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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2021年11月16日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、景況感、経済対策、COP26、ワクチン・検査パッケージ、米中関係、賃上げなどについて発言があった。

Q: 昨日、7~9月の実質GDPが年率換算でマイナス3%と発表された。2四半期ぶりのマイナスとなったが、受け止めを伺いたい。

櫻 田 : 想定した以上に消費が弱いということだが、購買力が落ちているのではなく活動が鈍っているということである。基本的には、コロナ対策による支援が早く消費や投資に回ることになれば、さほど深刻ではない。一方で、これまで日本経済を引っ張ってきた外需が落ち込んでいる。景気が悪いのではなく、サプライチェーンのボトルネックによって経済が大きく伸びていないのであるが、総合的にみれば、一時的な問題であろう。来年度の早い段階で正常に戻るのではないかと期待したい。懸念事項は(いわゆる)悪いインフレである。特に原油をはじめとした資源価格の高騰は不安である。過去の経験にもとづいて、OPECなどの産油国やシェールガス産出国である米国も増産に慎重になっているので、(資源価格は)ゆっくりとしか戻らないだろう。これが経済全体の足を引っ張るかは注視していかないといけない。

Q: 欧米、特に米国と比較して日本の7~9月の実質GDPの数値が悪かった。近く、大型の経済対策が打たれると思うが、インフレが家計に響いている。今回発表されたGDPの数値を見ると、今後の経済対策に期待がかかる。財政規律も重視しないといけないが、30兆円程度の補正予算が組まれようとしていることへのお考えは。

櫻 田 : 政策を打とうとしている側の気持ちもわからなくはないが、今回の衆議院議員選挙では国民の見識が極めて優れた形で示されたと思う。これまでにコロナ対策として、70兆円程度の経済対策を行っており、その大半が赤字国債で賄われている。その対策がどのように経済に影響したかを見ると、想定よりも多くの金額が貯蓄に回っている。これには、いろいろな理由がある。(コロナ禍により)行動・活動できない、特段の理由なく貯蓄している、社会保障等将来不安、など(の理由)が考えられる。(政府は)これまで、(国民の)財布の紐を緩める対策を実施できなかった。政府が深刻に受け止めるべきは、先日公表された会計検査院の(2020年度決算の)検査報告である。(それによるとコロナ対策予算)約65兆円のうち約22兆円が執行されず、翌年度に繰り越された。また、マスクの在庫が積み上がり、その保管に約6億円のコストが発生した。数十兆円規模で実施された対策が届いていない、有効に使われていない。あるいは無駄になった(と言える)。こうした事実を念頭に置かなければ、今後出てくる経済対策の規模が大きく、(それで)GDPの穴を埋めようとしても、本当の意味での経済対策にならない可能性がある。規模よりも、なぜその金額が必要か、これまでの経済対策の効果と課題を合わせて説明し、だから今度こそ経済に対して有効なのだという理由を示して欲しい。とりわけ、現在議論されているのは一時的な補填、支援の対策が多い。他方で、長期的に日本の成長に必要な金額規模が見えてこない。成長に関しては、これまでの成長戦略とどこが違うのか、仮に同じであるならば、なぜ今回(の成長戦略)は成功するといえるのかについての説明がない。1、2か月で説明することは難しいため、少なくとも(限定された部分の)ここについてはどう考えるか(を示して欲しい)。どういう理由で成功するのか、どう経済を持ち上げるのか、説明責任が今まで以上に強く求められている。それが先日の衆議院議員選挙での国民の審判だろう。政府は、その気持ちを汲み、説明責任を果たして欲しい。

Q: 先般、英国・グラスゴーでCOP26が開かれた。石炭に関しては、表現が段階的な「廃止」から「削減」になったことで、特に欧州では期待感が少し薄れている。ただ、米中関係では協力できる分野もあることが見えてきた。COP26の評価を伺いたい。

櫻 田 : 全体感としては、グラスゴー気候合意に至り一定の成果があったと言ってよい。だが、これは本当に難しいテーマであると思う。参加した全ての国が2050年までの(温室効果ガス排出)ネットゼロに合意しているが、そこに至る道筋や過程には各国の事情がある。先進国と新興国の間だけではなく、先進国同士でも異なる。日本と英国、EUも必ずしも同じ土俵に乗っているとはいえない。この中で全体最適を出さないといけないので、これから大変難しいネゴシエーションと作業が進んでいくであろう。ファクトを振り返ると、京都議定書が採択されたCOP 3以降、法的拘束力のあるもの、あるいは法的拘束力はないが宣言でしっかりやろうとしてきたものがあるが、実現できているかどうかに注目すると、できていないことがかなり多い。今回の合意は一定の評価はできるものの、(産業革命前からの地球の平均)気温上昇を1.5度以内に抑える目標については各国が示したコミットメントを全部実現しても届かないと聞いている。過去にやろうとしたことが必ずしも実現できていない中で、今度は(発表した目標が)実現できるとするのはなぜなのかと、みな疑問に思っているだろう。目が覚めたら(すぐに)2050年になっているわけではない。日本の産業界としては、2030年におけるマイナス46%目標を含めてどのようにネットゼロを実現していくのかを考えなければならない。(すべての自動車を)EV化するだけでは全く届かない。またEV一辺倒になれば、今度こそ日本の産業が得意な分野を捨てなければならない。2050年にネットゼロを実現するためには、したたかに、日本にとってどういうやり方が一番得なのかということも現実論として考えながら進めていくべきだ。政府は十分理解していると思うが、なお一層、経済の現場、各企業の現場と戦略に強い関心を払っていただきたい。

