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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2021年7月13日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、緊急事態宣言、西村大臣発言、最低賃金、原子力発電の位置づけ、EUにおける国境炭素税、東京オリンピック無観客開催、企業におけるアスリートの雇用、経済同友会の新型コロナウイルスワクチン職域接種などについて発言があった。

Q : 政府は新型コロナウイルスの感染拡大で、東京都に4度目になる緊急事態宣言を発令した。これは東京オリンピック期間中にかかる。発令に伴う経済などへの影響をどう見ているか。また、これに関し、西村康稔 経済再生担当大臣が休業要請等に応じない飲食店の情報を金融機関に提供する趣旨の発言をし、その後撤回したことについての見解もお願いしたい。

櫻 田: 3回目の(緊急事態宣言の)時に、4回目はとにかく回避すべきだと、私だけではなく多くの経済人が言っていたが、4回目になってしまった。事態が悪化したので、今となっては、この手を打たざるを得ないという印象だ。言ってみれば、やむを得ない状態で発出された。ただ、3回目はどうだったかというと、似たような状況だったのではないか。なぜ、今回も緊急事態宣言を発出せざるを得なくなったのか、指標が悪化したからというだけではなく、もう少し踏み込み、(その)原因が、お酒を伴う飲食なのか、あるいは人流が増えたからなのか、デルタ株を含めた変異株の影響なのか、それら全ての影響なのか(分析すべきだ)。多くの原因があるのはわかるが、最強最速のスーパーコンピューター富岳を使い、いろいろなシミュレーションも(実施)している。特にどこが問題で4度目の(緊急事態宣言)を発出せざるを得なくなったのか、推測でもよいので(政府の)見解を発表した上で、如何ともしがたい、やむを得ない判断であると説明(したと)するには十分ではなかったと思う。経済には、当然のことながらマイナスの影響が出てくる。これについては織り込み済みというだけではなく、マクロ的に見れば、今回の緊急事態宣言の影響を受けるセクターは決して大きくはない。また、結果論かもしれないが、法人税の税収が上がっていることを踏まえても、想定以上に経済への悪影響が出るとは思わない。ただ、もっと重要なのは、国民と政府との信頼関係である。どうしてこのようなことが起きたのかについての説明は、依然として不足している。7月8日の西村康稔 経済再生担当大臣の発言については、政府内でどのような意思決定プロセスを経て、あの発言に至ったか私は了知していないが、あの発言自体が大きな混乱を生んだことは間違いない。それが翌日に撤回されること自体も、さらに信頼を失うことにつながったのではないか。そういった意味では、以前から申し上げているとおり、しっかりとした計画を立てることと、その計画が着実に、想定通りに実行されることは全然違うともう一度言いたい。(感染収束の)最終的な期待であるワクチンが、何個、いつ入って、どこにあるのか、そのうち今後どのくらい消費する予定なのかを国全体で捉える仕組みがないこと自体、先進国としては恥ずべきことだろう。計画することと、それを執行することでは、執行の方がはるかに重要だともう一度申し上げたい。(西村大臣の)発言については残念だと思う。(西村大臣の発言で)金融機関を通じてという話があったが、それについて私自身はどこまでが真か分からないが、もしそのような要請が金融庁、あるいは他関係省庁も含めて検討されていて、翌日に撤回されたとすれば、要請の内容が法的にどういう位置づけなのか、もし法的根拠がないのであれば、昔あった裁量行政を想起させるようなもので大変まずいことだと思う。それについては、説明を今後求められることがあるだろう。優越的地位の乱用になる可能性があるので(金融機関の判断でも)止まったと思うが、そもそもそうした発想が生まれたこと自体は疑問を持たざるを得ない。

