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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2022年5月17日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、補正予算案、ロシアへの入国禁止措置、サハリン・プロジェクト、コロナウイルス感染対策で営業時短命令を受けた飲食チェーンの訴訟、経済団体の役割、経済同友会のあり方、マスク着用の緩和について発言があった。

Q:本日、物価高騰対策などを盛り込んだ2022年度の補正予算案が閣議決定される見通しだ。歳出規模2.7兆円の全額を赤字国債で賄う方針で、国の財政状況が一段と悪化する懸念もある。今回の補正予算案の編成に関して見解を伺いたい。

櫻 田:これまでの新型コロナウイルス感染症対策とそれに関連する経済対策で100兆円規模の赤字国債が発生している。誤解を恐れずに申し上げると、それに2.7兆円が加わることは、決して良いことではないが、マーケットに対してネガティブなインパクトを生むものではない。大きな問題があるとすれば、補正予算案がどういう論議を経てどのような目的や効果を狙い編成されたかが詳らかになっていないことであり、一般会計予算に比べると、十分な論議がされずに決定した印象がある。これまでも申し上げてきたことだが、補正予算については、財政民主主義やワイズ・スペンディングの観点から問題意識を持っており、それぞれの目的と発揮される効果について、しっかりと説明できるものであってほしい。残念ながら、過去において補正予算を含む約9割の新型コロナウイルス感染症対策費の使途がわからず、国民に十分な説明ができていないという報道もあった。これが事実だとすれば大きな問題であり、十分な説明をしていただきたい。

Q54日にロシア外務省が入国禁止対象の日本人63人を発表した。経済三団体からは櫻田代表幹事だけが対象となっていた。この理由や受け止めを伺いたい。

櫻 田:正直なところ、理由についてはわからない。私自身はさまざまなところで自分が思うことを正直に発信してきた。他の経済人に比べて私だけが何か特別に違うことを言っているかもわからず、そうなのかという程度に受け止めている。私自身としては思い当たる節はなく、不可解というか不思議である。

Q日本政府はロシアからの石油の段階的禁輸を決める一方で、サハリン12の権益は維持するという方針を決めた。この点に関して代表幹事の評価を伺いたい。

櫻 田:時間軸という観点では、これまでも、直ちに権益を売却する方向で進めるべきだとは申し上げていない。2月下旬時点で、ロシアン・アグレッション、ロシアの侵攻と(様々な人道上)あってはならないことが起きているにも関わらず、何ごともなかったかのように振舞うのはいけないことであり、その観点からサハリンの権益についても対処していくべきだと発言した。直ちに撤退すべきということではない。その後G7、特にEUでは動きがあった。石油やガスを(ロシアに)依存しているドイツですら、(禁輸を)決断している。日本政府としても価値観を共有するG7と歩調を合わせ、石油を徐々に禁輸するのは正しいことだろうと思う。権益そのものについては、確かに政府が発言しているように、今ここで手放せば中国を利するばかりという見解もある。そうかもしれないが、だからといって、5年も10年も続けるのかというと、これもまた違う。一般的に権益の契約というものは、権益を得ればその後コストフリーということはなく、権益を持ち続けるだけでも一定の金額を相手国に払い続けなければならないという条項があるとも聞いている。その意味で、権益を持ち続けることがすなわちコストフリーではない。一定の時間稼ぎをしながら、ロシア以外の国に代替資源の購入先を求めていく戦略であると理解している。それを早く、しっかりやるということだろう。そして、その購入先は、同じ価値観を共有する米国や豪州であろうと思っている。

Q:新型コロナウイルス対策として東京都が飲食チェーンのグローバルダイニング社に出した営業時間短縮命令について、東京地方裁判所はこれを違法とし、一方で、同社への損害賠償は認めないという判決を下した。本件について受け止めを伺いたい。

