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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

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日時 2022年2月16日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、新型コロナウイルス感染症対策、ウクライナ情勢、物価上昇などについて発言があった。

Q:ワクチン接種が始まってから明日で1年が経つ。本日、大手金融企業でも職域接種を開始し、3回目の接種も本格化する。この1年間の政府のワクチンを巡る対策について評価を伺いたい。その上でワクチンパスポート等、どのような施策の改善が考えられるか。

櫻 田 : この1年で政権も変わった。当初、ワクチン接種は、菅義偉前政権の下で遅れが生じていたが、(前首相の)号令一下で進んだ。1日100万回接種と菅前首相が発表したときには皆が疑心暗鬼で、それまでの実績と比較して本当に達成できるのかという雰囲気があった。だが、それが実現し、100万回を大きく超えて達成した。(今から振り返ると)菅前首相が自民党の総裁選に出馬しないと発表した頃が感染者数のピークであり、その後に減少した。経済もそれにつれて消費を中心に活発化した。10月~12月のGDPの伸びを見てもわかるようにV字回復に見えた。岸田政権は(そのタイミングで)かつてない規模の経済対策を打つことにしたが、そこにオミクロン株という、これまでのワクチンの効能が必ずしも現れないものが出てきた。(感染力が強く)あっという間に感染が広がることが分かっていたものの、いくら水際対策を打っても市中感染の96~97%がオミクロン株となった。その結果、まん延防止等重点措置がとられた。したがって、消費を中心に10月~12月に持ち直した経済活動は、もう一度ブレーキをかけられている。それが1、2月だ。その意味で、ワクチン以外の政府の対策は、個人的にはなぜそれが必要かについて科学的、統計的な根拠に基づいて説明がされたとは思っていない。人流抑制、会食の人数制限、時短要請についても、実施したことにより感染者数が減ったという科学的な説明がされているとは思わない。専門家が科学や医学に基づく検討をされたと思うが、出てくる説明は必ずしもそうではないと私は感じる。昨今の例でいえば、政府の基準と東京都の基準の違いがある。病床使用率については同じだが、重症病床使用率については大きく違いがあり、どうしてそうなっているのかが分からない。例えば、病床使用率が50%に近づいていることはわかっても、本当に入院すべき人が入院しているのか、時間との戦いの中で致し方なく入院させているのか、本当は入院しなければならない人が自宅療養しているのではないかといったことは依然としてわからない。もう一つは、ワクチンについては、(接種)対象となる国民分の個数を確保できたとの発表があったが、いつ、どこに、どれくらいの数が届くのか、民間が職域接種に協力しようとしているにも関わらず、まだはっきりしていない。1年を通して、正確性、リアルタイム性が足りていなかったことは明らかだと思う。いつ、なんどきかがわからない。ワクチンは間違いなく効いた。ワクチンに対する決断、行動は早かった。これは今後も期待している。しかし、それ以外については科学的、統計的な説明はなかったように思う。国民もなるほどという納得感ある説明を受けた記憶がないのではないか。経済については、日本は対外的に明らかに劣後し始めた。あれだけの経済対策を打ちながら消費が伸びないのは大きな課題である。コロナ疲れの中で、国民の活動、特に消費活動をどう伸ばしていくか。今の状況では必ずしも楽観視できないし、腰折れしてしまう懸念がある。是非、政府には、タイムリーに、どうしてかを正直にわかりやすく説明すること、理由をつけることをお願いしたい。これによってこそ国民がわかった、協力しようと思うのではないか。国民が協力しようと思えるメッセージが必要ではないか。

Q:(ワクチンに対する)決断が早かったとのことだが、日本経済の回復が遅れている理由の一つとして、ワクチン接種の遅れが指摘されている。実行ベースではどう見るか。

櫻 田 : 最初の、100万回接種(を目指す)という決断は早かった。その後、ワクチンはどこに何個あるのか、打ち手について日本全国でどうなっているかは、タイムリーさがなく明らかではなかった。それが原因で接種が遅れたということがあると思う。決断は早かったが、執行力がなかった点については未だ課題があると思う。

Q:ウクライナ情勢が緊迫化している。原油価格や株式市場が反応し、天然ガスの調達にも影響が出ている。昨日、ロシアが一部の部隊を撤収すると発表したが、まだ不透明な状況にあると思う。ウクライナ情勢が経済に与える影響をどう見ているか。