Q : 最低賃金をめぐる議論が大詰めを迎えている。自民党は最低賃金の引き上げと中小企業への支援策を提言しているが、最低賃金に関してどのように考えているか。

櫻 田: 最近は経済同友会として組織的な論議をしていない。生産性の向上と最低賃金の問題はどちらが鶏か卵かがわからない問題であるが、基本は、世界的に、特にOECDの中で(日本の)最低賃金が大いに劣位にあるのであれば、可能な限り引き上げていく。ただし一律にということではなく、上げられるところは上げていく必要があるのだろうと思っている。

Q : (4回目の緊急事態宣言について)国民と政府の信頼関係という発言があったが、西村康稔 経済再生担当大臣の発言が、緊急事態宣言(中の自粛を国民が)順守するかにあたって影響を与えたと思うか。

櫻 田: 何らかの影響を与えざるを得ないと思う。民間の取引は、もちろん法律に則ってやるが、商慣習や得意先との関係は法律に基づいて行われているわけではなく、信頼関係がベースにある。要請の受け手である酒類の提供業者、つまり卸売業者、酒類の販売業者ともに、こういう事態だから致し方ないと本当に思ってもらえるかというと(そうではない)。商慣習や信頼関係をしっかりと理解していれば、このような要請には普通はつながらないというのが、私たち民間人の見方だ。

Q : つまり、酒の卸売等事業者のみならず、一般の方々に対しても、ああいった(西村康稔 経済再生担当大臣の)発言があり、撤回という状況をみたということで、政府への不信感、信頼感の低下を招き、行動様式に影響を与えたということでよいか。

櫻 田: 西村康稔 経済再生担当大臣の発言だけを取り上げて言っているのではない。(緊急事態宣言が)繰り返されている中で、国民から見てなるほどという説明が増えてきたならわかるが、前回も今回も何が原因でこうなったのか、依然として国民がなるほどと(納得できる)内容に説明が進化しているとは思えない。2点目は、新型コロナウイルス感染症のワクチンは十分確保していると言われていたが、(職域接種だけでなく)集団接種を含め突然足りなくなり、新しい申請を受け(付け)られなくなった。(これに対しても)なぜ、ということについて明快な説明がまだ出ていない。加えて、今回の(西村大臣の)発言があったので、何が本当なのかわからない。あってはならないことだが、政府は本当に、本当のことを私たち国民に伝えてくれているのか、という疑問を持たれても致し方ない現象が残念ながら続いていると申し上げている。

Q : 西村康稔 経済再生担当大臣発言について伺いたい。官僚がそれなりに用意したからこそグルメサイトまで踏み込んで説明をしていたのだと思う。現場のことを何もわかっていないのに発言をしている。政治家として、結果責任を問われるべきではないか。本来ならば、酒を提供する事業者には金融庁から支援をして欲しい、お金が十分に行き届かないから何とかして欲しいというのが当然だと思うが、閣僚である大臣が真逆のことをやっている。即時辞任を含め、大臣の責任についてはどう考えているか。

櫻 田: 1つの発言の重さ、閣僚としての発言の重さは、その立場に応じて判断されるべきだと思う。現場からの声をよく聞き、現場の商慣習、商文化を理解していれば、あのような発言にはならなかったと思うが、法律違反を促すような(ことを意図した)発言とは私は理解していない。1つのことで責任を問うのではなく、あの発言のみならず、これまでの各閣僚の責任と遂行してきた成果については、これから国民はしっかりと関心を持って見ていくだろう。その結果を問われるのは、それほど遠くない時に来るかもしれない。即刻辞任すべきということではなく、総合的に判断して、その任にあるか考える(ということ)が私の今の個人的な意見である。くどいようだが、あの発言1つで辞任すべきと申し上げるつもりはない。むしろ、もし即刻撤回しなければならないようなことを言ってしまったのであれば、どこにその原因があり、どうすれば国民との信頼を、政府として、閣僚として取り戻せるかをしっかりお考えいただきたいし、きっと考えていらっしゃると思う。

