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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

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日時 2022年2月1日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、北京オリンピック、ミャンマー情勢、新型コロナウイルス感染症、新経済連合との共同意見、春闘、原油価格の高騰などについて発言があった。

Q:北京オリンピックの開催が今週4日に迫っている。日本政府も閣僚を派遣しないなどの動きがある。改めて、ウイグルが問題視され外交ボイコットがある中での開催についての見解を伺いたい。

櫻 田 : 背景はいろいろあるが、第一に選手の立場での観点からいうと、万全の策を期して安全・安心を確保することで前提である。オリンピックそのものがスポーツの祭典として開催されることには大いに賛成している。そうでなければ、選手や世界中の人々が4年も待った甲斐がない。一方で、外交ボイコットという政治的側面で見た際には、いわゆる民主主義国から正式な形で国家元首は元より政治家が参加する国がほとんどない。逆に、オリンピックの開催に賛同を示し、国家元首を含めて参加する各国の顔ぶれをみると、結果として民主主義的ではない。いわゆる私たちが言っている価値観を共有する国ではない国の人々が参加している。やはりオリンピックが政治的に利用されていることは否めない。その中で日本のスタンスは間違っていない。政府の正式な立場にある人を送らなかったというだけではなく、人権問題や報道の自由に対する制限については、引き続き毅然としたメッセージを発信していくべきである。

Q:以前の会見では日本の経済界や政界の立場では、目立った荒立てる行動や発言はしない方が得策という印象を受けたが、改めて見解を伺いたい。

櫻 田 : 以前の会見で「旗幟鮮明にすることが必ずしも国益にかなうこととは思わない」と発言したことを記憶している。今でもそう思っている。但し、旗幟鮮明にしないということは、人権や報道の自由に対して、あえて発言をしないことではない。舞台や場所が違うということである。中国は、人権問題や報道の自由について透明性を明らかにした上で説明する責任はある。これについては立場が個人や経済界であることに関わらず当然、主張していく。オリンピックに絡める必要はないことから、(北京オリンピックの場で)旗幟鮮明にすることが国益にはならないと申し上げた。

Q: ミャンマー軍のクーデターから1年が経過した。今も弾圧が続いているが、1年経過しても現状が改善していないことに対する受け止めと日本や国際社会が事態の打開に向けてするべきことを伺いたい。

櫻 田 : 言うべきことは言っている。林外務大臣も「暴力によって死者が発生している状況を非難するだけではなく、今後の善処に対して強い要望を出している」と発言している。各国もこのような動きをしているが、問題はミャンマー軍に対してどれくらいのインパクトを与えているかということである。この1年間、ほとんど動きがない。軍は反政府運動に対して実力行使をしているのか、または少数民族に対して実力行使しているのか、実態が分からなくなっている。何が起きているのか背景もわからず、透明性も不足しており、いろんな情報が飛び交っている。一旦は暴力行為などの悲惨な状態は落ち着いているように見えるが、一年間を通して約1,500人が亡くなっている。このまま放っておくと時間の経過とともに忘れ去られてしまう。引き続き、価値観を共有する日本と欧米の各国とが連携しながら意見を発信していく他ないであろう。また、ミャンマーに対して中立的な立場で経済的な支援をしてきた国がある。具体的に中国だが、日本は中国との対話のルートがあることから、ミャンマー情勢に対して一緒に良い方向に向けて解決していこうと働きかけることはできる。いずれにしても不透明で混とんとした状態のまま、一年が経過したが、民主化に向けてクーデターを否定する動きは大きくは広がっていない。私は決して楽観していない。むしろこのまま時間が経過すれば、既成事実として軍がこの国を抑え続けていくことが起こりうると思っている。

Q:先日、政府が、濃厚接触者に求めていた待機期間を10日間から7日間に短縮にしたのと合わせて、日本人の帰国者や外国人の入国者に求める自宅での待機期間も10日間から7日間に短縮した。櫻田代表幹事は、以前から水際対策の緩和を求めてきたが、今回の判断についてどのように評価するか。また、今後の水際対策のあり方について、隔離を免除するなどさらに求めることはあるか。

