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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2021年8月31日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、新型コロナウイルス感染症対策、経済活動正常化、デジタル庁、オリンピック・パラリンピック、2022年度予算概算要求などについて発言があった。

Q : 新型コロナウイルス感染状況の悪化で、緊急事態宣言の期限である9月12日の解除が難しいとの声が政府内からも聞こえる。3回目のワクチン接種が必要との話が出てくる一方、まだ2回目の接種を半数以上の人がしていない。今の社会状況の課題や、経済界として求めたいことは。また、感染拡大から1年半以上が経つがいまだ収束の兆しが見えない中、外食、小売、宿泊、交通など厳しい業種がある。経済活動を正常化させるため、従業員に対するワクチン接種の推奨、ワクチンパスポートの活用なども必要ではとの意見もある。意見が分かれるところでもあるが、代表幹事の見解を伺いたい。

櫻 田: 経済界として政府に求めることは以前から変わらない。マクロで言えば、経済全体が二番底、三番底になるとは思っていない。外需のおかげもあり、製造業が引っ張って、一昨年とは(状況が)大きく変わっている。しかし、これだけに頼るわけにはいかないことは間違いない。全体としては悪くない中で、極端に悪いところが宿泊や交通、あるいは飲食である。ここについては、経済全体、つまりGDPに占める割合は必ずしも甚大ではないが、国民の気持ちが晴れやかにならないのは、まさにこのいくつかの業種が困っているからであり、そこに対して即効性のある手段を早く打っていくべきだと思う。これまでの経済対策のうち、支援金的なものは、多くが消費ではなく貯蓄に回ってしまったことを考えると、苦しまれている業種の方々を直接救う方法を、需要喚起ではない形で出していかない限り厳しいのではないか。経済界として求めたいのは、あくまでも本格的な回復である。その意味では、何よりも早く、ワクチンを行き渡らせることである。早ければ9月中には(全国民の)8割程度の方が2回目(の接種)を終了する。10月、11月には(接種を希望する)全国民(の接種を終える)という目標を(政府は)立てている。政府におかれては、定期的というよりも、リアルタイムに近い形で、(ワクチン接種状況について)今日はこうなっている、どの県ではどうなっているということを発表しながら、もう少しでトンネルを抜け出すぞという状態を国民に伝わるようにしていただきたい。もう一つの観点で、今まさに議論されている補正(予算)や予備費の増額を含めて、(追加的な)経済対策はあり得る。しかし、既に昨年の予備費や補正(予算)が未曽有の形で未執行のまま今年度に繰り越されている。30兆円を超えるお金が執行できないままだ。補正予算が組まれたのは1月であり、年度内に(執行が)間に合わなかったという事情はあるだろうが、それだけではなく、実際にはいくつか不要のものまで含まれていたと聞いている。国民からすると、困っている時に財政的な支援があれば助かるのは間違いないが、本当に困っている時に、困っている人に速やかに届いているのかどうかをよく考え、財政規律を維持しなければいけない。本当に困っている人にきっちりとした手当てをすることは大事だが、(衆議院)選挙が近づいている中で近視眼的なポピュリズムに陥らないようにしてほしいと強く思う。経営には「両利き経営」という言葉があるが、政治こそ「両利き」である必要がある。足元の危機、足元の火を消すことに全力を挙げるだけではなく、中長期に持続可能性があるかを併せて考えなければいけない。今度こそ「両利きの政治」をやっていただけることを大いに期待したい。2つ目の質問(ワクチン接種の推奨、ワクチンパスポート)について、経済界としては、ワクチンを接種した方がしていない方に比べて、経済活動を含めて自由度の高い行動をとれることを期待している。早くワクチンパスポートを実用化していただきたい。米国やイギリス、フランスなどを見る限りにおいては、ワクチンパスポートの積極的な活用によって経済を活性化させている向きもある。(ワクチン接種について)強制力を持たせるか、義務化するかについて、今のところは議論せず、個々人の価値観に委ねることになっているが、本当にそれでよいのか、もう少し詰めた議論をしないと。ともするとぎりぎりのところまで(議論が)行われず、その手前で議論を止めてしまう傾向があるのではないか。もっと議論したほうが良いと思う。国全体のために何を義務化し、何を個人の自由に任せるか(というテーマ)はいろいろなところで出てくる議論なので、ワクチン接種という国民が関心を寄せている問題こそもっと突っ込んだ議論をして、やはり義務化しようとか、あるいは高いインセンティブを与えようという議論があってよいのではないか。議論が中途半端なまま、政界が「今のところ考えていない」という反応なのはやや残念なことだ。

