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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2021年11月30日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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冒頭、櫻田代表幹事より、経済同友会事務局システムへの不正アクセスについて概要説明とお詫びを述べた。その後、記者の質問に答える形で、新型コロナウイルス感染症・オミクロン株、感染拡大防止の水際対策、みずほ銀行に対する行政処分、賃上げなどについて発言があった。最後に、櫻田代表幹事より診療報酬改定について意見を述べた。

櫻 田 : まず、お詫びを申し上げたい。11月19日に公表したとおり、経済同友会事務局のシステムに不正アクセスがあり、個人情報を含むデータ流出の可能性が高い。関係各位にご心配、ご迷惑をおかけし申し訳なく思う。本会職員が業務上やり取りしていたワード文書やpdfファイル、eメールなど、約4,000件のデータを窃取された可能性が高いことが判明している。現段階ではこれらが悪用されたり、第三者のweb上に転載されたりといった情報はないが、一部に個人情報が含まれていたことを確認している。対象者には、必要に応じ、個別に連絡を行っている。被害の拡大を防ぐために、本会の一部システムを停止している。これによる本会の活動・業務継続への影響は、現在のところ限定的だ。サイバーセキュリティ専門調査会社の協力を仰ぎ、原因追及を行うと同時に、早急にセキュリティ対策の強化を図り、再発防止に取り組んでいく。攻撃側も高度化しており、それとの戦いになるが、今後このようなことが発生しないように、引き続き取り組んでいきたい。いろいろとご心配をおかけし申し訳ない。

Q: 昨日、岸田首相が、オミクロン株の問題により、本日の午前0時から外国人の入国を1か月程度停止するとした。また、ビジネス目的の場合(日本入国時の)待機期間を3日間に短縮したところだったが、これを14日間に戻した。受け止めを伺いたい。

櫻 田 : 昨日、経済同友会の幹部と経済状況を含め意見交換をした。(11月にビジネス目的での入国制限が緩和され)待ちに待った開国、活動再開(のタイミング)で、オミクロン株という新しい変異株が発生したことは大変残念だが、緊急避難的な措置としては致し方ない。早めに初期対応をすることが大切だろう。オミクロン株という新種の株がどのようなものか、科学的知見が集められている最中だ。早ければ、1、2週間でその特徴が分かり、既存のワクチンの有効性、感染の強さなども判明するだろう。その時に適切な対応ができるように、これまでの経験を活かし、すぐにでも動ける準備をしておくべきであり、それを政府に要望したい。

Q: みずほ銀行のシステム障害に関して、財務省、金融庁が行政処分を下した。2000年に三行が合併して以降(システム障害が)複数回発生しているが、これに関しての受け止めを伺いたい。

櫻 田 : 一経営者として、他山の石として受け止めなければいけない。本質は技術的な問題ではなく、企業文化の問題であり、それを形成してきた経営陣に責任の一端はある。これはみずほ銀行のみならず、一つの重要な反省材料として自らの経営にも持っておきたい。また、委員会型のガバナンス形式において、社外取締役が大半を占めていればよいというわけではないことも今回のケースではっきりとわかった。トップの問題意識と、執行の状況を社外取締役が把握できるよう情報の共有を不断に高めていかなければ同様の問題が起きる。いずれにしても、徹底した透明性が重要であることがわかった。

Q: 岸田首相から、経済界に対して3%以上の賃上げが求められた。賃上げを行った企業には税額控除率の引き上げを行うとされる。(2018年に)安倍晋三元首相が経済三団体の新年祝賀会で3%の賃上げを求めるなどし、官製春闘という言葉がメディアから生まれた。政府が率を示して要請を行うことについて、受け止めを伺いたい。

櫻 田 : この問題をアベノミクス時代の延長では受け止めていない。また、そのように受け止めたくない。新型コロナウイルスを経験し、世界中がこのままの資本主義でよいのかという問題意識を持ち、岸田首相が「新しい資本主義」を掲げた。新しい資本主義は小さな修正ではなく、日本の経済、社会構造を変えていこうとの意気込みで宣言されたと思う。その中の一つとして、世界的に見て労働分配率が低くなっている日本で、新しい資本主義を作るための最初の振り子として、賃金を上げたいという意気込みなのだと思う。その点において、私は官製春闘との受け止めをしたくない。仮に、税制で優遇されても、一過性のものであれば元の木阿弥になる。政府には、(賃上げは)民間企業がイノベーションをしっかりと起こし、付加価値の高い企業、付加価値の高い日本社会を作るきっかけだと言い続けないと(いけない)。たとえ賃上げ率が3%に届いても、それでおしまいとなり、来年も同じことを繰り返す。下手をすれば、生産性は上がらず、労働分配率も元に戻ってしまいかねない。これまでと同じことを繰り返さないのが最も重要だ。(したがって、)官製春闘とは思いたくない。(賃上げ率が)3%でなく2%、5%の企業もあってしかるべし、場合によっては0%のところがあってもよいのではないか。

