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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2022年1月18日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、新型コロナウイルス感染症対策、景況感、賃上げなどについて発言があった。

Q: 足元で新型コロナウイルス感染症が急拡大しており、11都道府県へのまん延防止等重点措置の適用が決まる見込みだ。感染拡大が危惧される一方、戻り始めてきた経済への影響が危惧される。この状況をどう見ているか。対応としては、経済重視、感染防止重視のさじ加減が非常に難しいと思うがどう考えるか。

櫻 田 : 

基本的な考え方は以前から変わっていない。科学的知見を可及的速やかに披露し続けて欲しいし、統計的データも可能な限りリアルタイムで発信して欲しい。(オミクロン株は)感染力が非常に強いが、重症化のリスクはかなり低いということが、日本だけではなく、世界各国でもわかってきている。そうした中で日本が採用しようとしているまん延防止等重点措置は、国民が納得しないと効果が上がらない訳だが、どうして必要なのかという説明が今ひとつ足りていないように思う。キーワードは市中感染と言われる。市中感染はもちろん怖いが、インフルエンザや普通の風邪にも市中感染はある。オミクロン株について市中感染がなぜ怖いのか。重症化率はインフルエンザよりも低いかもしれないことから、なぜまん延防止等重点措置なのか、しっかりした説明が必要だと思う。安全(を重視する)サイドに立つことや、最悪の事態を想定することは悪いことではないが、日本だけが特別に最悪の事態を想定する意味を政府は説明する必要があるのではないか。要請が認められると、1都11県程度がまん延防止等重点措置の対象となるが、東京都の病床利用率と重症病床利用率は、通常の病床利用率が19%程度、重症病床利用率については1%程度である。これだけの差(病床の空き)がある中でなぜ今なのかを説明すべきだ。英仏は既に経済活動に軸足を置きつつあり、米国も同様である。日本経済が安全で快調ならまだよいが、世界に比べて大きく後れを取っている。その点について国民に説明し、鎖国的な入国管理規制を含め、可能な限り早く措置を緩めていくことが大事だ。

Q: まん延防止等重点措置の内容にもよるが、何らかの経済的影響は出ざるを得ないとの考えか。あるいは、重症化率が低いことを踏まえると、それほど心配する必要がないと見ているか。

櫻 田 : 今の景気の「気」、すなわち国民の気持ちを考えると、国民は明るいこと、活動すること、元気を出すことに消極的にならざるを得ないと思う。むしろ心配しなくてはいけないのは、悪いインフレ、すなわちデフレとインフレが同時に進むスタグフレーションの様相を呈していることだ。インフレと言っても、8~9%という企業物価の上昇率が示すように、外来的な、コントロールできないところからきているコストプッシュ要因によるものだ。そうだとすると当然金利は上げられない。経済を引っ張る、最も大事な一般消費者の需要、消費については悪くなっているという感覚がある。(政府が)補正予算を組み、一丁目一番地として(経済対策等の)対応をされたものの、バラマキと言うと言いすぎかもしれないが、おそらく消費に回らず、貯蓄に回る(だろう)。そうした財政資源の使い方では、日本銀行の当座預金が積み上がり、マイナス金利を受け入れなければならない金融機関が増え、悪循環になる可能性がある。どのように消費を増やすかが非常に重要だ。完全な私見だが、もし財政を使うのであれば、むしろ公共投資のような形で、直接経済を刺激したほうが良いのではないか。

Q: 本日、日本銀行の金融政策決定会合が開かれ、現状の国内景気について、「持ち直しが明確化している」との表現になった。そのあたりの実感はないが、代表幹事の受け止めをお聞かせいただきたい。

櫻 田 : 投資や消費の動向によるのが経営者としての(景気の)感覚だが、消費が盛り上がっているという肌感覚はなかなか感じられない。外需に関しても、(経済成長が順調で)一人旅の状況にあった中国経済の減速がはっきりしてきている。また、過剰債務という構造的な課題もあり、外需にも頼れない状況だ。それに資源高と円安が加わり、むしろ景気が腰折れする可能性を心配している。日本銀行として何をするかを考えれば、もちろん金利は上げられないということになるので、今の状況を維持するしかないと思う。景気が持ち直してきているという点は、もう少し慎重に見た方がいい。私自身、持ち直すと再三申し上げてきたが、ここまで消費に元気が出てこないと心配である。コロナ危機の間に貯蓄率が上昇する中で、比較的余裕のある層については、その貯蓄で嗜好品を購入することはあるかもしれないが、それだけでは、GDPの6割を占める消費を引っ張ることはできない。やはり、消費刺激策が必要だと思う。