櫻 田 : 資源価格の高騰という点においては、非常に深刻な影響を与え得ると考えている。現時点では武力行使には至っていないが、いざ始まったらどうなるかという点は不透明である。プーチン大統領と米欧の交渉に落としどころがあるのかどうかという点については、クエスチョンマークであり、簡単にはいかないだろう。この膠着状態は、波が寄せたり引いたりを何回も繰り返すのではないかと恐れている。相互に、言い分はわかったということにはならず、外交的に、どちらも勝利したと説明できるようなソリューションを見出しにくい。膠着状態が続くとになると、経済への影響は深刻になると言わざるを得ない。特に、資源外交がリンクされてくると、日本はまともに影響を受ける可能性があり、円安とあいまって、日本経済に良くない影響が長引くのではないかと懸念している。

Q:食品を中心に値上げの発表が相次いでいる。政府は物価上昇から賃上げの原資とし、そこからの消費活性化という経済回復シナリオを9年前から描いている。企業間交渉で価格の適正化による値上げの流れがある一方、原油や原材料、運送費の高騰でコストが上昇し値上げにつながっている流れもある。現状では、この両方が一緒になっていると思うが、こうした中で、大手メーカーが商品価格を上げる発表を行ったところ、一部のスーパーマーケットで(一時)商品の取り扱いを中止するといったことも起き、一連の情報がインターネット上で話題になっている。中長期的な日本の経済回復シナリオを考えた場合に、こうした動きについてどう考えるか。

櫻 田 : 難しい問題である。スタグフレーションになりつつあるのではないかと思う。少なくとも、コアコアCPIの上昇率を見る限りにおいては、日本は、世界で最も低い。しかし、生鮮食料品も含めて見ていくと、間違いなくインフレは起きているということになる。原因は、需要が旺盛で価格が上昇しているということではなく、コストプッシュである。背景には、エネルギー、小麦粉など、原材料価格の上昇がある。そこに、さらに円安が拍車をかけている。コスト上昇による逆ザヤ、つまり、仕入れ値よりも売値の方が安いという状態を、さすがに企業は許容できない。やむなく値上げをしているというケースがほとんどではないか。したがって、それ自体はやむをえない。では、消費者はどうかと言えば、賃金が上がるところもあるだろうが、(おしなべては)上がってこない。将来見通しが明らかでないことだけでなく、コロナ危機の中で気持ちがシュリンクしていて、必要なもの以外は買いたくない(という心理が働いている)。その結果、需要が伸びない中でコストは上昇し、値上げに踏み切る。しかし売り上げが追いつかないという、負の循環になりつつある。この点は心配である。では、そうした負の循環が、日本経済全体で起きているかと言えば、これはまた複雑である。本会で議論をしていても、明らかにK字(回復)の状態となっている。史上最高決算という大変景気の良い企業もある。経済全体がニューノーマルに変わりつつある中で、eコマースやテレワークに対応することで伸びている産業・企業が存在する。その一方で、食品、交通、旅行といった業界は、かなり厳しい。(こうした状況を理解した上で)全体を見てどうなのか、ということである。GDPに占める産業のウエイトについて、景気の良い産業のウエイトが高ければ全体として上昇し、そうでなければ下降する。私たちが普段目にするのは、どうしても消費者に関わる産業・企業が多いので、厳しく映る。経済全体はどうかといえば、そこまで悪くはないと思っている。消費者の行動によって経済が大きく左右されるとすれば、消費者心理や行動が活性化しなければ、経済は戻っていかない。米欧を見ればよく分かるが、オーバーヒート気味に、消費者の活動が活発になっていることは間違いない。今の日本政府のやり方は、慎重に、抑えて、我慢して、ということを繰り返しているので、よし、行こうかという消費者心理に結びつかない。この点を一番心配している。

Q:経済界はこれまで水際対策の緩和を求めてきた。(この段階で)政府は緩和に向けて動くと報じられており、明日にも全貌が発表されると言われている。水際対策の緩和についての受け止めを伺いたい。

櫻 田 : なぜ水際対策を強化するかとの観点で考えたい。新規感染者の90%以上がオミクロン株と分かった段階で、大きな判断をすべきだったのではないか。効果のない水際対策を続けてしまったのではないか。日本人にファクターXがあるかは分からないが、海外と比較して日本が全く違うとは思わない。海外の動向や経済の影響をプラスマイナス両方から見て判断すると、(緩和は)遅かったと考えざるを得ない。なぜ必要かについて正確で納得感のある説明がされているとは思えない。