Q: 経済対策の効果検証について伺いたい。岸田政権は「新しい資本主義」を掲げているが、安倍政権や菅政権から(政府)会議体の名称は変わったものの、中身が変わっていないのではないかとの指摘もある。櫻田代表幹事が指摘されているように、政策の効果検証は絶対に必要だと思うが、どこで、どのような枠組みで、どのようなスパン(期間)で実施すべきか。また、経済界として出来ることはあるか。

櫻 田 : 経済同友会でも、その点についてかなり議論している。「令和の時代のCorporate Japan」「新しい時代の資本主義」について、政府が「新しい資本主義」を掲げる前から議論を始めている。それを踏まえて、私は新しい資本主義実現会議に委員として参加している。先日の同会議で、緊急提言が提出された。その序文が非常に大事であり、その中には経済同友会の意見も多く反映されている。具体的には、(経済同友会は)第1に、日本が提唱するこの新しい資本主義を世界に向けてしっかり示していくべきであると考えている。序文には「現在、世界各国において、持続可能性や『人』を重視し、新たな投資や成長につなげる、新しい資本主義の構築を目指す動きが進んでおり、我が国が持続可能性や人的資本を重視するこの動きを先導することを目指す」とある。これは素晴らしく良いことだ。2つ目は、今回の新しい資本主義(の考え方)の中で、成長と分配の好循環を作る(必要性が示されている)が、その鍵はイノベーション力の強化であること(が含まれている)。その実施部隊はスタートアップであり、その支援も序文に記されている。そして、所得向上である。消費者が安心して商品を購入するためには、将来不安を解消しないといけない。それは社会保障、財政等の持続可能性の問題と裏腹の関係にあるが、(序文には)「将来不安の解消を進める必要がある」との表現、さらに、人への投資(を行うこと)も含まれている。この序文こそ、新しい資本主義実現会議の根幹を成すものだと思う。これに沿って(政府の)各種会議がある。既に立ち上がっていが今後どうするかが決まっていない会議体も含め、全10個ほどあるが、この序文に沿って、各種会議の目標やミッション、実現の方法が統治されていくことが望ましい。そうしなければ、海外・国内メディアからのどこが新しい資本主義なのかといった指摘や疑問に答えられないと思う。1、2か月でその答えを出そうとすると、アダム・スミスでも相当悩むだろう。

Q: 本日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会でワクチン・検査パッケージ(の要綱案)が了承された。社会経済活動との両立を考えると、感染が再拡大しても、経済活動を続けることができ、飲食店などからの期待が大きいと思うが受け止めをうかがいたい。また、接種証明の期限が課題として指摘されているがどう考えるか。

櫻 田 : 大いに結構だ。経済界として歓迎したい。しかし、これでおしまいではない。技術は日進月歩であり、(ワクチン・検査パッケージも)進化させていってほしい。既に分かっている科学的証拠もある(のでそれを踏まえていくべきだ)。最も言いたいのは、紙ベースの証明はやめて欲しい(ということだ)。(紙の)ワクチン接種証明を(携帯電話で)撮影すれば(その画像を利用しても)よいとの点も、いかんともしがたい。デジタル庁(を設置し)、DXで世の中を変えていこうとしている中で、一番急がれるのは、水際対策を含めたワクチン接種証明だ。ぜひ、スピード感を重視して欲しい。また、(ワクチン・検査パッケージを)リリースしたらおしまいではなく、経済活動の現場や飲食店からの要望をしっかりと受け止めて、可能な限りの頻度で改善を続けて欲しい。

Q: 本日、米中の首脳会談がオンラインで行われた。米・バイデン大統領と、中・習近平国家主席による初めての会談で、(武力)衝突が起きないための仕組み作りに関して議論されたと聞いている。中国でのビジネス展開を考える上では、日本企業にとって米中関係は良好であることが望まれると思うが、この会談をどう見ているか。

櫻 田 : これは優れて危機管理的な目的で行われていると思う。事故のような、アクシデンタルな形で武力衝突が起きないようにすること、また万が一起きた場合でも大統領と国家主席間などトップレベルでの情報交換ができるようにすることは、大いに結構だ。ただ、これが今の米中貿易摩擦や米中技術覇権競争、米国から中国への懸念や嫌悪感といったことの解決にはほとんど繋がらない。割り切ってやればよい。日本の立場としては、武力衝突が起きてよいことは何もない。今回、人権問題や台湾問題、つまり中核と言われている問題については、話し合われると思わない。(これに関しては)一方的に米国が遺憾の意を表明し、中国はそれを内政干渉として断るだろう。(武力衝突など)何かあった時にすぐに連絡を取ることが合意されれば十分である。新しい資本主義は、その前提として民主主義という価値観のもとにあるべきであり、この点で少なくとも中国と(日本)は価値観が異なる。米中関係に劣らず日中関係においても、交渉すべき分野、交渉によってある種妥協しなければならない分野と、交渉してはいけない分野、ここは一切譲らないという分野を分け、そのスタンスを貫くべきである。また、これから(中国との)TPP交渉があるのだとすれば、それも同じである。高いレベルをスタンダードとすることについては、(妥協や)交渉してはいけないことである。