Q : (ワクチン接種の義務化について)ぎりぎりのところまで議論する傾向がないとの話があった。例えば、野戦病院の話が出ているが、これはダイヤモンド・プリンセス号で感染が起きた際に既に出ていた話である。医療体制の不備と言われるが、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が理事長を務めている地域医療機能推進機構の病院を新型コロナウイルス感染症の専用病棟にするなど、今さらという感がある。日本医師会会長も、大企業が持っている都内の研修施設を提供してほしいと言われているが、ちぐはぐ感を禁じ得ない。(東京都が渋谷に設置した)若者ワクチン接種センターも、なぜあれほど並ばせるのか。若者はインターネットが得意なので、最初から予約をさせればよいのではないか。そうしたことが生じるのは、政治に責任があると思う。また、国会が開いていない。これは(衆議院)選挙の前に(自民党の)総裁選挙があるためとみられる。経済同友会は、参議院の機能強化、内閣へのけん制機能(の強化)を先日提言したが、政治に対して経済界が強めに言わないと解決するものも解決しないのが現状ではないかと思う。特に、今、政治の責任が非常に重いと思うが、所感を伺いたい。

櫻 田: 今回のように国難、危機に瀕する時に一番活躍し、責任を取らなくてはならないのは政治だと思う。それに対して経済界は、経済の立場から話すだけではなく、経済界も国民の一員である(という視点も重視したい)。特に(経営者が個人の資格で活動する)経済同友会は、経済を背負った個人かつ国民の一員である立場から、言うべきことはしっかりと言っていくことがより必要だと思う。(今、)選挙の匂いがぷんぷんしている。日本政府はプランニングは一生懸命やるが、その際に、執行にあたってプランが滞りなく、予定通りいくか、本当に必要な人に必要なベネフィットが届いているかどうかをあまり考えないという(気がしている)。考えるネットワークがないのか、情報(収集)力が不足しているのか、想像力が働かないのか。そういった意味で、プランニングはするが、執行に至らないまま次のプランニングに入っていくということを繰り返しているように感じる。今回の病床問題もそうだ。1回目、2回目、3回目(の緊急事態宣言が出され)、今回は(感染)第5波と言われているが、では、1回目、2回目から何を学んだのか。その時の課題は次の対策にどのように活きているのか十分な説明がない中、次から次へと、とにかく危機だ、大変だと繰り返されているような気がして仕方がない。経営ではそれは許されないことだ。1回目、2回目で行ったこと、そこから学んだこと、特に失敗から学んだことを次のプランニングと執行に活かさないといけないが、それが十分に機能しているとは思えない。そうした中で、(自由民主党の)総裁選挙があり、10月21日には衆議院議員の任期が満了する。世の中全体のトーンとしては、政局に関心が移っている。プランニングは言葉で説明できる部分だが、執行は、必ずしも今それを問われなくてもよい部分だ。言葉で済む部分と結果で残さなければならない部分のうち、前段の部分が過大になりすぎていることをとても不安に思う。具体的には、予備費の拡大・拡充など、財政規律、財政民主主義という観点で、これまでも経済同友会が疑問を呈してきた補正予算の組み方、額についてである。先ほど「両利き経営」と申し上げたが、足元のことと将来のことを両方いっぺんに考えなければならない時に、詳細がほとんど議論されていないことを非常に懸念している。これを国民が真摯に受け止め、足元のことも大事だが、私たちの子どもや孫、将来のことも大事だという意思を次の選挙でどのように示すのか。非常に大きな機会だ。ここ数年来で、非常に重要な選挙を迎えると思う。経済同友会としてもその意義、重要性を発信していきたい。