Q : 東京オリンピックがいよいよ開催されるが、基本的には無観客で行われる。しかし、プロ野球は観客を入れて行っているし、イギリスではサッカーヨーロッパ選手権の決勝が有観客で行われた。野球と東京オリンピックにおける(観客対応の)ちぐはぐ感に納得がいかない人もいるが、どう思うか。

櫻 田: 何が正しいか、正しくないかは常に結果論になってくると思う。ただし、新型コロナウイルス(感染症)については、いろいろとやったが収まらないので(緊急事態宣言を)3回、4回と繰り返していることは事実として認めないといけない。因果関係はともかく、人が集まるところで騒いだり、人流が増えたりすることで、結果として感染率が上がっていくことははっきりしている。前から申し上げているとおり、個人的には今回の東京オリンピックはパラリンピックを含めて無観客とすべきだと思っている。(無観客とすることによって)選手たち、その家族、国民が失う楽しみや感動があっても、それを挽回し補うような技術はデジタルを含めてたくさんあるはずだ。野球と東京オリンピックだけではなく、飲食店の対応、まん延防止等重点措置と緊急事態宣言の差分においても、ちぐはぐな面は結構ある。業界の方々にお叱りを受けるかもしれないが、一貫して整合性をもつべきで、(4回目の緊急事態宣言の期限となる)8月22日までは野球も含めて無観客と考えておかしくないと思っている。

Q :  経済産業省は、エネルギー基本計画の改定をめぐる議論のなかで2030年時点の発電コストについて分析結果を示しており、それによると太陽光発電が最安になった。原子力発電は安全対策にかかるコストが上昇している。これまで原子力発電はベースロード電源と位置づけられていたが、発電コストが上がってくるとベースロード電源とはいえなくなるのではないか。経済同友会はかねがね縮原発を打ち出しているが、原子力発電の位置づけに関する考えを伺いたい。

櫻 田: 2050年のカーボンニュートラルやネットゼロ、2030年における2013年対比CO2排出マイナス46%という目標を考えたときに、原発なしで達成できる可能性はゼロだと思っている。したがって原子力発電は必要である。しかしながら日本は3.11を経験しているので、原発への依存度を下げていかなければならないという方向性も正しいと思っており、これまで提言してきたとおり縮原発でよいと思っている。これから先はメトリックス、どのような数値目標を置いていくかが重要で、それを実現するための技術・技術革新を含めてということになってくる。原子力発電への依存度を下げていくことは間違いないが、原発を補う再生エネルギーの(なかで)太陽光発電の価格が下がっていくというのが事実だとすれば、喜ぶべきことだ。ただ、試算の詳細を了知していないので、「事実だとすれば」という前提をおかなければならない。一方で、(太陽光発電のコストを下げるには)超えなければならないハードルがたくさんあり、特に用地の確保と、(7月3日に発生した)伊豆山地区の土石流災害をみても、人工的に地形を変えていくことのリスクも考えないといけない。まだ紆余曲折はあるものの、全体としてはよいことだと思っている。ただ、どう考えても原子力発電には依拠しなければならない部分があり、依然として、2030年までに原発を何基動かすつもりか、現在6%の(発電)シェアを2割近くまで上げるにはどうするかが何も示されていないことに疑問をもっている。これはきちんと示していかなければならないと思う。