Q: 7~9月の実質GDPが前期比マイナスになった件につき、来年度いっぱいまで継続することはない、総合的には一時的だとの見方と述べられたが、どの程度の期間と見るか。

櫻 田 : 既に2,000社近くの中間決算の集計結果が公表されている。対前年比で見ると、売上、利益ともに史上最高の決算となった企業もある。しかし、運輸業や旅行業、宿泊業はまだ大変苦しんでおり、コロナ禍以前(の水準)には届いていない。ただ、何らかのきっかけが起きれば、消費や投資が伸びる地力はある。そのきっかけが何になるか(が重要)だと思う。新しい資本主義(実現会議の緊急提言の序文)にもイノベーションという言葉が出てくるが、イノベーションという言葉は安易に使わないように注意しなければならないと思っている。(なぜなら)イノベーションには、技術革新だけでなく、プロセス、サービスのイノベーションや、ビジネスモデルや業態を変えるイノベーションもあり、複数の形態がある。企業のCEOはすべからくイノベーションは必要だと考えているが、そうした全てのイノベーションを想定しているわけではない。政府が言うイノベーションとは何を指すのか。必要なところに財政や税制の支援を行わないと、(企業は)思い切って(イノベーションに打って)出ていけない。ムーンショットに関して言えば、例えばe-fuelに関する技術があるが、大変ハードルが高い。したがって、リスクマネーが必要だが、政府はどの程度ムーンショット型の支援をする用意があるのか。そうした政府の支援があれば、設備投資をする(企業もあるだろう)。個別の企業、少なくとも業界・業態別にイノベーションが起きるように、政府が新しい資本主義実現会議で示していく必要がある。企業も短期ではなく、長期的にイノベーションを進めていけるという思いが高まった時に、溜まった力が出てくる。足元(の対策)だけではなく、息の長い、本格的な成長軌道に乗せることができる政策を期待したい。また、(政府に)期待するだけではなく、成長を引っ張るのは民間企業である。何をやっていきたいのかを宣言する企業が多く出てくることが大事だと思う。

Q: 昨日、萩生田光一 経済産業大臣が経団連に賃上げを要請した。政府からの賃上げ要請についてどう考えるか。

櫻 田 : 安倍政権時から(政府からの賃上げ要請の)話はあった。その時から同じことを述べているが、本来はおかしな話だ。(企業が)内部留保を取り崩してくれず、キャッシュが積みあがる中、政府としては地団駄を踏んでいるのだろう。内部留保は過去の利益の積み上げであるが、余ったお金ではなく貸借対照表上は資産として計上されているものである。(使うには)それを取り崩す必要があるが、取り崩すだけの価値ある投資なのか、経営者は説明責任を負う。それを無視して、人件費に充てることは難しい話だ。日本全体の企業価値を上げたいのかとの質問に対して、答えになっていない。当社SOMPOホールディングスの介護サービス企業であるSOMPOケアでは、2019年、最近と、特定の役職の社員に対する職務手当の引き上げによる処遇改善を行った。単に人材が足りないから人件費を上げたのではなく、コロナ禍で(介護サービスが)エッセンシャルワーカーとして重たい責任を背負っていることを踏まえるとともに、誇りを持って仕事にあたって欲しいとの趣旨で、先行投資をした。これは政府に言われたから行ったのではない。岸田政権が看護師、介護士、保育士などエッセンシャルワーカーの処遇を上げようとしていることはありがたいが、我々はそれがなくとも処遇を引き上げた。(賃上げが)投資の一部であれば、どのような思いを持って賃金を上げたのか、経営者が株主等ステークホルダーに責任を持って説明できればよい。政府に言われたから(賃金を)上げたということではいけない。それが日本の新しい資本主義とはさすがにいかないだろうし、(政府の)気持ちはわかるが「分かりました」と言うわけにはいかない。むしろ我々は、そうした要請を頭に置きつつも、戦略の中で先行投資的な支出を考えるべきだ。

Q: 政府から一律のベースアップを求められることを「官製春闘」と呼ぶが、この言葉についてどう思うか。

櫻 田 : 正直なところ、いつまでやるのだろうかと思う。一方で、春闘がなくなると、ただでさえ上がらなかった給与が上がらなくなるのではないかという不安もあると思う。(コロナ禍でも)史上最高益を出している企業もあるため、そうした企業では、その成果の配分を重要なステークホルダーである社員に支払う余地があると感じている。我々もそうした状況になればそうしたい。それがステークホルダー・キャピタリズムである。官製により新しい資本主義が現れるとは思わない。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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