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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2021年10月12日(火) 13:30~
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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冒頭、意見『第49回衆議院議員総選挙 将来世代の利益を踏まえた政策論争を』を発表した後、記者の質問に答える形で、衆議院選挙、矢野康治財務事務次官寄稿、資源価格高騰、金融所得課税、「新しい資本主義」、国際課税、北京冬季五輪、政治とカネ、企業の四半期決算見直し、台湾TSMCなどについて発言があった。

冒頭発言 : 本日ここで、『第49回衆議院議員総選挙 将来世代の利益を踏まえた政策論争を』を発表する。この文書は、次期衆議院選挙に向けて重要な点を指摘すべくまとめたものだ。今回の選挙は政権選択の重要な機会であり、それを政治家だけではなく、国民にも訴えたい。それにあたり、各政党においては、政策のどこが同じでどこが違うのかという対立軸をしっかりと示して欲しい。現在と将来の両方が大事であるため、これからの財源、負担のあり方についてもその両方に関する説明が必要だ。自らの意見を政策に反映するため、国民はよく考え、一票を投じる責任がある。国民はこの貴重な権利を活用して欲しい。(文書では特に重要な論点を)5点に分けて記載している。まず、各政党はこの国をどういう国にしたいのか、わかりやすく、国民の理解と関心を得られる形で発信していただきたい。(つまり)ビジョンである。少子・高齢化、人口減少社会における税・財政のあり方について(示すべきだ)。財政は論点になりにくいが、避けては通れない。国民の受益と負担、税や保険料についても、長期でよいので(考えを)示して欲しい。2点目のコロナ対策については、まず、数十兆円を費やしたコロナ対策の効果を検証する必要がある。第6波は来ると思う。その到来前に対応策を確立すべく、まず対策等の費用対効果を示して欲しい。また、次の波が来た時に右往左往しないように、緊急時のルール整備についても(考えを聞きたい)。3点目が、分配の原資を生み出す成長戦略である。過去30年間の成長戦略をタブーなく見直し、どうして今のような状況になっているのか、初期の目標をなぜ達成出来なかったのか、今一度、我々民間も含めて振り返って議論すべきだ。新しい成長戦略を拙速に作るべきではない。実効性と付加価値の高い、競争(力)を作る成長戦略でなくてはならないと、私は繰り返し述べてきた。そのためには、円滑な労働移動や新しい働き方、多様な働き方を実現する労働法制(改革)、何よりも、官製ではなく民間主導による持続的な成長実現に向けて、民間と官の役割を再定義する必要がある。そして、経済安全保障を含む日本の産業競争力強化が必要だ。数十兆円の予算を使うのであれば、(成長戦略を)慌てて作るのではなく、今度こそ持続的成長と競争力向上につながるものをしっかりと議論し、出していくべきだ。科学技術は、民生用か軍事用かが明らかではなく、その垣根が低くなってきている。あらゆるものを軍事用と遠ざけてしまうことは好ましくない。モデルナ社のワクチンのように、新しい技術は、軍事用の研究からヒントが生まれることもあり、そうしたことをタブー抜きに見ていくことが必要だろう。人材については言うまでもない。脱炭素、2050年ネットゼロはもちろん目指すべきだが、やみくもに進むのではなく、日本の強みを活かした炭素循環実現に向けた具体策を出すべきだ。EV化一辺倒(だけ)では実現しないだろう。それでは1割も(削減)目標を達成できない。4点目は、豊かな国民生活を支える持続可能な財政・社会保障のあり方である。財政と社会保障は裏表の関係にある。将来世代からお金を借りて今の対策を打ったのであれば、将来世代が豊かな国民生活を過ごせる基盤を今からプランの中に入れておかねばならない。選挙の論点として落としてはいけない。最後、5点目のエネルギー政策についてはいろいろな議論がある。エネルギー政策に限らず、国民全員が賛成できるような政策は非常に少ない。誰かが望めば、誰かがそうではないという難しい(状況の)中、国民の生活がどう変わるのかということをエネルギー政策では分かりやすく示して欲しい。そうしないと私たちは何を選択すべきかがわからなくなってしまう。専門家の声だけではだめだ。その達成に向けた具体策と国民負担の姿(を明示すべきだ)。なにも負担がない中ではカーボンニュートラルは達成できない。政権選択となる今度の選挙に向けて、各政党は(具体策と国民負担の)両方をしっかりと分かりやすく示して欲しい。