櫻 田 : 正確には覚えていないが、現在日本国内での新型コロナウイルスの感染の約96%をオミクロン株が占めていると聞いている。つまり、オミクロン株が新規感染のほとんどを占めている。オミクロン株は、感染力が非常に強く(従来株の)2倍近いと言われている一方で、重症化率が低いことも分かっている。また、潜伏期間が極めて短く、通常3日間くらいであると言われている。これらが疫学的に立証されたかは別として、統計的に事実だとすれば、それらに照らしてどのように判断したのか、説明が足りていない。すなわち、(待機期間が)10日間は長いと思う。いわゆる自宅待機を含め、仕事に復帰できない方々が、エッセンシャルワーカーで多く発生すると、医療崩壊につながる可能性がある。具体的には、川上にある介護事業に従事するエッセンシャルワーカーの方々が6日間仕事に戻れないと、代わりに誰が従事するのか。当然のことながら、近隣(の事業所)から派遣するがそれも出来なくなる可能性がある。仕方なく、介護施設から病院に転院する事態が生じるが、病院がそれに対応できなくなると破綻が起きる。つまり、医療崩壊を起こさないようにするためには、統計や事実に基づいて、出来るだけ早く仕事に復帰できるようにしていくことが方法だ。その意味で、何故、待機期間が10日間、あるいは6日間なのかがわからない。2つ目として、待機期間を変更する理由を説明するマクロの絵が見えない。(我が国)全体で、新規感染者数が何万人で、そのうち重症者が何万人であるか。そして、重症者のうち基礎疾患を持つ人の割合がどの程度か、軽症者や症状が出ていない人の割合がどの程度かが分からない。おそらく(そうしたデータは本来であれば)分かるはずであるが、日本全体での全体像がわからないことから、想像するしかない。国会で議論されているが、なぜ人流(を抑制すること)よりも(集まる)人数(を制限すること)を重視すべきなのかが分からない。新型コロナウイルス感染症対策の一丁目一番地は、ワクチン(接種の拡大)とされているが、日本全体でブースターショット用のワクチンの在庫がどこに何人分あるのか、どのような基準で、どのように配布するのか(が不明だ)。そして、ワクチン接種における問題が、打ち手が確保できないことなのか、場所を確保できないことなのかもわからない。マクロの絵が見えない中で、(政府からワクチン接種を)急ぐとの話が繰り返されている。政府は、(マクロの状況が)分からないから説明できないのか、そうではなく、分かっているが不要な不安を国民に与えたくないから、敢えてマクロの絵を見せていないのか(どちらなのだろうか)。ワクチンの数や場所、いつまでにどれくらいどこに配れるのか言えないのはなぜか。依然として、サイレント(説明がない状況)であることが、(国民の)フラストレーションが溜まる最大の原因ではないか。政府には、予測できない状況を出来るだけ早く解消することをお願いしたい。

Q:水際対策のうち入国時の待機機関に関しては、以前の10日間から7日間に短縮されたが、さらに短縮すべきか。

櫻 田 :(日本における)感染者の96~97%がオミクロン株であることを踏まえると、水際対策を7日にしておく意義はあまりないと思う。(オミクロン株の)潜伏期間が3日間だとすればなおさら必要ないだろう。その説明が国内にも海外にも出来ていないことから、経済界としては説明を求めたい。海外の取引先や海外の子会社のトップから理由を聞かれるが、我々企業経営者は説明できない。先ほどの話と同様で透明性がなく、全体が見えないので、見通しが立たない。我々企業経営者が海外に対して説明できるようにして欲しい。

Q:東京都の病床使用率が緊急事態宣言の目安である50%に近づいているが、国は緊急事態宣言の発令にかなり慎重である。岸田首相は、国としては緊急事態宣言の発出を考えていないと述べた。緊急事態宣言の発出時期についてどう考えるか。

櫻 田 :東京都の病床使用率は1月30日時点で48.5%である。一方、重症者の病床利用率は、東京都の基準で4.5%である。病床使用率が5割を超えたら緊急事態宣言を発出すると考えるのであれば、現在入院している人たちが本当に入院する必要があるのかの説明が必要だ。実際には、自宅療養で対応できる人たちが含まれているかもしれない。逆に、基礎疾患があり、直ちに入院すべき人たちが待たされているかもしれない。実際にり患した人達の重症度を区分した上で入院しているのであれば、病床使用率の48.5% は大変深刻な数字だが、そうではないかもしれない。病床利用率が48.5% である一方で、重症者病床利用率は、東京都基準で4.5%であり、この極端な差について分かりやすく説明すべきだ。自宅療養で対応可能な人を含めて48.5%だとすると、真に入院が必要である人たちが入院すべきだ。その上で本当に危機的な状況であれば、緊急事態宣言はあり得るが、私は緊急事態宣言により経済を締め付けることのリスクの方が怖いと思う。安易に緊急事態宣言を発出することには反対だ。昨日、経済同友会の幹部の企業経営者から経済状況について話を聞いた。非常に景気の良い企業とそうではない企業の差、いわゆる「K字回復」がますます明確になっている。景気の良い企業についても、B to B、あるいはB to Cの企業の経営者は(今後の見通しが)少し心配だとの話だった。購買意欲、経済に対する活動意欲が必要以上、実力以上に落ち込んでいるとのことだ。現在、経済が、良くなるのか、悪くなるのかの分かれ道にいる中で、マクロの絵や海外の状況を示し、それを踏まえて、日本としてどうしたいかを政府は示して欲しい。岸田首相の発言によれば、今この状況において緊急事態宣言の発出を考えていないとのことだった。良い方向に進めば、緊急事態宣言を発出しなくて済むと思う。経済界としては、新型コロナウイルス感染症も、経済もそれぞれ人を殺すことがあるため、政府や国民にはその点を理解いただきたい。