Q : 明日、デジタル庁が発足する。デジタル化については新型コロナウイルス感染症の対応などでいろいろと遅れが指摘されているが、デジタル庁発足に向けた期待や懸念について、代表幹事の考えを伺いたい。

櫻 田: 経済同友会では(2020年11月にデジタル庁が果たすべきミッションなどについて)意見書を出している(2020年11月4日『デジタル庁の設置に向けた意見』)。今年6月に、デジタル庁の主要業務7項目を政府が重点計画として公表したが、そのほとんどにこれから(取り組む)ことになる。例えば、国の情報システムの予算の一括管理、地方共通のデジタル基盤の標準化・共通化、マイナンバーをもっと使いやすくすることなどいろいろあり、明日から活動が開始される。一番重要なのは、何においてもスピードである。すでに(日本のデジタル化は世界から)2~3周遅れており、さらに遅れそうな中で、ロケット・スタートにもっていけるのかが心配なところだ。ロケット・スタートできる体制ができていることに期待したい。また、デジタルはアジリティが大事である。半年経ってあれができた、これができた、ということではなく、いつまでにどういうことをやるかを発信して、それを国民が検証できるような状態を作っていただきたい。あえていうと、省庁縦割りの意識をできる限りなくすためにも、片道出向、つまり退路を断って各省庁からデジタル庁に行っていただくことや、民間からの登用をしっかりとやってほしい。また、デジタル監については民間からユーザー企業の経験がある方を、と申し上げてきた。(デジタル監に就かれる)石倉洋子氏にしっかりと手綱を握っていただき、7つの重点計画をロケット・スタートさせてほしいと思っている。

Q : ほぼ無観客で東京オリンピックが開催された。オリンピック・パラリンピックの開催に関する受けとめ、総括を伺いたい。

櫻 田: パラリンピックは始まったばかりだが、オリンピックについて一言で言えば、開催してよかったのではないかと思う。当初心配されていた感染拡大も、オリンピックを開催した結果として深刻な状況が生まれたとは思っていない。史上最多の58個のメダルを獲得したことは国民として大変嬉しい。やはりアスリートがくれた元気と感動は、オリンピックを開催したからだと思っている。これまでも申し上げてきたように、開催が有観客である必要はないと思っていた。民間機関の推計をみても、有観客と無観客の経済効果は(それぞれ)1兆8,000億円と1兆6,000億円程度で大きな差ではない。感染拡大はオリンピックによって爆発的に増えたとは思わないこと、オリンピック選手がくれた感動や感激は確実に国民にプラスであったこと、経済的効果においては無観客開催でもさほど大きなマイナスではなかったこと等々を考えれば、私は開催してよかったと思っている。パラリンピックに関して、オリンピックとの違いはダイバーシティのすごさを見せられることだと思う。どんなに困難があってもチャレンジしていくことで、あれだけの感動・感激を国民や観客に与える(パラリンピック選手には)、オリンピック選手とは違うものがある。経済同友会はこれからもパラリンピックをしっかり支えていきたい。

Q : パラリンピックで感動したことや印象的な場面があれば伺いたい。

櫻 田: オリンピックの場合は、兄妹(でメダル獲得)など選手(個人の背景)に感動する。そこに向けての努力がストーリーで語られる時にじんと来るものがある。パラリンピックの場合は、ハンディキャップを抱えている方がここまでやるということ、(限界に挑戦する姿に)どのシーンを見てもじんと来てしまう。パラリンピックとオリンピックはどちらも素晴らしいが、(そういった面で)提供する価値の質が違う。(パラリンピックで)感動した競技をあえていうと、水泳と車いすラグビーである。車いすに座った健常者が車いすラグビーの選手とぶつかると、簡単に倒されてしまうという。それほど車いすラグビーというのは厳しいスポーツだ。あそこまで鍛え上げるのは素晴らしいことでじんと来る。