Q:水際対策が仮に緩和された場合、空港でのチェック体制や入国した外国人の行動追跡について、どこまで国がコントロールしていくべきか。経済界の意見を聞くと、自由にすべきであり、国が管理する形でない方がよいとの声が聞こえるが、政府としてどのような運用の仕方が望ましいのか。

櫻 田 :感染を(完全に)防ぐことより、医療・介護体制の崩壊を避けなければいけないことは間違いない。(新型コロナ)感染者が医療・介護施設を占有してしまうだけでなく、一般の患者も影響を受けるためである。医療・介護体制の崩壊を避けることが最大の目的であり、それを抑えることに注力すべきだ。海外から人が入ってくると、どのような形で医療体制が逼迫するのだろうか。そこは(単純には)リンクしないと思う。日本人と外国人で体質の違いがあると立証されているとは思わない。オミクロン株が感染のほとんどを占めるようになった以上、(海外からの)人流や人数の制限が医療体制の逼迫(を抑えること)につながっていると、十分説明できているとは思わない。私は(入国者の行動を)自由にしてよいのではないかと思う。政府には、ウイルスも人を殺すが、経済の悪化も命に影響を与えることを忘れないで国の運営にあたってほしい。

Q:米国のウォルマートではマスクを外して接客してもよいと決めたとの報道があった。日本でそこまでやるかはともかく、ウィズコロナを考えると、出口に向けた検討はそろそろ始めてもよいのではないかと思うが、そこまでの議論はない。いつのタイミングで始めるべきか。

櫻 田 :前政権時代、西村康稔前経済再生担当大臣と新型コロナウイルス感染症対策について意見交換を行った。要請を受け、私たちも要望をお伝えしたが、ウィズコロナについてはずっと言い続けている。新型コロナウイルス感染症は終わらない。人類が始まってから、撲滅したと言える感染症は天然痘しかないからだ。今後も新たな感染症や新型コロナウイルスの新しい変異株は出てくるだろう。オミクロン株の次も出てくる。ウィズコロナに合わせて何をするか、企業も考え始めないといけない。政府は、アフターコロナはないと宣言すべきだ。私はそう述べてきたし、今でもその考えに変わりはない。したがって、議論すべきというより、とっくに議論していてよいことだと思う。企業によっては既に始めている。BCPはまさかの事態に備えて行うものだが、新型コロナウイルス感染症とともにニューノーマルを生きる経営を考え始めるべきで、経済同友会でもその議論を始めている。また、新型コロナウイルス感染症対策で100兆円近い財政支出をしたが、その回収をどうするのかについてもそろそろ議論を始めるべきだ。政局に関わる議論であり、私が発言すべきではないかもしれないが、ファクトだけ言えば、米国や英国も増税の議論を始めている。英国のジョンソン首相は官邸でのパーティー問題で大変厳しい立場にあるが、増税についてはやると言い切っている。日本も学ぶべき点があるのではないか。アフターコロナはない。ニューノーマルがウィズコロナだ。官民ともに、それに向けて議論すべきだ。これは成長につながる話であり、成長戦略に入ってくると思う。そして、財政についてもそろそろ議論を始めないといけない。

Q:水際対策について、政府は1日の入国者上限数を5,000人に引上げ、隔離期間を短くするとみられるがどう考えるか。

櫻 田 :なぜ入国者上限数が5,000人なのか理由がわからない。医学的根拠はなかったとしても、統計的な説明があってもよいのではないか。SNS等の情報を活用し、ビッグデータ解析をしている山猫総合研究所や株式会社QUICKなどが参加するCATs(Collective Analysis Teams=リアルタイム社会診断システム)と呼ばれるチームの分析を見ると、そろそろ新規感染者数はピークアウトするとはっきりしている。これは医学的分析というよりもビッグデータ解析そのものだ。過去の例を見ると当たっている。そういう根拠があり、人数についての基準を決めた等の説明があるべきだ。2つめは、隔離期間が短くなるとどのようなよいことがあるのか、という点だ。おそらく統計的な分析から導き出されたはずなので教えて欲しい。そうでなければ、なぜ日本(の対応)は海外と違うのかとの説明が求められる。海外と取引していると、我々も説明を求められるが、それができない。日本は変わった国だと思われるのはよくない。(根拠に基づいた説明を)是非お願いしたい。

以 上

 (文責: 経済同友会 事務局)


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