Q:重症者が非常に増え、いよいよとの状態になれば、躊躇なく緊急事態宣言を発出すべきか。

櫻 田 :そう思う。重症者については、重症化する前に対応することが大事だ。先日、経済同友会と新経済連盟が「新型コロナウイルス感染症への対応に関する緊急意見」を出した。その中で述べたとおり、早く感染者を発見することが重要であることを踏まえれば、現在のように検査キットが足りない状況はお粗末だ。これまでにも散々経験してきたことだからだ。これまでの定例記者会見の場で、(感染者数が抑えられて)時間がある時、経済が改善している時こそ、第6波、第7波に備え、準備をすべきと繰り返し述べた。今になって、検査キットが足りないというのはお粗末だ。この問題についてもマクロの状況が不明であることが問題だ。(検査キットを)いつ頃、何個確保できるのかわからない状況では、国民はフラストレーションが溜まるだろう。

Q:ワクチン接種について、東京都では自衛隊による大規模接種が始まった。経済同友会も前回の職域接種に協力したと承知している。今後も、職域接種を進める必要があると思うが、モデルナ社のワクチンについては熱が出たり、モデルナアームと言われる副反応が生じる中でファイザー社のワクチンを打ちたいとの声もある。こうした状況をどう見ているか。

櫻 田 :経済同友会としても積極的に対応したい。繰り返しになるが、ワクチンがいつ、何人分確保できるのかわからない状況だ。(政府は、)職域接種の対象(となる人数規模)について、これまで千人規模であったところを、500人規模に緩和したとのことだが、それにより、どのような良いことがあるのか、すぐにはわからなかった。500人にすることで、きめ細やかに対応できる(ということだろうか)。場所といった網の目を小さくできるという可能性があるが、500人にすると全国にどの程度の数の会場が設置でき、そこにワクチンがいつ、何個到着するのか。さらに、可能な範囲でワクチンの種別の内訳まで分かれば、500人になった意味がわかる。経済同友会としても前回と同様の協力体制を築きたいが、全体が見えない中で空振りになってもいけない。その意味で、(政府には)早くマクロの絵を示して欲しい。示せないのであれば、その理由を示して欲しい。わからないならそれは仕方がないが、わからない理由が示されないと、ますますフラストレーションが溜まる。そして、政府の対応も説得力を欠くことになる。何が本当なのかわからない状況である。

Q:先般、日本労働組合総連合会(連合)と日本経済団体連合会(経団連)の両会長が会談し、連合の吉野会長は正規・非正規や男女間賃金の格差是正を全体の底上げとして要望した。コストアップインフレの中で、欧米に比べると経済の回復が遅い状況ではあるものの、春闘を迎えて従業員側には賃上げに関する強い思いがある。これに関しての見解を伺いたい。

櫻 田 :(一つ目として)マクロ的には、一人当たりのGDPが大きく下がっており、相対的に日本は貧しくなっている。二つ目として、労働分配率も先進各国に比べると下がってきている。三つ目として、労働はコストであるというビジネスモデルから早く脱却しないといけない。労働は価値を生む大変重要な資産であると考えれば、その価値に対して正当な対価を払わなければならない。この三つのどれをとっても賃上げをすべきだという結論にならざるを得ないだろう。春闘があろうとなかろうと、経営者は安く仕入れて高く売ろうとは考えていない。ムーブメントとしての春闘はあってもよいが、経営者は足元のみならず、自分の会社の2~3年先をみて投資としての賃上げを考えている。それを前面に打ち出すべきである。