Q : 近くEUで国境炭素税が導入される。欧米で国境炭素税が広がると日本の製造業に影響が出てくるといわれているが、これに関する懸念など所見を伺いたい。

櫻 田: CBAM(炭素国境調整措置)の具体的内容はこれから決まってくると思うが、スケジュールは2023年からと聞いている。日本の産業への影響は、対象となるものによって変わってくるが、私が理解しているところでは、鉄鋼・アルミニウム・セメント・化学肥料等で、対EU輸出の主要産品ではないと思っている。想定されている範囲内であれば、(日本)経済への直接的な影響は限定的だろう。問題は今回のCBAMを含め、いわゆるネットゼロ社会に向けていろいろな(国際的な)制度や法律が決まってくるが、他国によって決められたルールによって日本が大きな影響を受ける、右往左往するという事態は避けなければいけない。国際的なルールを作るポジションにあるのは、1つは米国であり、EUも力がある。同じ民主主義、自由主義を唱える日本としては、どちらに付くということではなく、日本にとって最も有利で世界がアクセプトできるルールを日本発でつくってもよい。あるいは早期に状況を察知し、日本の意見を反映させる取り組みをなお一層強化していかないといけない。(これまで)受け身の姿勢できたとは思わないが、いままでより格段に積極的に海外の情報をとり、積極的に働きかけていく。そのための影響力を蓄えていくことをしないと常に後手に回る。他人が決めたルールで経済を運営するようなことにならないようにしないといけない。中国やロシアが別の考え方でルールを決めてくることがある。おそらくこれらの国のルールについて日本が賛成に回ることはないと思うが、そのためにも米国やEUとの情報交換、働きかけを、一段レベルを上げてやっていかなければいけない。経済界としても、相手国の民間企業との情報連携や情報収集が必要になってくるだろう。

Q : 企業とアスリートの雇用をマッチングする『アスナビ』というJOCの取り組みに経済同友会も長い間協力しているが、企業がアスリートを雇用する意義について伺いたい。

櫻 田: トップアスリートが自分の会社の仲間だということは社員からしてみれば誇らしいことだ。元気が出ることに間違いはない。私自身も、応援しているスポーツチームの皆さんにお会いするだけで元気が出て誇らしくなる。そういった面は大いにある。より大所高所からみると、日本はスポーツを発展させるだけのポテンシャルを持っている。各民間企業がスポーツ振興のためにアスリートを雇用するのは大いに意義がある。もう1つ、アスリートの方々にはいろいろな才能があり、特にスポーツに才能があるから活躍されているわけだが、トップアスリートになるには肉体的な訓練だけではなく、メンタル、精神的な強さを含めてもっている方が多い。トップアスリートに講演を頼むととても感動的な話をしてくださる。こういった面を含め、経済的、経営的にもアスリートを採用して応援することは大いに意義があるし、今後もやっていくべきだと思っている。今回の東京オリンピック・パラリンピックでさらにそれにつながっていけば大変喜ばしいことだ。

Q : 新型コロナウイルスのワクチン接種について聞きたい。想定外の供給不足が表面化しているが、経済同友会の職域接種の取り組みにも影響が出ているのか。積極的に政府に協力してきた立場で、現状のワクチン供給不足で引き起こされている問題点についてどのように考えるか。

櫻 田: 突然のことなので、私たちとしても、どうして、という思いはある。先ほど申し上げた(とおり)、どうして突然(不足するのか)ということ(に納得感のある説明がないこと)と、依然として全体が見えず、いつになったら、どこに、どれだけのワクチンが届くのかわからない状態が続いているのは、非常にフラストレーションが溜まり、積極的に政府の要請に協力してきた団体としては残念である。(ただ、)残念と言っていても解決しない。申し込みベースで言うと、6月末で地方を含め約6万人分(の接種希望)が来ている。約6万人のうち、7月11日までに43,992名は既に第1回(目の接種)が済んでいる。(未接種の希望者にも)出来るだけ早く実施していきたい。東京の会場では7月17日に第1回の接種が完了する。(ワクチンが)足りないという状況が、少なくとも東京の会場に深刻な影響を与えているわけではない。しかし、2回目以降はわからないので、早くしてほしい。民間企業からすると、自ら作ったものや在庫が今どこに何個あるのかわからないという状況は普通では考えられない。どうしてそうなったのか、恥ずかしいかもしれないが、事実なのでつまびらかにしてもよいだろう。それを聞いて、今更諫言しても仕方がない。どうしたらいいのか、次善の策について皆で知恵を絞る意味でも、はっきりと現状を説明いただくことが大事だと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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