Q: 今の内容は、与野党に対して活発な議論を呼びかける趣旨と理解した。与野党の政策に対する評価があれば、お聞かせいただきたい。

櫻 田 : 過去に拘泥する必要はないが、与野党ともに過去の政策を忘れてしまって、あるいは、総括しないまま新しい政策を積みあげていくことは避けていただきたい。(政策を変えたのであれば)なぜ変えたのかも含めて説明しないと、国民は選挙の際に選択する基準を持てない。また、バラマキ合戦という言葉が適切かどうかは別として、矢野康治 財務事務次官も(月刊誌「文芸春秋」2021年11月号で)指摘している通り、各党とも足元で大規模の財政を使っていくとしている。子育て世帯や、生活困窮世帯に対する支援金も含め、それ自体に反対するものではない。だが、政策の中身について、どこがどのように違うのか、その狙いは何なのか、また、将来世代への負担をどのように解消しようとしているのかについて明確に説明しなければ、責任ある政党とは言えない。加えて、数十兆円規模(の財政出動)という言葉が出ている。決して小規模でいいとは思わないが、既に30兆円もの未執行予算が今年度に繰り越されていて、かつ、そのうち約4兆円は不要であったことが判明している。こうした現状について何ら説明がないまま、さらに数十兆円規模の経済対策が必要だということだが、この点については、何のために必要なのか、どのような効果を期待しているのか、具体的に説明してほしい。ただ、私は、それが短期間で具体的にできるとは思っていない。これまで何十もの成長戦略が10年、20年(にわたって策定され)積み重なってきたが、それらに加えて、さらに、大至急、数十兆円の経済対策・成長戦略をと言われても、とても考えられないだろう。今度こそ、数十兆円について、成長につながる資金と足元の経済対策に明確に分ける必要がある。そして、その目的とする効果について、さらにはその効果検証の方法について示さなければ、国民と政府との間のエンゲージメント、信頼関係が失われてしまうと思う。今回の政権選択選挙において、各党にはその努力をしていただきたい。

Q: 矢野康治 財務事務次官が文藝春秋へ寄稿した内容についての受け止めを伺いたい。櫻田代表幹事も日ごろから仰っているとおり、矢野事務次官もワニの口が開きっぱなしになっていると指摘している。これに与党の中から反発する声も上がっている。政府、行政で話題になっているこの文書を櫻田代表幹事はどのように読んだか。一連のやり取りについて、どのように感じるか。

櫻 田 : (文書を出した)タイミングや出した人が誰か(という点)を別として、(同文書に)書かれていることについては100%賛成だ。(一部の方が)このタイミングで、財務省の事務次官が出したということを問題視されているのだと理解している。政局真っただ中で、(衆議院)選挙の直前に(有権者の投票行動に影響を与えかねない)あのような文書を(出すなんて)ということなのだろう。(私は文書の内容には同意するが)あの文書により、選挙民である国民が自分の考えを変える、選択しようとしていた政党を変えるとは思えない。(同文書に)書かれていたのはファクト(事実)であると思う。かつ常識的に考えても、最も多くの政府債務を抱えている国、そしてOECD加盟諸国の中で最も成長率と生産性が低いと言われている国(である日本)が(財政問題を)無視してよいはずがない。(同文書で指摘されていたこと)それ自体は当たり前のことだと思う。一部には、自国通貨で国債を発行でき、それを国内で消化できる限り、インフレさえ起きなければ心配ないとの意見もあるようだが、私はそうした話はとても信用できない。そう(いう事態に)なったら考えようという「タラレバ」の話にこの国を賭ける、リスクを負わせることは無責任だと思う。したがって、繰り返しになるが(文書の内容や出たタイミングに)大きな問題はない。書かれていることはそのとおりだろう。