なお、昨日、経営者の意見を聞いたところ、今回、5%のベースアップを考えている企業もある。また、飲食を中心に大変苦労している企業もある。このような企業では、「政府の対策もあり何とか生き延びて一息ついていたところにオミクロン株が襲ってきた。経済を絞め殺すことはしてほしくない一方で、オミクロン株が去ってコントローラブルな状態になっても心配なことが二つある。」と言っている。一つは海外に帰ってしまった働き手が戻ってきてくれるかである。魅力ある賃金を払える国ではなくなってしまったため、労働力が手に入らない。もう一つは、内食に慣れて外食に行かなくなった国民が戻ってきてくれるかである。これからはアフターコロナではなく、ウィズコロナである。飲食店そのものが構造的な課題を抱えるとすれば、今回の対策では手が出ない。ビジネスモデルやポートフォリオを変えていかないといけない。景気のよい企業と厳しい企業に分かれ、中長期的にもK字型が広がってきている中で、春闘はどういう意味があるのかを考えなければならない。平均で見てはいけない。一律平均値で見る春闘は役割が変わりつつある。

Q:外国人の新規入国原則停止が続いている。一部の外国人からは、鎖国ではないかと批判を受けているが、どのように考えるか。

櫻 田 :全くそのとおりだ。重要なビジネスの契約の更改や人材の採用等、あらゆる場面で商談の機会がある。社内的にもウェブミーティングで済むところはウェブミーティングで対応している。鎖国状態が解けても、少なくとも我々は、ウェブで可能なことはウェブで済ませるだろう。しかし、個人と直接会わなければならない場面は当然ある。相手の表情を見る必要があり、会食をする場面などだ。より親しくなるために、夫婦で会って会食をするなどがあり得るが、これはウェブでは出来ない。そうしたビジネスチャンスを抑え込まれているのは事実であり、影響が少しずつ出始めている。つまり、日本に行けないのであれば他の国に行く、あるいは、日本に入国できないので第三国で日本人と会うといった判断が生じ始めている。こうしてますますビジネスがしにくくなっている。新型コロナウイルス感染症による犠牲者を出してはいけないのはその通りだが、経済も人を殺すことがある。失業者が増え、賃金が上がらない(と命に関わる)。そろそろ経済(を重視する方向)にシフトして欲しい。

Q:1月27日に新経済連盟と「新型コロナウイルス感染症への対応に関する緊急意見」を出した。新経連と新型コロナウイルス感染症に関する意見を出すのは初めてだと思うが、その経緯を教えて欲しい。また、今後、新経連と連携を深める可能性はあるか。

櫻 田 :経済同友会は、発足してから70年間以上変わらず、個人の資格で入会する。もちろん、会員が所属する企業と関係がないとは言わない。大きく関係していると思うが、個人の資格であるために自由度が高い。やりたいことや目的、志が一緒であれば、是々非々で、(他の組織などと)積極的にコラボレーションが可能である。一昨年発足した未来選択会議は連合の方にも継続して参加いただいている。それは彼らが労働者代表であるとの意味ではなく、彼らが重要なステークホルダーだからだ。同じように新経連とは、今回、問題意識が一致した。(今回、意見を連名で出したのは)特段、新経連だからということではない。逆に、新経連だからコラボレーションしないという理屈もないので、今回コラボレーションした。(今回、新型コロナウイルス感染症対策に関する)問題意識は一致した。今後ともこうした機会があれば一緒に意見を出すことは当然ある。それは、政治、政党についても同様だ。

Q:新経済連盟と経済同友会のどちらから話が始まったのか。

櫻 田 :おそらく先方から話があったと思う。是々非々でコラボレーション出来ることはやろうと判断した。今回発表した意見についても、ほとんど異議なく、両者が一致できたと思う。

Q:原油価格の高騰の影響が幅広く及んでいる。先週、時限措置としてガソリン補助金の支給が始まった。一方でトリガー条項の凍結解除を求める声も上がっている。この対策について見解を伺いたい。

櫻 田 :経済同友会では正式に議論をしていないので個人的な意見であるが、価格そのもの軽減に補助金を出すことについて、目的はよいものであったとしても、少なくとも価格は市場に任せる原則がある中でやはり一時的なものであるべきである。今回、トリガー条項に関しての議論があったことはよいことである。日本ではガソリン・揮発に関わる税金が二重・三重に輻輳していることは、日本自動車工業会も指摘している。今回を契機に、ガソリン・揮発に関わる税(のあり方)についての議論をすることは、少なくとも国庫を使って直接価格に補助金を出すことより、構造的に対処する点でよいことだと思っている。ただし、まだ結論は出ていないので何とも言えない。一方で、価格そのものについては、企業物価指数が9%近く上昇している。ガソリン価格が170円を超えた際に元売り段階で2~3円の価格が下がることが、需要者としての企業や消費者にどの程度プラスに働くかという点については、大きな影響はないであろう(と見ている)。むしろ中長期的にトリガー条項を見直していくことの方がより影響が大きいと思う。

以 上

 (文責: 経済同友会 事務局)


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