし、これからますます労働人口が減っていくため、賃金の低いところには人材が集まらないという状況をつくらなければならないと思う。要するに、(労働の)対価に見合う賃金を払えないところに人材が集まらないようにする。人材の流動化、転職をしてより自分に合ったところに移っていく仕組みが日本にはなさすぎるので、一つのところにずっと勤めることを美徳とする考えがあったのは事実だ。ただ、もうその時代は終わりつつある。より自分の生活や目的に合ったところに移り、(より良い)賃金を求めて動くことがもっと起きるようにしていくしかないと思う。(賃金を上げるためには)経営者側だけではなく、働き手自身も新しい職を探していくというマインドセットが必要だ。国も(流動化を促す必要があり)、転職をサポートする企業もあるため、海外で(既に)そうなっているように、より良い仕事を求めて(転職する)という社会に早くなっていくべきだ。例えばコロナ禍でレイオフ(一時解雇)された、もしくは退職したトラック運転手や港湾労働者が、コロナ禍が落ち着いても(元の職場に)戻ってこないことで、今、サプライチェーン問題のボトルネックが起きている。必ずしもうまく回っているわけではないが、これは雇用の流動化の表れだと思っている。日本にも早くそういったものを持ち込んでいかない限り、解決すべき因果の分からない話がずっと続く。同じところにじっと留まって、今もらえる賃金で何とか頑張るしかない、と落ち着いてしまうのではないか。これを早く変えていかなければならない。また、電力需給逼迫の質問に対しては、打つ手はそうない。足元でこの夏どうするのかという問いには、東京都の呼びかけのように節電、あるいは太陽光発電を含めた再生可能エネルギーを最大限活用すること以外には方法がないのではないか。場合によっては計画停電までいくかもしれない。いつも申し上げている通り、「喉元すぎれば熱さを忘れる」ということがまた起きる可能性があるので、あらかじめ宣言した上で国民、生活者に我慢してもらい、負担してもらうしか打ち手はなく、奇手、妙手はない。

以 上

 (文責:経済同友会 事務局)


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