Q: 原油をはじめとする資源価格が3年ぶりの高値になっている。ガソリン価格の上昇等を通じて国民生活に影響があると考えるが、どう受け止めているか。

櫻 田 : 資源価格の上昇は、日本経済の構造面からみて全体に厳しいことは間違いない。脱炭素の(取り組みの)なかで化石燃料は少なくしていかなくてはならないが、明日から(すぐに少なくする)というわけにもいかないため、今後数十年もの間、何らかの形で依存せざるを得ない。資源価格が高騰した結果、脱炭素に向けて太陽光、風力、原子力(へ電源構成の転換)が進展するかというとそうではない。(産業界においては)足元の競争力、コスト高に対する懸念は強いと感じる。(高騰の)原因は、必ずしも実体経済から来ているものとは思えないため、早く正常な状態に戻してほしい。OPECや石油産出国は、サステナビリティを意識した価格決定努力をしていただきたい。

Q: 岸田首相は自民党総裁選では金融所得課税に言及していたが、当面は触れないと姿勢を変えた。この一連のやり取りについてどのように見るか。

櫻 田 : この(金融所得課税に関する)話が出た時に、分配と成長、新自由主義からの卒業、脱出という言葉があった。日本は、他の先進国等と比べた時に、圧倒的に富の格差がある、富が偏在しているとはいえない。中国やアメリカ、イギリスと比べればまだモデレート(穏健)な国である。一方で、格差は縮小しているわけではなく、拡大している。新しい資本主義を目指す中で、政府として何らかの形で格差の是正について考えたいという気持ちの表れとしての金融所得課税であれば理解はできる。(しかしながら、)もし金融所得課税を財源として、それを分配したいということであれば、計算すれば分かるとおりほとんど焼け石に水だろう。むしろ、貯蓄ばかりが進みリスクマネーが証券市場に出ていかないという、日本の課題と指摘される点については水を差すことになる。(金融所得課税は)費用対効果を見るとコストの方が大きいと思う。何のために実施するのかはっきりしない。(岸田首相は)事の優先順位からしてやるべきことは他にあると仰っている。純粋な分配効果(を期待し)、ファンドを得るという意味ではマイナスの方が多いだろう。

Q: 岸田政権は「新しい資本主義」を掲げているが、政策に具体性が乏しいとの指摘もある。受け止めを伺いたい。

櫻 田 : 経済同友会として(十分な)議論をしていないため、個人的な見解として申し上げる。私自身は、必ずしもそう(具体性が乏しい)とは思っていない。少なくとも、理念としては、新自由主義の弊害を見直すということを(岸田首相は)表明している。そして、そのために新しい資本主義を目指すと言っている。その二者の関係について、この1、2か月で具体策をまとめることの方がむしろ危険だと思う。重要なことは、官と政治家だけで決めるのではなく、民間や、メディアも含め、みんなで議論してしっかり決めていく(ことだ)。世界をリードし、民主主義、資本主義のモデルとして、日本は一体どういう国を目指したいのかについては、ある程度時間をかけて(議論をしても)よいと思っている。むしろ、過去30年間、(様々な政策を)積み重ねても実現しなかったことがたくさんある。その同じ轍を踏まないにも、例えば、1年かけて議論してもよいのではないか。じっくり、腰を据えて(取り組むべきだ)。(岸田首相は)よく耳を傾けて(聞く)と仰っているが、官だけではなく、民間やメディアにも耳を傾けていだだく必要がある。

Q: 10月13日にアメリカ・ワシントンD.C.で開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議において、OECDで最終合意に至った国際課税の結果を支持する見通しとなっている。受け止めと日本企業への影響は。