櫻 田:控訴の用意があるようなので、(今の段階で)結論をどうこう(お話し)する立場ではないが、自由経済、民主主義のもとで経営する企業の立場から言えば、恣意性というか、予見可能性が高くないという非があるものについては、しっかりと意見を言っていく、主張していくという意味で、(グローバルダイニング社が)訴訟を起こした判断は正しかった。判決は、合理的な法的根拠に基づいたと思われないものに対して、憲法(上の職業選択の自由に保障される営業の自由)にも照らせば、企業の立場は理解できるという判断だと思う。一方で、前例が何もない中、新型コロナウイルスという初めての敵と戦うにあたって、できる限りの情報に基づいて判断を行った結果として時短営業命令を出した東京都の立場については、経営判断の原則に近いと思うが、合理的な判断をしようと努力した結果であり、それをもって過失があったとは認めず、何か間を取っているように見えるが、今回の地裁判決は合理的な判断だったと思う。(両者の)決着という話よりは、むしろ、今回の判決が示唆することは、法を行使する立場にある人は、可能な限り科学的根拠を持ってわかりやすく説明しなければならないということである。受け手が、恣意性があったと感じるような(命令の)出し方をしてはいけない。これは一つの教訓と言えるだろうと思っている。

Q2002528日に経済団体連合会(旧経団連)と日本経営者団体連盟(日経連)が統合して日本経済団体連合会(経団連)となって、今年で20年を迎える。その間、法人税率は度々引き下げられ、2000年代に40%台だったが現在は20%台に下がるなど、財界の主張が通っている部分もあろうと思う。この、両団体の統合により、政治や政策に対する財界の影響力は強まったかと見ているか。また、経済三団体に加え、新経済連盟や国民生活産業・消費者団体連合会(生団連)など、財界も多様化しているが、経済団体の役割の違いをどう考えるか。さらなる統合は必要か。

櫻 田:統合という意味ではなく、経済団体のあり方とは何かについて、内部で議論している。戦後70年超が経ち、経済同友会の役割を見ても、不変であるべきところもあるが、大きく変化すべきところがあり、その点について課題がないとは言えない。本会が2020年に立ち上げた未来選択会議では、16歳から70歳を超える方まで、さまざまなステークホルダーが集まって、日本の未来を左右するエネルギー政策、財政問題、選挙制度等について議論してきた。その中で、高校生や大学生から、「経団連、経済同友会、日本商工会議所とあるが、違いは全然分からない」と言われた。さらにストレートに言うと、「おじいさんたちがいっぱい集まって難しいことを話しているのは分かるが、私たちと関係のある議論をしているとは感じない」「父がよく経団連のことを話すので、経団連という団体は分かるが、同友会との違いは分からない」ということだった。これを批判だとは思っていないが、強烈に印象に残った。つまり、経済団体は、誰のために、何を目的として存在するのかが問われ始めている。経済だけでこの国が成り立っているわけではなく、今、ステークホルダー資本主義が大きなテーマとして現れ、(岸田首相が提唱する)新しい資本主義、我々が生活者共創社会と呼んでいる社会を作ろうとしている。その中で、経済団体の役割が経済一辺倒では、(こうした社会の実現が)進まないのは言うまでもない。加えてコロナの問題があり、今回のウクライナ危機で示されたように、経済と安全保障は表裏一体の関係にある。奇しくも、つい先日、経済安全保障推進法案が成立した中で戦後70年間を振り返ると、いわゆる経済団体の役割は大きく変わってきたはずだし、これからもっと変わっていかなければならないと思っている。経済三団体、または四団体が統合すべきか否かという質問は、そもそも何のためにそれぞれの団体は存在しているのか(という問いだろう)。他団体に関して述べる立場にないが、経済同友会は何のために存在するかを自問自答しながら、本会の生き方、進み方を考えていく必要がある。(私が)言えることは、主として経済分野の問題であったとしても、経済人だけが集まって何かを決めるということでは、国民に対し説得力を持たない。今、国が抱えている問題は経済だけで解決できるものは少ないため、多くのステークホルダーを巻き込む必要があることから、今の(経済団体の)あり方だけでは駄目だと思う。それぞれの経済団体は、性格も全く違うし、個人単位で所属するか、企業単位で所属するかという大きな違いもあるため、一つにまとめること自体にはメリットがほとんどない。逆に言うと、経済団体、特に私が責任をもって発言できる経済同友会については、これからあり方をしっかりと考えなければならない。そのため、昨年度より、市川晃副代表幹事を委員長とする経済同友会の機構改革委員会(通称・あり方委員会)(を設置しており、議論)の中からさまざまな提言が出ている。それらを着実に実行していくことによって、国民から、経済同友会は自分たちの関心の高いテーマを扱っていて、よい意味で政府とも一定の適正な距離を維持していると思ってもらいたい。そして、何よりも期待したいことは、若い人たちが、ウクライナ問題や原発、選挙、財政などについて経済同友会はどういう発信をしているのだろうかと気にしてくれるようになることであり、そうなれば望外の喜びである。