Q : 先ほど、政治について、プランニングはしっかりしているが執行はそうでもないと発言された。財政の面で、今回の新型コロナウイルス感染症対策に関し、緊急事態宣言における執行ではどの辺りが不足していると思われるか。

櫻 田: 企画した上で予算を計上し、それを執行する省庁や組織を決めたとする。省庁が決まってから資金などのベネフィットが(国民に)届くまで、ものすごい時間がかかっている。時間がかかり、面倒なのであきらめてしまったという場合さえある。執行に極めて課題があることは、(特別定額給付金)10万円の時からわかっていたはず。どうしたら執行が滞らないように済むかという点については工夫が必要だ。それが深刻に顕在化したのがワクチンである。当初、ワクチンは全国民に十分に行き渡るように手配され、届くはずであった。急いで接種を進めようと職域接種などにも走り回ったが、途中で(ワクチンが)足りないことに気が付いた。必要な場所に必要な分量が届いていない。どこに何個あるかわからないという状態になったので、いったん申請をストップせざるを得なくなった。これは執行の失敗である。こういったことが支援金や補助金などでも起きている。この問題はこれまでの政府の施策に共通していることだと思う。30兆円を超える予算が未執行のまま翌年度に繰り越されている。前代未聞の5兆円の予備費のうち、まだ2兆円強が残っているにもかかわらず、さらにプランニングして積もうとしている。たくさんあってもそれを使えなかったら、効果を生まないということについてどう思っているのか聞いてみたい。工夫する、しっかりやる、という言葉は聞いているが、そもそも執行できない額は積まないということになっていない。たくさん積めば(それだけで)国民は大喜びする時代ではないのははっきりしている。ぜひ、そこは改善していただきたい。

Q : 本日は(2022年度予算の)概算要求の締切日だ。110兆円にのぼり、4年連続で過去最大規模となっている。代表幹事の懸念とは裏腹に、省庁がアドバルーンを打ち上げ要求の規模は膨張している。未執行という現状も踏まえて本当に必要な事業を精査すべきだが、是正していくためのプロセスや仕組みはどのようなものが必要だと思うか。

櫻 田: 衆議院に対して参議院があり、牽制し、客観的な評価をしながら議論をしていく形であるべきだと思うが、そうなっていない。特に補正予算編成の過程は、どういう客観的なデータに基づいて組まれたかがわからない状態だ。たくさんの予備費や補正予算を組んでも使い切れていないものがある中で、さらに予備費や補正予算が必要ということが起きている。一方で、各省庁はこれまで通りの考え方で、デジタル、グリーン、コロナという3つの柱に沿って予算を積み上げてきている。厚生労働省の30兆円を超える概算要求について、その内訳は詳しく了知していないが、危機管理を担うセンターを創設するという。これ自体は悪い話ではないが、国の危機管理は省庁横断であるべきだ。コロナウイルス感染症などの問題はともかく、それだけが危機管理ではない。デジタルにしてもグリーンにしてもおそらく経産省中心に予算をあげるのだろうが、中長期的にみて日本が勝ちにいくのはどこなのか、優先順位をつけて考えた結果の予算なのか。基金についての報道もあったが、使われずに何年か経ってから返してもらう基金を作るようでは困る。ワイズ・スペンディングを、言葉だけではなく実効性を伴う予算としていかなければいけない。概算要求の段階なのでなんとも言えないものの、これまでと費目は変わったが、予算の組み方自体はあまり代わり映えしない印象を持っている。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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