櫻 田 : 結論から述べると、よかったと思う。15%という最低税率を享受できる。相当難しい現実論がある中、少なくとも15%を下回らないということだ。どのような業態に課すのかなど、今後詰めなければならないことはいくつかあるが、少なくとも国際的な法人税の下限を探しに行く競争はこれで終わったと受け止めている。日本企業にとってもマイナスなことはないだろう。具体的に詰め、抜け穴を作らないよう、レベル・プレイング・フィールドが合うようにして欲しい。このきっかけを作ったのは日本の浅川雅嗣 アジア開発銀行総裁であり、日本がイニシアティブを発揮したことは喜ばしいことだ。

Q: 今月27日に北京冬季五輪まで100日となるが、期待や留意点について伺いたい。

櫻 田 : アスリートが日ごろの鍛錬(の成果)を最高に発揮する場ということで、開催には賛成である。コロナ禍の中での開催となるため、バブル方式と言われる、東京オリンピック・パラリンピックで得た知見やノウハウを十二分に活用し、選手たちを守りながら、素晴らしい結果が出ることを期待している。参加の可否について、現在、外交ボイコットの議論が出ている。基本的にはオリンピックに政治を持ち込むべきではないが、外交ボイコットの議論は無視できない。どのような場合にすべきかについて私はコメントできる立場にはないが、世界的には人権問題が大きな焦点で、日本政府も注視している。この問題に限ったことではないが、中国政府には透明性を求め続けていく必要があるだろう。

Q: 今回の衆議院選挙は政権選択の機会となる。かねてより櫻田代表幹事は(政治に対し)、日本をどのような国にしたいのかビジョンを示して欲しいと強調されてきた。さきほど、(政策を示すのに)時間をかけてもよいという発言があったがどういう意図か。若者に選挙への参加を呼び掛けている点も経済同友会の特徴である。次の選挙で、財政再建を含めて日本をどのような国にしたいのか政党にビジョンを示してもらい、それを(判断材料として)我々国民が投票するということではないのか。

櫻 田 : どのような国にしたいか。これは目標であり、(各政党が)示すべきだ。例えば「みんなが元気な国」というだけでなく、どのように元気なのか(まで必要だ)。「世界で一番生産性の高い国」など、わかりやすい目標を示した方がよい。私が時間をかけるべきだと申し上げたのは、How(手法)の部分、どうやってその目標に到達しようと思っているのかについてだ。財政も、プライマリーバランスの達成は諦めず、2025年は厳しくとも2030年には達成するというのであれば、そこに到達するためにどのようなステップを踏むか。こうしたことを拙速に決めるのは難しいだろう。私個人としては消費税(増税)しか手はないと思うが、消費税を5年間で20%にするとは、今は言えないだろう。逆に(消費税率を)上げないと言うことも困る。(こうしたことを踏まえれば)、Howの部分、すなわち手法についてはあわてずに1年くらいの時間をかけ、国民の声を聞いて議論し、我々民間企業の意見も聞いて欲しい。少なくとも政治家と官(行政)だけで議論し、時々民間の意見が入るだけではまずい。(民間の声を取り入れた改革は)過去に成功したこともあったはずだ。(今)政府は審議会等を通じて民間の意見を聞いているが、それでは十分ではないということだ。それを踏まえて十分に議論してほしい。本日『第49回衆議院議員総選挙 将来世代の利益を踏まえた政策論争を』を発表したのは、こういう国にしたいと(いう目標を)出して欲しい(と要望するためだ)。そのためにどのようなやり方があるのかについては、じっくりと議論する必要がある。それには政党だけでなく、国民の議論が必要だ。全ての政党が、ここまで膨らんだ財政赤字をどう解消しようとしているのかについて(これまでのところ明確に)触れていない。少しでも触れてもらうためにも、若い人たちが中長期の国のあり方、政権運営に関心を持っていると示すことが必要だ。そのためにも若い人には投票所に行っていただきたい。