Q: オミクロン株について、バイデン米大統領は過剰な反応を避けるよう、国民に対してメッセージを出した。オミクロン株がどのようなウイルスか分からない状況である一方、日本は経済再開に動き出そうとしていた矢先であった。企業や経営者、従業員はどのような行動をとるべきか。この1年半程度の知見を踏まえてお考えを伺いたい。

櫻 田 : オミクロン株については、科学的知見が集まるのを待つしかない。だが、ただ待っている必要はない。悲観的と受け取られると困るが、大事な点はこれまでも述べているとおり、コロナウイルスは5年、10年は生き続ける(ということだ)。(過去)消滅したウイルスは天然痘のみだ。これからもコロナウイルスと共にあり、だが元気に生きる。それに必要なのはマスク、手洗い、うがいなど(基本的な感染予防)だ。何よりも、集団免疫力を社会が獲得しているかが重要だ。これは間違いなく前政権の成果だと思うが、徹底的にワクチンを使い、ピークの8月に比べて10万人当たりの感染者数は一桁、そして1人程度まで下がった。つまり、日本社会は集団免疫力を獲得しつつある。(既存の)ワクチンの有効性について、オミクロン株に全く効果がないことがないのであれば、早くワクチンを接種していく。政府には、ブースターショット、すなわち3回目のワクチン接種をいつ(打てるのか)、どの程度早められるのかについて、今一度踏み込んで検討していくことを求めたい。集団免疫力を維持するために必要だ。

Q: 外国人の新規入国を原則停止することで、ビジネス上に具体的な影響は出ているのか、あるいは懸念される点はあるのかについて伺いたい。

櫻 田 : リアルで人と人が会い、握手や抱擁をすることが重要な場面は間違いなくあるが、毎回しなければならないわけではない。私の経験を基に言えば、交渉ごとで、新しいパートナーに会い、間違いがないことを確認し、形式的なものを超えた、人間ならではのコンタクトが必要な場面はある。こうした場面が、たまたまこの時期に重なったのであれば、経済活動への影響はあると言える。しかし、(こうしたことを)毎日やっているわけではない。私の経験から述べると、ほとんどはオンラインで解決できているので、企業活動について影響は出ていないと思う。他方、外国人に来てもらう場面、すなわちインバウンドについては影響がかなりあると思う。

Q: オミクロン株の発生元は南アフリカとされており、新興国へのワクチン供給の国際的な枠組みを強化する必要もあると思うが、政府に求めたいことがあれば伺いたい。

櫻 田 : 指摘のとおり、可能な限り協力していくべきだ。自国を優先すべきではない、とまでは言わない。日本の税金で調達したもの、あるいは日本が生産したものについては、日本国民がその恩恵を受けることは自然である。日本のような先進国、供給能力がある国は、米国やEU、中国が行っているように、近隣地域である東南アジアや東アジアに可能な限りの協力はしていくべきだ。

Q: 先ほど「税制優遇により賃上げがされても一過性であれば意味がない。イノベーションを起こして付加価値の高い日本を作っていくきっかけにしなければならない」と発言された。イノベーションにより付加価値を高めなければならないとの発信は何年も前からされていると思うが、どうしたら一過性ではない賃上げができるのか、踏み込んだ説明をお願いしたい。

櫻 田 : 新しい資本主義実現会議の2回目会合で示された緊急提言の序文が非常に重要である。序文には、世界に先駆けて日本が新しい資本主義とは何かを示し、発信すべきだということが書かれている。これには大賛成である。新しい資本主義にとってイノベーションを起こすことは重要だが、イノベーションには技術革新、ビジネスプロセス革新、ビジネスモデルを変えるなどいろいろとある。また、イノベーションを起こすのは人である。このため、人材に対する投資をイノベーションの最大の推進力にしないといけない。これまでの日本は、安く仕入れて高く売る、その差分を利益にするモデルをずっと続けてきた。イノベーションを起こすという、価値の高い労働に対してそれに見合った対価を支払う、そのことで人がより価値の高いアイデアを生み、革新を起こしていく。こうした循環に変えていかない限り、イノベーションは起きない。そのための最初の振り子は、経営者が高い価値のある労働に対して然るべき対価を支払うことから進めるべきである。世界の例をみると、イノベーションとダイバーシティ・インクルージョンはほぼ同時に発生する。ダイバーシティ・インクルージョンが進んでいるところでイノベーションが起きている。シリコンバレーは米国の一部であるが、インド人、中国人、アフリカ人、イスラエル人、日本人も働いている。このような状況を企業が社内で作り出さないと、これまでと同様に、真似や改善していくだけの企業に留まってしまい、イノベーションは起こせない。人材に投資をすることはコストではなく、価値である。ダイバーシティ・インクルージョンを進めイノベーションを起こしていくのだと各企業が宣言していくことが、これからの新しい日本の資本主義の姿である。経済同友会では、「なぜわが社で圧倒的な生産性の向上やイノベーションが起きないのか」を自問自答してみようという議論になっている。また、イノベーションといっても自動車メーカー、IT企業、金融企業それぞれでイノベーションは異なる。「わが社のイノベーション」について具体的に語り、発信できる機会を作らなければ、同じことの繰り返しとなり、気が付けばどこかの国の真似をしているということになるであろう。