Q:先ほどスタグフレーションへの言及もあったが、今の物価上昇は、消費が引っ張るというより、コストプッシュ型になっていると思う。これから本格的に春闘を迎える中、企業が値上げを行っても利益が増える構図ではないため、賃金も増えないのではないか。今年、賃上げが物価上昇に追い付かないことになれば、仮に賃上げされても、実質的には消費者の所得は目減りすることになる。こうした局面で、賃上げの持つ意味合いについて、お考えをお聞かせいただきたい。

櫻 田 : 賃上げと消費は鶏と卵(の関係)だと思う。コストプッシュの状況は決して好ましくないが、これがいつまで続くのかという見通しを持つことが重要である。経営者は、単年度ではなく、複数年度を視野に入れながら意思決定をするものであり、賃金上昇についてもこのスタンスが必要である。単年度で儲かったから(賃金を多く)出す、赤字だったから出さないというやり方を続けている限り、一番重要なステークホルダーの一つである社員の財布のひもが緩むことはないし、安心して投資に向かうこともない。したがって、今回について言えば各企業の経営者の判断ということになるが、単年度主義ではなく、複数年度で自らの業界や事業がどうなっていくのかを見通した上で、少し強気の一歩を踏み出す判断があってよいのではないか。SOMPOホールディングスが力を入れている介護事業においては、政府の要請とは全く関係なく、決して業況が明るいわけでもない中、二度にわたって大きな賃上げを行う。先行投資を行い、良い人材の獲得や現場の士気向上につなげることで、より高い付加価値や利益が生まれてくることを期待している。そういった企業があっても不思議ではないと思っている。

Q: 本日、日本経済団体連合会(経団連)が春闘方針を発表する予定である。岸田首相は、業績が回復した企業という限定付きで3%超の賃上げに期待を表明している。今の経営環境から見てこの水準についてどう考えるか。賃上げをするにあたって現在の経済情勢をどのように見ているのかを伺いたい。(企業)業績の回復が続いてきたが、ここにきてオミクロン株が拡大し、まん延防止等重点措置も発令される。集中回答日にはその影響も続いているだろう。これらが経営者の心理にどのような影響を与えているか伺いたい。

櫻 田 :平均値で議論することはあまり意味がなくなってきている。誤解を恐れずにいうと、春闘という方式そのものに意味があるのかと思う。(業績が)よい企業とそうではない企業がある。中堅・中小企業を含めて、本当に苦しい企業は新陳代謝をしていかないといけないが、中堅・中小企業でも業績が大変よいところもある。そのような企業に変わっていくためにも、平均値で3%に届いたかどうかという議論はそろそろ終わりにしてよいと思っている。3%という数字は、業績がよい企業にとっては難しい数字ではなく、十分に達成可能な数字だが、平均値で(その水準に届くか)はわからない。企業(経営者)が意思決定するとき、単年度では判断しない。現状と2~3年先の自社の状況を見ながら、あえて踏み込んで高めの回答をする企業もあるだろうし、資源配分の観点で人件費以外に投資したい企業もある。人件費を単年度で(見て)、研究開発等の投資を複数年度で 見る経営者はいない。両方とも中長期的に見ていくことが正しく、「今年はどうする」と単年度で見ていくことにはあまり意味がない。(岸田首相は)「新しい資本主義」で、賃金を上げる意味は「人への投資」だと強調しているが、日本全体が成長していくためにも、ステークホルダーの大きな塊である社員が、将来に安心・安定、希望を持てるよう、経営者が気持ちを語っていくことが大事である。「今年(の賃上げ率)は2%だが、この調子でいけば来年はもう少し良くなる」、「今年は4%出すが決して楽観しないでほしい」など、将来を見通せるようなメッセージを経営者が組合や社員に伝えることがとても大事である。企業業況についてはよい企業と悪い企業とがある。ここで重要なのは政策資金を躊躇なく使うことで賞味期限切れのビジネスモデルまでもが長持ちしてしまうのを避けることである。その目利きが政府にできるのかと思う。同じ旅行業界、食品業界でも業績が良いところとそうでないところがある。旅行業界だから、食品業界だからという理由で政策資金を一律に配布することで、(よくない企業が)延命されることは日本経済にとって必ずしも良いことではない。政府や政治家には、平均値でものを見ない癖を(つけることを)お願いしたい。

Q:「業績の良いところは3%でも難しくはないが、平均ではわからない」というのは業績が厳しいところを含めると3%は難しいということか。

櫻 田 :統計で集計したわけではなく、3%という数字は加重平均でもあるのでそこまでコメントはできないが、個社に置き換えれば3%の賃上げが難しい企業はあると考えられる。

以 上

 (文責: 経済同友会 事務局)


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