Q: 財務省の矢野事務次官の寄稿について、中身としては100%賛成と仰ったが、(発表の)タイミングは悪かったということか。選挙を前に、財政再建について、事務方のトップが考えを示すことが(国民が選挙や政治を考える)一つのきっかけにならないか。

櫻 田 : (考えるよいきっかけに)なると思う。経済同友会は、これまで経済と財政再建のバランスについて主張してきた。そして、財政赤字を縮小し、解消していく意欲と能力があるということを対外的に示していかないと大変なことになると申し上げている。円が売られ、金利が暴騰し、あっという間に経済が破綻する。(そんなことは)実際に起きていないじゃないか(だから大丈夫だ)、と、この怖さを(看過することは)できはない。地震と同じで、起きてしまったら遅い。今地震が起きていないから地震に備える必要はない、ということはあり得ない話だ。起きたらどうするか、そのために(準備を)する。500年来なかったから(発生し)ないという話ではない。(今回の文芸春秋への寄稿は、衆議院議員選挙の直前という)タイミングと、財務省事務方トップが出したということが問題だと(一部の方から)言われているが、それがどう問題なのか(私は同意しかねる)。(選挙への影響についても)あれを読んだ国民が、これは大変だ、と選挙で選択しようとしていた政党や政治家を変えるかと言えば、私は、そこまでの影響はないと思う。したがって、今(同文書を)出したからと言って大きな問題はないだろう。少なくとも、(寄稿の発表については)現職の財務大臣が手続き上問題ないと表明されているので、問題はない。タイミングも手続きも、中身もおかしくないのであれば、どこが問題なのか、(私は問題ないと)と申し上げたい。

Q: あの文書が国民の投票行動に影響を与えないと考える理由は。

櫻 田 : (同文書は)足元で困っている人を救わなくてもよいとは言っていない。今、(コロナ禍への経済対策として新たに)数十兆円という予算をつぎ込んでも、どこに、どのように届けるのかの議論が必要だ。(すでに)繰り越しとなっている30兆円という予算があり、未執行の予算もある。(追加対策が)キャッシュとして届くのはさらに先(のタイミング)になる。(同文書では)足元で何が必要かという議論と、数十兆円のブースターが必要だと(いう議論)がかみ合わないのではないかと書いてあり、それはおかしなことではない。問題は、この国は財政規律を守らない国であり、必死で取り組もうという意欲がないと(世界から)思われた時には手遅れになる(という点だ)。アメリカもイギリスも、新型コロナウイルス感染症への対応に使った財政支出をいかに回収するかについて、既に増税の話が出ている。(日本では、増税の話題を)出したらアウトという感じがあり、不安であるのは間違いない。(だからといって)この記事を読んだ、(日本の)若者や国民が、増税の「ぞ」の字を出した(政党や政治家)を絶対選択しない、ということになるのだろうか。私は(責任ある財務省の事務方トップとして)おかしなことを言っているとは思わない。少なくとも私はそのように理解した。

Q: 9月に行われた夏季セミナーもそうだったが、経済同友会では、若者を招いて議論を行っている。岸田首相は車座になって国民の声を聞くと言っており、それにはまさに経済同友会が行っている未来選択会議のような枠組みが必要だと思う。経済同友会として何か計画はあるか。

櫻 田 : 夏季セミナーの後、副代表幹事と真剣に議論を行った。委員会という形をつくるためには、(若者に)経済同友会の会員になっていただく必要がある。しかし、経営者集団という(経済同友会の)定義を維持するとなれば、(若者は)会員にはなれない。だが、会員になれないから議論に加わることができないという話ではない。これからはマルチステークホルダー(との議論)が重要で、新しい資本主義、私が言うところのCorporate Japan構想を(実現していくためにも若者は)絶対に欠かせない方々なので、何らかの形で入っていただく必要があると思っている。手法やルールはこれから詰める。夏季セミナーでは何人かの若者から、自分たちはお飾り参画か、という皮肉を言われたが、そうならないよう十分に留意したい。