Q:他の経済団体に比べて、経済同友会には、骨太の意見を言う人が多かった。会員が個人の資格であることから、思い切った意見や尖った意見を述べてこその経済同友会だと思うが、どう考えるか。また、学校と企業経営者の交流活動や震災時の専門高校への支援などの活動も活発だが、これらを広く知らせるために、若者に対してどういうアクションを起こされるのか。未来選択会議を発展させていくというお考えなのか。

櫻 田:経済同友会らしさとはどういうことか(を考えるにあたり)、経済同友会設立から76年間の歴史を振り返ってみた。(本会の)設立趣意書は、時代に合わなくなった部分もあるが、多くは現在にも当てはまる。特に冒頭の「日本はいま焦土にひとしい荒廃の中から立ち上がろうとしている」という部分については、現在の日本はそれに近いどころか、場合によってはそれ以上に厳しい状況にあるかもしれない。既得権、あるいは守旧派に守られて、にっちもさっちもいかない現状について、今後国の借金を返していかなければならない若者から見ると、いい加減にしてくれという気持ちがあると思う。そういった気持ちに対して、我々は、おじいさんの集団だと言われて引き下がるわけにはいかない。やはり、責任ある大人として、将来を担い未来を選択する権利を持っている若者の声を聞くだけではなく、やや上から目線な言葉になってしまうが(若者を)啓発することも含めて、行動する必要がある。(未来選択会議で若者に)声高に主張していただき、その意見を受け止めて行動していきたいと思っている。

Q:トップになってこそ意見が言えるという面もあろうかと思う。他団体の一委員長ではなく、経済同友会の代表幹事だからこそ意見が言えるという思いがあったのか。

櫻 田:他団体では発言ができず閉塞感があったので、経済同友会でもトップがよいと思ったなどということは全くない。ただ、どんな組織でも、代表者はよく考えて発言をするし、悩む。悩んだだけのことをしっかりと発信していこうという気持ちは、そうではない立場のときより強いのは間違いない。(私自身が実践)できているかどうかは別として、やはり代表の立場にいる人間として、他の役職の方より、一生懸命に悩み、時間をかけてよく考えるというのは当然の責任だと思っている。

Q:政府や国会などで、マスクの着用を巡る議論がされている。外食業界ではマスクを外して接客を行う企業が出てきたり、製造現場では屋外や回りに人がいない場合にマスクを外して作業を行うところも出てきている。マスクの着用を緩和すべきかどうか、見解を伺いたい。

櫻 田:経済同友会として組織的な議論をしたことがないので、個人的な見解として申し上げる。オミクロン株を含む新型コロナウイルス(への最も有力な)対策は、社会的な免疫力をつけることだと思っている。そのためには、一にも二にもワクチンだ。国民全体の(3回目)接種率が55%というのは決して高い数値ではないし、特に若い人たちの接種率が課題になっている中で、国民全体の3回目接種の割合が6割、7割、8割、9割と上がっていく見込みが立つのであれば、経済をしっかり回すという意味を含め、少なくとも広い空間や通気の良いところでは、マスクを外してもいいのではないか。夏に、マスクだけで熱中症になるとは思っていないが、誤解を恐れず申し上げるならば、新型コロナウイルスは、今後もずっと、5年、10年と続くものと思って、社会やすべてのオペレーション・制度を設計すべきである。そして、その間、新種株が出てくると考えなければならないので、いつまでもマスクがないと生活できない状況に置いておくのは健全ではない。むしろ、効果的なワクチンをどんどん作っていく、あるいは経口薬をどんどん市中に提供していくことの方が正しい。したがって、できる限り早くマスクは外すべきであると思っている。

以 上

 (文責: 経済同友会 事務局)


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