Q: それには時間がかかりそうな印象を受ける。内部留保の現預金を活用するなどにより、今年(など短期間で)、中小企業に勤めている従業員の賃金が上がる動きは出てこないのか。(賃上げが)できない理由も何年も前から聞いている。

櫻 田 : 私自身は賃上げができない理由をあまり感じない。大企業では生産性を上げイノベーションを起こすために賃金を上げるという発想に変え、株主やお客さまなどのステークホルダーに対してもわが社ではこのスタンスで人材に投資する、今年はベースアップや賃上げをするということを宣言していけばよい。これは私が呼びかけるというより、各経営者が本当にイノベーションを必要だと思っていれば人材に対して投資をしない理由にはならない。今期でも起こりうることである。中小企業については、何よりも人材の流動化が重要である。従業員が自分に価値があると思っていても、どこに移ればよいかわからない、(よそに)移っても同じように処遇されるかがわからないため、どうしても同じ企業に固定されてしまう。これにより、十分な賃金が支払われない企業にいなければならないことになる。従業員を抱え込まずに、(また、従業員が自らの)スキルや価値に見合ったより高い対価を支払う企業に移れる制度を作っていくことが、政府の重要な役割である。自分が持っている価値に対して対価を支払える企業に移動できる社会をつくる。これには労働法制や税制の改定が必要である。また、結果としてその市場から退出せざるをえない中小企業が出てくることは、経済の新陳代謝としても必要なことである。政府はそれにしっかり踏み込む覚悟を持たないといけない。

Q: オミクロン株について、ビジネスの現場ではあまり影響はないのではないかとの話であったが、懸念もあると思う。介護や農業、建設など技能実習生の力を借りている現場では人手不足が叫ばれている。技能実習生の受け入れを再開してきた企業もあると思うが懸念される点を伺いたい。

櫻 田 : 既に人手不足のところはある。おそらく、外国人に頼る業種としては、飲食業(の割合)が大きいだろう。昨日、経済同友会の幹部と話をした限りでは、飲食業では学生と外国人に人手を頼っている企業が多いため、大変困っているとのことだった。今は補助金の中でしのぐしかないともうかがった。学生など、(店舗の休業期間に)既に辞めて、別の職場に移った人が戻ってこないと指摘していた。外国人も(確保は)厳しいとのことだ。建設業については、現時点でただちに人が足りず、これから進めようとしているプロジェクトに大きな支障が出るほどの逼迫度ではないとのことだった。(オミクロン株への対応として)水際対策で1か月間、外国人の入国を止めるが、オミクロン株がそれほど怖くない、あるいはワクチンの効果があると分かれば、それほど(人手不足が)危機的な状況になることはないのではないか。

代表幹事発言

櫻 田 : 私が問題意識を持っている診療報酬改定(の動向)について、コメントさせていただきたい。(2022年度の)診療報酬改定については、オンライン診療の恒久化、かかりつけ医の機能(の推進)、あるいは、医療機関(間の)連携をはじめとする議論が進められている。医療経済実態調査が11月24日に公表されたが、その中で、新型コロナウイルス(の感染拡大)による受診控えなどの影響によって、病院の(2020年度の)損益率は(6.4%の)赤字となり、(2019年度と比べて)さらにマイナス(赤字)が進んだと説明されている。(その一方で)これまでに、膨大な国費を投入して医療機関に支給された新型コロナウイルス関連の補助金を含めると、0.4%の黒字と調査結果で明らかになっている。つまり、損益率の悪化は、(新型コロナウイルス関連の)補助金で補えたということである。医療機関全体の中で(見たときに)、一般診療所や、歯科診療所、保険薬局について確認してみると、その補助金を除いたとしても、新型コロナウイルスの感染拡大以前の状況に戻りつつあることがはっきりしており、ここが問題の本質である。したがって、今回の診療報酬改定(の検討)にあたっては、単純に引き上げありきという議論に流れることのないように、過去ではなく、今後の客観的見通しに基づき、慎重な姿勢で議論を進めていただきたい。その理由には、今回のコロナ危機で浮き彫りとなった、長年の医療提供体制の問題がある。具体的には(医療資源の偏在)、例えば、病床が余っているところと足りていないところが極端である。あるいは、病床は余っているけれど新型コロナウイルスには対応できない病床がたくさんある。あるいは、医療従事者の配置が非常に多いところと手薄なところがある。こうした課題があるなかで、(まずはそれに)積極的に取り組み、抜本的な解決を成し遂げる必要がある。先に診療報酬改定で課題を解決しようとすることには無理がある。今後、高齢化に伴い、医療給付費と介護給付費がさらに上昇していくわけだが、仮に診療報酬が、先ほど申し上げた抜本的な解決や生産性の向上がないまま引き上げられるとすると、保険料の引き上げに直結することになる。既に、保険料だけで可処分所得の30%に近い負担があるなかで、更なる保険料の増加は、勤労世帯の負担を一層高めることは間違いない。したがって、抜本的な医療改革を進めることなくして診療報酬の引き上げはあり得ないと思っている。懸念があったため、この機会に意見を述べさせていただいた。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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