Q: 昨日国会で、甘利明 自民党幹事長が代表質問に立った。過去の金銭授受に関する疑惑に関して説明が不足しているとの指摘もあるがどう考えるか。

櫻 田 : (当該事件について)詳細を承知していないので、良い悪いについては言えないが、国民がどう思うかに尽きるのだろう。不起訴処分として既に決着が着いている話だと思う。したがって、あの事件があったので甘利氏は自民党幹事長として不適格だというのは少し極端な議論ではないか。大事なのは、この国を立て直し、国民がもう一度前向きになることだ。あまりネガティブに過去のことを掘り返すことは、程度の問題はあるが(よしとしない)。法律上決着がついているものについては未来志向で進むべきではないか。

Q: 企業の四半期決算について岸田首相が見直しに言及し、自民党の公約にも盛り込まれている。見解を伺いたい。

櫻 田 : 騒ぎすぎではないかと思う。四半期決算の公表について、各企業は日本の会計基準に則って最低限必要なこととして実施してきた。正直、決算に伴う作業負担は決して小さくなかったのは事実だ。しかしながら、それが二期分になればよいかと言えばそうではないと思う。イギリスなど、法律で四半期決算を求めていない国もあるが、最も重要なことは、タイムリーな開示で透明性を確保することである。私自身の経験から申し上げると、しっかりとIRを実施するのは期初と期末の2回である。その2回については、法律で求められていること以上に充実した内容としている。それ以外の第2四半期、第3四半期については、IRは実施しない。重要なのはIR実施の有無ではなく、証券市場で求められている重要事項の開示について、いかにタイムリーに実施するかと、法律上求められる最低限の事柄以上のことを開示し情報を充実させることだ。これを不断の努力で続けることが大切であり、四半期決算を義務付けるか否かは大きな問題ではないと思う。

Q: 経済安全保障とも関係すると思うが、経済産業省を中心として、台湾のTSMCを(日本国内に)誘致しようとしている。多額の補助金を用意し他国の企業を誘致する是非についてどう考えるか。

櫻 田 : 安全保障と経済安全保障という言葉があるが、経済安全保障も元を正せば安全保障から来ている。安全保障は、外交・軍事の問題になる。国民を守るためにしっかりとやるにはお金がかかる。そのお金は、技術開発や訓練、防衛に使う。軍事の技術に注目した時に、(政府科学技術予算総額は)アメリカは20兆円、中国は10兆円規模で、(アメリカの)内訳を見ると半分が民生、半分が防衛である。他方、日本では、約4兆円の予算の多くを民正が占めている。しかし私は、例えばAIや量子技術、ワクチンなど生化学の研究について、軍事用と民生用の線引きをすべきなのかという問題意識を持っている。なんらかの形での、(そうした技術開発に対する)モニタリングは絶対に必要であり、規制し、ストップすることもあると思うが、(あらかじめ)リミットや限界を決めてしまうと伸びる技術も抑えられてしまうことがあるかもしれない。例えば、モデルナ社は、スタートアップして3年後に米国の高等技術研究所が多額の金を投資し、技術開発をした結果、今回のワクチン開発につながった。元々そのスタートアップは、生物化学兵器から防衛用に技術を磨いていたと聞いている。どこまでが軍事、どこまでが民生かの判断が難しい中、日本は最初から距離を置いていてよいのだろうか。台湾のTSMC誘致については、いまから(日本が)最先端の半導体技術に追いつくためにゼロからやり直す必要はない。5Gも同様だ。むしろ、自国で生産してもらい、世界に冠たる光ファイバー網を持つ日本で社会実装し、世界でもっとも5Gを活用する国であると世界に示す必要がある。スピード重視という観点からも、TSMCのような企業が日本に来てもらうことは必要だ。そのために必要なファンドは用意すべきだろう。そこには、一定合理的なROI、ROEがあるのだろう。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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